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水村美苗に事件はない このエントリーを含むはてなブックマーク  / 2008年11月13日(木)
むかしのことだが、大学に入って、小さな <文芸サークル>(そこに電藝の創刊メンバー一同がいた)に顔を出すようになった頃、顔なじみになりつつあった学生が、部室に置き手紙を残して、以後一切姿を見せなくなったという事件があった。

置き手紙には、「先輩たちが天候のように文学について話すような環境に耐えられいのでもう辞めます」というようなことが記されていて、辞めるも何も、ただ授業(や映画)の合間に時間を潰せる部室があるというだけの、サロンのような集団であったそのサークルの人間は、何か明らかに侮辱されているらしいのに、そのことの <意味> が今ひとつわからず、狐につままれたような後味の悪い思いをしたのだった。

――というわけで、天候観測的に、水村実苗の反動的な本をめぐる騒動について記してみる。筆者はこの本を読んでいないし、騒動を傍観した結果、読まなくてもいいかと思い始めている。

まず(といっても何が発端か知らないが)、梅田望夫という人がはてなダイアリで好意的なコメントを寄せ、この本が飛ぶように売れ始めたという(ネット上で極端な言説を吐く論客として知られる池田信夫氏もホメていたように思うが、今、該当のエントリが見あたらない)。梅田氏は日本におけるデジタルネイティブ(笑)の代表的な存在であるはてなの取締役であり、ITビジネスの世界で影響力がある人といっていいだろう。ビジネスハック、ライフハックのたぐいにやたら向上心があるはてな市民が一斉にこの本を買い漁ったわけである。

一方、この本の反動性に反発したヒトたちが、梅田氏のダイアリに一斉にブックマークコメントをつけた。いわゆるはてブであるが、これに対して梅田氏が自身のtwitterで「はてブコメントにはバカなものが多い」とコメントしたため、「作った人間が使っている人間をバカとはなんだ」「はてブはとっくに2ちゃん状態」などいわゆる炎上の状況になった。

梅田氏の言う「バカ」とは、水村の本を読まずに反論しているはてな市民のことなのだが、一方で、読んだ上でいろいろ書き始めるヒトたちも現れ始めている(わりとすぐ読み終わる本らしい)。

例えば仲俣暁生という人(wiredvision関係の人?)は、水村を徹底的にこきおろしている。しかしこれはこれで、ブンガクの状況を知りもしないし、おそらくは関心もないゆえ、日本語の未来に悲観的で近代日本文学を称揚している(らしい)水村を、ブンガクの状況に詳しいと自認する仲俣氏がくさしているという図で、どちらにも肩入れする気にはならない。水村は今の文学の豊潤さを知らないからこんなことが書けるのだと憤る仲俣氏が例にあげているのが、リチャード・パワーズやらジュンパ・ラヒリやら古川日出男やら保坂和志やらでしかないのは、やっぱり貧しいイメージと感じられるからだ。はてなキーワードによれば、仲俣氏の口癖は「僕は読んだことないが」というのがまことに笑わせるのだが、そもそも水村美苗が岩井克人夫人であることを知らないのは、天候観測者から見れば不勉強であると思う。

「『文学の終わり』を憂える声はいよいよ緊迫した響きを帯びている。……(中略)……今や、広く読まれる小説といえば、つまらないものばかりになっていると、人はいう。」と水村が書く、この「人」とは誰なんだと仲俣氏は噛みつくが、自分の属する世界にない事象はないものと過信するこういう姿勢は、悪意のある無邪気さで人を怒らせる高城某を思い起こさせるなあ。

とは言っても仲俣氏の水村批判はその通りであると思うし、彼が指摘するように、水村美苗のこの本が小林秀雄賞をとる可能性はたしかに高いだろう。ま、どうでもいいのだが。と思う理由(そしてこの本を読まなくてもいいやと思い始めている理由)は、これまでの水村の4冊の本(たいくつなものである)を読んでいれば容易に内容を予想できるからであり、この本自体は、事件でも何でもないと思うからである。とはいえ、永遠の少女であろうとする水村の言説にはうす気味悪い政治性があり、だからこそ、これは事件ではないとスルーすることが必要なのだ。

とすると、天候観察者とは事件に注目する人のことであるか。物見高いことはハズカシイ性分であり、それはそれで批判されてもしかたがないと思っている。

 
Posted at 11:27 / books / この記事のURL
むら気 このエントリーを含むはてなブックマーク  / 2008年04月30日(水)
供の頃からむら気と言われている。おまけにAB型だから計画だけは万全であり、スケジュール表をびっちり埋めたら、あとは寝てしまう。「立てた計画の実行? そんなもの、執事に任せておけ」というわけだ。

のっけから話がそれたが、この日記が開店休業になったり毎日更新されたりするのもそんなわけで。

伊坂幸太郎「ラッシュライフ」というのが面白かったと子供が言うので読んでみて、やはりこんな程度のものかという感が強い。しかも、妙にキャラクターに癖があると思ったら、伊坂ワールドというのはつながっていて、キャラや事件がかぶっているのだと、解説で池澤直樹が書いていた。ジョイスとかいうよりCLAMPみたいだと思う。しかし作者はスティーヴン・キングみたいだと思われたいのではないかと思う。

次は、同じ趣向の小説であるらしい恩田陸「ドミノ」を読む。

 
Posted at 09:28 / books / この記事のURL
買えと言われている105冊の本 このエントリーを含むはてなブックマーク  / 2006年02月24日(金)
忙中閑有みたいなときにする暇つぶし、つまり、いかなる瞬間であろうと中断して何のストレスもない遊びのひとつとして筆者が愛するものに、「amazonのお勧め商品リストの更新」というのがある。

下に掲げてあるのは、今現在、筆者がamazonから買うように薦められている本である。

ほとんどの人はご存じであろうが、このリストは、amazonでの購入履歴やページの閲覧履歴から類推されるユーザーが併買した商品から成っている。考え方としては一応もっともらしく、さらに誤差を補正するために、「この本はすでに持っている」「興味がない」などを理由に1冊ごとにリストから外せるようになっている。1冊外すと、次点で表示されていなかった本が繰り上げられてリストに表れるのである。

データベースとしてはまだまだで、同じ本の文庫版も薦めてきたり、分冊もの、シリーズものも1冊ずつ薦めてくるので、興味がないとリストから外すのが大変(ひとたび「美味しんぼ」がリストに入ってきてしまったりしたらえらいことになる)だったりする。サクサクとはいきかねるサーバなので、いくら補正してもきりがなく、根負けする仕組みになっている。

つまりこのリストを補正するのが、とっておきの暇つぶしというわけだ。これはおそらく永遠に終わらない作業である。そして現状が下のリスト。

しかし、まあ、なんと貧しいリストであることか。105冊買っても、これだけのものしか買えないのだと思うと暗澹たる気持ちになる。「持っている本」も「興味がない本」も、まだだいぶ混じっているのだが、これは、そーゆー、データベースの仕様レベルの問題ではない気がする。

今日このリストを久しぶりに見てみて、とりあえずほしい本は、ヴァン=ヴォクト「武器製造業者」だけである。


 
Posted at 17:07 / books / この記事のURL
車掌 このエントリーを含むはてなブックマーク  / 2005年08月30日(火)

塔島ひろみといえば筆者と同世代のヒトで、トンジョ在学中に『ユリイカ』でデビューした詩人と記憶している。しかしそれ以降何をしているのかまったく知らなかったのだが、それからまもなく始めたこのミニコミ誌「車掌」をずうっと出し続けているのである(年1冊のペースで現在22-4号との由)。びっくり。

車掌公式サイトには「ミュージシャンとうじ魔とうじの妻であり(これもびっくり)、麦子と麦太の母であり、東大で何かの仕事をしてる人(たぶん事務とか?)」とある。「車掌」とは「内容を一口で言えばバカ実験のワンテーマ・マガジンで、たとえば画びょうについてあらゆることを調べるとか、何でも100回やる特集を組むとか、げっぷに従って旅をするとか、そういうことの結果がびっしりとレポートされている。」とのこと。

さっそく一部取り寄せてみたが、なんだかとても読みきれないほどの文字が書いてある。読み終えるのに半年ぐらいかかりそうだ。この号は「特集・特集」(特集の特集)で、「短い特集が41個もあり、各々の特集はとくに関連性はない。まあ、雑誌というのは普通そうだ。なのに車掌がやると“過剰”になるのだった。」というコトらしい。バックナンバーなので最後の1冊だそうだ。ちょっとうれしい。

 
Posted at 10:31 / books / この記事のURL
夏樹静子「椅子がこわい」 このエントリーを含むはてなブックマーク  / 2005年06月15日(水)
4167184249椅子がこわい
―私の腰痛放浪記

夏樹 静子

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副題は「私の腰痛放浪記」である。ミクシイでのまだいまだ氏のレビューを見て興味を抱き、アマゾンで注文してみた。ハードカヴァのものが30円あまりで買えた。なんという状況なのだろう。

これは期待通り、凄みのある本であった。ミステリそのものであり、最後まで気をぬかせず一気に読ませられてしまった。クライマックスでは手に汗を握り、目頭が熱くなってしまった。

実はちょっとした病気らしい病気に罹って、男性が経験するものとしてトップランクに属するらしい、ひどい激痛発作に襲われたばかりなのである。そんなわけで、なおさら感情移入したのかもしれない。小説家は「痛み」そのものをテーマにしたのである。


 
Posted at 16:14 / books / この記事のURL
谷譲次「踊る地平線」 このエントリーを含むはてなブックマーク  / 2005年04月15日(金)
踊る地平線
谷 譲次




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いつ、そしてなぜ買ったかも思い出せない谷譲次の旅行記「踊る地平線」を引っ張り出して来て読んでいる。ハッ、もしかして「踊る大捜査線」ってこれをもじってる!? なぜ「踊る」なのか、長い間不審に思っていたのだ。もしそうなら、またえらくマニアックなもじりかたをしたものだ。

もっとも、谷譲次は映像にかかわりがあり、またマイナーな作家でもない。林不忘という名で丹下左膳を創作したヒトだ(丹下左膳の最初の映像化は、昭和3年の伊藤大輔のサイレント『新版大岡政談』)。「新青年」などに書きまくっていた戦前の作家で、山ほどの連載をかかえたまま、なんと35歳で急死してしまう。経歴を調べると、中学を中退して渡米し働きながらむこうの大学に通い、帰国後「探偵文芸」などに書き始めたとある。大正後期の頃の話である。

「踊る地平線」は昭和3年初頭(?)に出発し、1年半かけて「全ヨーロッパを歩きつくす」各国巡礼を軽妙な筆致でつづった紀行文学。行きは上海、ハルピン、シベリアまわりの陸路、帰りはジブラルタルまわりの航路である。当時、文壇人の海外渡航は著しく、一種のブームであったらしい。

地平線が踊るような旅というのも、してみたいものである。もちろんBGMつきである。

 
Posted at 21:09 / books / この記事のURL
恩田陸「麦の海に沈む果実」 このエントリーを含むはてなブックマーク  / 2005年03月31日(木)
標記の小説を読んだ。

この題名の小説は、迷宮的な連作小説「三月は深き紅の淵に」の中に、まさに書かれようとしているものとしてすでに登場している。さらにこの小説の中にも、「三月は深き紅の淵に」という題の書物が登場する。ただしここでは大きな説話的混乱も起こらず、結末に向けてたんたんと奇妙な寄宿学校でのできごとが語られる。

北海道の原野に建てられた天然の要塞のような学園、天才といわくつきばかりの生徒たち(生徒たちは学園を前者にとって「ゆりかご」、後者にとって「墓場」と認識して互いを監視している)、性別不明のあしゅら男爵のような麗人(男装も女装もする)の学校長、という少女マンガか「少女革命ウテナ」のような設定。

「三月は深き紅の淵に」の読者としては、夢のもやがかかったような学園生活の描写に、いつその夢が破られるのかという期待をいだいてしまうのだが、プロローグで予告され、律義に落ち着く結末は、通り一遍のものではないにしても、それこそ「想定の範囲内」というやつで、いささか消化不良に陥らざるを得ない。「漢ひ漢ひ漢ひ漢漢」と「漢漢ひ漢ひ漢ひ漢ひ」という鏡像的な題名を冠された小説として、もう少し絡み合うような対応がほしかったと思うのである。

 
Posted at 08:57 / books / この記事のURL
宮沢章夫 このエントリーを含むはてなブックマーク  / 2005年03月15日(火)
宮沢章夫「サーチエンジン・システムクラッシュ」を読んでいる。劇作家の小説なので、こういうふうには自分には書けないなあと思いつつ、舞台特有の強い異化効果におかされてゆくのが心地よい。
しかし中島らもと同じよなあやうさがあるなー。時期は違うが朝日新聞のコラム仲間なのである。朝日ってそゆのが好きなのか。田口ランディとかも好きそうだ。

それにしても河合マーク氏にこういうものを書いてほしかったのだが。

 
Posted at 08:53 / books / この記事のURL
おれはカザノ派 このエントリーを含むはてなブックマーク  / 2005年02月20日(日)
モンキー・パンチ・
ザ・漫画セレクション 6
おれはカザノ派 (6)

モンキー・パンチ



講談社 2004-09-22
小学生の頃「漫画アクション」で愛読して以来、数十年も単行本化を待ち望んでいたモンキーパンチ「おれはカザノ派」(当時はそれが「カザノヴァ」のもじりであることなど思いも及ばなかった)がついに刊行され、再読することができた。記憶のとおりに、なんと洗練された線なのであろうか。やはりオドロキである、モンキーパンチ。

 
Posted at 10:49 / books / この記事のURL
十二支と十二神将 このエントリーを含むはてなブックマーク  / 2005年01月03日(月)
年賀状を書かなかったので2005年がナニドシなのかわからないままだ。動物の名は年月を表す符号に過ぎないのだが、キトラ古墳の壁画が赤外線撮影され、武器を携えたネズミやトラなどが描かれているらしいとのこと。本来、十二支と十二神将はまったく別の概念なのだが、初唐代には融合が始まり、頭部に獣面を付けた神将像などが出現している。塚本邦雄の奇妙な小説が思い起こされる。

 
Posted at 23:25 / books / この記事のURL

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