第9地区

April 10 [Sat], 2010, 23:55
DEPOTのおすすめ度:★★★☆☆

公開日:2010年4月10日
配給:ワーナー・ブラザース,ギャガ・コミュニケーションズ
監督:ニール・ブロムカンプ
出演:シャルト・コプリー,デビッド・ジェームズ,ジェイソン・コープ

鑑賞日:2010年4月10日
MOVIX三郷 シアター6(座席数189)

【ストーリー】
南アフリカ上空に突如現われた正体不明の宇宙船。襲い掛かることもなく、難民として降り立った“彼ら”との共同生活はそこから始まった。それから28年後、増え続ける犯罪に市民と“彼ら”の争いは絶えず、共同居住区“第9地区”はスラムと化していた。超国家機関MNUは、彼らを強制収容所に移住させる計画を立て、ヴィカスという男にその任務を託す。彼は立ち退きの通達をして回るうち、知らずに人類と“彼ら”の歴史を変える大事件の引き金を引いてしまう―。

【レビュー】
本日の鑑賞は、第82回アカデミー賞にて作品賞ほか計4部門にノミネートされ、周囲はおろか製作サイドも驚いたという話題のB級大作「第9地区」です。劇場などの予告編ではB級SF作品の匂いがプンプンしていい感じだったんですが、アカデミー賞の作品賞にノミネートされたことでデポ的には一気に不安感もアップしてしまいました。というのも、アカデミーの作品賞なんかに選ばれる作品はどうもデポの肌に合わないようで眠くなってしまうものが多いんです。今作は受賞は免れたのでホッと一安心ですが、選考委員たちを魅了したその内容はデポにとって吉と出るか凶と出るか?

数々の賞にノミネートされたり、評論家さんたちが絶賛していたりするこの「第9地区」ですが、デポ的にはそれ程大騒ぎするような素晴らしい作品には感じられませんでした。確かに製作を務めた「ロード・オブ・ザ・リング」のピーター・ジャクソンを除けば、監督も俳優も無名な人ばかりな上に3,000万ドルという昨今の映画としては低予算の製作費で「パラノーマル・アクティビティ」を遥かに越える(まぁ、安いといっても金額が桁違いだから当然といえば当然か)クオリティと安っぽさを感じさせない作品に仕上がっているのはお見事ですが、設定やストーリー、映像などには特に斬新さや目新しいものを感じることはありませんでした。というのもこの「第9地区」、映画が進むに連れて20年以上前に劇場公開されたある映画に非常に良く似ていることに気付くのです。B級映画ファンならピンとくるであろうその映画とは、1988年に監督グラハム・ベイカー、主演ジェームズ・カーンで製作された20世紀フォックス作品の「エイリアン・ネイション」です。ここからは両作品を比較しながらのレビューとなりますのでネタバレが大いに含まれます。未見の方は要注意、既にご覧になった方は内容を思い出しながら読んでみてください。

先ず、両作品の舞台設定ですが「第9地区」は1982年に南アフリカ上空に巨大宇宙船が飛来し、ヨハネスブルグに異星人たちの居住区として第9地区が設けられてから28年後、つまり2010年の南アフリカはヨハネスブルグが舞台となっています。それに対し「エイリアン・ネイション」の舞台となっているのは、1991年にアメリカのモハベ砂漠に異星人の移民30万人を乗せたUFOが不時着してから3年後の1994年のロサンゼルスです。1980年代から1990年代の南アフリカといえば、長年に亘って続いてきたアパルトヘイト(人種隔離政策)が反体制運動や内外戦の激化によって崩壊、全廃されていく時代です。この時代に合わせるように異星人が現れ、新たな隔離政策が行われていく設定は、法律上はアパルトヘイトがなくなっても教育を受けられなかった子供たちが職に就けないことやいまだに続く根強い差別意識などを背景にしているのでしょう。また、「エイリアン・ネイション」が製作された1988年頃といえば、1980年代に激増した非合法移民が大きな政治問題となっていた頃で、1986年には増え続ける不法移民に対応するため移民改革統制法が成立しています。両作品ともこのような社会情勢をベースに作られ、異星人を侵略者としてや友好的でなく移民や難民として描いているところは他のSF作品とは一線を画していると言えるでしょう。

更にふたつの設定で共通するのがファースト・コンタクトから共に数年の歳月が経過しており、異星人が地球に定住していること。「エイリアン・ネイション」の経過年数が3年と短いのは、新移民と呼ばれる異星人が遺伝子操作によって生み出された奴隷であらゆる環境に適応する能力と重労働にも耐える強靭な肉体、人間を超える高度な知能を持っているからなのですが、これは当時のアメリカ人たちが次々にやって来る移民たちに対して職場や地位を奪われるのではないかという恐怖心を誇張して描いたのではないでしょうかね。対照的に「第9地区」で経過年が長いのは登場する異星人たちが知性も低く、人間とのコミュニケーションを取る(片言でも英語での会話が成立する)のに多くの年月が必要だったためなのでしょう(クリストファーが流暢に会話できるのは、コンピューターを使って様々な情報を得ていたためなのでしょうね、きっと)が、これはそのままアパルトヘイトによって隔離政策されていた人々の知性や学力が低かったことを象徴していると思われます。勿論、指令船のエネルギーを溜めるのに時間が掛かったというのも大きな理由のひとつでしょうけどね。尚、「第9地区」の異星人が人間とかけ離れた容姿で“エビ”と呼ばれ、キャットフードやタイヤなどを好んで食べている設定も差別の大きさを反映しているんでしょう。ちなみに「エイリアン・ネイション」に登場する異星人は“タコ”と呼ばれ、姿形はかなり人間に近いのですが頭髪がなく頭に斑模様のようなものがあります。ビーバーの生肉を好み、腐った牛乳で酔っ払うというユニークなキャラです。

そして、笑っちゃうのが両作品とも“黒い液体”が物語のカギを握っていることです。「エイリアン・ネイション」では、新移民たちを支配していた階級者が労働の対価として与えていたジャブロカという“黒い液体”の麻薬が登場します。このジャブロカによって新移民たちを支配し、富と権力を得ようとする異星人の実業家ウィリアム・ハーコートを相棒を異星人によって殺された主人公の刑事サイクスが新しく相棒となった異星人のサム・フランシスコと共に追い詰めるというのが「エイリアン・ネイション」のストーリー。「第9地区」で登場する“黒い液体”はといえば、予告編でも流れている主人公ヴィカスが異星人の住居で偶然浴びてしまう指令船の燃料です。この液体を浴びたことでヴィカスは何故か身体が異星人へと変身してしまうのですが、元の人間に戻るためにはMNUに保管された燃料が必要とのことでヴィカスと異星人クリストファーは協力してこれを奪い返そうとします。このように両作品とも“黒い液体”がストーリーの重要な役割を担っているのと共にそれを巡る主人公が快く思っていなかった異星人とコンビを組むことで友情で結ばれるというバディ的な要素も共通点といえるでしょう。

このように、ふたつの作品は多くの部分で酷似していることが判ると思います。ただ、両作品の決定的な相違点は製作された年代により「エイリアン・ネイション」が前年にヒットした「ビバリーヒルズ・コップ2」や「リーサル・ウェポン」を意識した刑事もののバディムービーで娯楽性の強いアクション作品、「第9地区」は言うまでもなく「アバター」を意識したメッセージ性とエンターテイメントが結びついた作品に仕上がっていることでしょう。多くの共通点を持ちながらも作品としては対極のような位置関係となったふたつの作品。これをパクったとみるかどうかは別としても「第9地区」がオリジナリティ溢れる作品だという評価は首を捻らざるを得ないのではないでしょうかね。ちなみにデポは「エイリアン・ネイション」の方が好きです。

今回はネタバレ全開となってしまった「第9地区」のレビューですが、デポの当初の予想はヴィカスが変な液体を浴びて変身してしまうので、エイリアンたちは実は元々地球人で、政府が実験中に偶然開発した液体により異様な姿に変化してしまった。内面は変わらないのに見た目によって昨日まで愛していたものに差別されるみたいなオチなのかと思っていたのですが…そんなひねりもなく普通の流れだったのがある意味以外でした。個人的にはオリジナリティも感じられませんでしたし、周りが言うほどグロでもないので(デポはグロ好きなので)評価が低いのですが、映画としては様々な要素が盛り込まれツッコミどころも満載なのでそれなりに楽しめる作品だと思います。

「第9地区」 Blu-ray
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我 三年君を待つ公式サイト http://d-9.gaga.ne.jp製作: ピーター・ジャクソン南アフリカのヨハネスブルグに、突如巨大な宇宙船が現れたが、止まったまま動かない。宇宙船が故障し、船内の
風に吹かれて  May 03 [Mon], 2010, 15:42
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