マト2/2の宮殿

September 30 [Sun], 2018, 8:02
えっ?今さら?というレコードをひとつ。


King Crimson『In The Court Of The Crimson King (An Observation By King Crimson)』 UK ISLAND ILPS9111


すべてのプログレッシヴ・ロックの原点と言っていいキング・クリムゾンのデビュー作のファーストプレスは、あまりにも名盤すぎて研究が進み、もはやすべての謎は解明されているのではないかとさえ思う。
そんな名盤に本ブログごときで新事実が出るわけはなく、「ゆるめの比較試聴」に終始する。

市場価格もすっかりこなれ、高値安定。「掘り出しもの」はほぼ出てこなくなった。
私から見て本作は、高いわ、コンディションがいいものにはお目にかかれないわ、そして秘かに「そこまで好きじゃない」わで、この歴史的名盤の初版への購入意欲がすっかり薄れていた。

それがここへ来てそこそこのお値段で(いや十分に高いが)、そこそこのコンディションの「宮殿マト2/2」をようやく購入した。
今月最大の出費。
おまけに勢いで年末の来日チケット(これも高い!)まで買ってしまい、私の今年の「クリムゾン係数」は過去の人生で最大となってしまった。やれやれだ。
プログレのオリジナル盤を集めているものにとっては、いつかは通らねばならないレコードだし、それなりの金額を払ったので、「持っている価値アリ」と思えるものだといいな。
(いや、完全に音楽に対する価値観が間違っているのは重々自覚している。)
「投機対象」になってしまうと悲しいな。

というわけで、我が家にある本作を聞き比べてみよう。



@マトリックスA2/B2(今回購入のもの)
ILPS 9111 A▽2 1 4 B//2 1 5


AマトリックスA2/B3(少しだけ後プレス)
ILPS 9111 A▽2 1 2 1 B//3 1 1 3


BマトリックスA2/B4(Aよりさらに後プレス)
ILPS 9111 A▽2 1 2 4 B//4 1 1 4

C40周年記念BOX内DVD-Audio(スティーブン・ウィルソン・リマスター)2chバージョンリッピングデータ
24bit48KHz

D40周年記念BOX内マトA2/B2盤起こしCDのリッピングデータ
16bit44.1KHz

マト1/1は確かに存在する。
しかるに実際に聴いたわけではないが音質がよくない(位相がオカシイそうだ)とのことで、定説通りマト2/2を「初版」とさせてもらう。40周年記念BOXでもマト2/2の盤起こしCDを入れるくらいだからこれで良いはず。
ちなみにこのマトリックスA2/B2、目視ではA▽2 1 4 B//2 1 5以外は存在が確認されていないらしい。
だから「こちらの方がスタンパーが若い」と悩まなくても良いのだそうだ。
諸説あるが、これは輸出仕様ではないかという人もいる。
ピンクiのなかでも量が少ないし「ザラ紙ラベル」なので、「外注プレス」という可能性もあるかも。

前述の通り「そこまで好きじゃない」作品のため、これまでじっくりつきあったことの無いアルバムだった。
2004年のオリジナルマスターテープ発見は、それまでセカンドプレス以降の音が非常に貧相だったので大したトピックだったが、CD規格に不満のあった私には正直期待外れで、5.1chが収められた2009年の40周年記念BOXこそが「これで打ち止め」だった。
2009年ミックスは毀誉褒貶あったものの、当時私が自宅で聴いた条件下では最も好ましかった。
A2/B2盤起こしもよかったが、まず16bit44.1KHzであった点がひっかった。
2009年Mixはオリジナルマスターに対して前に出る音とメロトロンなど後ろに引っ込む音のメリハリが効いていた。さらには低域が増強されHi-fi化していて、本作に思い入れの少ない私は「ああ、これでいいじゃないか」と感じた。
その時点で既にアナログのマト2/3、2/4も持っていたが、それらと比べてもお互い長所短所あるものの「2009年Mixでいいや」と考えていた。

早いものであれから10年近く。
我が家のオーディオもアンプにジワジワと改良を加えて音質を改良。
アナログは「スウィングシェル」の導入でかなり音質向上。
そんなところへ「宮殿マト2/2」比較試聴である。

まず結論から言うと。。

@>A>C>D>B

の順番。

@のマト2/2がベスト。
現時点で我が家のオーディオの音質はあきらかにアナログに分がある。
加えて@は高域の伸びが素晴らしい。低域は少しだけ貧相で怪しい部分もあるが、低域を遙かに補う中高域だ。
圧倒的情報量。美しいエコー成分。
これはいかにリマスターが優れいていようと、我が家のデジタルオーディオ環境では無理だ。
高い買い物なので、「脳内補正」が入ったか?
いや、やはり良い物は良い。
持っておいて悪くない。一度は初版を手にして聴いておきたい名品だった。
もう少し早く聴くべきだったかもしれないが、やはり今聴くことに意味があったのだと考えよう。

Aも悪くない。
高域の伸びはAと遜色ない。さすがにB面は@には叶わない。
若干エコー成分がAに比べ落ちるが、お値段を考えるとマト2/3で手を打つという考え方もあるべきだ。

Bは@、Aに比べるとかなり落ちる。
高域が伸びず、空間性が大きく後退。致し方なし。

Dはオフィシャルが@の盤質のよいものを選んでつなぎ合わせでアナログノイズを除去したものだ。
理屈の上では@と遜色が無いはず。確かに高域の伸びはその片鱗を感じさせる。
がやはり16bit44.1KHzの空間性は今ひとつ。スピーカーから音像が離れてくれない。

Cは位相がキレイなので奥行き感を感じる。
加えて高域、低域が補強され、コンプレッサーが効いたベース、ドラムが前に出てくる。
メロトロンの音色が濃くエコー成分は@に劣るが、「宮殿」の現代解釈としては積極的に評価したい。
もう少し我が家のデジタルオーディオ環境が進歩したらAはもちろん@も凌駕する可能性もある。
PCMじゃなくてDSDだったらという思いもある。
私のスティーブン・ウィルソンMixへの評価は依然として高い。
だが現時点では@には叶わない。
残念ながら差がある。

結論的にはマト2/2の購入を後悔する結果にならずにすんで良かった。

私の人生で「宮殿」を初めて聴いたのは高2の時でUSアトランティック盤だったと思う。
その時の印象は、まず「スキツォイド・マン」のヴォーカルのディストーションに驚いた。
「スキツォイド・マン」はカッコイイけどインパクトが強すぎたか、他の曲はイマイチだなという印象だった。
特に引っかかったのはドラムが全体のサウンドから浮き上がっているような印象を受けたこと。
オンマイクでデッドニングされたドラム。
高校生の私の耳ではポップ・グループのセカンドアルバムのドラムと似ているなぁという印象だった。
アグレッシヴな曲調の「スキツォイド・マン」には良いが、他の曲には合ってないような。
ドラムの音は大きいが「部屋感」がないので、オフマイク録音の好きな私には、なんとなく聴いていて以居心地悪く感じられた。
あと「宮殿」のバックコーラスが内山田洋とクールファイブみたいだなってこと。

ところがこのマト2/2を聴いていて「ああ、確かに名作だなぁ」と今さらながら実感している。
やはり名盤とオーディオ(音質)は切ってもきれない関係にあるのだと再確認する結果となったのであった。

東京サウンド Valve 300 SE Part 3

August 10 [Fri], 2018, 19:45
しばらくお休みしていたが夏休みに入ったので、東京サウンド Valve 300 SEの修理を再開。
先月初めに途中まで実態配線を睨みながらテスター片手に回路図を書いてみたが、謎の「Hojun」という音質調整回路の部分を積み残し課題としておいたが、ようやく片付けた。




それにしても実物見ながら回路図を引くのは本当に疲れる。。
セレクタ部分が小さくて配線がゴチャゴチャしているので一日かかってしまった。

書き終わったところで再度WEBを検索してみたら、出力段部分についてのみ記述を発見した。
どうやらP.A.T(Positive Alternating Turn)回路と呼ぶらしい。
曰く
「ビーム五極管を単にプッシュプルで動作させただけでは出力の増大は図れても音楽の自然な美しさを再現することが困難でしたが、東京サウンドではP.A.T回路によってパワーとシングル並の自然な美しさを両立させています。」
そんなにうまくいくわけねえだろ。

名前からしてポジティブフィードバックの一種である模様。
私が書いた回路図とほぼ同じだったので、「回路図起こし」の力に少し自信がついた。




回路や内部構造を見て、オーディオ用真空管アンプならあまりやらないであろう設計思想をここそこに感じたが、一般に商品の長期安定性からあまり使わないポジティブフィードバックを使うところにギターアンプ屋さんらしさが出ていると言うべきか。

さすがグヤトーンさん。

果たして残りの夏休みでオリジナル回路の音を再生できるか?

東京サウンド Valve 300 SE Part 2

July 08 [Sun], 2018, 9:56
先週引き続き東京サウンド Valve 300 SE修理レポート。

メーカーについてもアンプについてもさほど知識が無かったが、記事をアップ後Facebeookで色々情報をいただいた。
メーカーの「東京サウンド」の前身はギターアンプで有名な「グヤトーン」なのだそうだ。
よく見ると全面パネルのボリュームやセレクターツマミは独特の形をしていて、それはギターのテレキャスターを意識しているのだそうだ。
予備知識を入れて改めて見ると色々興味深い。
(こちらを参照)

オリジナルのアンプに興味が出てきたので、劣化部品を交換しての修理にも挑戦してみようと、実体配線とテスターをにらめっこしながら回路図を辿ってみた。



いやいや、フォノイコが無いとはいえ、実装品から回路図を起こすのは大変だ。
人が考えたものを実体配線を見ながらの作業。
できれば悪くない部分はいじらずに修理したかったが、配線の一部を切断しないとプリント基板の裏側を見ることができず、作業効率が悪すぎる。

ということで、配線を切断し修理長期化決定。。。

写真右にある銀色の四角いものはチョーク。
B電圧は500Vを超える高電圧。1KVを超える高電圧が必要ない送信管ほどではないが、6L6GCをフルスイングするために高電圧の設計だ。
美観を考えてか、ケミカルコンデンサーはほとんどチューブラー型でシャーシ上から見えないようにしている。
ちなみに目立つ赤い電線はヒーター線。
段間コンデンサーはASCの0.47μFのフィルムコンを使ってる。
ただし部品で高級品を使っているのはここだけ。
信号部分は一般的はカーボン抵抗。
ボリュームのごく一般的なもの。
価格コムの掲示板で本アンプの部品を高級品に交換する記事を書いておられる方がいらっしゃるが、本ブログでは回路まで変更する予定なので、趣旨は違ってくることになるだろう。

12AT7 - 12AT7 - 6L6GCプッシュプルという構成だが、とりあえず出力管部分とその一歩前の位相反転段まで書いてみた。



回路の特徴は
・6L6GCプッシュプルは固定バイアス。
・位相反転回路はカソード結合。
・初段から位相反転段は直結。
・6L6GCは普通のビーム管接続ではなく、プレートから反対側のスクリーングリッドへ3.3kΩの抵抗を介して接続していて、さらにはB電源へも470Ωを介して繋がっている。

というものだった。
「Hojun」と称する回路は初段12AT7周辺にまつわるものなのでまた次回。

昨今の真空管アンプのほとんどが部品寿命を考慮して自己バイアス回路が圧倒的多数の中、固定バイアス回路採用というのが興味深い。
ここはギターアンプメーカーのノウハウなのか?
あとはやはりプレートから反対側のスクリーングリッドへ返してる点だろう。
どのような効果があるのか?

部品劣化による故障だとするとやはりケミカルコンデンサーの寿命か?

最終的には固定バイアスではなく自己バイアスに変更する予定だが、オリジナル回路での部品交換修理をするかどうかは次回以降に考えることとし、疲れたので今日はここまで。
P R
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40代は第2の思春期なのだそうです。思春期に惹かれたものをもう一度ひっぱりだしてきて後生大事に整理を始める今日この頃。プログレを中心としたアナログレコード集めに人生の貴重な時間を費やすささやかな記録です。
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