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【日本版コラム】赤毛のロシアスパイとニューヨークのクラブ文化 / 2010年07月15日(木)
津山恵子 フリージャーナリスト

 さすが「スパイ」だ―と思ったのは、米連邦捜査局(FBI)に逮捕された「ロシアの赤毛スパイ」アンナ・チャプマン(偽名、28)が出入りしていたニューヨークのクラブの名前を見たときだ。

 「赤毛」「美人」「スパイ」と3拍子そろい、ニューヨーク・ポストなどタブロイド紙が連日彼女のことを根掘り葉掘り報じた。それによると、彼女が出入りしていたのは、ジュリエット、グリーンハウス、トムソン・ホテル(会員制)など、一見の客にはなかなか入りにくい高級なクラブばかり。

 彼女は昨年ニューヨークに来たばかりで、少なくとも今年1月からFBIの覆面捜査官にマークされていたようだ。しかし、この短い期間に、これらのクラブへのアクセスを得たというのは、さすがというほかない。

 ポストによると、チャプマンはパーティに頻繁に顔を出し、ブランド物のシックな衣装を常に身に着け、普通の人がなかなか入れないナイト・クラブを網羅して、ウォール街の金融マンや世界の要人に近づく機会を狙っていた。

 「アメリカは自由な国。ここでは、簡単に成功した人物に会える。モスクワでは、自分も同じぐらい成功していなければ、成功を収めた人には会えない」チャプマンはフェースブックにアップしたビデオでこう語る。

 しかし、実際はそううまくはいかない。自ら不動産サイトの経営者と名乗るものの、つてもなく、大物の関係者でもない28歳の女性が、これらのクラブで要人に会うにはどうしたらいいか。

 まず、目的とする人物が出入りしそうなクラブを特定する。それだけでは誰かの手引きでもない限り、クラブそのもの、あるいはクラブのVIPエリアに入ることはできない。クラブの入り口ドアの前にいるドア係(用心棒ともいう)を突破することが最大の難関だ。彼らを攻略するのは、目的の人物を紹介してくれる人物の名前をほのめかすか、入館するために納得する理由をでっちあげるしかない。いずれも簡単なことではない。

 しかし、冷戦終結後20年余りも経って、一市民になりすましたスパイが、マンハッタンを当たり前のように闊歩(かっぽ)していた事実に、市民は驚くとともに動揺を隠せなかった。FBIや検察によると、核兵器や米国の世界戦略、重要人物の情報を集めていたというが、これは、米市民が最も恐れるテロのターゲットとぴたりと一致する。

 10人のスパイは、米国とロシアの政府が、スパイ交換に合意、ロシアで服役中の4人と交換されることで、街から消えて、市民はそのニュースにほっとした。

 しかし、スパイ活動やFBIなど捜査機関に詳しいロナルド・ケスラー氏のリポートによると、10人はさほど周到に訓練されたスパイではなく、冷戦後、宙ぶらりんになったスパイ組織の”残りかす”が展開していた活動だという。

 「彼らは、スパイを動かすことができたから、活動させていた。それは彼らの血であり、官僚支配であり、システムだからやっていただけだ」(ジョン・マーティン元米司法省スパイ担当主任検察官)

 ワシントンでは、保守派からスパイを公判にかけないことに批判が上がったが、大物スパイではないという判断からスパイ交換に簡単に至ったのだろう。

 「オバマ政権とエリック・ホルダー司法長官が、時期尚早にスパイ交換をして、国家を危険にさらしたかというと、そんなことはない。マイナスになるような点は何もない」(マーティン氏)。

【7月14日10時57分配信 ウォール・ストリート・ジャーナル
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100714-00000013-wsj-int

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