Hunky Doryをめぐる謎

April 30 [Sun], 2017, 15:10
また買ってしまった、ボウイの「Hunky Dory」。これで三枚目。

前回の投稿で極めつきの一枚を購入したおかげで「打ち止め」となったタイトルのはずなのに。
まことレコード蒐集とは、かくも終わりのないものか。

このたび購入したのはこの品。

David Bowie『Hunky Dory』 UK RCA SF8244

マトリクスA面3T/B面1T。

かねてから謎の多い作品と言われているが、今回も謎めいた一枚を引き当ててしまった。
決してお安くはない金額を払ってでも購入したのは、やはりこの作品がボウイのアルバムのなかでもとりわけ好きだから。

前回ご紹介した内容と重複するが、初版とされるものの特徴は以下の通り
@ジャケットは表面ラミネート。裏面はラミネートなし。
A裏ジャケットに右上に「GEM PRODUCTION」右下に「MAINMAN」ロゴがともに無いもの
BRCAオレンジ光沢ラベル
CマトリクスはA面がマシンタイピングでAPRS 5947 3T 手書きで「BOBIL」 B面はマシンタイピングで
APRS 5948 3T 手書きで「RASPUTIN」
D歌詞カード付属
蛇足だが「MAINMAN」表記は明らかに後期プレスなのでここでは話から除外。


なぜか初版のコーティングジャケットの数が余りに少なく、市場に出るとコンディションにもよるが必ず7〜10万オーダーになってしまう。

だか、これまで持っていたものは「SAMPLE RECORD - NOT FOR SALE」のステッカーがあるのでこれでトドメを刺しているハズ。

しかし依然として疑問を感じていたのは、まずインサートについて。

初版のジャケット裏にはGEM PRODUCTIONロゴが無いのに、歌詞カードにはロゴとGEM PRODUCTION表記がある。これはミスなのか?
もしかしたらGEM PRODUCTION表記の無い歌詞カードがあるのではないか?
ないしは歌詞カードは初版には付属していなくて、あとからつけたものではないか?
(ちなみにDiscogsでは初版ラミネートジャケットには歌詞カードの写真がなく、セカンドプレス以降に歌詞カードの写真がアップされている。)
ちなみにGEM PRODUCTIONはゲイリー・グリッターやボウイ、ウェールズの「マン」などを手がけるプロダクション。外にこのロゴはレア盤として名高いWebの「i Spider」の見開き部分にも見けられる。

このたび購入したものを比較してみたところ、いずれもGEMロゴがある。
印刷色にバラツキはあるものの、いずれも版は同じものと推測できる。
歌詞カードに年代差は無さそうだ。

ちなみに1971年12月17日発売の半年後、同時進行で制作され1972年6月6日にリリースされた「The Rise and Fall of Ziggy Stardust and the Spiders from Mars」は裏ジャケットにGEMロゴがしっかり印刷されている。インナーバッグにも文字表記あり。

ここでよく言われているのは「Ziggy Stardust」のヒットでHunky Doryが再プレスされたのではないかということ。

調べてみると「Ziggy Stardust」は1972年7月にUKチャート5位、「Hunky Dory」は同年9月に3位という記録がある(ちなみに同年11月に 「Space Oddity」17位、「The Man Who Sold The World 」は26位に入っている)。

これは説得力のある説だ。

よく出回っているノン・ラミネートの「Hunky Dory」は「Ziggy Stardust」ヒット後にプレスされたものなのだろう。

続いて今回購入品のもうひとつの特徴、マトリクスについて。
初版がA面3T/B面3Tに対してA面3T/B面1TとB面が若い。
実は外にもバリエーションがあって2E/3E、2E/3Tもあるそうだが、末尾Eのマトリクスは手書きらしい。
経験的にUK盤は手書きマトがマシンタイピングの音質を上回ることは稀なのでここでは外して考える。

※記述修正
2E/3Tを所有されている方よりマシンタイピングであるとのご指摘をいただきました。
同氏の話では2E/3Tはレーベルの著作権表記が「Mainman/Chrysalis」となっていてセカンドプレス以降の特徴があり、Ziggy Stardust」と同じ時期にカッティングしたものではないかとのこと。
確かに「Ziggy Stardust」の初版マトリクスはBGBS 0864 - 1E/BGBS 0865 - 1Eと末尾が「E」ですね。
ありがとうございました。


だが、このB面1Tはマシンタイピングだ。


ではマザー/スタンパーNo.はどうか?
以下の通りである。
@初版ラミネートバージョン
A面:APRS 5947 3T A1E(修正後)F 手書きBobil
B面:APRS 5948 3T A1M 手書きRasputin
Aラミネートなし通常バージョン
A面:APRS 5947 3T A3R 手書きBobil
B面:APRS 5948 3T A1AN 手書きRasputin
B今回購入品ラミネートなし
A面:APRS 5947 3T A2 手書きBobil
B面:APRS 5948 1T A1 手書きRasputin

注目すべきはBのB面1Tにも手書きRasputinがあること。
それもやはり微妙に筆跡が違う。

いつも薄すぎて撮影の難しいBobilも写真をアップ。


「Rasputin」なんていうと当然ロシアの怪僧ラスプーチンを思い出す。ツッペリン「V」のマトリクスではないが、ボウイになんらかの神秘学志向があったのではないかと想像したくなる。
だが実際は 「Bobil」とはBob Hill、「Rasputin」とはRay Staffのことで、ともにトライデントスタジオのマスタリングエンジニアの署名である。
Ray Staffは「Rays」の名の方で比較的よく見るかける。
外に手持ちのレコードを調べたら、Elton Johnの「Honky Chateau」がそうだった。A面が「Bobil」B面が「Rasputin」。A面/B面で専門があったのかな?
「Rays」はクィーンなどでよく見るが、意外なところではバンコの「Darwin!」で見ることができる。改めて聴き直してみたくなってくる。

次に注目するのはラベルの形状。
印刷の版はいずれも同じと思われるが、
@

A

B

@Aはいずれも初版の特徴の光沢ラベル。
だがBは光沢がない。その代わりに深いDG溝がある。

続いて肝心の音質。
@はさすがの情報量、クリアさ、曇りのなさ、エコー成分の多さなどいずれも素晴らしい。ボウイの息づかいが伝わってくるようだ。
Aは@と同傾向ながらやはり細部で劣化を感じる。「孫コピー」くらいの音質。そうは言ってもマトも同じなので悪くはない。
BA,B両面ともに情報量は@にひけをとらない。生々しくその上音圧が高く張り出してくる。ただ音と音の間の部分のクリアさ、エコー成分は@には及ばない。

そこで推論だがマザー’&スタンパの世代も考え合わせると、BはAと同様セカンドプレスながら、ごく初期ロットの外注プレスなのではないか?
そこで初版をカットした時にお蔵入りになっていたB面1Tでの製造指示が出たのではなかろうか?
なにせB面にRay Staffの署名がある。
ではなぜA面3T/B面1Tが当初ボツになったのか?
クリムゾンやEL&Pの「幻のマト1」で聞く「位相がオカシイ」とかそんな様子もない。
もしかして写真の通り、スペル間違いで「Raspatin(ラスパーチン?)」と彫ってしまい「しまった!」と思ったからか?(いつものようにグチャグチャッと訂正線入れて直せばいいでしょ、笑)

興味はつきない。

思うに音質の張り出し感の差はプレスマシーンの違いではなかろうか?
よくあるマトリクスは同じでもテクスチャーラベルの方が音質がよく感じるアレだ。
(プラシーボ効果ではない、と思う。多分)

結論から言うと、BはAを上回るのは間違いない。@とは一長一短。
両方持っているのが理想だが、@は高価なのでBでもよいかもしれない。

ウワサでは1T/1Tがあるとかも聞くがそれは現時点では確かめようもない。

イエス加入直前のリック・ウェイクマンの弾くピアノは素晴らしく、それがB面収録だったら言うことはなかったのだが、それでも多少の満足感をもって「Andy Wahol」や「Queen Bitch」を聴く春の昼下がりである。
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ブロンゾさんコメントありがとうございます。
最近ラミネートジャケットもユニオンでセールでちょくちょく出てきますね。
世界の廃盤はやはり日本に集まってくるのか?
ところでテストプレス、
1S/1Sとはどういうものなんでしょうね?
しかも出品中止とは!?

昨日今日といろいろな人から教えて頂きました。

マトリクス末尾の「T」は「トライデントスタジオ」のイニシャル「T」 だとか、
「Ziggy Stardust」もRay Staffがカットしたテスト盤2T/1Tがあるとか。
http://www.popsike.com/DAVID-BOWIE-ZIGGY-STARDUST-LP-RCA-TEST-PRESSING/4756086961.html

いやそれを上回る1T/1Tもあるとか。

4枚限定のプロモプレスがあるとか
http://www.popsike.com/php/detaildata.php?itemnr=162009072150&vdesktop=1

この時点で、生半可な覚悟では踏み込めない領域だと気付きました(笑)
でも見るだけなら見てみたいものです。

by geppamen May 01 [Mon], 2017, 18:21

以前コメントさせていただきましたブロンゾと申します。

ユニオンセールにてテストプレスが出品予定でしたが、出品中止になったようです。
このマトは1S/1Sとなっています。すごく興味がありましたが残念です。

by ブロンゾ May 01 [Mon], 2017, 10:34
P R
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40代は第2の思春期なのだそうです。思春期に惹かれたものをもう一度ひっぱりだしてきて後生大事に整理を始める今日この頃。プログレを中心としたアナログレコード集めに人生の貴重な時間を費やすささやかな記録です。
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