血と骨

December 05 [Mon], 2005, 21:54
【暴力と性欲と金銭欲にまみれた金俊平が真に求めたものはいったい何なのか…?!】

正直、途中で見るのをやめようかなと何度も思ってしまった映画です(特に豚のシーン)。
けれど後半、無茶苦茶な金俊平にも彼なりの考え方、価値観があるんじゃないかと気づかされ、ふと興味がわいてきました。とはいえ、俊平はどこか歯車がかみあわないまま、関わった女性の誰一人も幸せにできず、ついには孤独の死を迎えることになるんですね。激しくも壮絶な男の生き様を見せつけられてしまいます!

金俊平が欲してやまず、最後まで手にいれられなかったもの、それは愛情だったんじゃないでしょうか。愛する人に愛され、その人と自分の血をわけた子どもを自分の手で可愛がって育て慕われるというごく普通のもの。なのに俊平は本能に忠実に行動しすぎる男なんですよね。それが後々災いとなって自分の身にふりかかってきている気がします。

金俊平の人生を狂わせてしまった最初の原因は一体何か。それは…俊平がまだ若かりし頃どこかの奥さんをてごめにして、その奥さんは怒り狂った夫に殴り殺されるという出来事があったらしいのですが……。その頃の俊平はそんな自分の誤りに気がつかないまま、後になって取り返しのつかないはめに陥り、過ちを繰り返さざるをえないようになったんじゃないかと思うのです。


大阪にやってきた金俊平(ビートたけし)は李英姫(鈴木京香)を一方的に気に入り、二人の子どもをもうけます。いろいろ苦労もありましたが、かまぼこ工場を造り従業員を雇い家族の協力もあって順調な毎日を送っていました。
ところがそこへ俊平の息子と名乗る男朴武(オダギリジョー)がやってきます。成長した朴武はほがらかでくったくのない青年でした。想像するに、彼の母親もおおらかな明るい美人で、旦那さんがあまりの嫉妬で殴り殺してしまうくらい魅力的だったのではないでしょうか。それともただ豪放な男性と縁がある人なだけだったりして?!ともかく、親戚中をたらいまわしにされた武は皮肉にも、俊平の家族が一番調子良く軌道にのっている時にひょっこりやってきます。
俊平は武を家族として招き入れるわけにもいかず、武がかたぎでないことに薄々気づきながらも結局追い返してしまうわけですが、手放した矢先に武を死なせてしまいます。武は身なりからして金に困ってやってきたわけでないのは明かです。武も小さい時からずっと父の愛情や家族を欲していたはずなのに。寂しがりやの甘えん坊だったはずなのに…。

その後、俊平は英姫に生ませた息子の正雄(新井浩文)が物足りなくなってきているようでした。虫のわいた生肉を食べる俊平を見て正雄は気分が悪くなったりしていました。ないものねだりというか、死んだ武が頼もしく思えてしまうのでしょうか、「くそばばあ(英姫)が育てたせいでひ弱になりやがって」などとと俊平はつぶやきます。

やがて俊平は新しい家を買い美しい愛人清子(中村優子)をかこいます。俊平と清子はとても気があい仲がよさそうでした。ところが清子は、2年たっても子どもを産まないばかりか重大な病気になってしまうんですね。意地でも息子が欲しい俊平は新しい女性定子(濱田マリ)を求め、やがて子どもを次々ともうけます。俊平はあわれな清子を殺さなくてはならなくなりました。そして俊平はますます金儲けに没頭するようになり、客を自殺に追い込みます。そんな俊平の奇行の影響からか、ついにかわいい娘花子(田畑智子)まで死なせてしまいます。俊平が懸命に生きようとすればするほど理想からかけ離れていっているようでした。

一方英姫は働き者で家庭を守ろうとする女性でした。でも俊平は英姫が自分より子どもばかり大切にしたり自分とはりあったりするのが気に入らなかったのでしょうか。年老いてからの俊平は、正雄に対して妙な対抗意識があるようにも見えました。英姫が高信義(松重豊)にひそかに思われ続けていたのも俊平はどう思っていたのでしょうか。


定子がまたどうしようもない女性だったんですが、弱った俊平をたたきのめすシーンが実は爽快でした。気は優しくて頭の弱い連れ子の長女が泣いてるのもいいんだなあ。でも、まさか息子を盗られるとは思ってなかったでしょうね。定子が驚く様子を想像すると滑稽というかちょっと笑ってしまいます。

北朝鮮に渡った俊平と末の息子には厳しい暮らしが待っていたようです。
金俊平が最後に見た夢は大きな希望を抱いて大阪にやってきた若い自分の姿でした。一度死んで、そこからやり直す他に手の施しようがないくらいの人生でした。傍らにいた息子はその時の俊平とそっくりでしたね!彼らは一体何を考えていたのでしょう…。

「血と骨」血は母より骨は父より受け継ぐ。子は親を選べないし、親も子を選べるようで選べないんじゃないかと思いました。授けられた生を精一杯生きるしかないですね。とても恐ろしい物語でした、でも面白い物語でした。
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じぇるの
kanonさま
コメントありがとうございます!

>でも、最後は厳しい生活が待っている古里に戻る・・・そこで、やっと本当の愛を見つけたのかもしれませんね

わあ、いいですね〜! そうかもしれませんね!!
息子の、少しは明るい未来が見えてくるようですよ〜。

ホント、最近邦画がいい感じですね。
これからもよろしくお願いしますね。
December 14 [Wed], 2005, 17:19
TB&コメントありがとうございました

1人の男の生き様を「これでもか?」と思いっきり 見せつけられるような映画でした。

じぇるのさんがおしゃってるように、「愛というものを自分の中で、歪んだ形」に表していたのかもしれません。
久しぶりに自分のレビューとじじぇるのさんのレビューを見て、「愛なんだな」って、思いました。

でも、最後は厳しい生活が待っている古里に戻る・・・そこで、やっと本当の愛を見つけたのかもしれませんね。

最近、邦画も良く見るようになり、骨のある(笑)作品が増えてきて楽しみになってきました。
 また、お邪魔しますね。
December 14 [Wed], 2005, 2:05
じぇるの
きのこスパさま

コメントありがとうございました!
おっしゃるとおり、”金俊平”ができあがってしまった社会背景があるんでしょうね。
金俊平を生まないように、またならないように、日々生活していきたいなと思っています!
December 10 [Sat], 2005, 16:31
はじめまして、
コメント&TB、サンキューです。

正直、ボクはこの主人公には共感出来なかったのですが、お金と暴力だけを信じ、最期は孤独の中で死んでいく……ある意味、とっても可哀想な人なのかなと。しかも(ここの記事にも書いてあるように)誰も幸せに出来ず、誰にも愛してもらえず、ある筈のないパラダイスを探し続けて息を引き取る様は、何とも哀れ。もしかしたら彼は“時代”に踊らされた被害者だったのかもしれませんね。
December 09 [Fri], 2005, 22:22
じぇるの
gootaraさま

コメントありがとうございます!
人が生きたり死んだり、食べたり働いたり、誰かを好きになったり暴れたり、本当にリアルでしたね。
最初イヤだったのに、後でクセになってしまった映画でした!
December 08 [Thu], 2005, 23:01
コメント&トラックバックありがとうございました。見るのを途中でやめようというお気持ちはよく分かります。逆に言えば、それだけリアルに作られていたという事にもなりますね。いやー、凄い映画でした。
December 08 [Thu], 2005, 3:31
じぇるの
とみさま

コメントありがとうございます!
ウジといえば定子の娘が焼酎漬けのビンをながめて「ウジ虫ウジ虫」と喜んでましたね。
最期は感慨深かったですね〜!俊平は暴力でまわりをねじ伏せてきたのに、北の権力に翻弄されてしまったのにも、凄まじいものを感じました。
December 07 [Wed], 2005, 22:04
とみ
 TB&コメント、ありがとうございました。色々と凄いというか、激しい映画だったと思います。俊平が、ウジのわいた生肉を食べたり、子供ができない清子に、ウジ付生肉を無理に食べさせたりする所も、妙に印象的でした。
 俊平は北朝鮮に、莫大な寄付をして渡ったのに、真冬に、、あんな寒そうな部屋で、白い息を吐きながら亡くなる、というのも、感慨深いものがありました。
December 07 [Wed], 2005, 7:13
じぇるの
れおさま

コメントと、いつもTB返しどうもありがとうございます!

原作は、恥ずかしながら、朴武が出てくるところを中心に読んでみました。寂しげでやさぐれたイメージで、映画のキャラとかなり違っていますね。ということは、それによって映画の金俊平の人となりやメッセージも原作とは違ってくるのかなと思いました。

>ずっと眉間にしわを寄せながら読んだ本はありませんでした。

うわ〜、すごそうですね。なんだか挑戦してみたくなりました(笑)

これからも、よろしくお願いしますね。
December 06 [Tue], 2005, 22:30
じぇるの
nofx100廣瀬研一映画感想文さま

はじめまして。コメントどうもありがとうございました!
実は、興味深く、いろいろと読ませていただきました。とても面白かったです。
これからも、どうぞよろしくお願いしたします。
December 06 [Tue], 2005, 22:17
じぇるのさま
TB&コメントありがとうございました。
金俊平の人生は、すさまじいという形容詞がピッタリですよね。
原作はお読みになりましたか?
ずっと眉間にしわを寄せながら読んだ本はありませんでした。
ご興味がありましたら、どうぞ!
オススメですよ
December 06 [Tue], 2005, 21:10
nofx100廣瀬研一映画感想文
トラックバックありがとうございました。
私んとこはかなり地味なブログをやってますが、暇でしたらまた見に来てくださいね。
December 06 [Tue], 2005, 18:25
P R
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