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また会おう

/ 2019年03月04日(月)

子供が猫を見るときに良く
「ねこ、おこってるの?」
「ねこ、めっちゃおこってる!」
って言うんだけどこの猫は元からこの顔で、なんならめっちゃ甘えてゴロゴログルグルいってるときの顔がコレだから。この顔と音がいつもそばにあって、それはもうあまりにも自然な日常の一部なのです。

そして唐突にアレなんですがこちらの猫、正式には朔太郎を先日看取りました。11歳。癌でした。私は父が癌、母も癌(サバイバー)、そこへきて猫、お前もかという感じで、もう気持ちの持って行きどころがわからない。少し早すぎるんじゃないのかとか、もっと早く気づいてあげられればとか、嘆いても悔やんでもカウントダウンは進んでいくのです。
注射、投薬、その他諸々、色々やってはみましたが、結局のところほんの少しの延命になるだけのようで、寒い中の移動と待ち時間でストレスを与えるくらいならば、好きな場所でゆっくり過ごさせよう。猫の安らか看取り大作戦の決行です。
リビングには猫の基地(すべてのものを近くに!)を設置し、昼は走り回る子供たちの足や降ってくるおもちゃから猫を守り(看病よりもこれが一番骨が折れました)、夜は私がリビングに枕を持ち込み、しばらくぶりに私と猫の二人きりの時間。猫は私のお腹に乗ったり腕に乗ったり、のんびり寝て過ごしました。
思い返せば昔はこれが当たり前だったのに、いつの間にやらデカい外人が増え、小さい生き物が増え、二人(私+猫)で過ごす時間はどんどん減ってしまったもんな。迷惑だったかな。ずっと二人でいたかったかな。それとも賑やかで楽しかったかな。私は猫じゃないからわからないけれど、猫はずっと私の隣で眠っていた。
そして時折ピクピク体を痙攣させ
「ついに来たか!」
と私が起き上がると、猫は平然とムニャムニャしており、どうやら走っている夢を見ているだけ。トラップだ。
やがてごはんも食べなくなり、体は驚くほど細くなったけれど、顔だけはずっと丸かった。こいつ本当に頭蓋骨がデカいんだな、と思った。水を飲むだけの日が続いても目には力があり、ちゃんとトイレに行こうと動いていたし、あれだけ嫌がらせでそこら中におしっこを撒き散らしていた猫なのに本当に大したものだと感心した。(マーキングではなくアレはたしかに嫌がらせであった)
猫はまるでインドのサドゥのように省エネをしながらふつうに暮らしていたので、
「このまま長生きするのでは?」
と思ったりもしたけれど、その時というのはやはりきてしまうもので、よく晴れた日の午前、猫はついに起き上がれなくなり、ナァァーーンと大きめに声を上げた。それはニュアンス的に
「あーこれはもうあかんわ」
と言ってるようで、
「そうかそうか、頑張ったなぁ」
とゆっくり猫をクッションの上に乗せて、頭を撫でておしゃべりをした。
それは昔住んでた部屋のこと、何回かした引っ越しのこと、喧嘩したときのこと、ずっと側にいてくれたこと、愛していたこと、今も愛していること。あなたはとても可愛くて、本当に可愛くて可愛くて可愛い。頑張ってくれてありがとう。ずっと一緒にいてくれてありがとう。猫はビクンと体を震わせ瞳孔を開き、呼吸を止めた。そして私が声をあげると、またムガッと頭を起こして私を見た。トラップだ。
それをしばらく繰り返したのちに、キラキラのガラス玉みたいな目から、スッと光が消える。蝋燭の火が細い煙をあげた瞬間だった。
子供のように大声をあげて泣く私を不思議そうに見つめる一歳の次男が、私の真似をして猫をそっと撫でた。
綺麗な箱にクッションとお気に入りのタオルを敷く。そっと寝かせて大きく開いた目を閉じさせると、猫はいつもゴロゴログルグル甘えていたふてぶてしい顔になった。体はまだ暖かく、ただ魂だけがそこにないのが不思議だった。

さて次の試練は長男(およそ4歳)である。
長男は果たしてどこまで理解できるのか。通っている保育所まで迎えに行き、
「お花を買って帰ろうか」
と誘う。
「猫ちゃんはもうねんねから起きないから、ベッドを綺麗に飾ってあげよう」
我ながらわかりづらい説明である。
「そうだね、ねこちゃん待ってるね!」
案の定何も伝わらなかった。
家について手を洗い、花を猫ベッドに入れていく。いつもと違う箱に入って花で埋まってしまった猫に、長男は
「かわいすぎる〜。トコトコトコ、歩いてそれ(箱)に入ったみたいね?……お目目、つぶっちゃったの?ねこちゃん、どこいくの?」
なんとなく少しずつ察している様子に私は言葉を詰まらせながら
「猫ちゃんはずっと体が痛かったけど、もう痛くないところに行った。オバケちゃんになるよ」
となんだかマヌケなことを言う。
「痛くないの?あー、こわくない?」
「こわくないよ。かわいいオバケだよ。でも、もう会えないの」
「会えるよ。また会おう」
なぜかそう言い切る長男。
また会おう。そうだよね、また会おう。いつかまたきっと会おう。さようならした大好きな子たちに、いつかまた会えると思ってもいいよね。れおんくん、さくちゃんがそっちに向かいました。どうぞ仲良くしてね。いつかまた会おう。大好きだよ。ありがとう。だけどまだ足元に、ついつい猫を探します。







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