疎外感なんて、そんなものいつだって感じていたんだ
純血じゃないっていうのはどこに行ったってそういう目で見られる
慣れてたし当たり前だと思ってたし
―決してそれは諦めだなんて後ろ向きで格好悪い感情とは違うけれど!―
仕方ない、とは思ってた
そんなものなんだ、って思ってた
ただそのときにいつだって感じるもやもやした気持ちがなんなのかなんて分からないし
知りたくもないって見ないふりをしているうちに
本当に忘れてしまった、はずなのに
「何だよもー」
「あはは、ツナごめんって」
いつだって良く笑う、十代目は野球バカと一緒にいるときに
怒ったふうに、拗ねたふうに、楽しそうに、困ったように
いろんな種類はあるんだけどでもその根底にはいつだって好感があった
そんなの、イライラとかそりゃぁするし野球バカが気に食わなかったりもするし
でも十代目の笑顔を見るのはすきだから
必要以上に邪魔をするだなんて無粋なことはしたくない、と一応は思っていた
―十代目に慣れ慣れしく触ったり敬意を払わないのならば別だけど―
ただ、十代目と野球バカの会話に、入れない自分に時々
本当に時々だけどなんだか妙にもやもやした気持ちが渦巻くような感じがして
(なんだっつーんだよ、まじで)
やつあたりみたいに喧嘩を買ったりしては、それでまた疎外感を増幅させる悪循環
何がしたいのか分からないけど何かしたいし
何処にも行きたくないのに何処かへ行きたくてたまらなくて
我知らずに溜息をついた
それを聞かれたくない、いちばん弱みなんてみせたくない人間に聞かれてしまったことを
一生の不覚だと思った
「溜息つくと幸せが逃げるんだぞー」
「うるせぇよ」
いつ見ても能天気そうだな、と思う
こんなやつのどこがいいんですか十代目
ヘラヘラ笑って声をかけてきた野球バカに本当にイライラした
「関係ねーだろ、てめぇは野球だけやってりゃいんだよ」
(いつだって、十代目はお前ばっかり)
(昼休みの屋上は少し居心地が悪い瞬間があるんだ)
(でも認めてしまったらもう、今までみたいに笑えない気がして)
(右腕はぜったい、おれでありたくて)
「‥‥獄寺ってさー、寂しかったのか?」
きょとんとした顔で、黒い目でじぃっとこっちを見て、また能天気に笑う
いつだってお前はそうなんだよ
おれにないものだって両手に溢れるくらい持ってんだろ
寂しいなんてそんな感情、おれは知らないんだ
そんなの、いつだって
だって愛されるという感情を知らないなら寂しいなんて思うはずなくて
だから、だから
「んなわけねーだろが、果たすぞ」
凄んで見せてもこいつには効果なんてない、ばかだから
そんな強がるなよー、なんてまた笑って
おれの背中を叩いたてのひらは少しだけ温かくて
もしかしたら本当にほしかったのはこのてのひらなのかもしれない、なんて
血迷ったことを思ってしまった自分を呪いたくなった
Fin...
気付いてしまった、そのときから君は僕の大切な人だ