ニナ・ハーゲンのテストプレス

April 28 [Sun], 2019, 9:55
「平成最後の〜」に辟易しているくせに、やはりどこかで「平成最後に買うレコード」と「平成最後に聴くレコード」は気にしている自分がいる。
10連休となったゴールデンウィーク前半に買った数少ないレコードのうち、特筆すべきはこれだろう。

Nina Hagen Band『S/T』 GERMANY CBS 83136
今どきテストプレスは天井知らずの値上がり具合で、とても手が出ないのだが、「欲しい」と「なんとか買えなくもない」が揃うとやはり買ってしまう。
それがあまり需要の無いレコードだと、そもそも業者も探してくれないので、有り難く買わせていただくのが運命への礼儀というもの。

ああ。。いわれてみればこんなレコードのテストプレスも確かに存在するよね。。

白ラベルがまぶしい。

マトリックスは当然両面1。セカンドアルバムは手書きだが、ファーストはマシンタイピングだ。

TESTの刻印がうれしい!初版には当然この刻印は無いので正真正銘のテストプレス。

一般にジャケット表記はドイツ製だが、レーベル表記はオランダと言われているが、テストプレスなので当然表記は無い。
果たして本当のところはどうなんだろう?
テストプレスはドイツで、量産はオランダ、とかあるのかな?

インナースリーブの「TEST」のスタンプ。
こういう細かな「オマケ」も重要なポイント。


ドイツ盤のジャケットはラミネート。
その下は英盤、ソニーの国内盤。
チークの発色のが違う。

ジャケット裏面はこんな感じ。


国内盤と英盤のラベル。

で、音はというと。。
まず国内盤は話にならない。
レンジが狭く高域が伸びない。
マスターテープのジェネレーションの問題だろう。

英盤、悪くない。
セカンドアルバム「UNBEHAGEN」(超傑作)のことを書いたとき、このファーストは英盤で持っていたのだが、これがいかにも英盤らしい「眠い」音という印象で、ほとんど触れずに終わってしまった。
だが国内盤と比べると高域が伸びている。いささか高域を持ち上げている印象もあるが、音楽の印象から言っても悪くない。
輪郭がくっきりしていて好ましい。

だが、そんな印象もこのドイツ/オランダ盤を聴くと印象が変わる。

英盤と比べてほんの少しカッティングレベルが低いようだが、ボリュームを少し上げると個々の楽器のもはっきりとしていて、そしてなによりニナ・ハーゲンのヴォーカルの息づかいが生々しい。彼女の「振り切った」ヴォーカル、シャウトが音圧を以て迫ってくる。

特にB面の大作「Auf'm Friedhof」はほとんどプログレで、ケイト・ブッシュに比肩しうる。

やはりドイツ語のインパクトは絶大だ。

セカンドアルバムに劣らぬ名作だ。
彼女のエキセントリックな個性のせいで「キワモノ」「パンク」のレッテルが貼られてたが、テクニック的には安定していて、セカンドで顕著となるエレクトロニックな音響的部分もこの時点でかなり入っている。

英盤にはついていないインナースリーブとイラスト付き歌詞カードも付いているのがうれしい。
よく見るとドイツジャズ界の大物フルート奏者ラルフ・ノーウィ(プログレファンの間では「Lucifer's Dream」という作品が知られている)の名前も見える。

セカンドがボウイのベルリン三部作の影響がうかがえるのに対し、このファーストはとにかくこの個性を売るために全力を注いでいるのがよくわかる。

レコード会社の力の入ったプロモーションのおかげで本作は大ヒット。その結果ニナ・ハーゲンとバックバンドの間に亀裂が生じ、セカンドアルバム発表後解散してしまうのだが、この二枚でニナ・ハーゲン・バンドの歴史的役割は十分果たしたと思う。

このテストプレス、何枚くらい作ったのだろうか?
東ドイツから逃れてきて生きるのに必死だったであろうニナがその独特な個性をひっさげ世界デビューする前夜、ひょっとして彼女はこのレコードをスタジオで聴いたかな?

そして漫画家の故・中尊寺ゆつこさんとの奇しき縁について前回のブログで触れたが、彼女の聴いたのは国内盤だったのだろうかと想像を膨らませている。

悲しみのヨーロッパ

March 21 [Thu], 2019, 20:20
思いがけなくも自分にとって至高の一枚が手に入った。

Slapp Happy / Henry Cow「Desperate Straights」UK Virgin V2024
英国ヴァージン初版のテストプレス白ラベル。


言うなれば「現在の私を形成した作品」である。

英国初版はかなり前から所有していた。
テストプレスやプロモ盤があることは頭ではわかっていたが、英国初版は十分に良い音だし、このレコードのテストプレスを追い求めなんて思い浮かばなかった。

だが、カンの「モンスター・ムービー」初版(https://yaplog.jp/geppamen/archive/1479)を購入した時もそうだったが、時としてこうした「私的究極アイテム」に目の前で出会い、手にする僥倖に恵まれることがあるのだと改めて悟った。

運命と言ってしまおう。

英国初版は所謂「カラードラゴン」ラベルで、曲名は手書き風(手書きかもしれない)の書体で印刷されている。


このアルバム、英国ヴァージンからだけでも何度かプレスされていて、レーベルも知っているだけでオリジナル、レイトプレス含め3種ある。


(写真出典:Discogs)

そのいずれにもテストプレスが存在するとすれば、レイトプレスのテストである可能性もあるわけで、白レーベルだと写真を見ただけではさっぱり判別がつかない。手元に届くまでドキドキワクワクしながら待った。

本品はテストプレスなので白レーベル。白レーベルには手書きで作品名を書き込んだものが多いが、本品には何も書かれていない。

じっくり検分した結果、初版テストプレスに認定した。

ポイントは
@マトリクス
A面: V 2024 A-2U(マシンタイピング)PN/A(手書き)
B面: V 2024 B-1U(マシンタイピング)PN/B(手書き)

Aマザー/スタンパー
両面ともに1G

Bスタンパー形状


コンディションも素晴らしい。

白レーベルなのでスピンドルマークが目立つはずだが、両面ともわずがに1本すつあるのみ。盤面もピカピカでまさにニアミント。

そして音質。

これまで英国初版の音に不満はなかったが、さらにそこから薄い被膜を一枚剥がしたような鮮明さだ。

英国初版では右チャンネル側にごくわずかにあった「チリつき」も完璧に消え失せる。

聴き慣れた作品だが、改めてテストプレスの音を聞きなおすともうドーパミン出まくり。
至福の時間。
今人生が終わっても何の悔いも無いとさえ感じる。

プログレッシヴ・ロック・ムーヴメントに退潮の兆しが現れ始めた1975年、スラップ・ハッピーとヘンリー・カウのメンバーたちはこの音を聴いていただろうか?
もしかしたら、このレコードをかけていたのだろうか?
そんな想像をしながら聴いている。

このレコードのテストプレスって世界中に何枚くらいあるのだろう?
私はその限られた枚数の所有者になったわけだ。

思い起こせば高校時代。
日本ビクターの廉価国内盤シリーズで出た時、少ない小遣いをやりくりした購入した。
邦題は「悲しみのヨーロッパ」。
はじめてこのアルバムを聴いた時は「失敗した」と思った。

1曲目の「サム・クエスチョンズ・アバウト・ハッツ」の不安げな和音に続いて出てくるダグマー・クラウゼの強烈なドイツ語訛りの聴きづらい一種異様で独特なヴォーカルは、それまで聴きゃすい音楽ばかり聴いてきた私に強烈な拒否反応をもたらした。
2曲目のジ・アウルの合唱も独特すぎて何がいいたのかわからない。
5曲目の「エウロペ」も1曲目に負けず劣らず強烈だ。なんでロックにバスーン、木琴、金管が入っているのか?ダグマーのヴォーカルも聴いていて怖くなってきた。

アルバム全体が金管を使った室内楽とロックが合わさったような音響で、なんとなく教育番組のバックで流れているような雰囲気に感じた。

ファウストのファーストアルバムを聴いたのも同じ頃だったが、この二枚はなんだか「うっかり入ってはいけない部屋に入って、見てはいけない儀式を見た」ような気分になった。

それが、聴いているとだんだん馴染んでくる。
高校生の自分の血肉になっていくのを感じた。

2〜3ヶ月もすると、すっかり他の音楽が退屈に聞こえるようになってしまった。

その後次々とヘンリー・カウ、アート・ベアーズの諸作品を聴くようになり、今から思えばお金を払って「聴いてつらい思いをするレコード」ばかり聴くようになった。

立派な屈折青年の出来上がりだった。

スラップ・ハッピーの音楽を聴いたのはこのアルバムが最初で、かの奇跡的傑作「スラップ・ハッピー」(ヴァージンから出た方)を聴いたのは少し後だった。
もしあの時廉価盤シリーズで一緒に出ていた単独作品「スラップ・ハッピー」を先に聴いていたらその後の音楽観はかなり変わっていたかもしれない。

今でも時々「悲しみのヨーロッパ」を聴くことがあるが、そのたびにあの頃の自分を思い出す。今のねじ曲がった自分の原点であり、ターニングポイントとなったレコードであることは間違いない。自分の人生の中では、クリスチャン・ヴァンデの「トリスタンとイゾルテ」の国内廉価盤と並び、高校生時代に受けたファーストコンタクトでの衝撃は最大級だったと思う。

例えばノイズ系のレコードなども衝撃度はあったのだが、「悪意」が見えるぶん衝撃度は薄い。
今にして思えば、当時の自分はこのレコードから全く「悪意」が感じられなかったのだと思う。「悪意」が無いから、「異界」を覗いたような衝撃を受けたのではなかろうか。

今となっては、愛らしい楽曲ばかりだ。
今聴いても本当に素晴らしい作品だと思う。

間違いなく聴く人を選ぶけど。。。

だがしかし!

このレコードの究極にはまだ到達していない。
このレコードはごく初期にはプロモーション用として16ページのブックレットが添えられたものがあったそうだ。いまだ実物を目にしたことがない。10年以上オークションでも見ていない。
1度オークションで争ったが、敗れ去った。
下記の写真はTwitter「ランブリンボーイズ」さん(https://twitter.com/ramblinboys)からいただいたカラーコピーを使って手作りしたもの。
ああ、いつの日か欲しいなあ。


続・SHURE V-15 TYPE Wと回転シェル

March 10 [Sun], 2019, 14:20
昨年10月真空管オーディオフェアにてラジオ技術社頒布の「回転シェル」を購入した。


それまでは韓国NASOTEC製のシェルが左右に動く「スウィングシェル」を使っていたが、音質面で絶大な効果があり、しばらく満足して使っていた。

(NASOTEC製)

ところが使っているうちに音質とセッティングが反比例の関係にあることに気づいた。針圧やオーバーハングをのクリティカルにセットすればするほど音が向上していくことを発見し、ほどなくセッティングにハマってしまう状態となった。

昔のレコードはそもそも粗製乱造ともいうべきもので、レコードの厚さやカッティングの溝の深さの幅はあまりにも大きい。そんなレコードの最大公約数的セッティングを探しだすことに疲れた私は、そもそも「水平可動シェル」に最初に興味をもつきっかけとなったラジオ技術社製の「回転シェル」を試してみたくなったのだ。

ところがやっかいなことにラジオ技術社製「回転シェル」はそう簡単に市場で売っているものではない。

ラジオ技術社が時々思い出したように少量製作し、それを通信販売で頒布するというスタイルで、積極的に告知することもない。
かくて私のような不熱心なユーザーにとってはラジオ技術社が直接物販をするイベント会場でしか出会ない「幻の一品」となってしまった。

スウィングシェルを購入したのが2016年末。
2017年10月の真空管オーディオフェア会場のラジオ技術社ブースでは「回転シェル」は販売していなかった。
さらに待つこと1年。
2018年10月真空管オーディオフェアラジオ技術社ブースで発見。
もちろんお安くはない買い物だったが、この機会を逃しては次のチャンスはなかなか来ない。即断即決で購入して持ち帰った。


木箱に入っている。もはや「工芸品」。

カートリッジの左右可動部分がNASOTECは精密ベアリングだったのに対し、ラジオ技術性が針状の1点で支える方式。この点だけだとどちらが優れているとは言えない。
ラジオ技術社製が優れていると感じられる点はカートリッジの針先と可動部分を垂直上下に並べてセッティングできる点だ。
この方がモーメントの発生がなく、したがってクリティカルなセッティングに悩むこともないはずだ。


(NASOTEC製)


(ラジオ技術社製)



実際に装着してプレイしてみてすぐわかった。
NASOTEC製は非常にセンシティブでレコードによっては針飛びしてしまうものがあったが、ラジオ技術製のセッティングはそんなにクリティカルではなく、針飛びも格段に減った(というかゼロになった)。

だがひとつ決定的に困った点が。

それはヘッドシェルの構造上、「高さ」が必要なことだ。
おかげでプレーヤーのカバーが閉まらない。


プレイするときはあけているから良いとして、プレイしない時は蓋がしまらないのは困る。仕方ないのでホームセンターでネジを買ってきてプレーヤーのカバーに「ゲタを履かせてみた」らうまくおさまった。やれやれ一安心。万人におすすめできるものとは言い難い。

肝心の音質はどうか?

これは好き嫌いの問題も入ってくるだろう。

接点が針かベアリングかという部分もあるだろうし、支点の位置による差も大きい。

ともに一般の固定式のヘッドシェルより音質面で優れいているのは明白だが、NASOTECとラジオ技術の差ということでは、ダイナミックでスピード感があるのがNASOTEC、安定とやや情報量がありそうなのはラジオ技術社製といったところだろうか?

支点の力学的の位置の正さとセッティングの悩ましさから解放される2点において現在はラジオ技術社製を常用している。

ちょっと普通のシェルには戻れないかな。。。


P R
プロフィール
  • プロフィール画像
  • ニックネーム:geppamen
  • 性別:男性
  • 誕生日:11月19日
  • 血液型:O型
  • 現住所:東京都
  • 職業:会社員
  • 趣味:
    ・音楽鑑賞
    ・レコード蒐集
    ・自作オーディオ
読者になる
40代は第2の思春期なのだそうです。思春期に惹かれたものをもう一度ひっぱりだしてきて後生大事に整理を始める今日この頃。プログレを中心としたアナログレコード集めに人生の貴重な時間を費やすささやかな記録です。
geppamenをフォローしましょう

2019年04月
« 前の月  |  次の月 »
1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30
最新コメント
ブロンゾ
» PFM「Per Un Amico」の裏ジャケクレジット (2018年05月10日)
geppamen
» PFM「Per Un Amico」の裏ジャケクレジット (2018年05月10日)
ブロンゾ
» PFM「Per Un Amico」の裏ジャケクレジット (2018年05月10日)
Keiji Ashizawa
» 私のアンソニー・ムーア考 (2017年10月21日)
geppamen
» Hunky Doryをめぐる謎 (2017年05月01日)
ブロンゾ
» Hunky Doryをめぐる謎 (2017年05月01日)
geppamen
» マグマの代表作で最も音が良いのは? (2017年02月23日)
Furekaaben
» マグマの代表作で最も音が良いのは? (2017年02月18日)
geppamen
» マグマの代表作で最も音が良いのは? (2017年02月17日)
Furekaaben
» マグマの代表作で最も音が良いのは? (2017年02月14日)
https://yaplog.jp/geppamen/index1_0.rdf