「そばにいる。つよくなる」11

November 04 [Thu], 2010, 1:05
「これ!読んでください!!」

「…え…あ、はい」

遠くで見てしまったその現場。
たまにみかける隊士さんが、姫ちゃんに文を渡すところでした。
驚いてすぐに物陰にかくれましたが。




姫ちゃんが部屋に戻ってきてすぐ。
私はどうしても好奇心を抑えることができませんでした。

「姫ちゃんっ読んだ?読んだ?なんて書いてあった??」
「ん〜〜」
姫ちゃんは苦笑いを浮かべて首を傾げます。
「それが、ね」
「うん?」
「読めないのね」
「…え?」
私は思考が止まります。
同じ日本語じゃないの?
「もちろん全部が読めないわけでもないんだけど。
ちゃんと理解できるほど読めないというか。
たとえば、私の字はこんなんなの」
そう言いつつ、姫ちゃんは紙に筆を滑らせる。
なるほど。
読めないことはないけど。
変わった字で。
読みづらい。
「私の時代は一字一字がかちっとしてるのね?
だからこんなキレイな流れるような字、読めないの。
…どうしよ」
「読もうか?」
「でも、さすがに手紙を人に読ませるのも気の毒だし」
姫ちゃんはこういうところは律儀です。
でも。
「だからって読めなかったらどうするの?」
「うん。。まさか読めない言い訳なんかできないし…」
私にしては積極的に言い出しました。
好奇心も、かなりありましたが。
「代筆もするよ?」
「…頼むしか道はないか。
それに。他の人には頼めないしね」
姫ちゃんの返事をきいて、さっそく目を輝かせながらその文を受け取りました。
ついつい頬が緩みます。
きっと恋文だと思うのです。
「え〜っと、『突然のお手紙、失礼します。
実は私には好きな女子がいます。
けれど、私は手紙の書くのが下手で。
直接話をするのはもっと下手です。
局長の妹御にこんなことをお願いするのもどうかと思いますが。
他に頼む相手がいません。
どうか。文の相手と。
そして話相手になってもらえませんか?』」
手紙は以上で。
ホントに簡潔だったけど。
少しつまらないと思ったのは否めない。。
「な〜んだ。全然たいしたことじゃなかったね。
よかった、めんどくさくなくて」
「めんどくさい?」
「ホントに恋文だったら断らなきゃいけないでしょ?
心底悪いってわかってるけど。
めんどくさいよね〜」
姫ちゃんには。
こういうところがあります。。
今まで歩んできた恋愛がそうだったのでしょうが。
姫ちゃんが沖田さんに重なるのはこういう瞬間だったりします。
「それなら、恋文の練習相手は千鶴ちゃんお願いねっ
私は話相手になるから。
なんか恋の応援って楽しそうだね〜☆」
自分が無関係だと分かった途端にわくわくとしだします。
でも。
女子ってそういうものなのかもしれません。
「手紙、私でいいのかな?」
「これは歳三さんにバレていいことじゃないでしょ。
バレてぎりぎり一ちゃんってとこかな。
役立たずだろうけど」
…否定ができません。。
ただまあ。
こういうことは永倉さんたちにバレてもややこしそうです。
絶対に茶々を入れにくるに決まっています。
相手の隊士さんは。
確か三番隊。
斎藤さんのところの隊士さんです。
いざとなったら頼るには、
斎藤さんでちょうどよかったのかもしれません。
こんな言い方は…なんだかよくないですが。


ただ、この手紙から始まった恋愛応援が。
姫ちゃんを追い詰める事件の始まりになるとは。
2人とも思っていなかったのです。




「先日の手紙、読んでもらえましたか?」
人に見られるときっと面倒になる。
という理由から。
姫子は一目の少ない路地を選んだ。
巡察でもあまり通らない道である。
「はい、で。お返事です。またそのお返事お待ちしてます」
そう言って姫子は千鶴が書いた文を手渡す。
千鶴が何を書いたかは知ってる。
話に矛盾点が出ないように。
2人で協力し合ってる。
「ところで。好きな人はどんな人なんですか?
私でいいのか、わかんないですよ?
その人によっては私の教授、逆効果になるかもだし。
第一あんまり一般女子と同じな自信もないし」
千鶴のことは置いておいて。
自分が世間一般に近いとは思えなかった。
もとの時代でもそうだったのに。
この時代だとどうなるのだろうか。
三番隊らしい…とでも言おうか。
斎藤の部下らしい、真面目そうな青年だった。
年は姫子と同じか、もしかしたらもう少し上かもしれない。
「剣術ばかりしてきたので、女子にあまり免疫がないんです。
だから、とにかく話が…うまくできなくて」
緊張しているんだろうなということが目にみえてわかる。
姫子がそんなに苦手なタイプでもなかった。
「可愛い人ですか?
キレイな人ですか?」
とにかく姫子は人の恋愛となったら楽しい。
「か…可愛い方です」
思い出したのだろう、少し顔が赤くなる。
「なんかいいな〜青春っ」
普段ならこんな発言でいろんな人に「おばちゃんか」と突っ込まれるところだが。
局長の妹にそんな突っ込みができる青年ならこんな頼みことはしていない。
「あ、すみません。あと。お名前お伺いしてなかったです」
「申し遅れました。木嶋と申します」
「木嶋さんですね。精一杯がんばりますので、よろしくお願いします」
「ありがとうございます!」
きちんとしたお辞儀をする。
姫子は純粋にも応援したくなった。
その微笑ましい恋路を。



「千鶴ちゃ〜ん、読んで〜」
帰って即。
姫ちゃんは私に文を手渡しました。
最初の返事を読んですぐに、その場で木嶋さんは返事を書いてくれたそうです。
どうやら何日か仕事でバタバタするそうで。
姫ちゃんも楽しそうですが。
たぶん、私のほうがわくわくしてるんだと思います。
刺激の少ない日々で。
今、一番の楽しみになっているのかもしれません。
「いろんな質問が書いてあるよ。
姫ちゃんの答えそのまま書き留めるから、ちょっと待ってね」
私はすぐに紙と筆を用意しました。
「え〜っと、まずは。好きな場所はどこですか?」
「ん〜静かなお寺の誰もいないお堂とか、好きかも。
あとは高いところ好きだから、屋根の上とかもサイコー」
先日屋根の上にいるのに梯子を片づけられて大騒ぎになったこと。
ちっとも気にしていないようです。。
通りかかったのが永倉さんだったから。
飛び降りたままに、ちゃんと受け止めてもらえたものの。
自力で降りようとするから驚きでした。
「じゃあ、好きな食べ物」
「すきすき攻撃だね〜。お豆腐」
気付いたら湯豆腐をすごい量食べてたりします。
姫ちゃんのもち肌はもしかしたら豆腐のお影かも。
「武士道とは?」
「なんか、路線が変わったね?」
確かに。
「今回はこの質問で終わりだけどね。
確かにあんまり女の子にはしない質問だよね」
何かに悩んでいたりするのでしょうか?
それとも、やっぱり話題にしやすいのでしょうか?
「背中がかっこいいこと…かなあ」
姫ちゃんは少しぼーっとした感じで呟きます。
私が書き留めるのに気付くと、背筋をしゃんとして説明を始めました。
「敵には背を向けるなっていうけど。
大事な存在を守るときにはね。
その存在から見えるのは背中でしょ?
見た目が筋肉で引き締まってるのも確かに私的には高ポイントだけど。
でも見た目じゃなくて。
雰囲気?
とにかく。
背中がかっこいい人は武士としてすごくかっこいいと思う。
わかる…?」
首を傾げる姫ちゃん。
私も書き終えて。
少し考えます。
「でも。
好きな人だったら。
背中よりも顔が見たいかも」
そう答えた私に。
「きっと憧れだから、背中なんだよ」
私は尚も考えました。
けど。
やっぱり。
「背中は、寂しいよ」
「うん。だからその背中に抱き付くのが好きだよ」
きょとんとした私に。
姫ちゃんはおもしろそうに笑います。




「なあ、千鶴。最近なんか2人でこそこそしてねえか?」
夕食当番の最中。
そんなことを原田さんに言われ。
私はバカ正直に目を見開き、首を振ってしまいました。
「おーそーか、なんか隠してるか」
意地悪な微笑み。。
「かっ、隠してませんよ」
一応否定をする。
「嘘言え。そんな平助でもわかるような反応しやがって」
私、そんなにわかりやすかったかなあ。。
「なにしてんだ?」
「…女の子の秘密です」
「へ〜」
オタマをかき混ぜる手を止めたまま、原田さんはにやにやしてます。
「悪いことじゃないですよ?」
「いいことか?」
「はいっいいことです」
「でも秘密か」
「秘密です」
「まっ。いいけどな。なんか2人とも楽しそうだし」
「楽しそうに見えてますか?」
「おう。ホント、女の子の世界だな」
ちょっと嬉しいです。
「そういえば、原田さん」
「なんだ?」
「姫ちゃんは男の人の背中が好きみたいですよ」
私はわざとちょっといじわるそうに言ってみました。
「背中?」
「はいっ。武士道とは『背中がかっこいいこと』って言ってました」
「ふ〜ん」
「わかります?」
「言いたいことはよくわかるな。
つまり、ついていきてえって思う奴ってのは、背中がかっこいいもんなんだ」
「でも、私は背中より顔がいいって言ったんです」
「だから、俺の場合な。
恥ずかしい話だけど、いいか?」
原田さんの恥ずかしい話…?
「向き合ってたいって思うのは、新八とか平助。
背中についていきてえって思うのは近藤さんや土方さん。
だから。
千鶴にとってイイって思う相手は、一緒に歩いていきてえ奴で。
姫にとってイイって思う相手は、支えたいって思う奴なんじゃねえか?
三歩下がって、影踏まず。
意外と女らしいのな、姫」
「あ。姫ちゃん、それじゃ寂しいから抱き付くのが好きって言ってました」
一瞬きょとんとした原田さん。
次の瞬間には大爆笑でした。

原田さんはやっぱり姫ちゃんが好きな気がします。
だって姫ちゃんの話をするときには声が優しいから。
女の子の勘は、きっと確かなのです。




そしてそれから十日ほどして。
最初の小さな異変が起こるのです。




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    ・ハイキング
    ・邦画・ドラマ鑑賞
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