「そばにいる。つよくなる」ss2

November 23 [Tue], 2010, 0:54
―yamazaki―






「どうした?」

「え?うん。いいんじゃないかなっ」

「・・・・・・」



今日の任務は姫子とだ。

これから少し遠出をする。

銀閣寺で手紙の受け渡しがある予定なのだが。

その受け渡しを行う姫子の様子が。

いつもにも増しておかしい。

まだ壬生を出発してわずか。

すでに歩みが遅い。

いくらこちらにきて初めての夏だからといって。

まだ初夏だ。

姫子自身もまだまだ京の夏が蒸すことを知っている。

なら、なぜだ。

そもそも、会話がまったく噛みあわない…。



「体調が悪いのなら早く言うべきだ」

「だいじょうぶだよ、元気だもん」



口ではこう言う。

だが。

そんな台詞を吐く唇には色がない。



「倒れられては迷惑をする。
今ならばまだ屯所に戻せる。
代わりも探せる」

「相手さんには女だって言っちゃってるんでしょ?
だいじょうぶだよ、暑気あたりでもないし、風邪でもないから」



では、一体なんだというのか。



しばらく隣あって歩いていたが。

ふと、気付き、前に歩かせてみた。

無理して早く歩こうとしているのが見えたが。

さすがに誤魔化されない。

姿勢が僅かだが悪い。





女子の日だったらしい。





「姫子」

「?」



呼び止めてみる。



「なに?ススム?」

「籠を使うか、俺に負ぶわれるか、どちらか選べ」

「え…」

「立っているだけでも辛いのだろう。
任務を全うするのが一番だ。
今は無理をするな」

「いや…歩けるよ?もうだいぶ来たでしょ?」



逃れたがっているのは目に見えた。

だが。



「まだ御所さえも越していないが?」



まだ半分も来てはいない。

姫子が困った顔をする。

本人は気付いていないらしいが。

癖なのだろう。

何かを考えるときは小首を傾げる。

その首の曲り具合で、悩み具合がなんとなくわかる。

今は。

どうやら逃れることは考えていないらしい。

無茶をしすぎるきらいはあるが。

そんな姫子の考えるのはいつも「迷惑をかけない方法」だ。

どれが一番迷惑をかけないか。

そういう考え方をする。

その考え方自体は、仕事では悪くはない。

だが。

なぜか気分はよくない。

このまま歩けば最悪刻限に遅れることも予想できたのだろう。

そうなれば、あとは二択だ。

籠を使うか。

俺に負ぶわれるか。

どちらを選ぶか。

俺には最初からわかっていた。

わかっていた上で提案した。

姫子は、隊の金をむやみに使おうとしない。



「ススム、ごめん。。重いかもよ??」

「ドンウォーリー、だな」



姫子にときどき教えてもらう言葉。

他では使えないが。

姫子にはときどき使ってみる。





そして歩き出してしばらくした頃。



「…重くなった。。」



姫子は確かに人に気を遣いすぎる面がある。

が。

いざ心を許した途端に調子に乗る。

俺は男だから辛さはわからない。

だが、相当辛そうだったのはわかる。

それでも。

任務の前に人の背中で寝ろとは言ってない。

やわらかく軽い体が。

ストンと重力を増す。

ただ。

首筋にかかる静かな寝息に。

文句は出なかった。






銀閣寺に到着。

任務の前。

姫子は俺に平謝りし。

茶を奢ることになる。
Comment
小文字 太字 斜体 下線 取り消し線 左寄せ 中央揃え 右寄せ テキストカラー 絵文字 プレビューON/OFF

不正な自動コメント投稿を防ぐため、チェックボックスにチェックをしてください。

利用規約に同意
 X 
禁止事項とご注意
※本名・メールアドレス・住所・電話番号など、個人が特定できる情報の入力は行わないでください。
「ヤプログ!利用規約 第9条 禁止事項」に該当するコメントは禁止します。
「ヤプログ!利用規約」に同意の上、コメントを送信してください。
プロフィール
  • プロフィール画像
  • ニックネーム:ちぃ
  • 性別:女性
  • 誕生日:1984年11月7日
  • 血液型:O型
  • 現住所:京都府
  • 職業:
  • 趣味:
    ・ハイキング
    ・邦画・ドラマ鑑賞
読者になる
2010年11月
1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30
最新コメント
Yapme!一覧