僕らの心にナイスバードSAGA 〜ドライブイン鳥に行ってきました〜

April 27 [Sat], 2019, 0:48
・イントロダクションSAGA 〜序論:私達、語りたい!〜
 
 
 『ゾンビランドサガ』というアニメをご存知だろうか。
 昨年10月から1クールにわたって放送されたオリジナルアニメであり、放送中から話題を呼び大ヒット、「天下に狂い咲く」2018年のダークホースとなった一作であった。

 そのコンセプトは一見すれば色物の匂いが強い。なにせ

 「『ゾンビ』が『アイドル』になって『佐賀』を救う」

 と、一個一個がクセの強い要素の大渋滞だ。

 ともすれば
 「クセの強い要素混ぜてみましたってえコトぉぉぉ〜〜? きゃああーッ、プーよね! ペンと林檎くっつけるのとはワケが違うってーのよォ!」
 と一笑に付されてしまいそうな、そんな作品が何故オタクくんたちの心をここまで掴み、そして今も掴んで離さないのか。

 それはひとえに、

 「『ゾンビ』と『アイドル』というフィルターを通して死生観を描く」

 というストーリーをきっちりと描き切ったからだ。
 
 人は誰しも
 「死ぬことによる、自分から見た"主観の世界"の消失」
 「自分がいなくなった世界は自分からは見られない」

 という概念を本能的に恐れ、それが死への畏れとなる。そして今作では、前述の二つをフィルターとしてその概念の解像度を上げて描いているのだ。

 コメディ要素込みで少しずつチームが固まった1〜5話を経て、6〜9話ではそれぞれの死因や悔恨、そして今どうするかというテーマが「お当番回」要素を含めつつ展開されていく。

 
 
 「まだ何も終わってない。私はここにいる。過去なんかじゃない」
 死んだ人間が自分の死んだ後の世界を俯瞰した時に、これほど端的で胸を打つ台詞があるだろうか。
 本当ならば決して見ることのできないそれを目にした時に、それでも足掻こうとするその姿がまず私たちの胸を打つ。

 
 「チェキ会が嫌なら断れ。無理に迎合する必要はない」
 「この時代に昭和アイドルの挟持を持って活動するその姿を、メンバーやファンたちに見せてやれ」

 時代が進むなかで、ものや概念の定義、見方が変わるのはままあることだが、"アイドル"を描くうえで「個人をスターダムとして権威づける」昭和のアイドル概念と「身近で会いに行ける」平成のアイドル概念。
 それらの違いを描いたうえで「どちらかに迎合するのではなく、個性として自分を出していけ」と、まさに「生き方」を肯定するこのシーンに、私は心を掴まれた。

 
 「自分のことばっかりで、その子のことちゃんと考えてあげられんやった。君のお父さんは優しか人ね?」
 「パ……お父さんはすっごく優しいの! すっごくすっごく優しいんだよ!」

 
 「『あたしはぜってぇ死なんばい』」
 「……サキ!!」
 「……誰だ、それ」


 自分が死んだ後、大切な人に出会ってしまったら。
 「私だよ、会いたかった」とすぐにでも言いたい、でも決して言うことのできないもどかしさのある「生」と「死」で明確に境界線の引かれたそれが、涙もろい私の涙腺をまあぶっ壊してくれた。
 『To My Dearest』でリリィがアイドルとして自分の想いを伝え、パピィの止まっていた時間を動かすラストはここだけでは語りつくせない。

 それらは集約されて、生きていた時に「何も持っとらんかった」さくらの物語に帰結していく。生きていた時に「伝説」を作れなかった彼女だからこそ、メタフィクション的にもこのチームの主人公として成立するのだ。
 若くして志半ばで逝ってしまった少女達は自分の今までの人生に、そして"ゾンビィ"として存在する今現在に様々な想いを抱えて、"生きよう"と前に進み続ける。
 その「前に進む」「生きようという想い」の指標として、"アイドル"は今作のギアの役目を果たしていると言っていい。
 これにはアイのマスだ、ラブのライブだといった流行りモノからきた時流もあるだろう。今の時代に「女の子が前に進む生き方の指標」としてのわかりやすい記号。
 その象徴として、"アイドル"は非常に良いはたらきをしてくれた。


 ……それでは、"佐賀"要素はここでどういうはたらきをしてくれたのだろうか。
 フランシュシュを導く謎のアイドルプロデューサー、巽幸太郎風に言うならば、

 
 「そんなもんあるかいボぉケぇ! 別に佐賀じゃないといかん理由なんてこれっぽっちもなかったやろがいこんボケゾンビィ!!」
 と言ったところか。

 実はこのアニメの「佐賀が舞台」という要素、出資元、企画のサイゲームズが「ゾンビがアイドルやるアニメやろう」という企画を稟議を通すにあたり、社長の出身地である佐賀のアニメを作るという要望と融合し出来上がったものだったのだ。
 だが結果として、入念なロケハンの末に出来たこのアニメは「佐賀のご当地アニメ」としても非常に出来が良い。
 奇しくも私はおとなりの福岡県民であり、作中飛び交う佐賀弁、唐津弁の軽妙さは作品世界への没入感を否が応でも高めてくれた。

 北部九州の民として、これほど嬉しいことがあっただろうか。
 ガルパンの大洗だ、ラッシャイの沼津だ、よりもいの群馬だとご当地要素、"聖地巡礼"が盛り上がる風潮はすっかりお馴染みになったが、やっぱり赤貧の平均的現代社畜のこと、金も時間もなかばい! そげん簡単には行けん!となってしまうのが人情だ。
 しかし、だ。
 ちょっと車を飛ばせば行けるような距離に、この素晴らしい作品の世界に浸ることのできる"聖地"はあったのだ。


・俺の心にナイスバードSAGA 〜本論:ドライブイン鳥に行ってきたんじゃーい!〜

 序論では私自身面白さの肝!と言える中盤のストーリー要素について強調して語ったが、ゾンサガはコメディとしても出来が良い。
 ゾンビだから首ぐらい取れるわ! 特殊メイクで顔隠さないと死体だからめっちゃ怖え! たえちゃんゾンビィ部分制御出来てねえ! ゆうぎり姐さんの理不尽ビンタ!と、挙げれば枚挙に暇(いとま)がない。
 そしてコメディ兼ご当地回の決定版とも言えるのが、

 
 第五話『君の心にナイスバードSAGA』だ。
 そして私は本日遂に、このエピソードに登場する……

 
 
 「ドライブイン鳥」に行ってきたんじゃああーーい!!

 作中ではフランシュシュがCMに出演し、その後も何度も名前が登場するこのお店。
 社長さんが声優に挑戦し、フランシュシュが鳥焼肉を食べるシーンは4話の足湯と並んでほっこりする日常パートとして名高い。

 元より福岡と佐賀なので行こうと思えば行けない距離では無いのだが、今回は平日休みが弟と被ったことを利用し、GW前の空いている時期に"聖地巡礼"することに成功した。
 
 
 福岡市より車で一時間程で伊万里の本店に到着すると、まずはその外観を楽しむ。
 こういった聖地巡礼の醍醐味は「あのキャラがいた場所に俺が立っているゥゥゥーッ!」という感覚だが、出発前日に5話を見返しておいたことでその脳内再生はばっちりだ。
 
 
 
 
 入口付近は劇中でフランシュシュが挨拶していたシーンが思い出される。
 緑の提灯、でかい鳥の置物などなど、当然ながらそっくりそのままのそれが入店前からテンションを爆上げしてくれる。

 入店すると平日昼過ぎのため人はまばら。
 店員さんに案内され、個室の方へと通される。

 
 劇中でさくら達が食べていたのも個室だったので、作品世界への没入感を高めるならばこちらがベストだ。
 (目視した限りではテーブル席もあるようなので、テーブル席が良い人はそちらをお願いするのも良いだろう)

 
 まずは定番メニュー、一番定食(税込¥1,030)を注文。
 
 ドラ鳥人気の

 
 ・鳥めし、鳥スープ

 
 ・焼鳥(と、いう名の鳥焼肉)

 がセットになっており定番メニューがかっちりと抑えられている為、カードゲームでスターターデッキを買うが如く「まずはコレ」という道標になってくれるありがたい一品だ。
 
 
 劇中ではサキちゃんが「派手なケンカした後はドラ鳥来て一番定食食ってた」と発言しているので、実は劇中なりきりとしても機能してくれる。

 焼肉を始めて火が通るまでの間に、空きっ腹にまずは鳥スープをグッとすする。
 醤油と鳥のコクがかなり効いたそれは、わずかな量でもぐわんぐわんと旨味の暴力で口の中をいっぱいにしてくるのが特徴だ。
 味にコクがありながらも鶏ベースのため全体的な風味はあっさりとしており、口の中いっぱいに広がった旨味がいい感じに後を引かずするっと霧消していく。
 思わず「これ酒飲んだ後のシメに飲んでも良いな……」と弟に目を輝かせながら言ってしまった。
 
 そんなスープの後に鳥めしをスプーンで一すくいし口にすると、やはりあっさりとしながらもしっかりとした旨味が多幸感をもたらす。
 九州にはかしわ飯という鳥ベースの炊き込みご飯があり、大手チェーンのコンビニでもローカル販売を行っているが、大きめの鶏やゴボウの入っており柔らか目のあれと違い、具は少な目のこれは純粋に鶏だしの旨味を味わうことができる。
 
 
 そしてメインの鳥焼肉。
 鶏肉と言えば火が通りにくく、焼けたと思ったらまだ中が赤い……といった失敗を出してしまいがちだが、ここの鳥焼肉は驚くほどすっと火が通り、わずかな時間でしっかりと食べ頃の焼き加減になったのが印象深かった。
 適度な大きさに切られていること、肉の鮮度なのがそうさせるのだろうかと素人考えながら興味が尽きない。

 これを特製のタレでいただくのだが、このタレは結構濃いめの味で、旨味がありながらもそれ単体では淡泊な鶏肉にしっかりとした味をつけてくれる。
 劇中で「つけてみてん!」と言われていたニンニク胡椒(という名前だが、ニンニクと唐辛子ベースのペースト状の調味料)もニンニクのあのクセの強さと辛すぎない唐辛子の風味で旨味を引き出してくれて、箸が止まらなくなること請け合いだ。

 
 肉の種類が豊富な為迷ったものの、追加として鳥ハラミと鳥皮を注文。
 「うまかけんどれもいけるなあ!」とひとしきり盛り上がったところで……

 
 はちみつ黒酢カルピス(¥464)を注文したッ!
 
 
 劇中では純子がほんの一言「このはちみつ黒酢カルピスって美味しそうですね……」と言っていただけで別に注文していたわけでもないのだが、すっかり純子のイメージがファンの間では定着し、コラボカフェのメニューにも選ばれる一品。
 飲んでみると、はちみつで強調されたカルピスの甘さがまずふわっと口の中に広がり、後から黒酢の酸っぱさがやって来る。
 元より鳥焼肉のためそれほど脂っぽくはないのだが、肉の風味をいい感じに包み込んで口の中の感覚をリセットしてくれるのが印象的だった。

 
 意外と量がある鳥皮を弟と焼いていきつつ、私は思っていた。
 既に鳥スープの器は空になっている。あの旨さがクセになりすっかり飲み干してしまったからだ。
 
 
 「もう一杯飲みてえ……。スープを(倒置法)」

 というわけで二人共単品で鳥スープ(¥496)を追加。
 定食のセットとは違い単品だとレンゲが付いているのもありがたい。

 
 
 そんなこんなで大満足のひと時を過ごした後は、お会計を済ませ玄関周りの写真を撮らせていただく。
 ポスターや声優さんのサインが貼られており、オタクくんならばやはり一枚は撮っておきたくなるのが人情だ。

 ちなみに劇中では「掘っ立て小屋感」「ローカル、って感じ」との評があったが、実際には時代の流れに合わせ、紙のメニューの他にタブレットで注文できるシステムも導入されている。
 ドラ鳥は豊富な品数を揃えている為、項目、分類ごとにメニューを調べられるタブレットを活用して注文するのは手だろう。
 (はちみつ黒酢カルピス頼みてェーけどなァァァ〜〜、『あ、こん人アニメの影響で来たっちゃんね』と思われんのもシャクだなぁ〜〜)と店員さんに口に出すのが恥ずかしい人もこれなら安心だ。


 私の初めての本格的な"聖地巡礼"は、これにて幕を閉じた。


・グッドバイSAGA 〜結論:締めの言葉はどうしたでありんすか!〜

 作品への没入感をいかに高めるか。
 それは作り手にとって永遠の命題であり、また受け手にとっても如何に楽しむかの方法として大事になって来る。
 「○○をイメージしたメニューじゃあねーんだよ、作中で○○が使ってるアイテムや飯が欲しいんだよ」と声高に主張する友人R氏の言葉はもっともだ。
 
 そんな中で、こういった「ご当地アニメ」は観光要素と作品への没入感を高める体験を同時に行えるという、得難い強力な武器を持っているのではないだろうか。

 今回の体験は素敵な焼肉のお店とゾンビランドサガの作品世界を楽しむ、その両方を兼ね備えた良い一日だったと言える。

 
 最後は男兄弟二人でデスおじの如く、「ドラ鳥、よか……」となりながら帰りの車を飛ばしたことの報告を以て、この長文を占めさせていただく。

 長々と語ってきたが、とどのつまり

 『ゾンビランドサガ』、笑って泣けて最高やけん一回見てみらんね!
 GWはドラ鳥行ってみちゃらん!?



 ……次は洋館か嬉野に行きたい。
プロフィール
  • プロフィール画像
  • アイコン画像 ニックネーム:度近亭心恋
  • アイコン画像 性別:男性
  • アイコン画像 誕生日:1992年7月13日
  • アイコン画像 血液型:AB型
  • アイコン画像 現住所:福岡県
  • アイコン画像 職業:会社員
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特撮・アニメ好き。SSも書いてたりする。
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