サヴェージ・ローズ Live in Aarup 2017.11.03

November 06 [Mon], 2017, 23:48
これまで昔はライヴを観るなんて想像すら出来なかったアーティストの来日が次々と実現し、イタリアのレジェンド達などは来てない人がを探す方が難しくなった。
イタリアだけでなく、ヨーロッパ諸国のレジェンド達も次々来日が実現するなか、可能性と訃報というタイムリミットの争いの感さえある。そんななか、私は心密かにアーティストも自分もお互い「死ぬ前に観ておきたい人」が何人かいる。
先月のアンソニー・ムーアのソロもそんなひとりだが、今年来日の可能性の高くないアーティストの母国ツアー情報が飛び込んで来た。

サヴェージ・ローズデビュー50周年デンマーク国内ツアーである。

今やサヴェージ・ローズそのものとも言えるアニセッテ・コッペルも69歳。
これを逃したら観ることは一生叶わぬかもしれない。

と言う訳で体当たり弾丸ツアーを企画し、行ってきましたデンマーク。

デンマークではそれなりに大物だそうから、コペンハーゲンのような都会ではそれなりの大ホールになるだろう。
せっかく日本から行くのだ。あわよくば楽屋にだって突撃したい。
ライブ終了は夜半だろうから、近くに宿も手配だ。電車やタクシーでの近くの町までの移動も困難を極めるだろう。
と言う訳で選んだのはオーラップという現地の人もよく知らないようないわゆる「ど田舎」。
たった一本のメインストリートを挟む町というか村は手強そうだ。
なんでこんなとこでライブやるんだ?大物なのに?

町のたった一軒見つかったホテル共同予約サイトにも載ってないような小さな「ホテル」を見つけコンタクトを入れたらレスが悪い。
しかも4ヶ月前なのに「その日は満室」との回答。うむ。なかなか手強い。
もしかしたら既にメンバーや遠くからサヴェージ・ローズを見に来る酔狂な客で満杯かもしれぬ。
だがホテル側から「隣にホステルがあるが、そこなら空いてる」との提案が。
うーん。できればホテルがいいが背に腹は代えられない。
ホステルを予約し、実行を決断した。

デンマークは高福祉高物価国家である。

外食もホテル代も交通費も高い。
日本の2〜3倍だと思っていれば良い。長居は大変だ。

前々日昼過ぎに南回りでコペンハーゲンに到着。
コペンハーゲンで初の民泊を使用。噂の「Airbnb」だ。
Airbnbと言う名前がいけないと思うのだが、どうしても名前の通り民宿の「B&B(ベッド&ブレックァースト」を想像してしまう。
普通に民家に暮らす人から一部屋借りると言うことを実感できたのはチェックインしてからだった。
空港に着いてから宿に着くまで宿主から「何時に着く」「荷物を一度置かせて欲しい」「その時間はいない」などやりとりがあり、その後も、「何時に着くと聞いてずっと待機しているが、本当の到着は何時?」とのやりとりがスマホ経由できたなされ、ようやく実態がわかって来た。他に見たいところも会ったがとにかく一度宿へ行かなくては。
たどり着くととてもフレンドリーな若い地元のお嬢さんと3匹のヒマラヤン達が出迎えてルールを説明してくれた。

ふむふむ。これは部屋に泊めていただくのだな。
決済がサイトを通じてなので、現金のやりとりがその場でないのも現代的だ。
雑談でお嬢さんに「サヴェージ・ローズのライブを見に行く」と話すと「デンマークでは知らない人はいないくらい有名だよ」と教えてくれた。こういうところも「民泊」ならではと言う感じ。

質素だが北欧風(ていうか北欧だが)にスタイリッシュ・清潔にまとめられた部屋は居心地がいい。
我々の部屋に鍵は無く、ドアを開けておくと頻繁にネコが「査察」にやって来る。ホテルに慣れた人にはオススメできないが、現地の暮らしが肌で感じられ、私はとても気に入った。

着いた翌日をコペンハーゲン観光(と言う名のレコード屋巡り)に充て、翌日はサヴェージ・ローズの待つオーラップへ向かった。

オーデンセというかアンデルセンの生まれた街で途中下車後、着いたオーラップは想像以上の寂しい「過疎地」だった。
無人駅から徒歩2分のところにあるホステルにチェックインしたが、確かに「ホステル」だ。
バストイレ共有。
会計にシーツ代が加算されるユースホステル方式を何十年ぶりに思い出す。他に客も見当たらない。

「こんな僻地で本当にライブやんのか?」

だんだん不安になり、Industrienという名の会場の下見へ。
たった一本のメインストリートに面した会場は普段は映画館らしい。

開場1時間半前に下見に行くと電気が消えてる。
入り口には何にも表示が無い。
デンマークで有名なミュージシャンのライブ当日に面にポスターの一枚も貼らないものか?
そう考えるとどんどん不安が頭をもたげてきた。

もしかして勘違い?
日付間違い?
延期や中止?

日本からはるばるやってきてそりゃ無いでしょ。

不安に駆られるまま建物の裏側に回ると地元の人っぽい人が一服している。

駆け寄って聞いてみた。
私「今日、サヴェージ・ローズのライブの日ですよね?」
おっさん「そうだよ。中にメンバーいるよ」
私(ほーーーっ)
おっさん「開場は7時頃かな。小さな会場だからチケットはソールドアウトだよ。大丈夫かい?」
私「それは手配してありますぅ〜。じゃ、また来ます」

開場15分前に出直すとホールにはボチボチ人が集まり始めている。

物販スペースも出来ている。


自由席を確認し、ドアオープンとともに真ん中最前列へ一直線。

振り返ると誰も最前列なんかに来ない。

最初に真ん中から後ろが埋まり始め、ジワジワ最前列へ向けて人が詰まってくる。
これは文化の違いか?

驚くのは客層の年齢の高さ。
金髪でもプラチナブロンドでもなく、客席ほぼ白髪。
日本ではまず見たことない。
会場の席数は300〜400くらいか。

編成はダブルオルガンで一台はレズリースピーカーが回っている。他にギター、ベース、ドラム、トロンボーン。コーラス隊。

いよいよライブ開始。

バックのメンバーのうち3人によるアコーディオン、オルガン、鼓笛隊の太鼓での「出囃子」に導かれ、革製旅行鞄を下げたアニセッテ登場。芝居掛かった動きでステージから客席を見回すと鞄を開けて取り出したのはマイク。
演奏が始まる。

真ん中最前列なのでアニセッテまでの距離は1〜2m、時として1m以内。
他のコンサートも含めて人生の初の「距離感」だ。

選曲はサヴェージ・ローズの新作と長い活動歴の中からバランス良くセレクトされ、客席の反応でも「どの曲がウケるか」よくわかる。

アニセッテは年齢離れ下見動きを見せ、ステージ上でくるくると回転してみせながら歌う。
時々うつむいて歌うアクションを見せるとステージ真下に陣取る私と目が合っているような錯覚に。
いや、少なくとも髪の中に隠れているアニセッテの表情は私にしか見えないばず。

アニセッテの音楽性や動きは、見た目通り「ジプシー」を連想する。
サイケデリック・ロック、黒人音楽、トラッドなど時代毎に音楽のスタイルを変えてきたサヴェージ・ローズ。コッペル兄弟が作り上げてきた音楽はアニセッテの内側で消化されている。
私は個人的にはインターナショナルな成功を目指したポリドール時代の音楽より、トラッド&フォークにそのルーツを求め、左翼思想にまで踏み込んだ「Solen Var Også Din」から1980年代にかけての作品が好きなのだが、一般にはその時期がパワーダウンと評価されている。
だが、改めて見たアニセッテはバックのダブル・オルガンのコンボ編成の通り、「フル・ティルト・ブギー」期のジャニス・ジョプリンそっくりのド迫力だ!
すさまじい形相のアニセッテがまさに1メール先に裸足でシャウトしている。
感動しないわけがない。

中休みを挟んで、衣装チェンジで二部制後半へ。

バンドは「Dodens Triumph」のインスト曲を演奏しはじめると会場は俄然盛り上がりはじめる。演奏もますますパワフルに。
バックの演奏もツアー後半なのでバッチリ決まっている。
とくにオルガン奏者が素晴らしい。一見内向的な風貌とは対照的に荒れ狂うアクションでソロを弾きまくる。


そして、この日のコンサートのハイライトはバレエの為に制作されたインスト中心のアルバム「Dodens Triumph」唯一のヴォーカル曲「Dear Little Mother」会場は最高潮に達する。


このアルバムはサヴェージ・ローズの国内での最大のヒット作だそうだ。
メンバーにして夫だったトーマス・コッペルを2006年に失いしばらくの沈黙の後2012年発表の復活作品「Love And Freedom」のタイトル曲では会場全体で大合唱となった。

ステージ終了後、私に気づいた関係者がそっと楽屋に案内してくれた。楽屋に入る前の緊張と言ったら。。

この日のために日本から持ってきたアナログLPと付属のポスター、会場物販で買った新作LP、ポスター。
私が日本から持ち込んだ二枚のLPのうち、1枚は18歳の時初めて通販で買ったレコード、「Solen Var Også Din」のノルウェー盤。サヴェージ・ローズにへの熱狂に点火してくれた一作だ。オリジナルは勿論デンマーク盤。ジャケットもノルウェー盤の方がダサい。
https://blogs.yahoo.co.jp/hiro_eurasia/60115276.html
当時はノルウェー盤だのデンマーク盤だのよくわからなかった。
高校生にとってフールズメイトのやっていた通販「OMINI PRODUCTION」でレコードを買うのは大きな挑戦だ。
その大切な古いレコードのアニセッテの部分にサインを書いてもらった。
新作のポスターの方にはバンドメンバー全員のサイン。バックは銀色。アニセッテは金色。

もう一枚は1984年発表の「Vi Kæmper For At Sejre」。初版にはジャケットと同じデザインのポスターが付属している。
このポスターにもサイン。ちなみにアニセッテ本人から「この絵、私が描いたものなのよ」。


私は40年前のフールズメイトのディスクレビューの切り抜きを見せ、彼女へ不慣れな英語で「思いの丈」をまくし立てた。
考えてみれば東洋からきた初対面のおっさんが真ん中最前列でステージガン見の後、楽屋に乗り込んで「思いの丈」をとうとうと話すのだから迷惑な話だが、言わずになんぞ帰れるものか。
アニセッテは快くポスター、LPにサインに加えハグまでしてくれた。

新作の出来といい、この日のライブの内容といい、とても引退なんてまだまだ先だろう。

アニセッテ「来年は70歳を記念してオペラハウスでライブをやりますよ」
私「それは是非見たいですね!また来れるよう頑張ります。」
アニセッテ「それもいいけど、今度は私たちが日本に行きたいですね」

果たしてそんなたことが可能なのか?

でも人生なにが起こるかわからない。
現にラグナロックのピーター・ブリンゲルソンはストックホルムでの私とのちょっとした会話で来日をしようかなと考えたってステージで言っていたじゃないか!
http://yaplog.jp/geppamen/archive/852

この日のライブを見るとなんとなく実現してしまいそうな気がしてきた。
人生、思いがけないことは起こるものなのだ。

さて、なにかサポートできることがあるだろうか?


追記
この話にはちょっとした続きがある。
日本からデンマークの片田舎へ何十年越しのあこがれを抱えてライブを観に来た日本人は物珍しがったことだろう。
帰国後、その模様はデンマークの地元新聞に掲載されたと知らせが来た。
https://www.fyens.dk/modules/mobile/article?articleid=3201750
私の写真も載っているのでアレな感じだが、このエピソードに格別の彩りが加わり、またひとつ忘れがたくなった。
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40代は第2の思春期なのだそうです。思春期に惹かれたものをもう一度ひっぱりだしてきて後生大事に整理を始める今日この頃。プログレを中心としたアナログレコード集めに人生の貴重な時間を費やすささやかな記録です。
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