小説版・和風!オズの魔法使い(5)

2008年09月26日(金) 20時20分
『和風!オズの魔法使い』


1・3「東の鬼女」


真っ黒な視界の中、唯一見える光…いや、一つではない。
二つ。
二つのあやしく輝く目がなよ竹をとらえて離さない。
その目に射抜かれたように動けない−。

真っ黒な世界の中にいるなよ竹だが、その世界の外で何が起こりはじめているかは不思議と分かった。
−あ、こいつ右手をあげた。爪であたしを切り裂くつもりだ。へー、死ぬ間際ってこんな感じなのか−
驚くほどゆっくりと動くな、となよ竹は思った。
いや
これが死ぬ間際なんだ、となよ竹は思い直した。
あやかしの女の爪が落ちてくる。
もうすぐ黒い世界を裂いて落ちてくる。
くる−。
く…。

「わん!!!!!」

−!−

刹那!
なよ竹は、はっと気づきとっさに身を転がした。
ごろごろと漆黒の世界から転がり出る。

何年も見なかった。
そう思えるくらい日の光が懐かしい気がした。
風が心地よい。
胸に手を置く。
生きている。

「ありがとう、トト」

声の主は腕の中で誇らしげにはなをならす。
しかし、その誇らしげな顔はすぐに歪む。
その表情に何かを感じたか、それとも心地よかった風が逃げるように去っていったからかとっさになよ竹は身をかがめる。

ひゅっ

なよ竹の頭上を生ぬるい風が通りすぎる。

−前!−

なよ竹ははねるように前へ跳ぶ。

がっ…!

振り返れば、そこには二つの目。
そして、漆黒の髪が垂れ落ちる先には大きな穴が空いている。
焦げ茶の土がこびりついた爪を女は愛おしそうになめる。

なよ竹は穴が空かずにすんだ背に冷たいものが落ちるのを感じた。

−逃げる。−

なよ竹はかけだそうとした。
しかし、頭の奧から声が響く。

−どこに?−

−え?−

−どこに?−

−だれ?−

−どこに?−

−うるさい−

−どこにあなたのいくところがあるの?−

−うるさい−

−ねえ、教えて。どこに?−

−うるさい−

−あなたのいくところなんてない−

−うるさい−

−かえるところなんてない−

−うるさい−

−どうしてみんな、し−

「うるさい!」

思わず叫んだ。
そして、気が付く。
目の前にあの二つの目がないことに。
生ぬるい風が吹いていないことを。
大きくため息を落とす。

落とした息が足下で黒く大きく広がっていった。

「…え?」

上を向く。
時がゆっくりと流れる。
女の唾液にまみれた爪が落ちてくる。

−あ〜あ−

もう一度ため息を落とす。

影が広がる。
そして、
横から跳んできた小さな影とくっつく。
横から跳んできた小さな影とはなれる。

「…え?」

なよ竹のはるか前に落ちた大きな影は大きな悲鳴をあげる。
なよ竹のすぐ前に落ちた小さな影は小さくガッツポーズをする。

「…誰?」

小さな影が振り向く。
そこには、真っ黒な顔をした小男が真っ白な歯を見せながら笑って言った。

「おらだよ。」

「…」

「…」

「え…誰!?」



1・4につづく

小説版・和風!オズの魔法使い(4)

2008年09月19日(金) 23時00分
『和風!オズの魔法使い』


1・2「なよ竹とあやかしには」


「さて、どうしてくれよう。」
神々しい光を頭から放ちながら、カレー屋の親父は言った。

−カレー屋の親父はあたしについて来られるほど、づらをとばすほどの健脚の持ち主−

なよ竹は、この状況から脱する為にはどうすればいいか、光の強さ…もとい、光の速さで頭を働かせた。

−こうなれば…やるしかない!−

意を決したなよ竹は、腕に抱えた子犬を強く抱きしめ、親父に向かって駆けだした。

−玉砕覚悟の突撃!!!−

それが、なよ竹の判断だった。

−いきなりの突撃に親父がひるんで避けるかもしれない、そしたらそのまま走り抜ければいい!−

そこまで考えての行動。
しかし
「くっくっく、もっと頭をつかわんかあ!」
親父がそういい放つと同時に、今度は親父の頭が光を放った。

−ま、まぶしい!−

そう思った刹那。
ごいい〜〜〜〜ん!

なよ竹の目の前には太陽…もとい、輝く頭があった。
その場に崩れ落ちるなよ竹。
親父はその姿を見てほくそ笑む。
子犬は主を心配するかのようにか細くないた。
なよ竹ははっと気付いたかのように慌てて頭を触る。
そして、手を見てほっとする…。
−よかった。出てない…−

「まったく…これだから、親のいねえがきは…」

−!!−

なよ竹の目が変わる。今までの目とはうってかわって突き刺すような視線。
まるで獣のような視線に親父はたじろいだが、すぐに立ち直り、いい放つ。
「なんだ? 本当のことじゃねえか。じゃなけりゃ、どうやってこんなに育ったしりてえよ!!」

その言葉の鈍い重さに今度はなよ竹がたじろいだ。

たたみかけるように親父が続ける。
「なよ竹〜、今週の村の回覧板になんて書いてあったか知ってるか〜?」
「…しらねえよ。おめえがあたしんとこに回さないんじゃないか。」
「なよ竹とあやかしには注意だってよ!!!お前の悪さはあやかし並ってわけだ。」

−ずき−

頭が痛い。

「なよ竹、可哀想にな〜、あやかしと一緒にされちゃあたまらんな〜。」

頭が…。

「さびしいか、なよ竹〜。え?え?」

頭…。

「さびしいのはお前の頭だ!!このはげえええええ!!!!!」

あ、たま

その瞬間、なよ竹は真っ青になる。勢いとはいえ、言ってしまった。
これに触れればただではすまないと分かっていたのに。
なよ竹は顔面蒼白になりながら、親父に許しを乞う言葉を探し金魚のように口をぱくぱくさせた…。
後ろから視線を感じる。
なよ竹が振り向くとそこには
顔面蒼白になりながら、金魚のように口をぱくぱくさせる親父がいた。

−ぱくぱくぱくぱく…あれ?−

親父は今まで他人からはそう言われたことがなかったのだ。
他人から言われる前に自分でいい、防衛戦を張っていたのである。
しかし!
今、その防衛戦は破られ、親父の頭の中では、非常ベルが鳴り響き、クリリンはドラゴンボールを探し始め、なみへいさんは海藻を食べ始め、モト冬木は刑事になった…。
そして!
親父は…真っ白に燃え尽きた…。

「あ、あの…ごめんね…★」
なよ竹は、罪の意識にさいなまれながら、親父を後にした。
振り返れば…真っ白な親父。
なよ竹は何度も振り返り、
−あたしがお金持ちになったらリアップをおくります−
そう心に誓った。
そして、頭を触りほっとする。

−うん、ばれてない−

−!!って、あたしはづらじゃないよ!−

と、なよ竹はどこかへと思いを放った。

−がし−

頭をだれかが触る。

−だから!づらじゃ…−

振り返ると、顔が髪で覆い隠された女がなよ竹の頭をつかんでいる。

−ない!−

突然のことになよ竹は女の手を振り払おうとした。
その時
女の髪に触れ、女の顔があらわになる。
緑の目、その中に蛇のように縦に長い黒い目がある。

−あやかし!!!−

そう思った瞬間、なよ竹は地面に転がっていた。
目の前に輝く太陽…は、女のぞっとするほど黒い髪がなよ竹の全てを覆っていた。

−あやかし−

なよ竹は頭を触った。

−頭が、痛い。−

あやかしの女は笑っていた。
腕の中の子犬はないた。
なよ竹は…どんな顔をしているのか自分でも分からなかった。



1・3につづく

小説版・和風!オズの魔法使い(3)

2008年09月13日(土) 22時30分
『和風!オズの魔法使い』

1・1「時に駆ける少女」

少女は走った。
額から滝のように流れ落ちる汗をふき取りもせずに。
周りから聞こえる村人達の声に耳も貸さずに。
風のあやかし、かまいたちがいようものならきっと彼女の駆ける速さに驚いたであろう。

少女は走った。
腕に抱えた子犬は心配そうに小さな声でないた。
『心配しないで』
少女は口で答えぬかわりに、目で応えた。
『私は駆け抜けてみせる。だって』
少女の足は細くか弱い、止まればきっと足が笑い出し、その場に崩れ落ちたであろう。
『私は駆け抜けてみせる!だって!』
少女は己が駆ける意味を何度も何度も口の中で繰り返していた。
『私は!駆け抜けてみせる!だって!!!』

遠くで誰かが叫ぶ声がした。

「待てごらあ! 食い逃げ!」

『だって!捕まりたくないもの!』
少女は走った!
風のように。
「捕まりたくないものおおおおおお!!」
少女は叫んだ!
己の強い意志を!
食い逃げの風はカレーを食べたせいで流れる汗もぬぐわず、村人から駆けられる罵声をものともせず走った!
風のあやかし、かまいたちがいようものなら食い逃げでこの速さに驚くであろう。

右!
左!
ここは…右!
何となく左!
三叉路…真ん中!
この家を塀を登って!
あっちの屋根に!
右!
右!
跳ぶ!

少女は全てを把握していた!
全てはこの時のため!

ここをくぐって!
右!右!左!
跳ぶ!左!
二股を右に!
この小屋を抜けて!
橋の橋を渡らず、真ん中を通って!
殿様に屏風から虎を出すよう御願いして!
ひとやすみひとやすみ★
右!
左!
右!

…少女は確信した!
私は駆け抜けた!
私は勝った!
もうすぐもうすぐだ!
あの場所まで着けばきっと誰もあたしを捕まえられない!

あとちょっと!
ほんのちょっと!
ものすごくちょっと!
ちょっとちょっと!

…着いた!

光だ!
…眩しい。
これが勝者だけが照らされるスポットライト…。
丸いわ…。
けがないわ。
まゆげはあるのに…。
このハゲ…ハゲだわ…。

「…え?」

「なよたけちゃん、みい〜つけた。」
その輝く光の持ち主は吹き出る汗を拭いもせず少女の前に立ちはだかっていた。
「カレー屋のおじさん…?あはは…早かったね。」
「誰がはげかかってるってえええええ!?」

はげかかってすらいねえよ。
なよ竹と呼ばれた少女はそう思ったが…とりあえず、しおらしくしておこう。
そう思った。



1・2に続く。


近況など

2008年09月06日(土) 23時35分
『小説版・和風!オズ〜』のアップ遅れております。
大変申し訳在りません。
まもなく公開されます!

そして、来週。ついに「空海夜行風流談」の出演者・詳細などが発表されます!
お楽しみに!

久々オズメンバー集結!

2008年09月03日(水) 15時29分
昨日は、和風!オズのメンバーが集合し、DVDの完成試写会を行いました!
なんと15人近くが参加!
人多っ!?

そして
歓声・絶叫・悲鳴交えつつのDVD鑑賞…。
出ている人間にとって映像とは残酷なものです…汗

中には「オズ楽しかったな〜」なんて声も。

しかし、いつまでも後ろを見ているわけにもいきません!
侍次回公演に向けてつっぱしります!

*皆さんの手元にDVD届きましたでしょうか?
 感想・ダメだしあればブログのコメント欄か、ホームページの掲示板に是非是非書き込んで下さいね★
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芝居空間「侍エレクトリカルパレード」とは?
広島大学がある学園都市東広島市西条より演劇を発信させようという熱き演劇集団である。

次回公演!

ひがしひろしま音楽祭

時間
6月14日15:05〜15:20

場所
東広島市西条 中央公園 野外ステージ(中央公民館正面)

入場
無料!

タイトルは
「小林達之丞のひがしひろしま音楽祭!」
芝居空間侍エレクトリカルパレードがおくります歌って踊って騒いで戦うエンターテイメント!
今年1月「空海夜行風流談 空の巻」で主演を演じた
「小林達矢」が「小林達之丞」となり、悪を斬ります!
ちょっと間抜けでおバカな悪党一味に
代表「森新太郎」、空海出演「溝部淳紘」、オズ出演「平川貴大」!
また、脇を固めるは、
「佐藤綾子」「横澤千秋」「三根侑己」「井手口理子」
と強力な女性陣!
音楽祭にて劇団大暴れです!
乞うご期待!

問い合わせ
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