I will carry a heavy load on my back together.

June 24 [Tue], 2008, 23:55
久々このせつSSです。
続きからどうぞ!

気にしないで、と言っても無駄だろうから。


〜I will carry a heavy load on my back together.〜


その日、まさかあんな事が起きるとは思いもしなかった。

朝目を開けて白い天井を一番に見ては一瞬ここは何処だろうと
瞬きを繰り返えす。しばらくしてからようやく頭の中の引き出しから
場所を特定し、ふっと息をはいた。
ここはエヴァンジェリンの別荘で昨日から白き翼のメンバーが
泊まり込みで修行に来ている。昨日、と言ってもあちらではまだ
20分しか経過してないのだが。つくづく魔法使いというものは…
と考えて隣りを見やると思わずクスリと笑みがこぼれた。
道理で寒いと思った。
刹那はそうひとりごちて隣りで夏掛けをギュッと抱き締めて眠る
彼女の前髪に手を伸ばした。彼女の髪はさらさらと刹那の指に絡まる。
にへら、と緩んだ口元。どんな夢を見てるんだろう。

刹那はゆっくりと静かに起き上がり、彼女の本来の夏掛けをベッドの隅
から掬いその丸くなった体に掛けてやった。朝日が顔を出す間際なのか、
うっすらとした太陽の光が自分たちを照らす。吹き抜けの窓に向かって
しばらくそれを眺めた。透き通った夏風が頬をくすぐる。

「よし」

う、と腕いっぱいあの空に向けて伸びをし小さな声で気合いを入れる。
今日も頑張ろう、なんて思って振り返りふと彼女と目が合った。
不思議と驚きもせずただじっと見つめ合うだけ。
一瞬、この時間が永遠のように感じられて思わず微笑を浮かべた。

「おはようございます」

いつもと違うのは小声であることと彼女からの返事がパチクリだったこと。
まだ寝ぼけ眼で必死にこちらを見つめる彼女のくりくりとした緋色の目が
とても可愛らしい。
着ているキャミの肩紐がずり落ちて白い二の腕に留まっている。
それを見て刹那はまたふふ、と笑った。

「せ……ちゃ…」
「まだ寝てらしてもいいんですよ」
「…いーやー」

消え入りそうな甘い吐息をはいて、彼女はいじけたように刹那を見上げる。
苦笑しながら近付いて行くと彼女の頬が高揚しているのが手に取るように
分かった。そうか。

「まだ朝練には行きませんよ。ほら、明日菜さんだってまだぐっすり寝てますし」
「……ほんま?」
「ほんまです」

彼女からは見られない位置にいる明日菜を見つめながらまたその艶やかな
髪を触る。彼女はくすぐったそうに肩を小さくした。
でも表情は気持ちよさそうで再び眠りの世界へと旅立とうとしている。
手を離そうとすると不意に弱々しいそれで掴まれた。
ぷくっと膨らませた頬は未だオレンジに染まっている。
そのふっくらしたオレンジに弧を描くようにして優しく撫でる。

「まだいますよ」
「ん」

そう言うと彼女は目を閉じたまままたにへら、と笑って応える。
なんだかおかしくて刹那は彼女の背中をポンポンと優しく叩いていく。
昔はよくこうやってもらってたな。
あの手は大きくて優しかったけれど、この手は彼女にとってどう感じるだろう。
あの大きくて優しい手のひらにはなれているだろうか…
物思いにふけっていると再び気持ちよさそうな寝息が聞こえ始めた。
その子どものような寝顔にそっと言葉をこぼし、刹那は徐に着替え始めた。





「で…朝木乃香に何て言ったのよ、刹那さん」
「えっ……うわ!」
「ちょっとっ…しっかりしてよねー」
「すす、すみません」

突然の一言に動揺したのか刹那の体勢が大きく崩れた。
すかさず明日菜が隙をついたかのようにその竹刀を勢いよく振り下ろす。
刹那はすぐに体勢を立て直し同じく竹刀でそれを受け止めたのだが顔の
焦りは消えなかったらしい。

「あたしがまだ寝てるなんて言って。私は刹那さんよりも早く起きてたっ
つーの。早朝バイトなめないでよね」
「…すみません」

少し目を反らして肩を竦める刹那にさらに追い討ちを掛けようとその
首筋を狙って突く。しかしすぐにかわされた。
その表情はまだ先ほどの質問に捕らわれているように思える。
そんな状態にもかかわらず彼女の体はまるで明日菜の攻撃を予知
しているかのように素早くそれを避ける。
しなやかな身のこなし、思考せずとも体が勝手に動くらしい。
明日菜は改めて尊敬の眼差しを彼女に向けた。
まだまだ彼女には敵わない。
刹那にはいずれ自分をも越すと言われているがイマイチ信用できない。
彼女を信用できないわけではないのだが。
自分を信用できないのだ。

「隙あり、です」
「へ…?」

いつの間にか地に膝を付いて刹那の剣先が鼻の先にあった。
ほら、自分は考え事をすればすぐこれ。
やっぱり、彼女には敵わない…
明日菜はひとりごちて静かに負けを認めた。

「明日菜さん、何か考え事ですか?」
「ううん、刹那さんにはやっぱり敵わないなーって思って」
「ええ!?そ、それは…まだ明日菜さん修行始めたばかりですし!
それでもここまで上達するなんて凄いことですよ!」
「はいはい、それ何回も聞いたから」
「うぅ…」

剣を交えるようになって分かったこと。
彼女は褒められることに慣れていないらしい。
ちょっと褒め言葉を言っただけで顔を赤面させていつもよりお喋りになるのだ。
そうしてやがて俯いてしまう刹那を見て明日菜は笑う。

「なんか、あたし分かった気がする」
「何がです?」

不思議そうな顔をして刹那は草原に大の字に寝転がった明日菜の横に
ゆっくりと腰を降ろした。心地良い風が2人の頬を撫でて吹き抜けていく。
ふっと小さく弾んだ息が隣りから漏れた。

「人ってさ、誰かのこと…大切な人なら尚更、その人を守るためなら
何でもできんのよね。毎日朝から晩までこうやって刹那さんと剣道したり、
エヴァちゃんにしごかれたり、あんな大剣振り回しても全然辛くないもの。
あ、全然って言ったら嘘になっちゃうけど」

刹那に向かって小さく舌を出し、それから空に向かって微笑む。
何ですか、急に、という言葉は飲み込んだ。
その横顔が何故かとても大人びて見えて一瞬釘付けになる。
そしてそれはもうひとつ、大切なものを見つけた瞬間でもあった。
彼は、彼女をこんなにも強くし。
そして彼女は彼をあんなにも大きくした。
それはお互いを思い合ってこそ成し得ること。
思って刹那の表情が僅かに歪む。

「どうしたの、刹那さん?」
「明日菜さんは、本当にネギ先生のことがお好きなんでグエ」

それ以上言ったら殺すわよとでも言いそうな、明日菜は刹那の肩を
がっちりと掴む。その殺気にも似たような気迫に刹那はゴクリと息を飲む。
そういえば禁句だった、と今更後悔しても遅い。

「んもうっ、何回言えばみんな納得してくれるんだか。あたしはただアイツが
危険なことに顔突っ込んだり、無茶して周りが見えなくなったりして…
ただ単に心配なだけよ」
「でも、明日菜さんはそんなネギ先生のためにこうやって修行なさって
るんですよね」
「今日はやけに突っかかるわねぇ…さてはアイツと何かあった?」
「べっ、別にお嬢様とは何もっ…」
「あたし木乃香とぉなんて一言も言ってないんだけど?」
「うぐっ…」
「さあ、白状なさい?」

もはや「うー」とうめき声を上げる術しか残っておらず、刹那はただただ
後退りをする他なかった。ひょっとしたら第三者に頼らざるを得ないのでは…
そう思った矢先、天に思いが通じたのかそこに救世主が2人現れた。

「おい、お前ら」
「ん…?あ、エヴァちゃん!それに…木乃香っ、ちょうどよかった!
刹那さんがね、あんたに言いたいゴドガムゴ」

頭上に疑問符が浮かぶ2人を前にして、刹那は必死に笑顔を取り繕う。

「な、何か用でしょうか?」
「ああ、ちょっとな」
「へ?」

未だ不思議そうに首を傾げる木乃香の横でエヴァが不敵な笑みを浮かべた。
同時に刹那は明日菜の口から手を離した。



つづく
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