【Review】CAR-T cell療法の重篤な副作用のマネジメント(Crit Care Med 2018; 46: 1402)

August 17 [Fri], 2018, 0:48
Management of the Critically Ill Adult Chimeric Antigen Receptor-T Cell Therapy Patient: A Critical Care Perspective

【Review】CAR-T cell療法の重篤な副作用のマネジメント(Crit Care Med 2018; 46: 1402)

Chimeric antigen receptor (CAR)-T cell療法は難治性のB細胞性白血病やB細胞性リンパ腫であっても高い完全寛解率(50-90%)が期待できる画期的な治療法である。
最近は小児ALLや成人LBCLにおいてUSのFDAの承認がおりた。

T細胞を取り出して腫瘍を攻撃するようにプログラムしたのち、フルダラビン and/or シクロホスファミドを投与してCAR-T cellを注入するという治療法。
高い治療効果が得られる代わりに副作用も激烈。最も多い2つの副作用としてはcytokine release syndrome (CRS)と神経毒性があげられる。

CRSはCAR-T cell療法を受けた患者の60-93%に生じ13-14%は重篤となる。
すごい炎症反応によりCRP、フェリチン、IFN-γ、IL-6、IL-10、IL-2、TNF-αが上昇し多臓器不全となり死に至りうる合併症である。

CRSは通常CAR-T cell療法の7日以内、遅くとも10-14日以内には発症する。
軽ければ頻脈、発熱、悪寒、筋肉痛ですむが、ひどくなると多臓器を巻き込んで進展する。
心血管毒性としては血管拡張性ショックを呈したり、心筋症を発症してEFが低下することもある。
呼吸症状としては血管透過性亢進によりARDSを呈することがある。
AKI、肝障害、DICもおこることがある。

神経毒性はCAR-T cell療法をうけた患者の40-64%に生じそのうち28%は重篤である。
二相性の発症を認めることがあり、CRSとともに発症し、一旦CRSが改善した後に再燃が認められることがある。
意識障害を呈したり痙攣やNCSEとなることもあり、不可逆性の脳浮腫を認めることもある。
治療をおこなってもかなり急激に進行することがあるので要注意である。
神経毒性の病態は明らかではないが、サイトカインによる中枢神経の障害やCARsが中枢神経に浸潤することによると考えられている。

CRSや神経毒性の鑑別としては敗血症があり、たとえCRSが疑われる状況だったとしても抗菌薬を併用しながらの治療をおこなわねばならないだろう。

治療法としては大きく分けて二つで抗IL-6モノクローナル抗体とステロイドになる。
モノクローナル抗体として用いられるのはIL-6受容体に結合するトシリズマブで、grade 2以上のCRSを発症した場合には使用するべきである。
CRSがなく中枢神経毒性単独であれば使用はあまり推奨されない。
副作用としては皮膚軟部組織感染、肝障害、高コレステロール血症がある。

もう一つのモノクローナル抗体としてシルツキシマブがあり、循環しているIL-6に直接結合して作用する。
トシリズマブ抵抗性の場合は使用を考慮する。
副作用としては皮疹、高尿酸血症、肝機能障害がある。

ステロイドはgrade 3以上のCRSもしくは抗IL-6療法に抵抗性のgrade 2のCRSで治療を検討する。
使用量や治療期間は定まっておらず、症例ごとに考えなければいけないのが現状である。
経験として中枢神経毒性はトシリズマブよりステロイドに反応しやすいように思う。
ステロイドはCAR-T cell療法の抗腫瘍効果を減弱させうるのが気にかかるが、短期間のステロイドだと大丈夫なようである。
ただ、使用に関しては腫瘍内科医と協議のうえ慎重に使用する。

CRSによる循環不全はICU入室の最も多い理由である。
通常はトシリズマブやステロイドに反応するが難治性のこともある。
感染のルールアウトは重要だが、敗血症のガイドラインに準じて治療することになるだろう。

CAR-T cell療法を受けた患者では痙攣の頻度が多く、非痙攣性重責発作(NCSE)も10%に認められる。
そのため筆者らの施設では予防的にレベチラセタムを使用している。
抗痙攣薬の選択については定まっていないが、薬物相互作用や副作用が少ないレベチラセタムが好まれるようである。
CAR-T cell療法をうけた患者で痙攣が出現した場合は重責したり脳浮腫を発症することがあるためICUで管理するべきである。
NCSEとなった場合はミダゾラム、プロポフォール、フェノバルビタールをもちいたburst suppressionが必要となることがある。

脳浮腫に対してはステロイドを使用するが、増悪する場合はパルスも考慮する。
CTは脳出血など他の疾患のルールアウトのために撮影することになる。
だいたい凝固障害や血小板減少を伴っているため頭蓋内圧測定はなかなか行いにくい。

ARDSを発症した場合はlow tidalでの肺保護換気をおこなうことが推奨される。
BALをおこなって感染や肺胞出血を鑑別する必要がある。

電解質異常の頻度が高く、神経毒性や心筋毒性がある場合は低ナトリウム、低カリウム、低マグネシウム、低リンは積極的に補正すべきである。

皮膚症状としてびまん性の丘疹が認められることがあるが、ステロイドに速やかに反応することが多い。

血球貪食症候群(HLH)を合併することがあり、その際の予後は不良である。
重度のCRSに肝障害、腎障害、肺障害を合併したりフェリチンが10000を超えたり生検で血球貪食が認められる場合にはHLHが疑われる。

CAR-T cell療法の晩期合併症として無B細胞がある。10週から3年後に起こる。
IgGをモニタリングしながら補充して対応する。

【RCT】敗血症性ショックでの早期自転車運動は筋繊維の断面積を維持する(Crit Care Med 2018; 46: 1436)

August 16 [Thu], 2018, 22:44
Impact of Very Early Physical Therapy During Septic Shock on Skeletal Muscle: A Randomized Controlled Trial

【RCT】敗血症性ショックでの早期自転車運動は筋繊維の断面積を維持する(Crit Care Med 2018; 46: 1436)

ベルギーの単独施設mixed ICUでおこなわれたRCT
敗血症性ショックで入室した患者を72時間以内に組み込みをおこなった。
21人が組み込まれ3人が早期に死亡したため18人が解析対象となった。
これらの患者は強化リハ群(N=8)と対照群(N=10)に割付された。

対照群では1日1回のリハビリがおこなわれ、強化リハ群では1日1回のリハビリに加えて30分のpassive/activeの自転車運動がおこなわれた。
初回のリハビリは対照群では入室後46時間、介入群では28時間後に実施された。
栄養療法を統一するため可能な限り関節熱量計をもちいて栄養管理をおこなった。

day1, day7に筋生検をおこなって組織学的、分子学的検討がおこなわれた。
結果、異化のユビキチン-プロテアソーム経路のマーカーであるmuscle atrophy F-boxやmuscle ring finger-1 messenger RNAはday1からday7にかけて介入群で減少していたが、両群の差は明らかでなかった(muxcle atrophy F-box: -56.4% vs. -7.3%, P=0.23, muscle ring finger-1: -62.7% vs. -30.8%, P=0.15)。

筋繊維の横断面積は介入群で維持されていたが対照群では減少していた(12.4% vs. -25.8%; P=0.005)。

結論。敗血症性ショックでの早期の自転車運動は筋繊維の断面積を維持することができる。

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the more, the betterではないことがわかってきた早期リハ。
やみくもに強化リハをおこなうのではなく、この研究のように栄養を最適化したうえで慎重に評価を重ねていく必要があるだろう。

【メタ解析】敗血症性ショックに対するステロイドは長期的には死亡を減らすかもしれないが神経筋力低下をもたらすかも(Crit Care Med 2018; 46: 1411)

August 16 [Thu], 2018, 17:19
Corticosteroids in Sepsis: An Updated Systematic Review and Meta-Analysis

【メタ解析】敗血症性ショックに対するステロイドは長期的には死亡を減らすかもしれないが神経筋力低下をもたらすかも(Crit Care Med 2018; 46: 1411)

敗血症性ショックでのステロイドに関するメタ解析で42 RCTs, 10194人を対象とした。

ステロイドは28-31日の短期間の死亡に対してはRR 0.93 (0.84-1.03)と明らかな低下をもたらさなかったものの、60日-1年の長期間の死亡に対してはRR 0.94 (0.89-1.00)と一定の低下効果をもたらした。

また、ステロイドはICU滞在期間を0.73日短縮(-1.78 to 0.31)し、入院期間を0.73日短縮(-2.06 to 0.60)した。
ステロイドは7日目までのショック離脱を増やし(RR 1.26; 1.12-1.42)、SOFAを1.39点減少(-1.88 to -0.89)した。

副作用としては高ナトリウム血症を増やし(RR 1.64; 1.32-2.03)、高血糖を増やし(RR 1.16; 1.08-1.24)、神経筋の筋力低下(RR 1.21; 1.01-1.45)を認めた。

サブグループ解析をおこなったが明らかなサブグループによる違いは検出できなかった。

結論。敗血症でステロイドは死亡を少し減少させるかもしれないが、神経筋の筋力低下を増やすようだ。


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同じテーマでおこなわれた少し前のICMのメタ解析と当然ながらほとんど同じ結果なんだけど、ニュアンスはかなり異なっている。
ICMはネガティブっぽくCCMはポジティブっぽいニュアンスでやっぱりメタ解析って怖いなーと思う。

【前向観察】USのICU生存退室者406人のPICS発症は6割程度と高いが複数項目の発症は少ない(Crit Care Med 2018; 46: 1393)

August 16 [Thu], 2018, 16:47
Co-Occurrence of Post-Intensive Care Syndrome Problems Among 406 Survivors of Critical Illness

【前向観察】USのICU生存退室者406人のPICS発症は6割程度と高いが複数項目の発症は少ない(Crit Care Med 2018; 46: 1393)

USの5施設でおこなわれた前向き観察研究。
退院後3ヶ月、12ヶ月後にPICS項目として認知機能、日常生活動作、抑うつについて直接評価をおこなった。
認知機能はRBANS、日常生活動作はKatz ADL、抑うつはBDI-IIをもちいた。

対象となったのは生存退院者406人で3ヶ月後の評価がおこなわれたのは384人(生存者の83%)、12ヶ月後の評価がおこなわれたのは334人(生存者の80%)だった。
年齢は約60歳、ICUで人工呼吸管理を受けたのが9割、敗血症が6割強、譫妄が7割、昏睡が5割強だった。

3ヶ月後と12ヶ月後において認知機能障害、日常生活動作の障害、抑うつのいずれかが発生していた割合は64%, 56%だったが、3つのうち2つ以上が発生しているのは25%, 21%であり3つとも発生しているのは6%, 4%と低率だった。
PICS-freeであることを予測する因子としては教育年数が挙げられ、教育を受けていた年数が長いほどPICSを発症しにくいという関連が認められた。
また、入室時点でのフレイルの程度が大きいほどPICSを発症しやすいという関連も認められた。

結論。この多施設コホートにおいて生存者の多くにPICSを発症していたが、複数の項目を発症している患者は少なかった。
教育年数が長いほどPICSを発症しにくくフレイルであるほどPICSを発症しやすかった。
将来的にはそれぞれのPICS項目ごとにリスク因子を同定して治療につなげていく必要があるだろう。

【前向観察】人工呼吸のうちダブルトリガーは0.6%に生じその1/3はreverse triggerにより起こる(Crit Care Med 2018; 46: 1385)

August 16 [Thu], 2018, 12:06
Double Cycling During Mechanical Ventilation: Frequency, Mechanisms, and Physiologic Implications

【前向観察】人工呼吸のうちダブルトリガーは0.6%に生じその1/3はreverse triggerにより起こる(Crit Care Med 2018; 46: 1385)

スペインの3 ICUsでおこなわれた前向き観察研究。
24時間以上のA/Cでの人工呼吸がおこなわれた67人を対象として波形自動解析技術を用いて全呼吸の解析をおこなった。

対象となったのは累計9251時間、約1000万呼吸。
すべての患者でダブルトリガーが生じていたが、頻度は全呼吸のうち0.6%だった。
ダブルトリガーはPCVでもっとも生じやすく(0.54%)、VCV(矩形波)(0.27%)やVCV(漸減波)(0.11%)では生じにくかった。
ただし、ダブルトリガーでの換気量はPCVよりVCVの方が有意に多く、VCV(矩形波)ではダブルトリガーでの最高気道内圧が他の換気モードと比べて最も高くなった。

ダブルトリガーの原因としては患者の呼吸努力によるものが65.4%でreverse triggeringによるものが34.6%だった。
VCV(漸減波)ではreverse triggeringによるダブルトリガーの頻度は少なかった(ダブルトリガーのうち19.3%)。

ダブルトリガーをおこしにくい呼吸器設定としては長い吸気時間、高いPEEPが挙げられたが、他の研究とも合致しない結果も含まれており確定的な見解を示すには及ばないと考えられた。

結論。人工呼吸器患者でのダブルトリガーは思ったより頻度が低い。PCVの方が起こりやすいが、VCVの方が換気量が多くなってしまう。ダブルトリガーの約3分の1はreverse triggerによっておこっている。

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PCVの方がダブルトリガーが多いというのが意外。VCVの方が多いと思ってました。
reverse triggeringによるダブルトリガーが3分の1というのは臨床的な感覚と合致する。たしかにreverse triggering多い。

現状ダブルトリガーが起こっても人工呼吸器のアラームがならないという大きな問題があるので、筆者らが用いたような自動解析を用いてアラームがなるようにしたら良いと思う。

これらの技術を用いてasynchronyを減らす努力をすることにより本当に予後が改善するのか?というのが今後の課題。

【RCT】ICUの成人感染症でプロカルシトニンガイドの抗菌薬治療は投与期間を短縮し予後を明らかには悪化させない(PRORATA)(Lancet 2010; 375: 463)

August 15 [Wed], 2018, 18:10
Use of procalcitonin to reduce patients’ exposure to antibiotics in intensive care units (PRORATA trial): a multicentre randomised controlled trial

【RCT】ICUの成人感染症でプロカルシトニンガイドの抗菌薬治療は投与期間を短縮し予後を明らかには悪化させない(PRORATA)(Lancet 2010; 375: 463)

今更ながらにPRORATA
ICUでのプロカルシトニンガイドの抗菌薬治療について評価したフランスでの多施設RCT

ICUに感染症で入室した成人で3日以上の滞在が見込まれる患者を組み込み、プロカルシトニンガイド群(N=311)と対照群(N=319)にランダム割付した。
プロカルシトニン群ではプロカルシトニンを毎日測定しながら一定の基準で中止の推奨がなされた。これはのちに発表されたSAPSと同様のプロトコル。

患者の年齢は60歳ちょい、SAPS IIは45点強、敗血症性ショックが半数弱で人工呼吸を受けていたのが7割弱だった。
感染巣としては肺が7割強と最多で尿路、腹部と続いた。

プライマリアウトカムは死亡率と抗菌薬投与期間で前者は10%を非劣性閾値として非劣性を検討し、後者は優越性を検討した。
プロカルシトニン群と対照群で28日死亡は21.2% vs. 20.4% (difference 0.8%; 90%CI -4.6 to 6.2)、60日死亡は30.0% vs. 26.1% (difference 3.8%; 90%CI -2.1 to 9.7)であり、いずれも非劣性は達成されたものの、60日死亡はギリギリ非劣性だった。

抗菌薬投与期間は14.3 vs. 11.6 days (P<0.001)と有意な短縮が認められた。

結論。ICUでのプロカルシトニンガイドの抗菌薬治療は抗菌薬治療期間を短縮し、予後を明らかに増悪させない。

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たしかに10%の非劣性閾値でいいのか?って異論は出るでしょうね。

【RCTのサブ解析】敗血症性ショックでの長時間PMXは2時間PMXと比べて死亡率減少と関連する(DESIRE)(Blood Purif 2018; 46: 309)

August 14 [Tue], 2018, 18:57
Mortality Effects of Prolonged Hemoperfusion Therapy Using a Polymyxin B-Immobilized Fiber Column for Patients with Septic Shock: A Sub-Analysis of the DESIRE Trial

【RCTのサブ解析】敗血症性ショックでの長時間PMXは2時間PMXと比べて死亡率減少と関連する(DESIRE)(Blood Purif 2018; 46: 309)

PMX-DHPは一般的に2時間で施行されるが、2時間以降もエンドトキシンを吸着することが示されており施設によってはより長時間で施行することがある。
血圧上昇効果をみても長時間PMX-DHPは2時間PMX-DHPよりも優れているのではないか、というのは僕も以前に報告したところである(J Intensive Care 2017; 5: 19)。
なので、長時間PMX-DHPはぜひRCTで評価したいところだが、死亡率に与える影響が不明確でありまだまだRCTを組むには根拠が不足しているのが現状。

ということで、長時間PMX-DHPに関するRCTを計画する意味があるのか?その根拠を集めるために本研究を企画した。
敗血症でデクスメデトミジンが生命予後に与える影響を検討した多施設RCTであるDESIRE trialのサブ解析として実施した研究である。
DESIREに組み込まれた201人の人工呼吸管理を受けた敗血症患者のうち敗血症性ショックが112人、さらにPMX-DHPを施行されたのが36人だった。

これらの患者のうち2時間PMX-DHPを受けたのが22人、長時間PMX-DHPを受けたのが14人だった。
患者背景として年齢は75歳くらい、APACHE IIは25点弱であり両群で明らかな差を認めなかった。
長時間PMX-DHPの施行時間は中央値5.5時間だった。
プライマリアウトカムの28日死亡は2時間群と長時間群において32% vs. 0% (P=0.019)であり長時間群で有意に低下していた。

結論。長時間のPMX-DHPは2時間のPMX-DHPと比較して生命予後改善と関連しているかもしれない。

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長時間PMX-DHPは2時間PMX-DHPより臨床的にすぐれている可能性があり、ABDO-MIX、EUPHRATESとnegativeになった原因の一つとして2時間の施行時間を採用したことがあるのかもしれない。

ただし、もちろん本研究は小規模のpost hoc研究。
PMX-DHPの施行時間の違いだけでこんなに死亡率に差がつくわけがなく、両群に大きな偏りが残っている可能性が高い。
なので、現時点で長時間PMX-DHPを臨床応用する根拠は依然圧倒的に不足しているが、死亡率を改善させうるという仮説は魅力ある仮説であり今後検討に値する仮説なのではないかと思う。

言い出しっぺの日本がなんとか決着をつけたい治療法だと思う。

【Editorial】敗血症『最初の1時間』バンドル(Intensive Care Med 2018; 44: 925)

August 10 [Fri], 2018, 20:48
The Surviving Sepsis Campaign Bundle: 2018 update

【Editorial】敗血症『最初の1時間』バンドル(Intensive Care Med 2018; 44: 925)

SSCG2016にあわせて敗血症バンドルがアップデート。
敗血症は多発外傷や急性心筋梗塞のような緊急疾患であり、3時間とか6時間とかスッとろいこと言わずに直ちに治療する必要があるというイメージを出すため、従来の3時間バンドルと6時間バンドルを統合して『最初の1時間バンドル』を作成した。
もちろん初期蘇生は1時間以上かかることはあるが、治療の開始は1時間以内におこなわなければならない。

このバンドルにおける時間の起点は救急外来を受診した患者の場合は最初にトリアージを受けた時間とする。
救急外来を受診した患者以外では、カルテを見返してみて最初に敗血症もしくは敗血症性ショックの基準を満たしていた時点とする。

1. 乳酸値を測定し、2mmol/Lを超えているようであればフォローする (Weak recommendation, low quality of evidence):フォローは2-4時間後におこなってそれを指標に蘇生をおこなう
2. 抗菌薬投与前に血液培養を採取する (Best practice statement):それにより抗菌薬投与は遅れてはならない
3. 広域抗菌薬を投与する (Strong recommendation, moderate quality of evidence)
4. 低血圧もしくは乳酸値が4mmol/L以上であれば30ml/kgの晶質液の急速投与を開始する (Strong recommendation, low quality of evidence):3時間以内には投与終了するようにする
5. 輸液負荷開始後も血圧が上昇しなければMAP 65mmHgを維持するために昇圧薬を開始する (Strong recommendation, moderate quality of evidence)

【Mini Rev】ICUにおける輸液負荷の暗黒面(Intensive Care Med 2018; 44: 1138)

August 10 [Fri], 2018, 18:32
The dark sides of uid administration in the critically ill patient

【Mini Rev】ICUにおける輸液負荷の暗黒面(Intensive Care Med 2018; 44: 1138)

何事にも暗黒面はある。
重症患者において非常に重要で副作用を圧倒的に上回ると考えられていた輸液負荷についてもそうだ。
いや、むしろ生理的範囲内のCVPを達成する程度の輸液負荷であったとしても利益より害が上回るかもしれないという報告もある。
輸液による有害事象にはどのようなものがあるだろうか。

浮腫:
主に血管内皮のグリコカリックスの破綻によって浮腫が起こる。
侵襲によって血管内皮のグリコカリックスが障害されタンパク豊富な血漿が間質に漏れ出してしまう。いわゆるcapillary leakageと呼ばれる状態で、これによる浮腫は輸液過剰となる前から始まっている。

希釈性凝固障害:
凝固障害により出血が起こることがある。これは大量輸液により低体温がおこった場合にさらに増悪する。

希釈性貧血:
希釈によって本来不要だったかもしれない輸血をおこなわなければいけないこともある。
また、酸素供給量を増やすための輸液だが、希釈によって逆に酸素供給量が下がってしまうこともある。

電解質異常:
すべての輸液製剤は非生理的な濃度の電解質や人工的物質を含んでいるため、大量輸液によって電解質異常などが生じることがある。
例えば生食大量輸液による高Cl血症。

臨床的な結論:
まずはその輸液の必要性をきちんと検討し、個別に調整し、本当に必要か疑ってかかることだろう。
たとえば術後やICU患者でも輸液の約半数では心拍出量は増加していないという報告もなされている。(このような患者では血液希釈により酸素供給量が減少して輸液は有害となる)
また、輸液で心拍出量が増加したとしても、心拍出量の増加はごく一時的にしか得られず、微小循環の改善にはつながらないことだってある。

一部の人工呼吸患者ではPPV, SVV, PVIといった動的指標を用いるのも一つの手だろう。
一部の患者では下肢挙上テストで反応をみてみるのもひとつだろう。(ただし下肢挙上テストをきちんとおこなうには心拍出量の連続測定が必要である)
これらの指標がはっきりしない場合は少量の輸液チャレンジをおこなってみるのも一つである(ただしこれにも心拍出量の連続測定が必要である。血圧、心拍数、CVPだけでは判断を誤ることがある)

輸液の有害性の評価としてはエコー、はい血管外水分量、thrombelastography、ヘモグロビンの連続測定が有用かもしれない。
ただし、大量輸液をおこなう場合、溢水の所見が得られたときにはかなり進行してしまってもう遅い、ということが多い。
なので、慎重な輸液蘇生によって安定が得られたならすぐに除水を念頭においた管理を開始するべきだろうと思う。
これによって人工呼吸離脱が早まるかもしれない。

結論としては輸液負荷は現実問題として医原性で予防可能な”dark side”を持っているということを認識する必要がある。
輸液過剰を最小限にするためにはできるだけ早期に輸液過剰を認識して予防する必要がある。
輸液過剰のリスクが高いと思われる患者ではより厳格なモニタリングをおこなって対応すべきだ。
つまり、ヨーダの言葉を借りると”In a dark place we find ourselves and a little more knowledge lights our way” (暗闇では少しの知識が光となり道を照らすだろう)ということだ。

【RCT】一般病棟に入院した乳児の気管支炎でHFNCは通常酸素に比べて治療失敗を減少させるが入院期間は変わらない(N Engl J Med 2018; 378: 1121)

August 08 [Wed], 2018, 22:07
A Randomized Trial of High-Flow Oxygen Therapy in Infants with Bronchiolitis

【RCT】一般病棟に入院した乳児の気管支炎でHFNCは通常酸素に比べて治療失敗を減少させるが入院期間は変わらない(N Engl J Med 2018; 378: 1121)

乳児の気管支炎に対するHigh flow nasal cannula (HFNC)は治療失敗を減らすことができるか?
多施設でおこなわれたRCT

12ヶ月未満の気管支炎で酸素投与を必要とする小児1472人をHFNC群と通常酸素治療群にランダム割付して比較した。
通常酸素治療群に割付られた患者も治療失敗の場合はHFNCの使用が許可された。
プライマリアウトカムは治療失敗により治療のescalationを要することとした。
治療失敗は頻脈、頻呼吸、低酸素、病院のearly warning tool起動のうち3つ以上を満たすことと定義した。

結果、治療のescalationを要した割合はHFNC群と通常治療群のうち12% (87/739) vs. 23% (167/733)でありHFNC群で有意に減少していた(P<0.001)。
ただし、通常酸素治療群で治療失敗した患者167人のうち102人(61%)はHFNCで治療が成功した。

入院期間はHFNC群と通常治療群で3.12 vs. 2.94日(P=0.19)、酸素投与期間は1.81 vs. 1.87日(P=0.61)で差を認めなかった。
また、ICU入室率も12%vs. 9%、挿管率も1% vs. 1%と差を認めなかった。
死亡は発生しなかった。

結論。気管支炎で一般病棟に入院した乳児においてHFNCの使用は治療失敗の割合を減少させる。

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といっても、通常治療群でも結局はだいたいHFNCのレスキューに反応しており、HFNC以上の治療を要した数はむしろ通常治療群のほうが少ないくらい。
ということで、早期にHFNCをつけておくことで重症化を予防する効果はなく、HFNCをレスキューとして使用すればそれでいいじゃん、とも読める。