約束と心

September 19 [Thu], 2019, 7:35
彼女の零れ落ちそうな涙をそっと掬い上げたのは、ぼろぼろに傷付いた人だった。



こんなになっても、此処まで来る為に……。









「もう泣かなくていいよ…。」と、優しく頭を撫でてくれる手は大きかった。

逆に「守れなくて、ごめんね…。」と言う彼女の声は震えて消え入りそうだった。



どうしたら良いか解らないんじゃない。
どうしようもなかった訳でもない。

“どうにか” しなかっただけなんだ…。


譲れない一線があるが故に………。

《心》を何よりも愛しく感じた。
《心》は大切なモノだと想っている。

だから、譲れない。





「…ごめんね…。」と繰り返す。

自分の我が儘は時折、誰かを見殺しにする。

それを知っていた。



それらを理解した上で、人生を共に歩んでくれる者は稀である。

















「慌てたり、焦らなくて良い
君は君らしく、君が思う様に歩めば良いんだよ 」と優しく諭してくれる存在がいる。


周囲へ『好きな事を好きな様にさせてあげて…。』と遺言を託してくれていた人もいた。



少女は、護られながら自分なりのペースで人生を歩み続ける。

優しい記憶のカケラは、とても儚いけれど、小さな “嬉しい” が詰まっている。

刹那の時を重ねて、揺るぎない想いに変えていく。




























《守りたくて、譲れないモノ》の為に、多くの犠牲を払い、さまざまを利用してきた。

簡単な事じゃない。

嫌になって、途中で放棄したくなる程…疲れてしまった…。

…でも、歩みを止めたら、“今までの全て” が意味を失ってしまう…。

それだけは、自分自身に許せなかった。






私は、私に文句を言う。
都合が良い、勝手過ぎる…と。

今まで何者の手も想いも借りようとせず、必要としてこなかったクセに、今更、一人で抱え込んできた物事に対して助けや協力を頼むなんて…。


それでも『願い』と『望み』を何度も訊ねてくれる。

それなのに素直に応えられないのは、彼らが優し過ぎて利用する事に躊躇してしまったからだった。

綺麗事の罪悪感を抱き、泣きそうになる。





一人のセカイじゃない事は知っていたのに、背負い込んで自己完結をしてきた。

そうすれば、少なくとも傷付くのは自分だけで済む。

でも、それは自己満足の域から出ず、自立させる為なんかじゃなかった。













「約束をして……。」と優しい手の主は告げる。

「次に再会する時は、君の力と助けになれる様になっておくから…。
だから、その時は信じてこの手を取ってみて…。
絶対に…、もう泣かせない。」





彼女は、一人泣いていた。

眠りに就いた優しい手の主は、これからたくさんの災禍に立ち向かわなければならなくなる。

心が傷付く…、傷付けられる…。

それでも失望なんてせず、「愛しいね」と同じモノへひた向きに心を寄せてくれるだろうか。






彼女は、それが怖かった。

堕ちて逝く者達を目の前にする事が多かった。

“犠牲者” にしたくなかった。




だから、廻り逢う事が怖くなる。

信じてみたいのに、そんな勝手な思い一つで、手を取って引き込んでしまう事が残酷だと知っている。


犠牲なんて望んでない。

それを示してくれないと、怖くて手なんか取れないんだ。















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