Siemens(Telefunken)EL34の話

June 04 [Tue], 2019, 6:59
6月1日は思いがけない買い物もあった。
真空管EL34のペアチューブの購入である。


最近はあまり秋葉原に行く機会は減ったが、久々に三端子レギュレータの予備を買うため足を伸ばした際、ふと真空管屋に寄ったところ、見つけてしまった。

話は90年代に遡る。

真空管アンプを作り始めたばかりの私はご多聞にもれず、回路がシンプルなシングルアンプ(片チャンネルに出力管1本で動作)から始め、やがて動作条件を色々な出力管が差し替えられる設定に変更し、真空管の音の違いを楽しんでいた。
6V6GT 6F6 6L6GC EL34他メーカー別のバリエーションも試したのであっという間に真空管のコレクションが増えていった。
中でもロックファンとして特に思い入れがあったのは6L6GCとEL34だ。6L6GCはフェンダーのツインリバーブ、EL34はマーシャルのギターアンプに使われていると聞いた私は当然真っ先に試してみた。
6L6GCはあまりピンとこなかったが、EL34の三極管接続の音は「どストライク」だった。なかでもEL34はGE製とSiemens製を買ったが、圧倒的にSiemens製に惚れ込んだ。

特に米盤コロンビア360°ラベルのヴォーカルはポカっとヴォーカルが浮かび、他の球とは一線を画す「色濃い」音に聴こえた。
アンプの違いは音楽の好みにも大きな影響を与え、以降2A3〜300B〜送信管と進んでいき、アンプを組む度にレコードライブラリを聴き直すという、ありがちな道を辿る。

現在は我が家の真空管アンプは、幾度か拙ブログで紹介している通りEL34の三極管接続全段差動アンプである。

もともと6AH4GTというテレビ用の三極管を使っていたが、もう少しパワーがとれることと、EL34三極管接続の音が好きという理由で、回路と定数を変更しEL34に組み直した。
いや、正しくは30年前に聴いた音が記憶の底に残り、今の音の方が間違いなくいいはずなのに、「いつかまたEL34を全段差動プッシュプルで」との思いで変更していた。

昨今の真空管の供給事情から当時のヴィンテージ管の入手は以前に比べても高価で難しくなっている。とりあえずスロヴァキア製EL34で組んでみたが、記憶の音とは違う。昨年夏、60〜70年代に世界的に評価の高かった松下電器のEL34を購入、差し替えてみたらなかなかよかったが、それでも記憶の音とは違う。

ああ、あの時EL34をなぜ2本ではなく4本購入しなかったのか?
それとも遠い記憶は脳内バイアスがかかり美化された音なのか?

そんな時真空管屋の店頭でTelefunkenの箱に入ったEL34を見つけたのだった。

EL34のオリジナルは西ドイツTelefunken製である。
TelefunkenのEL34は余りにもレアで高価だ。1本1万円以上する。
しかも私の探しているのはTelefunkenではなくその後生産されたSiemens製である。

だが店頭のEL34は見た目我が家のSiemensEL34に構造が似ている。
真空管のブランドはさほどあてにならない。
当時からいろいろな工場でOEM生産され、ガラス面のプリントや箱の入れ替えが頻繁だからだ。


スマホの中から昨年まとめて撮影してたSiemensEL34の写真を引っ張り出し、しげしげと眺める。価格も2本で1万円を大きく下回っている。店主にも写真を見せると「多分同じ構造で、製造年代は近いのではないか」ということになった。
曰く、「ガラス面のプリントがとれているし、2本しかないので4本お買い求め希望のお客様が多いせいで残っているんで安くしているんですよ」。

これはもう30年来のミッシングピースの出会いじゃないか!

購入の意を決しついでに店内を見回したところ、こんどはNEC12AX7を発見。
お値段も1本千円で2本ある。


我が家ののアンプの電圧増幅段は松下12AX7だ。松下製はここでも世界的評価が高く、特性も揃っていたので使っていたが、以前から12AX7は様々なメーカーのものを聞き比べ、NEC製の音が張り出しが強くダイナミックで一番好きだった。残念なことに手持ちのNEC12AX7は特性が揃っていないため使っていなかったが、ここでも店主に「これ、特性揃ってますか?」と尋ねたところ「ちゃんと測って揃っていましたよ」との答え。ツイている。こちらもまとめて購入だ。

帰宅してワクワクしながら以前から所有していたSiemensEL34 2本とともに真空管を差し替えて音出ししてみる。

おお!脳内にあったあの色濃い音が!

シングルのプッシュプルの差や回路、部品の違いで当然考えている音とは違うが、脳内に残っていた音のテイストが聞こえる。
スロヴァキア製はもちろん、松下製とも全然違う。

ヴィンテージ管の中には魔法があるのだろうか?

一昨日アップしたユニヴェル・ゼロのサードアルバムも音像が横に拡がり素晴らしい実体感。音の残響成分がたっぶりでいつまでも聴いていられる。
ひさびさにコロンビア360°ラベルものを引っ張り出したし、リッキー・リー・ジョーンズ「浪漫」のUSオリジナルを出したり、しばし音楽鑑賞に浸ってしまった。

これからしばらく、レコードライブラリをとっかえひっかえ聴きなおす毎日になりそうだ。
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40代は第2の思春期なのだそうです。思春期に惹かれたものをもう一度ひっぱりだしてきて後生大事に整理を始める今日この頃。プログレを中心としたアナログレコード集めに人生の貴重な時間を費やすささやかな記録です。
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