「そばにいる。つよくなる」16

January 09 [Sun], 2011, 17:04
「ん〜?」

「うん。。。。」

「はい、なんとなく」

「えーっと。。」

「つまり…?」


これはすべて。
土方さんからの説明を受けているときの。
姫ちゃんのセリフです。
で。
なんの説明かというと。
珍しく、私の話です。


「千鶴ちゃんのお父さんは、新選組の関係者で」
「ああ」
「でもお父さんは今行方不明で」
「ああ」
「新選組はお父さんを探してて」
「ああ」
「千鶴ちゃんもお父さんを探したくて」
「ああ」
「この度、めでたく巡察に加わってお父さんを探せることになった」
「ああ」
「けど、そんな巡察デビューが一番隊」
「・・・ああ」
「私に総司を説得して協力をさせろ、と」
「そういうことだ」
そう。
姫ちゃんは今まで私やお父さんのことは何も知りませんでした。
お父さんと新選組との関わりについては私も深くは知りませんが。
急な話に姫ちゃんは最初、頭がついていかなかったみたいです。
「歳三さんからはまだ総司に話してないんですか?」
「一応言ったがな。拒否もしねーが肯定もしねー。
そんな状態で行かせてなんかあったら心配だ。
あいつはまだまだガキだからな。
雪村を放置しかねねーだろ」
ちょっとぐさっときましたが…
確かに、そうなんだと思います。。
「それはさすがにないと思うけど。
説得はともかく、話きいてみます」
「ああ、頼む」
姫ちゃんは私に笑顔を向けると、さっそく部屋から出ていきました。
姫ちゃんの足音が遠ざかった頃、土方さんがこちらを見ます。
「お前はどうだ。
総司の班との巡察は」
一瞬顔が強張りました。
まだ。
巡察に出れるときいて間もないので。
とても嬉しい気持ちと。
沖田さんと一緒という不安な気持ちとで。
揺らぎます。
ですが、それでも。
「巡察に出してもらえるだけで、本当に感謝していますから。
他のことで文句なんて言いません」
本心でもあったのですが、土方さんはおもしろくなさそうな顔をしました。
「そういうことがききてーんじゃねーんだよ。
総司に好意持ってんだろが。
で。
総司はお前に冷たくあたってんだろ?
どうなんだ。
できれば別の班の方がいいか?
斎藤なり平助なり」
「…」
正直に言うと。
ものすごく複雑なのです。
沖田さんと一緒にいるだけでも嬉しい。
けど。
苦しい。
それなら。
他の人の方が、心は楽で。
でも、こんなことは土方さんには言えません。
「私はホントに、父様を探しに行けるだけで嬉しいんです。
だから、それ以上望みません」
土方さんは呆れたような表情のまま、それ以上は何も言いませんでした。




「ま、正直?足手まとい以外の何物でもないからね。
僕じゃなくても。
連れていきたい人はいないと思うよ。みんな内心は」
姫子は頬を少し膨らませる。
「私はね、危険があったら総司はちゃんと千鶴ちゃん守ってくれると思うし。
仕事は仕事で割り切ってくれるって思ってるけど。
みんなが思うこと以外で総司がイヤなんだったら、歳三さんに話通すよ?」
沖田は少し考えるように腕を組む。
でも内心は何も考えてはいなかった。
だって。
答えなんて出ていた。
でも言い訳なんてなんにもない。
ただ【イヤ】っていうことだけが正直な気持ちだ。
その様子を見て、姫子は口を開く。
「ごめん、総司。ちょっと利用させてもらってもいい?」
「…どういうこと?」
目を細めた。
「しばらく千鶴ちゃん外に出したくないの。
総司がイヤって言ってることにして、千鶴ちゃんの巡察出るの延ばしてもらってもいい?」
「別にそれ自体はいいけど。
説明はしてくれないわけ?」
「祇園祭だからね」
「?」
総司は怪訝な顔をしたが、掘っても無駄だと思った。
「いいよ。勝手にしてくれて。
テキトーに話合わせるから」
「ありがと!」
そう言って姫子は総司の肩をとんとんと叩く。
そして立ち上がって部屋を出ようと襖に手をかけたとき。
ふいに何かを思い出したように総司を振り返った。
「なに?どうかした?」
「ん〜ご飯、ちゃんと食べてる?」
「姫ちゃんに言われたくないけど」
「顔色悪くなったとか誰かに言われない?」
「姫ちゃんの白肌のほうが気になるよね」
「寝てる?」
「割とね」
「じゃあ…」
「なんなの?」
結局襖から離れて沖田の前に戻ってきた姫子の頭を。
沖田はガシッと掴む。
「なに?僕もうすぐ死ぬの?」
「…違う。でも気を付けて」
溜息を吐き。
指に力を込める。
「イタイ…!」
「姫ちゃんはみんなの寿命とかいろいろ知ってるのかもしれないけどさ。
そんな僕たちよりも姫ちゃんのほうが先に死んじゃうかもしれないんだからね。
そんな顔する前に、自分が自分を気を付けなよ。
ちゃんと食べてないのも、
顔色悪いのも、寝てないのも。
姫ちゃんでしょ」
言い終わって、手を離す。
姫子はこめかみあたりを擦りながら口を開いた。
「最近、仕事が忙しいだけだから。
だいじょうぶだよ」
「左之さんが心配するよ」
そういうセリフはとびきりの笑顔で放つ。
「ゼンショするー」
姫子は苦笑いをした。




結局。
土方さんからの連絡で、巡察は延期されることになりました。
とても残念ですが。
どこかでほっとしている自分がいるのも確かです。
でも。
最近姫ちゃんが忙しくてあまり帰ってきてくれないので。
気持ちのもっていきようもなく。
不謹慎なのはわかっていても。
つい、誰か部屋に遊びにきてくれないかな、なんて考えてしまいます。




そんな次の日。
屯所が急に騒がしくなりました。




「あ、平助くん。姫ちゃん知らない?」
偶然部屋の前を通りかかった平助くんを呼び止めます。
「姫?あ〜悪い見てねーや。
でも仕事じゃねーかな。
俺も今忙しくて…ごめんな、また後で!」
すぐに走っていってしまいます。
さっきから。
ずっとみんなこんな感じなのです。
私は何が起こっているのかよくわからず。
ただ。
今夜。
何かが起こることは、確かなようです。
「ただいま〜」
「姫ちゃんっ」
「やっとちょっとゆっくりできる〜
千鶴ちゃん、一緒にお茶飲んで〜」
姫ちゃんはすでにお盆にお茶を2つ用意しています。
少し疲れた様子で、部屋に入ってへたりこみました。
「ねえ、姫ちゃん。何があったの?」
「ん〜」
姫ちゃんはとりあえず、といったようにお茶を一口含んで。
小さな溜息を吐きました。
「簡単に言うとね。
今夜浪士たちの会合が行われるの。
その会合の場をぶっつぶす準備?」
姫ちゃんの説明は、結構いつもかいつまみすぎていてよくわかりません。。
そんな私の苦い顔を見てか。
姫ちゃんはもう一度考えて口を開きました。
「京に火をつけて、混乱に乗じて天子様を誘拐する計画。
そんな計画を実行に移そうと目論んでる奴ら。
を。
ぶっつぶす準備?」
え…
「それ、本当なの??」
「うん。ひとりを捕獲してね。
割らせた口から出てきたらしい…
っていっても。
私は全部知ってたんだけど」
「それって、歴史に残る事件ってこと?」
「まあ、そうだね。
だから、私の仕事は早い目に終わらせてもらったの。
ススムと歳三さんに話通したから」
姫ちゃんは。
歴史を変えないようにと。
知識は出さないようにしています。
私が考えるよりもずっとしんどいことだと思います。
でも。
この姫ちゃんの様子を見るに。
誰か、死んじゃったりするわけではない…のかな?
「千鶴ちゃん。
歳三さんに話通したから。
私たちは怪我人が出たときの待機として祇園の会所に行くよ。
今のうちにゆっくり休んでてね。
きっと忙しくなるから」
「…うん」
姫ちゃんがこういうのなら。
少なくとも。
怪我人は出るんだと思います。
そんな甘いことは言ってられないんだろうけど。
でも。
怪我だってしてほしくない。




祇園の会所では、私と姫ちゃんの他にも人がいます。
姫ちゃんが準備したお医者さんたちだということです。
「さて、千鶴ちゃん。心の準備はだいじょうぶですか?」
短い髪の毛をきつく結わえた姫ちゃんは、すでに着物をたすき掛けにしています。
「うん」
「何があっても狼狽えないように。だいじょうぶ。私がついてる」
「はい!」
こういうときの姫ちゃんは、男前です。
「姫ちゃん」
「なに?」
「どこまで、わかってるの?」
詳しくは言えなくても。
姫ちゃんが何を知ってるか勘づくことで、私の身構えも変わるかもしれません。
ずるい考えかもしれませんが…
でも、きっと新選組のためになるはずです。
「ん。。」
姫ちゃんは慎重に考えているようです。
歴史を見守る立場として。
とても慎重に。
「まず。何時くらいだったかは忘れちゃった。
ただ、今日は寝ないと思う。
これはOK?」
「うん」
「誰がどうなるかは内緒だけど。
死人も出れば、大怪我する人も出る。
だから。
誰がどんな姿でやってきても、できるだけ取り乱さないで。
とにかく迅速に行動してほしいの。
時間が大切な人もいるから」
「…うん」
死ぬ人、やっぱりいるんだ。
沖田さんは…
強いから、だいじょうぶだって信じてるけど。
信じたいけど。
「最後に」
「…」
不安そうな目をしていたのか。
姫ちゃんは私をきゅっと抱きしめてから。
とてもとても小さな声で言いました。

「総司は任せた」

バカ正直に硬直してしまった私をそのままに。
姫ちゃんはお医者さんたちの手伝いに戻っていきました。
私は。
動揺を隠すことは出来ず。
沖田さんが。
どのような姿でここにやってくることになるのか。
不安で不安で。
たまらなくなってしまいました。
軽い怪我かもしれません。
でも、大きな怪我かもしれません。
もしかしたら…

「千鶴ちゃん!」

姫ちゃんの声に現実に戻されます。

「だいじょーぶ!」

満面の笑みの姫ちゃんに。
少しだけ。
つられました。

不安じゃないわけはない。
姫ちゃんが。
ほとんど知ってしまっている姫ちゃんが。
私に教えてくれたのはきっと。
ダメなことだと知りながら。
教えてくれたのはきっと。
沖田さんを助けるためだ。

しっかりするんだ。
ドンと構えるんだ。
がんばるんだ。



今夜は、長い。




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    ・ハイキング
    ・邦画・ドラマ鑑賞
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