デヴィッド・ボウイの新作を巡るシンクロニシティ

March 17 [Sun], 2013, 22:45
珍しく新譜の紹介をひとつ。デヴィッド・ボウイ10年ぶりの新作『The Next Day』。
そして本作をめぐって私の周りで小さなシンクロニシティがあったことをご紹介する。

◆David Bowie『The Next Day』 JAP ソニーミュージックジャパン SICP-30127
本作にはCDに
輸入盤スタンダードエディション 14曲収録
輸入盤デラックスエディション 17曲収録
日本盤スタンダードエディション 15曲収録
日本盤デラックスエディション 18曲入り Blu-specCD2仕様
さらには当然iTunesなどの配信もあり
またHDtracksのサイトではハイレゾ配信もしている。
迷うところだ。

どれにすべきかと熟考した上で、結局価格的に一番お高い日本盤デラックスエディションにした。
理由は
@収録曲が一番多い。
ABlu-specCD2仕様が少し気になった。
B歌詞対訳が欲しい。
C音質的にはハイレゾ配信が良いのだろうが、やはり「もの」で欲しい。
といったところ。
よくよく私は「もの」が好きなのだなあと自己嫌悪も少々。
ジャケットは見ての通り、名作「ヒーローズ」のジャケットの上からオペークの追い刷りをかけてその上に「The Next Day」と印刷したものだ。
このジャケットが各サイトやプレス関係で発表されるや、そのデザインは見るからに昔の音楽雑誌によくあるジャケット写真が未到着で白地に「Now Printing」と印刷されていたのを想起させ、「後でジャケットが届いたら差し替えられるのかな?」と想ったほどだ。


David Bowie『Heroes』 UK RCA PL 12522
新作を聴くにあたり、ジャケットからしてどうしても「ヒーローズ」を聴き返さないわけにはいかない。
改めて聴き直してみると私にとってボウイの多くのアルバムの中でも繰り返し聴いたという点ではトップクラスの作品であることを再認識した。
もちろん、彼のほとんどのアルバムは網羅しているし、ファーストアルバム、「世界を売った男」「ハンキー・ドリー」「ジギー・スターダスト」あたりは大好きで、特に映画『ジギー・スターダスト』で見られるライブの熱狂は「なにかとてつもないことが起きている」という熱がひしひしと伝わってきて言葉にならない素晴らしさだ。
だが、私は数あるアルバムの中でもボウイが再び「ヒーローズ」をピックアップしたことを心から嬉しく思う。
このアルバムを含めた所謂ベルリン三部作を聴くにあたってはできれば、クラスター&イーノの作品、ロバート・フリップの「エクスポージャー」、イーノの「アナザー・グリーン・ワールド」「ビフォア・アンド・アフター・サイエンス」あたりとセットで聴きたい。

Brian Eno『Another Green World』 UK ISLAND ILPS9351

Brian Eno『Before And After Science』 UK POLYDOR 2302 071
特に「ヒーローズ」トップの曲「Beauty And The Beast」の冒頭で聴かれる異様な音は「アナザー・グリーン・ワールド」でイーノが弾いているギターの音を思い出す。クラフトワーク、クラスター等ジャーマン・ロックとの出会いによる化学変化、イーノのシンセ、テープ処理、フリップのフリッパートトロニクス・・・ボウイ、フリップ、イーノ等を取り巻く1977年、当時東西対立でまだ壁があったころの西ベルリンの刺激的な音楽シーンがに浮かんできて頭がクラクラしてくる。
音楽がスリリングでイノヴェーションに満ち、近未来への気概に溢れていた時代だ。
私は理想の音楽を挙げよと問われれば、数あるレコード群の中で今でもイーノの「アナザー・グリーン・ワールド」と「ビフォア・アンド・アフター・サイエンス」を挙げる。
それくらいこの時期の彼らの音楽が好きなのだ。
ベルリン三部作はボウイの作品群のなかでもチャートインという面では成功とは言いがたいが、何十年というタームで考えてみるとボウイの代表作と言われるようになったのは疑いない。
さらには作品発表後35年を経過して再びこんな形で世に再浮上するという点で、ベルリン三部作は改めて「芸術作品」であることは証明されたのだと思う。
「ヒーローズ」B-1の「V-2 Schneider」のモデルとなったフローリアン・シュナイダーが来る5月にはクラフトワークとして来日する。なんとも不思議な符号だ。

話をボウイの新作に戻そう。
音はジャケットから想像が付くとおり、ベルリン三部作、あるいはそれに続く「スケアリー・モンスターズ」に接近した音だと言っていい。
多少の緩急はあるものの、全般的に硬質なハンマービートにを基調とした冷たいタッチで、ヴォーカルもボウイならではのクールでメロディアスではなく語りかけるような歌唱だ。
印象的なメロディーはバックのリード楽器やバックコーラスにとらせるのはボウイの独特の手法だ。
聞き込むほどに深みを増してくるアルバムだ。
コマーシャリズムへ阿て、一瞬のチャートインを狙うのではなく、長く付き合いたい。
何度も聴いてそしてボウイの言いたかったことを少しずつ理解してくのがふさわしい。できればヘッドフォンステレオではなく、高品位のオーディオで自室でリラックスして聴きたい作品だ。
そうすることでボウイと対話しているような錯覚が楽しめる。
かつてのパワーやイノヴェーションは臨むべくもない。
だが、古くからのファンはもちろん、彼を知って日が浅いファンも、まるで賢者のごとく静かに語りかけてくるボウイを感じることができるのではないかと思う。
刹那のチャートアタックを狙って大量消費音楽が粗製濫造される世の中で、一瞬でも音楽の独立性と時空を越えた芸術の復権を叫んで見せたアルバム。

さて、新譜に対しでほぼ無頓着な私が、本作のレビューを発売まもなくここで書いている理由はごく個人的なものだ。

私の周りでボウイの新作をめぐる小さなシンクロニシティが昨年末から巻き起こっていて、3月13日の新作発売日にピークを迎えたことを、私自身は忘れてしまわないようにというちょっとした備忘録的意味を持たせてみた。
思えばロンドン・オリンピック閉会式にデヴィッド・ボウイが出演するというウワサがあったのは2012年夏。ボウイはもちろん、ケイト・ブッシュやピンク・フロイドらにも大きな期待が集まったが、フロイドのニック・メイスンがジェネシスのマイク・ラザフォードと共にエド・シーランのバックを務めるに止まった。
デヴィッド・ボウイはと言うと「ヒーローズ」が閉会式中に流され、却ってボウイの不在を際立たせてしまった。重病説があったので出られる状態にないのではないかという憶測さえ飛んだ。

そんな中、2012年末、偶然格安のチケットが買えたので、思い切って何年かぶりにイギリスへ行ってきた。
ごく短い旅行だったので、思い出の地を回って旅行は終わったのだが、そんな中「ジギー・スターダスト」のジャケット写真で有名な「Heddon Street」に行ってきた。前から行きたいとは思っていたのだが、なにせロンドンなのでなかなか行く機会も無く見送りつづけてきた。たまたま帰りの便がロンドンを夕方に出発する予定だったので、その日の午前に強行スケジュールで行ってきたのだ。

もはや有名な「K.WEST」の看板も電話ボックスもなく、代わりにジギー・スターダストのモニュメントがあった。観光客然と記念写真を撮って少々の満足を得た。

それから少ししてレコードコレクターズ誌から原稿投稿の依頼をいただいた。
このへんの経緯は<リンク:http://yaplog.jp/geppamen/archive/1212
>こちらの記事をご参照いただきたいが、そこをきっかけに編集部のご厚意で私の3月15日発売のレコード・コレクターズ4月号「レコード・コレクター紳士録」でとりあげていたくことをご提案いただいた。取材に来て頂くのが若い頃からよく文章を読ませて頂いていた大鷹俊一さんということで、これは名誉なことでもあり一も二も無く承諾。
わざわざ拙宅に来て頂き、とりとめもない話をきれいにまとめて頂いてとても感謝している。そのレコード・コレクターズ4月号の表紙を飾ったのがデヴィッド・ボウイの新作のジャケットだった。なんとも不思議なご縁だ。


そして極めつけはこれ。
デヴィッド・ボウイの新作の発表によせてコメント寄稿の依頼が来た。今回の話での担当者Mさん大変なデヴィッド・ボウイのファンでいらっしゃって、ボウイへの熱狂を隠さず熱っぽく語られた。私もボウイのファンだったので話が合い、しばし楽しい時間を過ごさせて頂いた。
採用されるかどうかは不確定とのことだったが、これも何かの縁だし、名誉なことなのでこれまた一も二も無く承諾させていただいた。

そしてむかえた3月13日、もったいなくも私のコメントがデヴィッド・ボウイの日本公式サイトに掲載されたのだ。
デヴィッド・ボウイ日本公式サイト http://www.davidbowie.jp


ご覧の通り、掲載されたのはレディー・ガガをはじめ各界の有名人ばかりなので、なんとも居心地がわるく、そして当然うれしくもあった、とにかく各方面から反応もいただき、お祭り状態に数日間となった。
ともあれ、この小さなシンクロニシティは取引先担当者Mさんとデヴィッド・ボウイが私にくれた贈り物と思い、一生の宝物とさせていただくことにした。


そしてそんな一週間の最後に、3月16日に銀座ソニービル!Fで期間限定で実施されているパブ・カーディナルでの催し「デヴィッド・ボウイ・カフェ」に行ってきた。

店内はボウイのアルバムジャケット、パネル、掲載雑誌・書籍がずらりと揃い、BGMももちろんボウイ一色。
ボウイと共にあった夢のような一週間を締めくくったのだった。
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40代は第2の思春期なのだそうです。思春期に惹かれたものをもう一度ひっぱりだしてきて後生大事に整理を始める今日この頃。プログレを中心としたアナログレコード集めに人生の貴重な時間を費やすささやかな記録です。
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