I touch you.

February 19 [Sun], 2012, 21:55
今日は毎土だけ更新します。
コメへんも次回で。すみません。

以下、毎土!このせつ企画SSです!



I touch you




はあああ・・・長々とため息と吐いても頭の中のもやもやはちっとも消えてくれやしなかった。代わりにそれは隣を歩いていたアスナに移り、逆にもっともっと長いため息を吐かれてしまった。

「何なのよいったい。ここ最近ずっとじゃない」
「えー、そやったっけ」
「とぼけても無駄よ。あんたはいっつもにこにこしてるから悩んでるときはすぐ分かるのよ」

昔からねとアスナはまたため息を吐く。でもさっきのとは違う。少し優しさの含まれたそれに心が緩んだのも束の間、どうせ刹那さんがらみなんでしょとアスナが笑う。そう言い当てられてしまっては何も返せないではないか。アスナのくせに。ぶうっと唇を尖らせて前を向く。

修学旅行気分がまだ抜けない五月も半ばの頃だった。朝、学校に行くとき必ずと言っていいほどせっちゃんが扉の前で待ってくれるようになった。護衛の務めですから、やって。本当はただ木乃香と一緒に行きたいだけでしょ。アスナがからかうようにして言うとせっちゃんはカーッと赤くなって逃げ出してしまったのもいい思い出だ。せっちゃあん、追いかけて追いかけて転びそうになって。

「大丈夫ですかっ」

いつの間に戻って来たのか。ウチの肩を抱いて心配そうに覗き込むせっちゃんに「おおきに」。嬉しくてたまらず顔を綻ばせるとせっちゃんはギャッと一瞬のうちに身を引いて慣れた風に謝る体勢をつくり地面に額がつくくらい大きく一礼。申し訳ありませんでした、以後気をつけます。って、どう気を付けるんだか。それから半歩ほど離れて歩くのが定番になった。ウチの身に何かあったとき以外はそばにも寄らない。話しかけない。そして、

「んー、つまり木乃香は」
「せっちゃんにさわりたいんよ」
「・・・・・・」
「ん? ウチなんやおかしなこと言うた?」
「おかしなことって言うか、あんたも立派な中学生だってことが分かったわ」
「んん?」

修学旅行のときからそうだったが、せっちゃんは触られるのが極度に嫌らしかった。ウチが抱きつくと必ず悲鳴を上げるし、ちょっと遠慮して腕にしがみついても体がガチガチに凍ってしまう。さらに遠慮して肩にぽんと手をおいただけでも「ひっ」やもん。完全に打つ手なし、ってやつだ。

「好きな人にはふれたいやん。アスナかて高畑先生にふれたいやろ」
「んなっ、なな、なんてこと言うのよ! いくら好きでも高畑先生にふれるなんてそんなこと・・・・・」

アスナに言ったウチがあほやった。何を想像しているのか、アスナはキャーッと悲鳴を上げてその場にうずくまってしまった。ここ、図書館の真ん中なんやけどなあ。道行く人が不審そうにこちらを見る。

「アスナ、みんな見とるえ」
「分かった」
「ほえ」
「私にいい考えがあるわ」

そう言ってアスナは不敵に笑った。



「せーーっちゃん!」
「うわあ!」

待ち伏せ作戦はどうやら成功したようだ。

「今日は確か部活の日ではなかったのですか。一端帰ってお迎えに上がる予定でしたのに」
「急になくなってな。それよりもせっちゃん、最近疲れとらん? 修学旅行の疲れ、まだとれとらんやろ」
「え、特にそういったことは」
「ううん。絶対疲れとるはずや」
「いや、そんなこと・・・ってお嬢様ちょっと!」

せっちゃんの手首を引っ張って走る。

ーー刹那さんて退魔の仕事の他に修行とかもしてるんでしょ。それにこの間は修学旅行もあったし絶対疲れてるはず。だからそれを理由に・・・

「はい、ここに寝て」
「はい?」
「マッサージするさかい。はい、どうぞ」
「そんな、お嬢様にそのようなことをさせるわけには」
「ウチのマッサージ、嫌なんや・・・」
「あ、いや、そういうわけでは決して」
「嫌なんや・・・う、ふええ」
「あああああ! 私すごくマッサージ好きです大好きですはい!」
「ほな上着脱いで寝て」
「う・・・はい」

このときばかりはアスナに感謝した。

「あー。ブラウスも邪魔やから脱いで」
「へっ」
「ええからええから」
「うう」

そうしてさらし一枚になったせっちゃんを寝かせていざ手を伸ばす。といってもマッサージってどうやるんやろ。あかん、思わず手を止める。

「お嬢様?」
「あ、いや・・・準備はええ、せっちゃん」
「は、はい」

ウチのあほ。ええい、こうなったらやるしかない。
まずは肩に手をおく。ん、せっちゃんが身じろぐ。肩もみはおじいちゃんにしょっちゅうしとるから大丈夫やろ。そう思ってぐ、ぐ、といつもより弱めにもんでみた。するとふうっとせっちゃんが息を吐くのが聞こえた。そのまま何となく肩胛骨にまで下がって指圧していく。それを繰り返し、たまに襟足や腕にまで広げてやりながらせっちゃんの顔をこっそりのぞき込む。せっちゃんは目を瞑り、とてもリラックスした表情を浮かべていた。
こんな細い体でウチのこと守ってくれとるんや。せっちゃんの細い真っ白な背中を見て思う。
その頬に手を伸ばしたのはほとんど無意識だった。気付いたときにはせっちゃんが起き上がり、手のひらにピリッとした痛みが走っていた。

「す、すみません!」
「・・・やっぱり、せっちゃんは嫌やったんやね。ウチに触られるん。ごめんな、今まで無理矢理触ってもうて。もうせえへんから安心し」
「違うんです!」

ウチの手をぎゅっと握り、しかしすぐにハッとして突き放す。いつもの申し訳なさそうな、困り果てた表情ならまだしも、何で今はそんな傷ついた顔するん。
しばらく重い沈黙が続いた後だった。せっちゃんは静かに口を開いた。

「私は半分化け物だから。だから、万が一お嬢様を傷つけてしまったらと考えると怖くて、どうしようもなくて」
「やから、ウチが触れても拒んでたん」
「・・・はい」
「あほ」
「はい。って、へ?」
「せっちゃんのあほ。そんときはそんときやろ。それにウチは傷つけられたとしてもせっちゃんに抱きつくし、手だってつなぐえ。せっちゃんが嫌がってもこれまで通り触れ続ける。絶対」

ふん、と威張るように腕を組む。すると目の前からくすくすと小さな笑い声。見るとせっちゃんが目元を拭いながら静かに笑みを浮かべていた。

「私も、ずっとお嬢様に、その・・・」
「触れたかった?」
「うっ・・・」

こくこくと、耳まで赤くしながら頷くせっちゃんが愛おしくて。

「お、おじょうさま!?」
「んー。そろそろ寒なってきたかな思て」

ぎゅううと今まで遠慮してきた分、思い切り抱きしめる。せっちゃんはわああと悲鳴を上げながらも時が経つにつれウチの背中に手を回してきた。ずっと、ずうっとこうしていような。耳元で囁いても返事はなかった。代わりに返ってきたのは熱すぎるぬくもりだった。




FIN



今回のお題は『館、屋根、藍』でした。
来週のお題は『島、粉、草』です!

続いて3月のお題です!

3月3日…『未来、流、祭
3月10日…『汗、ピン、髪
3月17日…『桜、卒業、人
3月24日…『花、舞、色
3月31日…『来年、流、祭




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