マグマの代表作で最も音が良いのは?

February 02 [Sun], 2014, 13:00
Magma『Mekanïk Destruktïw Kommandöh』 FRANCE VERTIGO 6499 729

マグマの三作目「Mekanïk Destruktïw Kommandöh」のフランス・ヴァーティゴ盤を購入した。

「Mekanïk Destruktïw Kommandöh」のいわゆる初版はどれか?
ヤードバーズやゴングを手がけた(悪名高き?)ジョルジオ・ゴメルスキーがプロデュースした世界デビュー作であることを考えるとアメリカA&Mとするべきであろうが、いかんせん音がよろしくない。
本作を挟んでセカンドアルバム「1001 Centigrade」とリーダーであるクリスチャン・ヴァンデのソロ名義作品「トリスタンとイゾルテ」が比較的素直に録れているのに対し、本作はかなりいじっていて、個人的には「やりすぎ」感が否めない。
(余談だが4作目の「Kohntarkosz」と不朽の名作「Magma Live」を挟み「Üdü Ẁüdü」も同じく音が悪い。)
グループコンセプトやその音楽性から「キワモノ」として売りだそうとして過剰気味にプロデュースしたというのはうがった味方だろうか?
だが同時に本作は楽曲としては紛れもなくマグマの「クラシック」であり、代表曲であることに異論のあるファンはいないだろう。それだけにファンならば本作を、いやすべての作品をより良い音で聴きたいはず。

「Mekanïk Destruktïw Kommandöh」は一般にはフランス・ヴァーティゴ盤が最も「マシ」な音だと言われている。
代表的な例では、レッド・ツェッペリンの初期作品は契約関係からUSプレスが初版であることは明らかだが、その音質で母国UK盤を愛する人が多い。マグマもかなりレベルは落ちるが同じパターンかもしれない。

そのフランス盤も何年か前にオークションサイトのおかけで、そのヴァーティゴ盤にも少なくとま明らかに2種類のプレスが存在することを知った。
今回入手のものは、その二種のうち「レアな方」のこちらである。

そして今まで所持していた、比較的見かける方がこちら。

同じヴァーティゴスペースシップラベルでも「黒文字」と「銀文字」、リムの色も異なる。
銀文字バージョンはUK盤やドイツ盤でよくみかける。
黒文字バージョンはフランス以外ではあまりみかけないような。。。
しかるに著作権表示が「SACEM」なのでフランス盤だ。

盤は違ってもジャケットは同じ、というのはよくある話だが、本品はジャケットも微妙に異なる。
まず黒と茶の二色刷りだが、見た感じ茶の色あいが違う。
銀文字の方が赤みが少なく、ニュアンス的に「金」に近い(とはいってもブロンズパウダーインキではないので「茶」であることに変わりない)。

さらに細かく見て行くと背表紙。

黒文字バージョンの方は中央部分に「1974 A&M Record Inc」の表記がある。これはA&Mが原盤権を持っていることを表記しているのだろう。
だが銀文字バージョンの方は無し。

さらには裏ジャケット。

黒文字バージョンの左下に恐らく印刷会社を示すと思われるマークがあるが、銀文字バージョンには摩滅していて判読困難だが少なくともマークは無く文字表記のみ。


少なくもジャケットは製造時のバラツキでは無く、製造ロットが異なっていることを物語っている。

トドメは盤のマトリクスナンバーだ。
A面銀文字バージョンA面黒文字バージョンB面銀文字バージョンB面黒文字バージョン
A面は黒文字バージョン恐らく同じマトリクスながら枝番と思われるのが付いている。
対して銀文字バージョンは枝番無し。

やはり盤、ジャケットともに少なくとも製造が違うことになる。

続いて音質。
これは高域の自然さ、ドラムなベースのクリアさ、各楽器の分離の良さ、ヴォーカルが抜けて前に出てくる感じなど、トータルで銀文字バージョンに軍配を上げたい。

以上を踏まえての推論。
「銀文字バージョンはフランス盤のごく初期プレスである」

参考までに1973年発表の「Mekanïk Destruktïw Kommandöh」のカタログNo.が6499 729。
同じく1973年発表のフランス・ヴァーティゴより発売されたZAOのファースト「Z=7L」のカタログNo.が6499 738で同じく黒文字パターン。
手元にないがヴァンゲリスの「Earth」のフランス盤が6499 693をググってみたところ、なんだかヴァーティゴの真っ黒のスペースシップラベルが出てきた。
さらにはマグマの次作「Köhntarkösz ‎」(UK A&M原盤)のフランス・ヴァーティゴ盤のカタログNo.が6325 750と番号が逆行していて、デザインは黒文字パターン。

ヴァーティゴ、謎多し。
その名のとおり目眩がしそうだ。

果たして銀文字バージョン は、実はマグマをがA&M契約前にひっそりと出た正真正銘の初期盤なのか、それとも単に製造ラインが複数あり、そのうちの一つでしかなかったのか。
今と間なって想像するしかないが、それでもこれまで聴いて来た「Mekanïk Destruktïw Kommandöh 」よりはるかに良い音で、少し感激。
思い起こせば私が最初の聴いた「Mekanïk Destruktïw Kommandöh」は確かフランス・セルロイド盤だった。
後になって知ったが、「セルロイド・レーベル」からの再発は無許可の海賊版であったそうで、録音がヘン+音質が悪いと、いいところが無かった。
「Köhntarkösz」はフランスLTM盤だった。こちらもその内容に驚いき、大変な感銘を受けたが、ハッキリ言って音質は冴えないものだった。
「Magma Live」「Üdü Ẁüdü」はアメリカのトマト・レーベルからのリイシューだった。こちらもオリジナルに比べればマスターが孫コピー以下よジェネレーションであるが想像できる残念な音質だった。
「Magma Live」はオリジナルであるフランス・ユートピア盤は素晴らしい音質であるものの、「Üdü Ẁüdü」も録音がいいとは言えない。

マグマの黄金期である1973年〜1976年の作品がもう少しよい録音だったらよかったら。。と考えることがある。
英米に比べロック後進国だったフランスで生まれ、コバイア星からきたコバイア星人を名乗り独自の言語で歌うなど世にも奇天烈なコンセプトと世界でも類を見ない特殊な音楽をひっさげ世界に打って出ようとした時代だ。
メンバーの数の多く、メンバーチェンジも頻繁に行っていたし、クリスチャン・ヴァンデがグループのすべてを本当に把握することは難しかったことだろう。
いかに大いなる情熱を持ち続けていたとしても、難しい問題も多かったことだろう。
レコードの音質はもちろん、録音の工程すべてを管理できなくてもおかしくなかろう。
マグマの音楽に最初に触れた時から比べ、レコードの音質的にも再生環境的にもはるかによくなった今、当時彼らの置かれた状況を想像しつつ、改めて彼らの音楽を聴くと本当に頭が下がる思いだ。

そう考えると、今の音楽産業がセールス的に行き詰まっているのは、作品が生み出されるまでの工程・環境・社会背景がどんどん簡略化されてしまったためではないかとつくづく思う。
純粋に音楽単体を作品として売るのがもはやセールス的に難しいそうだ。
広告、テレビ番組、映画、舞台、演劇、イベントと絡めてプロモーションするのが当然なのだそうだ。

実際、今やPCやタブレットを持っていれば、少し聴いただけなら鍵盤がなくとも「それなり」のものが出来るし、そのクォリティを持ってすれば、音楽単体でなく「何かと絡めて」ありきの音楽であれば十分である気もする。そして大概の音楽は聴くだけならネットで無料で聴くことができる。
音楽単体だけ単純に比較すると今の音楽の方が、ビリー・ホリディ、チャーリー・パーカー、マイルス・ディヴィスらの音楽より遙かに高度なものが多い。
最近のプログレ作品も構成力、テクニック共に過去の作品よりは遙かに緻密にして高度なものが多い。
それにもかかわらず、過去の音楽が胸を打つのに対し、今の音楽が「そう来たか!」的な愉しみ方がメインなのは、作品が生成されるまでの過程の苦心惨憺が簡略化され、音楽を「消費」する側が音楽を唯物的に評価しているからではないか。
そう思うのは私だけだろうか?

もちろん今や後戻りできる術はなく、今の時代の在り方を否定する気もない。
私も新しい価値観に根ざした音楽を作っていくべきだと思うのだが、このまま今の路線が進んでいくと私の価値観の多くを決定づけた「音楽」(「映像」も間違いなくその後を追っているだろう)の価値が相対的に下がっていくことを悲しく思うだけなのだ。

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Dear Furekaaben
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by geppamen February 23 [Thu], 2017, 14:55

Thanks for your kind reply.
It is very helpful to me.

I have three versions of MDK.
- french vertigo with silver lettering & thick rim label, 'A&M Records' on Spine.
- french vertigo with black lettering & narrow rim label, 'A&M Records' on Spine.
- UK brown A&M.
I am finding 1st press 'No A&M Records on spine' version.. It's so hard to find!
I envy you... www.

well... Furekaaben is one of my favorite band, so I'm using their name as my nickname. I'm Korean in Seoul who love progressive rock, especially Zeuhl, RIO, Canterbury sounds. I also love many Japanese groups in 60'S GS to 21C experiemntal bands... from the Jacks to Koenjihyakkei. :-)

I'm really happy to know the great blog of yours.
Have a nice day!
ありがとうございます。

by Furekaaben February 18 [Sat], 2017, 14:26

Thank you for your question.
Do you mean "matte laminated cover" version exist?
Actually I am not sure about it. I've never seen.
Both of my copies are glossy laminated cover.
I bought 2 silver lettering spaceship vertigo version, but those are glossy, of course black vertigo is also glossy.

If you get any more information, please let me know.
It is very interesting!

Anyway are you Danish psychedelic group?

by geppamen February 17 [Fri], 2017, 18:05

こんにちは。
マグマの三作目「Mekanïk Destruktïw Kommandöh」 LPに関する素晴らしい分析、ありがとうございます。

質問があります。
2つのプレスの間の表紙のラミネートはどう違うのですか?
私の目には、銀文字バージョンの表紙に光沢のないラミネートがあるようです。
私は正しい? お知らせください。再度、ありがとうございます。

(私の日本語はうまくないと申し訳ありません。 私はGoogle翻訳を使いました。)

by Furekaaben February 14 [Tue], 2017, 16:21

はっぴーまん先生。ありがとうございます。

なるほど。そう言えばレーベルは「色上質のから銀文字印刷」が初期盤というのが一般的ですね。

活版印刷は黒インクでもできるのに、アルミパウダーを含んだ銀インキを使うところがレコード産業の古きよき時代って感じです。
今では共通の4色印刷の台紙を量産してその上に活版印刷で文字追い刷りなんて不経済ですが、当時としてはそれだけ生産ロットが少なかったのでしょうか?
知る限り、フランス・ヴァーティゴの銀文字はこれしか見たことがないので、もしかしたら過渡期に英ヴァーティゴから台紙をちょこっともらってその上に追い刷りしてたりして。
(ドイツのスペースシップラベルはリムがドイツ語表記ですが、これは英語表記だし。)

いずれにせよどうやらこの銀文字が最初期プレスであることってことでうれしくなりました。



by geppamen February 03 [Mon], 2014, 0:53

印刷事情から考えれば、普通は銀文字の方が初期になります。

(1) 黒、青,赤などの色紙に活字版を銀インキで刷る。
 ↓
(2) オフセットで大量に刷った共通レーベル台紙に、活字版を銀インキで刷る。(色分解のコストが高かったから)
 ↓
(3) 分解のコストが下がってくると、文字版も含めてオフセット4色刷りになる。

という変遷が一般的です。

by はっぴーまん February 02 [Sun], 2014, 20:01
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