ローレライ
March 10 [Thu], 2005, 22:04
「ローレライ」
監督: 樋口真嗣
出演:役所広司 、妻夫木聡 、柳葉敏郎 、香椎由宇 、石黒賢
聿花の偏見に満ちた評価:★★★☆☆(原作読みたくなりました)
1945年8月、広島へ原爆が投下された直後の日本。“鋼鉄の魔女”と呼ばれた潜水艦が、最終兵器“ローレライ”を搭載して、ある任務のために港を出発した……。
新作豊作の3月4月の公開分、先頭切って観たかった今作。
奇しくも東京大空襲の日に戦争映画を観る。今だって決して平和じゃないんだよなぁって。考えなきゃいけないですよね。
ちなみに、OPでまだCMかと一瞬思ってしまった(爆) ちょっと凝っているので、遅れて入らないほうがいいですよ。
以下激しくネタばれのため、反転しています。ストーリーの重要な部分全部ばれているので注意してください。
邦画って、基本的にあまり期待しないんですが、なかなか面白かったです。
まあ、製作費から考えれば、CG等映像の問題については……。ただ一言言わせていただくと、「プラモデルかと思ったよ」。海上シーンとかもちょっと。ロケの方がよかったんじゃないかなぁ。
この辺が、非日常の邦画の評判を落とす理由のひとつなのかもね。ヒットする邦画って、身近な設定のもの多いですものね。
それと、リアルと言うなら折笠一曹! 戦時教育を受けていた君が、あんな刺激的(当時比)な格好をした、若い女性を前に普通に会話してはいかんよ。それに、機密保持者だからって、艦長に普通に話しかけちゃったり。旧軍って、もっと厳しいイメージあるんだけれどなぁ。
全体的に、アニメっぽいなと思いました。
監督が、ガイナックス(エヴァンゲリオンとかで有名なアニメプロダクション)とかにも関わっていたと聞いて納得(あ。だからアニメ関係者で、押井さんとか庵野さんの名前がエンドロールにあったのか)。特撮とかアニメとかに深く関わる人だからこその題材だったのかもしれないですね。
映像も、そういう世代の私には観やすくて、原爆シーンとかの映像の重ね方や、爆雷の乱射シーンなんか、絵的にすごくよかったですね。そういえば、戦闘や凄惨なシーンにきれいな音楽をかぶせるあたりなんかも、アニメ的な気もしますねぇ。
音楽と言えば、モーツァルトの子守唄。本当に美しかった。「子守唄」を持ってきたところがすごくいい。
ローレライの魔女のイメージにもぴったりだし(アリアみたいな歌は歌わなさそう)、絹見艦長や、木崎大尉の子供に対する台詞なんかとかぶって。鎮魂にも、癒しにも、勇気付けにもなりえる。
他のサントラ・音響もよかったです。そういう意味では、ものすごく充実。
ローレライシステムは、いかにも日本アニメにありそうな……。あの時代の人が、3D映像理解できるのでしょうか?
しかし、日系クウォータードイツ人のパウラ。ユダヤ人ではなさそうだったけれど、純血種ではないから、あんな実験にも使われたのかもしれない。なんて、ナチス物好きなので思ったり(ぉぃ)
でも、ローレライシステムの構築など悪役をナチスに丸投げした感じ。ハリウッドじゃないので、ナチスならどこまで悪役にしてもいい。というのもどうかと。同盟国だったわけだし、日本も十分悪役だったわけだし……。
ローレライシステムがあったからと言って、回避も攻撃もかなり指揮系統・技術がしっかりしていないと不可能だろうし、そういった意味でも、寄せ集め感が薄かった。ここが、クーデターなんかの伏線になると思うので、「回天の子がいる。他は、みんな同じところから来たの?」みたいに感じられるのは良くなかったかな。
ストーリーは予習無しだったので、ローレライの正体の時点で艦長以上にびっくりしました(笑)
あと、浅倉大佐の作戦。高須技師のクーデター。びっくりしました。本当エンタメとして良い。ただ、浅倉大佐の「切腹」の論理が見えづらかった。だからって、首都に原爆か!? みたいな。
伊507は、折笠の故郷(?)長崎を守れなかったんですよね。艦長は1つの原爆も許さないくらいの意気込みだったのに。そのことに関しての、彼の苦悩とか見たかったな。
他にも、清永を見捨てなくてはいけなかった時、最後の最後に子供に頼り、人間兵器を使わなくてはいけなかった時、もっと深い心理描写があってもよかったかな。
まあ、文庫本4冊を2時間強にまとめるんじゃ、ストーリーの大筋追うのでいっぱいだろうけど。
戦争物として。
タイムリミットのある作戦。どうも間延びしているように感じてしまった。潜水艦物には付き物の密閉感も足りない。音を殺すときの緊張感も少ない。この辺は、戦争映画として失敗。
最後の太平洋艦隊との交戦シーンは、爆発無しにもかかわらず意外と見ごたえありました。
でも、原爆誘爆しなくてよかったね。一瞬、最終的には原爆の誘爆で伊507、太平洋艦隊もろとも全滅かと心配しちゃいましたよ(ぉぃ)
伊507も、もっとはっきりと沈んだ方が好みだったかな。N式の二人に託された感じで。でも、魔女の歌声とともにどうなったか不明。っていうのも、伝説っぽくていいかな。まあ、あの攻撃のされ方で、避けきれるかというと……。おのずと答えは出ちゃうんですが。
余分だったもの。最後のシーン。
作家は、果たして必要だったのか。あの米兵の思い出がたりで始まって〆るのはいいけど、なら最初にも作家は出てくるべきだったのでは? あぁ。印象的な冒頭は作家の作品の一部なのかもしれないですね。なるほど。
でも、上川さん、何者? でせっかくの余韻が薄れたのは残念。
足りないもの。細かい描写。
例えば、パウラが食堂に入ったときあんなに、びっくりされていたのに(存在は、倒れた時にばれたけど、動く実物は初登場だったのかなって)めっちゃ親しそうな写真が残ってる。あの後すぐにクーデター→希望者の下船だったわけですよね? その下船の時に渡されたライカに入っていた写真なんですよね(ここ、私的推察)?
一体いつ?
圧倒されたもの。俳優陣の演技。
役所さん、堤さんがもう最高。さすがの演技でした。クサクなりがちな台詞を、全く自然に胸に響くように伝えてくれて、表情とか仕草、オーラ。全部に飲まれそうでした。
死んだ人、生きている人、これから生きる人。日本に生きる(た)人を守るために、命をかけてくれた人達。
先の戦争だけじゃない。長い歴史の中で、多くの犠牲の上に成り立つこの国に生まれて、「本当に大切なものを見極めて、守れ」という言葉を言われなくては気が付かなかったことが情けない。
生きる。諦めない。守る。愛する(妻、子供、家族……いろいろな対象で)
そんなことを考たい。
若い世代は、無条件に期待されているし、それに応えなくてはいけないと自覚も生まれました。もっとしっかり生きたいなぁ。なんて思いました。
亡国のイージスにも期待!!
監督: 樋口真嗣
出演:役所広司 、妻夫木聡 、柳葉敏郎 、香椎由宇 、石黒賢
聿花の偏見に満ちた評価:★★★☆☆(原作読みたくなりました)
1945年8月、広島へ原爆が投下された直後の日本。“鋼鉄の魔女”と呼ばれた潜水艦が、最終兵器“ローレライ”を搭載して、ある任務のために港を出発した……。
新作豊作の3月4月の公開分、先頭切って観たかった今作。
奇しくも東京大空襲の日に戦争映画を観る。今だって決して平和じゃないんだよなぁって。考えなきゃいけないですよね。
ちなみに、OPでまだCMかと一瞬思ってしまった(爆) ちょっと凝っているので、遅れて入らないほうがいいですよ。

邦画って、基本的にあまり期待しないんですが、なかなか面白かったです。
まあ、製作費から考えれば、CG等映像の問題については……。ただ一言言わせていただくと、「プラモデルかと思ったよ」。海上シーンとかもちょっと。ロケの方がよかったんじゃないかなぁ。
この辺が、非日常の邦画の評判を落とす理由のひとつなのかもね。ヒットする邦画って、身近な設定のもの多いですものね。
それと、リアルと言うなら折笠一曹! 戦時教育を受けていた君が、あんな刺激的(当時比)な格好をした、若い女性を前に普通に会話してはいかんよ。それに、機密保持者だからって、艦長に普通に話しかけちゃったり。旧軍って、もっと厳しいイメージあるんだけれどなぁ。
全体的に、アニメっぽいなと思いました。
監督が、ガイナックス(エヴァンゲリオンとかで有名なアニメプロダクション)とかにも関わっていたと聞いて納得(あ。だからアニメ関係者で、押井さんとか庵野さんの名前がエンドロールにあったのか)。特撮とかアニメとかに深く関わる人だからこその題材だったのかもしれないですね。
映像も、そういう世代の私には観やすくて、原爆シーンとかの映像の重ね方や、爆雷の乱射シーンなんか、絵的にすごくよかったですね。そういえば、戦闘や凄惨なシーンにきれいな音楽をかぶせるあたりなんかも、アニメ的な気もしますねぇ。
音楽と言えば、モーツァルトの子守唄。本当に美しかった。「子守唄」を持ってきたところがすごくいい。
ローレライの魔女のイメージにもぴったりだし(アリアみたいな歌は歌わなさそう)、絹見艦長や、木崎大尉の子供に対する台詞なんかとかぶって。鎮魂にも、癒しにも、勇気付けにもなりえる。
他のサントラ・音響もよかったです。そういう意味では、ものすごく充実。
ローレライシステムは、いかにも日本アニメにありそうな……。あの時代の人が、3D映像理解できるのでしょうか?
しかし、日系クウォータードイツ人のパウラ。ユダヤ人ではなさそうだったけれど、純血種ではないから、あんな実験にも使われたのかもしれない。なんて、ナチス物好きなので思ったり(ぉぃ)
でも、ローレライシステムの構築など悪役をナチスに丸投げした感じ。ハリウッドじゃないので、ナチスならどこまで悪役にしてもいい。というのもどうかと。同盟国だったわけだし、日本も十分悪役だったわけだし……。
ローレライシステムがあったからと言って、回避も攻撃もかなり指揮系統・技術がしっかりしていないと不可能だろうし、そういった意味でも、寄せ集め感が薄かった。ここが、クーデターなんかの伏線になると思うので、「回天の子がいる。他は、みんな同じところから来たの?」みたいに感じられるのは良くなかったかな。
ストーリーは予習無しだったので、ローレライの正体の時点で艦長以上にびっくりしました(笑)
あと、浅倉大佐の作戦。高須技師のクーデター。びっくりしました。本当エンタメとして良い。ただ、浅倉大佐の「切腹」の論理が見えづらかった。だからって、首都に原爆か!? みたいな。
伊507は、折笠の故郷(?)長崎を守れなかったんですよね。艦長は1つの原爆も許さないくらいの意気込みだったのに。そのことに関しての、彼の苦悩とか見たかったな。
他にも、清永を見捨てなくてはいけなかった時、最後の最後に子供に頼り、人間兵器を使わなくてはいけなかった時、もっと深い心理描写があってもよかったかな。
まあ、文庫本4冊を2時間強にまとめるんじゃ、ストーリーの大筋追うのでいっぱいだろうけど。
戦争物として。
タイムリミットのある作戦。どうも間延びしているように感じてしまった。潜水艦物には付き物の密閉感も足りない。音を殺すときの緊張感も少ない。この辺は、戦争映画として失敗。
最後の太平洋艦隊との交戦シーンは、爆発無しにもかかわらず意外と見ごたえありました。
でも、原爆誘爆しなくてよかったね。一瞬、最終的には原爆の誘爆で伊507、太平洋艦隊もろとも全滅かと心配しちゃいましたよ(ぉぃ)
伊507も、もっとはっきりと沈んだ方が好みだったかな。N式の二人に託された感じで。でも、魔女の歌声とともにどうなったか不明。っていうのも、伝説っぽくていいかな。まあ、あの攻撃のされ方で、避けきれるかというと……。おのずと答えは出ちゃうんですが。
余分だったもの。最後のシーン。
作家は、果たして必要だったのか。あの米兵の思い出がたりで始まって〆るのはいいけど、なら最初にも作家は出てくるべきだったのでは? あぁ。印象的な冒頭は作家の作品の一部なのかもしれないですね。なるほど。
でも、上川さん、何者? でせっかくの余韻が薄れたのは残念。
足りないもの。細かい描写。
例えば、パウラが食堂に入ったときあんなに、びっくりされていたのに(存在は、倒れた時にばれたけど、動く実物は初登場だったのかなって)めっちゃ親しそうな写真が残ってる。あの後すぐにクーデター→希望者の下船だったわけですよね? その下船の時に渡されたライカに入っていた写真なんですよね(ここ、私的推察)?
一体いつ?
圧倒されたもの。俳優陣の演技。
役所さん、堤さんがもう最高。さすがの演技でした。クサクなりがちな台詞を、全く自然に胸に響くように伝えてくれて、表情とか仕草、オーラ。全部に飲まれそうでした。
死んだ人、生きている人、これから生きる人。日本に生きる(た)人を守るために、命をかけてくれた人達。
先の戦争だけじゃない。長い歴史の中で、多くの犠牲の上に成り立つこの国に生まれて、「本当に大切なものを見極めて、守れ」という言葉を言われなくては気が付かなかったことが情けない。
生きる。諦めない。守る。愛する(妻、子供、家族……いろいろな対象で)
そんなことを考たい。
若い世代は、無条件に期待されているし、それに応えなくてはいけないと自覚も生まれました。もっとしっかり生きたいなぁ。なんて思いました。
亡国のイージスにも期待!!
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