悪ガキくんとの決戦、スタート。

August 23 [Sat], 2014, 21:13
1か月しか経ってないのに、激しい劣化?
道路を渡ってくる彼は、本日紺づくめのファッションで、締まるはずが、丸いおなかに唖然としてしまう。
長身に、さらに被ったハットから漏れる髪にも白髪が目立つ。いったいどうしちゃったのかしら。隣でニヤッとしながらマシンガントークで見下ろしてくる調子に、ほとんどフリーズしながら、逃げ出したい気持ちになる。

私、けっこうイケてない男とデートしているかもしれない?!

本日、間男、魔男、再会、月1ミーティング。しかも100歩譲歩したカラオケにて。
もちろんの目的は見えている。
高校生、せいぜい大学生レベルの感性に、「この、くそガキめ・・・」と言葉汚く業を煮やしてしまい、すっきり眠れない前夜を送った。

ご実家にて夏休みを満喫なさったご様子だし、ゆるみ気味ということにしておこう。しかし、いつもの早巻きっぷりは健在で、食らわれそうになりながら、到着。
受付表も、日本語ながら頑張ってくれたのだが、いくら外国人とはいえ文字は人となりを表す。小学生みたいなのはいいとして、なんと生意気で強気な文字なんだ。書き方や態度もね、いつも四角四面なほど律儀なマルを見てる分、唖然とするくらい”悪い子”だ。

お部屋に入っても、笑えるほどに、カラオケしようとする”ふり”にしかならない。

「もし彼女がカラオケに今いるってしったら、絶対ありえないってびっくりするだろうな〜はは!」
「そりゃそーでしょう!私もそうだし!あなた、全然歌わなさそうだし〜。(そもそも歌う気ないでしょうが!笑)」

悪ガキくんは膝の上でデンモクをなにも機能しないおもちゃみたいに弄び、無機質にぽいと放ったかと思うと、当然のような顔でするりと私を引き寄せ、ゆっくりとハグとキスを始めた。

強くって重量のある身体と、びっくりするくらい優しいキス。
最後まではしない、は場所が保障しているので、ふんわりガーリーにたのしもー♪というつもりが、全然脱力できない。なんでこんなに楽しめない?しかし、ものすごい抱きしめてきたぞ、なに、そんなに好きなの?こんなにお顔でじゃれあえるくらいの情緒があるのなら、さぞかし丁寧でお上手なんでしょうね。もう、完全に顔うずめてるし。でも、この人は一気にする人じゃない。そして、させない。さらっと制止を入れると、ほーら、胸の手前で起き上がった。

・・・というわけでうたいましょうね♪
はいっと笑顔でデンモク押し付ける。もう小学生の先生の気分である。

曲が途切れると、んん、チャンス、となるので、自分がひたすら歌ってみたり、さりげなく歌を促したりしてみる。
しかし悪い子は、曲のテンポも関係なく、ゆっくりじんわりと迫ってくる。完全に”歌より女”。

膝に座ってと促すから、はぁ?と言いながらも親切してあげると、度肝を抜かれた。お姫様抱っこ状態・・・!

「案外軽いね。ずっとこうしてたい。」
「軽くない!離して!やだ!はずかしい!バタバタ!」

余裕なくなるあいぼん氏。必死で逃げたと思えば、今度は膝に乗られて、さぁやる気十分。
私だって戦う気十分。男性読者もいらっしゃるので割愛♪もちろん私、負けません。

「じゃ、私、歌うから!」
男前にさばっと言ったのだが、
「うん、それがいいよ。君の上手な歌聞きながら、君のこと眺めて、触ってるから。」
というわけで、私が隣の僕チンをほとんど無視してフンフンと歌っている最中、悪ガキくんは、私を広い胸の中に抱えては、飽きることなく、首周りをクンクン、髪をクルクル、下っ腹をナデナデ(やめろというのに)、しまいにゃ

「ああ、長い脚、こういうの好き。」

と、脚までなでなで。やはり長身だけあって、ここまで手が届くのよね、と、ふと感心。
お分かりかと思うが、特に恋愛に関しては、どっぷり男脳な私。


「でね、今日はお金の話がある」

と突然、具体的な話題を出した彼。なんだなんだ?!
なーんてね。男性が真面目にお金について語るとき、それは結婚に向かって地固め的に口説く時だ。
と、20歳の時ラスベガスへ向かう助手席にて学んだ。
この彼の場合は、地固めどころか、なんとか釣り針で引っかけるような、表面上の努力だけど。

「ん?なに〜」

無邪気に答えると、
弟さんの所属している会社に来ないか、というお誘いだそうで。しかも彼女の分も職があるとのこと。

「弟は現在月給70、僕なら90くらいはいくと。年齢と、Ph.Dだし。学問ではそこまでいかないからね。しかも!毎年1か月半も休暇がとれるって!ひとつ、人生で必ず叶える夢が、ヨットで旅することなんだ。おっきいの買って、彼女と弟家族を乗せて、世界を周りたい。それにスイス生活なら、母国も両親も飛行機ですぐだし、転職しようかなって考えてるんだよ〜(笑)君ならどうする?」

どうするって・・・?誰の立場で?
月70というと、おお、マルの来日前くらいか、と頭によぎったのも束の間。
さあ、せっかくわけわからないことを言って口説こうとしてくれているのだから、乗ってあげましょう!スイッチ、オン。

「えー!素敵ー!ヨット・クルージング!しかもスイスの暮らしなんて、世界一の暮らしよね〜!で、ヨット乗せてくれるの?♪」

あまりに冷たい対応が続いていたからか、あほな女子の甘えた質問に、不意を突かれたらしい。

「もちろん!君と結婚すれば。」

お友達としては乗せてくれないのか!じゃあ私には関係ないね〜と、露骨にスイッチ、オフ。(笑)


実は、本日のスタートアップから、ずっとhow are youを訊かれてたのを、流してたの。なんか、言いたくなくて。
でも繰り返し質問されるし、しまいには、もじょもじょと、今の彼はどう?と付け加えていた気もする。
その時はぴんと来なくて、グッドガールはお勉強について先生におボケて話し始めた。

「ん〜最近怠けてるの。」
「?」
「"研究"捗らない。」
「あぁ、そうだよね、夏休みだもんね。」
「修論ピンチ。それに結婚式の準備も忙しくて。場所をようやく決めたの。」
「ああ・・・・・・」
頭を抱える彼。

「・・・・・今の彼とはどれくらい?」
「1年半、すぎた。2年未満やね。」
「かなり早いよね?結婚について、例えば〜思い直すことはなかった?」

間髪入れない返答に、少しひるむ。

「そりゃあ、ないわけじゃ、ない、よ・・・?(あなたと出会った頃から。というか、このトキメキは今でも止められないもの。)マリッジブルー、てやつかな。」
「そりゃ、あるよな!」

わかりやすくテンション上がっているので、冷や水を。

「うん、でも、楽しみなの!準備も楽しい♪」

私なりの、マルへの精一杯のロイヤリティ。
察したのか、相手もトーンを変え、表面的な話し方に変わっていった。

「僕は、本当に、なんで結婚するのかわからない。」
「彼女がしたかったんでしょう?」
「まぁね。でもうちも、君より長いけど、あいだ1年とかブランクあったり、いろいろだからね〜」
「え、そうなの?」
「海外行ってたり。それで、なんか適当にうんうん〜とか言ってたら、気付いたら結婚、になってた(笑)」
「よかったね!あなたのためよ。」

力強くお答え。私は囲み上手な女子を応援します。
けれども、悪ガキくんは、ご納得いかない様子。

「あと1年、早く出会ってたらね。」
「ん〜?・・・2年とか前かな。」

1年で十分なのに、意味もない抵抗(笑)。

「そっか。」

悪ガキくんが素直に残念そうで、ツンツンしている自分がなんだか恥ずかしい。

「一度結婚したら、離婚はしたくないんだよ。」

ぽかん。。。意外というのか、これだけ遊び人しておいて、やはりこの人も”社会人”なのだな、とよくわからない距離を感じてしまう。

「むしろ、フランスとかの方式のほうが良かったんだけど。結婚しなくとも、子どもは一緒に育てられるし。・・・んー、でもびっくりだね!ここに歯医者で出会った子がいる!初めて出会ったとき、wow、 なんてキレイで魅力的な子なんだってびっくりして!」
「や!私こそいきなり英語で話しかけられたから、ほんとびっくりしたよ!」
「それでランチに誘ってね〜」
「そうそ、あの時うちの彼がお迎えに来てくれる予定だったからね。」
「おっと(笑)!だから、もう一度百万遍で会わなきゃ、今もなかったよね。」
「あんなところで出会うのもびっくりよね。」

あの表情を出さない、パーフェクトガイが、腹の中でそんなことを思っていたなんてね。

ちょっぴり感傷に浸る。本当に、1年早く出会っていたら、私がサボっていた歯医者にきちんと行っていれば(笑)!案外すんなり出会って、マルとは付き合っていなかったのかもしれないな。もちろん、それは起こらなかった過去なのだが。

考えれば、マルと初めて出会った頃、けっこうマルに引いている自分がいた(笑)。ひどい話だが、目をランランに開けてドギマギと不器用にエスコートされては、ああ、ご親切にどうも。くらいにしか思えなかった。それが、あ、ちょうどいいや、自分のお誕生日にぶつけてデート仕込んでやろう、とか、なぜか家に行きたくて仕方ないな〜と、前日に知らせて初めて急遽家デートしてみたりだとか、オレ(私のこと)、ここまでしかしたくない、と残酷な寸止め食らわしたりとか、相当意地悪な動機だった。そうね、じゃ、付き合ってみようか、2週間だけでも〜みたいな気持ちでYesと言ったら、翌週には神戸の良いホテル取ってくれて、さっさと身を固められた。ちょっとびっくりしながらも、彼の愛という行動に飲み込まれて、あ、この方には、身を任せていいんだな、とすっかり包まれた。彼の偉大さに。そうだったな。

一方で、歯医者で出会ったこの御方となら、何の疑問もなく、最初から両手広げて好き好きしてただろう。彼はそそくさと今の優しく誠実な、しかし魅力的でもなく、月2回しか会っていなかったこの彼女と別れ、基礎設計クレイジーな彼と私は、昼夜を問わず遊び果て、囲われて、即結婚♪ベイビー♪といったお芝居みたいな展開だったのかもしれない。

しかし、マルに出会った当時の私のまま、お金の善悪に無頓着な普通の人間として、お金持ちと結婚して楽に人生送りたいわ〜って女の子道まっしぐらだったら、どれほど楽だっただろう。そして、今でも時に渇望する。だから、揺れる。悪ガキくんの腕に飛び込めば、どれだけ楽だろう。でも、知ってしまったら後戻りはできない。目の前のことに理由なくまっしぐらであっては、生きてることにならないんだ。Ivy reague症候群のように、現代のエリートの定義は、資本主義の効率性に適合するように、何も考えずマシーンとして働くことだけど、たぶん人間そんなふうにはできてない。だから病む。なにかおかしいってことを、理性ガチガチの頭はともかく、身体はわかるのだ。


「だから、なにがしたいの!」
もう、ムダすぎて言うことすら憚られる質問。
「わかってるのに。君としたい。ね、今からホテル行こう?」
そんなに大真面目に、そのままの言葉を使って、言われるとは思わなかった。なるほど。もはや誠実さすら感じてしまう。

「だからね、私、あなたとは最後まではしないの。絶対。」
「や、僕はするから。(笑)」

・・・お互い、負けん気が強すぎて、相手を屈服させようと内心燃え盛っている。
そういえば、本当に会い始めたころ、私、とにかく扱いづらいらしいから、やめといたほうがいいよ?逃げた人も複数だし〜と親切心で言っておいたら、目が光って悶えていたのを思い出す。
ほほえみ合って、牽制。
しかしながら、会話は小声で続く。

「ねぇ、今まで既婚者と寝たことないの?」
「ん〜〜〜〜?ない。」←今から思えば、あるね!
「ま、そうだよね、君は・・・。でも周りに、知ってるんじゃない?」
「そうね。い”た”ね。私の友達、可愛いからね。」
「言うけど、僕は結婚して彼女としかしないとか、絶対無理。結婚したら難しくなるから、もう今のうちにそういう関係始めたい。君の彼氏だってそうだよ!絶対外でしてくるから!」

直球過ぎて、内心失笑!

「いや、うちの彼は絶対ありえないから!私のこと愛しすぎているもの。」

聖人マルをなめとる!あんたとはちゃうねん〜!

「それに、私はそんなふうにならないから。誰かもっと、うーん、foo・・(あほな子とは言えないし!)」
「OPENな子てことね。」
「そうそ!」

よし!とキラキラスマイルを送って、the END!!とTaylor♪みたく終止符を打てた思いきや、

「君じゃなきゃいや。君がほしい。」

ベタすぎる口説き文句と真面目顔に、スマイル凍り付く。お互い目を見て笑顔で牽制。

そうだ。私、この人の顔を、いつも覚えられない。
今日も、なんかちがう〜眼鏡かけてないから、わかんないっとか言って、最初から不用意な心の暴力を奮ってしまった。悪い癖だ。
きっと、見ないようにしているから。見つめていたら、好きになってしまう。この惹かれよう、怖くてたまらない。
ぐらぐらするのも、マルくんに破滅的迷惑を掛けるのも、マルが提供してくれる偉大なる安心を手放すのも、いやだ。

そんな全ての緊張を負って、この悪ガキくんの前ではいつも、うまく話せない。
帰宅時にはもうへとへとで、その夜、隣で寝ているマルくんは、「あいちゃん、大丈夫?」と心配して、バリバリになった肩をさすってくれる始末。情けない。切ない。それでもあの人の顔は思い出せない。そのまま眠りに落ちた。

さぁ、これでおしまいかな。
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