「機能不全家族」星野仁彦 アートヴィレッジ

January 26 [Mon], 2009, 17:10
以前朝日新聞に苦悩する学校教師の現状をルポした記事が連載されていたのをご記憶の方もいらっしゃるでしょう。

明治時代に遡って、絶対的な威厳を自他共に認めていた教師の像が年々失墜しているのはほとんどの方が認めるところでしょうが、まだ私の子育て時代は学校や教師に対して教育方針に関するクレームを言うなど考えられませんでした。

私の子どもたちがおとなしい優等生でなかったことも一因でしょうが、親である私はひたすら低姿勢で過ごしたことを思い出します。


元教師で教育研究団体TOSSの代表をされている向山洋一さんが3年前名づけた「モンスターペアレント」という名前ぴったりの保護者が急増している昨今です。


常識で通用しないような理由で給食費を払わない親や、常識外れとしかいいようのない抗議を続ける親など枚挙に暇がありません。


前述のルポ「燃え尽きる教師」シリーズに登場したある小学校の女性校長を自殺に追い込んだ保護者の母親の記事を読んだ私はやり場のない怒りと悲しみに胸がいっぱいになりました。


私自身はすべての教師に盲目的な信頼を置くというスタンスは持っていませんが、下校したのちの私的外出中に起きた交通事故で死亡した息子を巡って常識外の非難を浴びせ続ける母親に対して、息子を亡くした心情への配慮と事を荒立てたくないという気持ちからひたすら謝り続ける校長の姿には落涙を禁じえませんでした。


校長亡き後、保護者であるその母親はひたすらわび続ける校長に対して「だからでしょう、私はだんだん増長していきました」とのちに語っておられました。


精神的窮地に追い込み自殺させるまでに増長する母親もまた精神を病んでいたとしか思えない出来事でした。


暗いニュースばかりが目につくこの社会で健全な精神を保ち続けることがいかに難しいかということを痛感します。




さて前置きが長くなりましたが、今回は星野仁彦氏著『機能不全家族』をご紹介したいと思います。


著者の星野氏は福島県立医科大学神経精神科助教授を退官されたのち福島学院短期大学教授、メンタルヘルスセンター所長を兼任していらっしゃる現役の精神科医です。


35年の豊富な臨床経験で培われた知識を門外漢にも理解できるような平易な文で書いておられます。


「心が折れそうな人たちへ」という副題の本書は大きく3章からなり、特に導入部分である第1章では精神に問題を抱えていたと思われる古今東西の偉人や猟奇殺人で話題になった酒鬼薔薇聖斗などを例に挙げてその背景となる生育状況などに遡っていて興味深い読み物となっています。


他人事として気楽に読めたのはレオナルド・ダ・ヴィンチやアインシュタイン、夏目漱石など天才と呼ばれた人々の偏った精神構造を分析している第1章です。


ダ・ヴィンチやアインシュタイン、ミケランジェロ、ピカソ、モーツァルト、ベートーベンは注意欠陥多動性障害(ADHD)やアスペルガー症候群(AS)、夏目漱石はうつ病または妄想狂、ヒトラーは自己愛性人格障害、ダーウィンはパニック障害・・・などなど。

いずれも生育期に遡って様々な問題が指摘されています。



不登校、引きこもり、ニート、うつ病、摂食障害、性非行、非行、凶悪犯罪、依存症、児童虐待、老人虐待、心身症、PTSD、不安障害、DV、ストーカーなど、すべてに網羅し広く浅く、著者が医師として体験したことを交えながら例を挙げていらっしゃいますが、これらの起こる背景の要因として繰り返して強調していらっしゃるのが「子どものころからの養育環境・家庭環境の問題」「個人の脳の脆弱性、すなわち発達のアンバランス」の2点です。


前者は「機能不全家族」「アダルト・チルドレン」、後者は「「発達障害」と呼ばれ、近年注目を集めている注意欠陥多動性障害(ADHD)やアスペルガー症候群(AS)、学習障害(LD)なども包含されるとしています。


機能不全家族や発達障害は気づきにくく、認めたがらないという日本人特有の直視恐怖が災いして治療が遅れるというケースが多々あることに言及、注意を促しています。


第2章では人生の様々な時期の襲われる心のトラウマについて広く記しています。


非現実的な夢を求めて挫折を繰り返す「青い鳥症候群」や子どもたちが巣立ったあとの母親が罹患する「空の巣症候群」、「更年期うつ病」、サラリーマンに襲いかかる「上昇停止症候群」、「リストラうつ病」など、決して他人事ではない心の病気が目白押しです。


経済至上主義から一転して、最近ではスローライフやこころ重視の時代が見直されていますが、、社会は変化しても受け皿である家族の在りようをもう一度個々として考えることの大切さを痛感しました。
  • URL:https://yaplog.jp/ashy_ashy/archive/318
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P-ちゃん

☆コメントありがとうございます。

>昨夜TVで「依存症」について見ていたのですが、例えば、酒、パチンコ、携帯、運動、性依存症と、一見それって一生懸命なんだと思っていたことも、実は依存症だったのかもしれないって思ったんですよ。

ご指摘通りのことが本書にありました。
一見趣味と見紛うようなことでもあまりにとらわれすぎたり、周囲に迷惑がかかるようになって家庭や社会生活そのものが成り立たなくなっている人も多いと思いますね。

その人の持つ遺伝子ということもあるでしょうが家庭環境の大切さを改めて感じてしまいます。

私自身は胸をはれるような母ではありませんが、子どもたちが曲がりなりにも社会に迷惑をかけずに生活しているのが救いです。
January 30 [Fri], 2009, 14:00
P-ちゃん
今回ご案内の本は、私が興味関心あるの分野です。
世の中が複雑に、そしてグローバルに展開する時代を背景に、私たち人間の心の問題も想像や理解を超えた問題が多発していますね。

今朝も夫とそんな話をしたところでした。

昨夜TVで「依存症」について見ていたのですが、例えば、酒、パチンコ、携帯、運動、性依存症と、一見それって一生懸命なんだと思っていたことも、実は依存症だったのかもしれないって思ったんですよ。

性依存症は幼少期からの愛情不足から来ることがあるんですってね。
「愛されたい・・・。生きている実感が欲しい・・・。」と。

「親の愛情」 本当に大事ですね・・・。
安定根(あんていこん)のない育ち方をすると、大人になっていっぱい問題が噴出してきます。
パニック障害、うつ病もその傾向が強いですが、
モンスターペアレントも、世の中の変化と生育に問題があるでしょうね。

子どもの自主性を重んじて、その上で豊かな愛情を注いであげる。
子育ては終えましたが、息子や娘たちに「親の役割」を伝えていかなくっちゃと思っています。

January 30 [Fri], 2009, 12:18
VIN
トコさん

☆コメントありがとうございます。
朝日新聞の「燃え尽き教師」の校長を死に追いやった親の記事、あまりの理不尽に怒りに震えるほどでしたが、人間は「謝る側」と謝られる側」に分かれると「謝られる側」はどんどん増長するという図式が成り立つのだというのがわかりました。
January 27 [Tue], 2009, 22:04
トコ
「モンスターペアレント」が増えているという話を聞いたのは大分前ですが、下校後の私的外出時に起きた交通事故死を学校のせいにするとは、話になりませんね。横車を押し通そうとする親には断固として負けないだけの、弁舌と信念が教師に求められているのでしょうが、大変なことですね。どうしてそんなエゴな親が増えたのか、社会のせいでしょうか。その親を育てた家庭や学校の責任でしょうか。思考がグルグル回って解決の糸口も見つかりません。
ご紹介の本も、興味を感じる本ですが、とても手が回りそうもありません。VINさんの解説で読んだ気でいます。
January 27 [Tue], 2009, 21:53
P R
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平凡な日々を過ごせる幸せを実感できる年齢になった平凡な主婦、子どもたちも自立して夫と2人のスタート地点に戻っています。 「今日がいちばんいい日」を心に刻みながら他の人々のさまざまな人生を読書の窓から覗く楽しみを味わっています。
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