「正しい数の数え方」はスゴイぞ!

February 08 [Mon], 2016, 22:55
国立新美術館で行われている文化庁メディア芸術祭受賞作品展内で毎日上演されている岸野雄一氏のパフォーマンス「正しい数の数え方」(エンターテインメント部門大賞受賞)を見に行って来た。

想像を超える盛況ぶりで、作品展も大変な賑わいだったが、パフォーマンス自体も1時間前に行ったにもかかわらず、座席整理券は発行5分で終了し、すでに立ち見を残すのみ。さらにはその立ち見券も私の次からの人が最後の一枚だった。

パフォーマンス終了後は滋賀県立大学人間文化学部教授の細馬教授とのトークショーも行われ、パフォーマンスを読み解く鍵、というかネタばらしを丁寧にしてくるれるというオマケ付き。

当初は自主制作映画の上映会的なものを想像していて、上映時間が1時間とあったので、やれやれ1時間立ちずくめかと少し落胆を感じたが、結果は予想を大きく上回るものだった。

あらすじは「オッペケペー節」で知られる川上音二郎が1900年のパリ万博で公演した史実になぞらえ、当時電気技術の祭典となったパリ万博が「電気の神様」の怒りを買い、観客をその能力で静止画に封じ込めるが、岸野氏扮する川上音二郎が突如現れた犬のジョンと共に封印を解く呪文を探し当て、無事解放するというもの。


主題自体は岸野氏本人もトークショーでも触れた通り「電気を大切に」とか、「人は一人ひとり皆同じではない」といった凡庸なもので、教条的なものとは言いがたい。

たが、このパフォーマンスにどうしようもなく感銘を受けてしまった。

パフォーマンスは大きくわけて、プロジェクターに映し出されるアニメーション、舞台上手に設置された液晶モニターをバックにしたポップアップ絵本と人形劇ブース、舞台下手には着ぐるみである犬のジョンが弾くアンティークな足踏みオルガンが置かれている。
進行の途中でステージ中央にいるときはバックにアニメーション、人形劇ブースに移るとそのブースにはカメラが設置されていて、この映像がスクリーンに映し出され、動きがシンクロする。


驚いた点は、パフォーマンスの「キモ」が「客いじり」であること。
違う言い方をすると「観客を巻き込んで参加させる」ことにある。
あらかじめストーリーが用意されているので、作品自体は着地点が用意されているのだが、それでもストーリーへの参加感がある。
いや、それより驚いたのは「客いじり」のアドリブに、あらかじめプログラムされているであろうアニメーションやサウンドが柔軟に対応する点だ。

ステージ下手にオペレーターが構えていて、ステージを注視しながらストップ&ゴーを繰り返しているのだが、そのストップ&ゴーのやりとりが絶妙だ。
例えばディズニーランドのシンデレラ城ツアーや後楽園の戦隊ショーにもその要素はあるが、見た目「ヘナチョコ」ながらハイテク極まるグラフィックとの融合は画期的。
もちろんグラフィックの画力、クォリティは親しみやすさやわざと「隙」まで用意されている印象だ。
トークショーで語られたのはステージと観客の間にある一線を飛び越えてパフォーマーが観客側にやってきて行われるやりとりがストーリーに影響を及ぼす点だったが、私が見ていて強く感じたのは、これは「壮大な紙芝居」なのではないか?ということだ。

例えばポップアップ絵本が小道具として使われていたり、語り手川上音二郎こと岸野雄一が観客と絡んでストーリーに影響を加えたり、このパフォーマンスがそもそも子供向けを想定して作られていたりとか、私には「壮大な仕掛け付き紙芝居」のように感じられた。


デジタルなのにアナログっぽい。
ハイテクなのに素朴。
プログラミングなのに柔軟。
緻密なのに突っ込みどころ満載。

着ぐるみの犬のジョンのどこか朴訥でコミカルな動きと言い知れぬ暗さ、不気味さが、幼い頃に見た着ぐるみ人形劇、ケロヨンの「木馬座」にも符号して、幼少の記憶をくすぐってくる。


岸野氏も自ら「7年殺し」と評するように、年月を経てそれと気づくであろうギミックやアイロニーも満載で、それらにいくつ気づくかという楽しみもある。
そのネタ元が「漂流教室」だったり「いなかっぺ大将」だったり同世代としてはわくわくする。

物語の主題は従で、仕掛けの方が主。
「こんなすごい仕掛けを作ったんたよ!一緒に遊ぼうよ!」と誘われているようだ。
思わず無邪気に楽しんでしまう。

一度観ただけではわからないことが多すぎる。
なんとか期間中にもう一度行きたいものだ。

それにしてもトークショーでの事細かな解説ぶりに、「こんなに細緻にネタばらししてしまっていいの?」と思ったが、そこも含めて岸野氏なのだろう。


最後に川上音二郎こと岸野氏が来ていた裃だが、家紋はレコード。
背中の家紋がロジャー・ディーンデザインのヴァージン・カラー・ドラゴン・レーベルがモチーフではないかと思っていたら、これまたトークショーでそのことに触れてくれた。
曰く、パリの街で出会ったこれからフリーマーケットに出店しようとした人の持ちものの中から見つけたものだそうで、岸野氏はトークショーでは「ホークウィンドのレコード」と言っていたが、至近距離で見たら、Slapp Happy / Henry Cow の「Desperate Straights」であることに気づいた、
私が最も愛するレコードのうちの一枚が岸野氏の背中の裃の家紋になっていることがうれしかった。


蛇足となるかもしれないが、本ブログで使用の写真はパフォーマンス時に岸野氏より「撮影OK」「拡散OK」との言葉をいただいたことを拠り所として掲載させていただいていることをおことわりしておく。
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40代は第2の思春期なのだそうです。思春期に惹かれたものをもう一度ひっぱりだしてきて後生大事に整理を始める今日この頃。プログレを中心としたアナログレコード集めに人生の貴重な時間を費やすささやかな記録です。
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