スロヴェニアからの類い希なる悪意

October 13 [Mon], 2014, 12:15
今日これを書いている時点で台風が接近中。
自宅にこもっているので、久々にブログをアップすることにする。


BULDOŽER『PLJUNI ISTINI U OČI 』 YUGOLSLAVIA ALTA ATLP 109

旧ユーゴ、現スロヴェニアのバンド「ブルドーザー」。
2作目の「ZABRANJENO PLAKATIRATI」(http://yaplog.jp/geppamen/archive/150参照)購入から6年。念願のファーストアルバムのオリジナル盤を入手した。
本作で出回っているものの多くは2作目のHelidonレーベルプレスだが、これは80年代のセカンドプレス。
ファーストプレスのALTA盤はなかなか見かけない。

運良く見つかってもコンディション不良が多く、特にジャケットの状態が良いものにはまずお目にかかれない。紙質が柔らかく、さらにブックレット仕様になっている為、中綴じ部分に経年のダメージを受けやすく、本品も写真の通り、残念ながらセロテープ補修が施されている。
本作においては、ジャケットも作品を語る上で重要なので残念ではあるが、レコードのコンディションが旧ユーゴプレスしては大変良好なので、永年の宿願を果たすべく購入を決断した。

初めて本作を聴いて10数年。
以来、ずっと欲しかった一枚。

どれくらい欲しかったかと言うと、私的「世界のロック歴代10枚」に入れたいくらい好きなアルバムなのだ。

まず、バンド名が「ブルドーザー」。これはもうバンド名だけでキテる。
ブルースを基調とした、ギター、ベース、ドラム、オルガンによる演奏なのだが、これほど異端感のある音楽は珍しい。
いわく言いがたいヘヴィでブルージィなリズムセクションは時折変拍子、不協和音をまじえ、「エグい」という形容がぴったりのヴォーカル。

何に近いかと言うと、初期ザッパやビーフハート、あるいはRIO、レコメンデッド系に近いのだが、全体を覆う「ユーモア」というより「嫌がらせ感」がとにかく形容しがたい。
音楽、ジャケットから溢れてくる「悪意」が凄いのだ。

ジャケットは8Pのブックレットになっているが、ジャケットもかなりキテる。
これはメンバー写真だろうか?
ハンドボールチームか?左端の背番号21に注目!
男におっぱいをあげているのはザッパか?と思いきやザッパソックリのリーダーとおぼしきメンバー

「これでもくらえ」とあざ笑うメンバーたちの顔が浮かんでくる。
一部のヘヴィメタルやパンクロックも相当に意図的な悪意があるが、ブルドーザーのそれはザッパやビーフハート的な悪意に辺境テイストが加わり、独自の発展を遂げた異形の音楽だ。
例えばマグマなどは極めて異端度の高い音楽であろうが、ブルドーザーも決して引けはとらないだろう。

演っている内容の割に演奏技術が高いのも特徴だが、かと言ってマグマやザッパのように凄腕を連れて来るといった類のバンドではない。
バンドとしてよく熟成されていて、よくもまあこんな異端に人が集ったものだとつくづく感心する。

本作は彼らのファーストだが、彼らの全作品のうち最も刺激的で異端的、悪く言えばもっとも悪ふざけがすぎるアルバム。

トータルアルバムなのか、全編切れ間無く進行されていて、時折寸劇的なやとりとも入る。
オルガンの響きが効果的なところがビーフハートにないところで、ちょっとピンク・フロイドを思わせる部分もある。また音楽を使ったブラック・ユーモアという点では、イントロで結婚行進曲のフレーズを引用するくだりなど、モンティパイソン的な要素も感じる。

ヴォーカルも、酔っ払っているのか、クスリをやっているのか、ピストルズのような悪意をこめた歌い方が目立つが、かと言って無軌道なわけではなく、キチッと計算されている。途中、「おぇっ」とえずく声なども聞こえてきたり、寸劇のシークエンスも、普通なら意味がわからないので普通なら飛ばしてしまうのに、言葉(クロアチア語か?)がわかるわけでもないわりに独特の「間」が気になってついつい聴いてしまう。

異端者達の地下パーティー的なフィーリングという点ではドイツのファウストにも通じるが、ブルドーザーを、聴いてしまうとファウストはお高くとまった感さえ受けてしまう。
いくら民族的な違いがあるとは言っても、スロヴェニア人から見てもこれは明らかに「変人集団による変態音楽」だったに違いない。
本作が発表されたのは1975年。
スロヴェニアがユーゴスラビアの一部だったころ、ティトー大統領の下、いわゆる「鉄のカーテン」の向こうとは少し違う道を歩んでいたとはいえ、いわゆる共産圏だったころだ。

共産圏の異端ということでは収監経験もあるチェコのプラスティック・ピープルがすぐ思いつく。
プラスティック・ピープルはそのグループ名、ブルドーザーはその音楽性からフランク・ザッパの影響を強く受けているので、ブルドーザーとはその点では共通している。
乱暴ながら両者を比較してみると、プラスティック・ピープルはその政治的ポリシーに問題があったのだろう。結局自国でのリリースは叶わず、フランスSCOPAからのリリース作品を聞く限り、体制へのルサンチマンは凄まじいのものの、いかんせん音楽的に見るべきものは多くはないように感じる。
対してブルドーザーは永らくバンドを継続し、ボルテージは落ちていくものの、多くの作品をリリース、テクニックもしっかりしていて、音楽的に見るべきもの多い。
言葉の意味はわからなくとも、そのひねくれ切った音楽性に見合う悪趣味なジャケットからして、体制側に寄り添ったものではないのは明らかだ。なのに堕落だの反体制だののレッテルを貼られることは容易に想像できたのに、かたや投獄、亡命、かたや多くの作品をリリース。この違いはなんだろう。
これはティトー政権が西側ともソヴィエト連邦を中心とすろ共産圏とは距離を置く市場原理も導入した独自の社会主義路線をとっていたことことに起因いているだろう。
結果として、後のティトー没後のユーゴ内戦を招いたわけだが、まさしくブルドーザーの音楽はそんな独特の社会背景が生んだ畸形音楽ということができるだろう。

私の好きな映画に「グッバイ、レーニン! 」があるが、ベルリンの壁崩壊十数年にして、東欧諸国の当時の文化が今更のようにじわじわ気になりだした。

というわけで今回は、最近「中央アジアの北朝鮮」ことトルクメニスタンを代表するバンド「GUNESH ENSEMNBLE」のLPも手にいれたので、近いうちに記事にするという予告で筆を置くこととする。

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40代は第2の思春期なのだそうです。思春期に惹かれたものをもう一度ひっぱりだしてきて後生大事に整理を始める今日この頃。プログレを中心としたアナログレコード集めに人生の貴重な時間を費やすささやかな記録です。
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