1958年二輪車・バイク広告集(96)

November 18 [Sun], 2018, 16:55

1958年二輪車・バイク広告集(96)


バイクエンジンの歩み
飯島義郎 
(月刊「オートバイ」1958年7月号モーターマガジン社)




 まえがき
 戦後わが国にモーターバイクが誕生してから今日までの約10年を振り返ってみると、その発展の過程を3期に大別することができると思う。すなわち誕生から昭和27年8月1日運転無試験許可制が実施されるまでの揺籃期を第1期とし、昭和27年下期からモーターバイクの範囲が125cc まで拡大される昭和29年末までの黄金時代を第2期、昭和30年以降今日までの大型時代を第3期とすることができよう。


 第1期時代(揺籃期)

 欧州に発生した自転車用の補助機関は戦後直ちに我が国にも伝わり、戦後における転換産業として注目され、生産者が叢生した。生産量も逐次増加して月産1500台程度に達したが一般諸情勢はこれ以上の需要を喚起することができなかった。昭和27年上期までの生産は第1表に示す通りで、叢生した生産者もむしろ整理される状態だった。
第1表(陸内協資料により推定)



 通産省及び陸用内燃機関協会などの関係官庁、団体ではモーターバイクの将来性を考慮し、その発展に対する種々な施策を構じたが、その方策の一つとしての無免許で運転できるようにするため、運輸省及び警察庁に誠意と熱情を持って陳情を行った。その結果両官庁の了解を得て運輸省の道路運送車両法、警察庁の道路交通取り締まり法の改正を見、昭和27年8月1日から実施されることになった。改正法の内容は読書も周知のとおり2サイクルは60cc以下4サイクル90cc 以下の原動機付自転車は男女を問わず14歳以上なら届出によって無試験許可制で運転できることになったのである。




 そして、この期間に モーターバイクという名称が生まれてきた。たまたま時を同じうして同年7月1日から石油の統制が撤廃される幸運に恵まれたので、この2つの好条件をとらえ、改正法の周知徹底を図り、需要を喚起する目的で昭和27年8月1日を期してモーターバイク祭りが行われた。そのうち各社の PRカーを配した約150台のモーターバイクが都内大行進を展開して都民の目を奪い、また1日から10日までは日本橋白木屋で展示会を開催するなどで 、PR に努力が払われ次期の黄金時代を創る素地が培われていた。




 ここでモーターバイクの範囲が2サイクル60cc以下、4サイクル90cc 以下と決定された事情について説明すると、当時外国では50cc 以下のモーターバイクとしていたが、わが国では経験も浅いことであり、技術も劣るであろうから、またなるべく広範囲に許可制としたい希望から60ccまであげることになった。また4サイクルは理論上2サイクルに比 して1.5対1の割合で出力が少ないから90cc までをモーターバイクに入れて然るべきものとされた次第である。そうしてこの2サイクル60 cc 以下4サイクル90cc 以下という線が将来モーターバイクの概念を混乱させる結果となったことはまことに皮肉であるといわざるを得ない。


 第2期(黄金時代)

 石油の統制撤廃運転の無試験許可制の実施と好条件に恵まれ、モーターバイク祭りなどの PR 運動等の効果は顕著に現れ、需要は急速に上昇し、第2表に示す通りの生産実績を見、モーターバイクの黄金時代を実現するに至った。





 この間生産者の数も急増し40社を上回ったものと思われる。また第2期初期に現れたエンジンを見ると、(1)フレーム中央に取り付け、ベルトまたはチエンで後輪を駆動するものが最も多く。A前輪上でハンドルに取り付け、ベルトで前輪を駆動するもの(トーハツ TRD )B同上の取り付け位置でローラーにより前輪リムを駆動するもの(マイティオート)C後輪の リヤステに取り付けチエンによって後輪を駆動するもの(カブ及びタス)D後輪のバッグフォークに取り付けてローラーにより後輪リムを駆動するもの(バンビー)。Eハンガー下に取り付けローラーにより後輪タイヤを駆動するもの(スピリット)などの各種の形式のものがあった。




 これらのうちA及びBの前輪上に取り付ける形のものはまもなく全く姿を消し、Cの後輪リヤステに取り付ける形のものも、今日では生産を見ない状況にある。Eのハンガー下に取り付けタイヤを駆動するものは(サンライト) の一例を見るだけのようである。Dの後輪リム駆動を行う富士精密工業株式会社のバンビーは自転車に容易に取り付けられる小型エンジンという同社の一貫した方針によって今日の多量の生産を見ている。




 性能の点についてみると、第2期の初期において50cc級で出力は大体1馬力前後であったが、今日では1.5及び2馬力程度となっておりその進歩は目覚ましいものがある。この期間に行われたモーターバイクの発展のための施策の主なものを拾ってみると次のとおりである。

 (1)物品税の免除
 物品税の免除については第1期中からすでに関係法面に対して陳情を行っていたのであったが、この期においてモーターバイクすなわち2サイクル60cc以下、4サイクル90cc 以下のものは物品税が免除されることに決定した。

 (2)性能審査
 通産省ではモーターバイクの性能向上を図り、また一般需要者のモーターバイクの選択の参考に資する目的で、補助金を交付して日本自転車検査協会にモーターバイクの性能審査を実施させた。すなわち、昭和28年10月9日から13及び19日に東村山の機械試験場のテストコースで定地試験を、また10月20日から村山貯水池周辺の約13 km余 の道路を毎日13周して6日間で1000 km の運行試験を行い、さらに29日第2次定地試験、11月6日から12月9日まで分解検査を行うなど厳密な性能試験を行った。

 参加台数は32台で、成績は工業技術院機械試験場から刊行された昭和28年度モーターバイクの性能審査報告に詳細に発表されているので、ここでは説明を省略するが、この試験がモーターバイクの性能向上に多大な貢献をしたことは注目に値する。


 (3)モーターバイクのサービス協会の設立

 モーターバイクの普及発展を図るためにアフターサービスの必要であることは冗言を要しないところであって、陸用内燃機関協会及び日本自転車工業会他自転車関係3団体はアフターサービスの態勢を整える目的で 通産省の補助金を受けて昭和29年7月にモーターバイクサービス協会を設立した。

 この協会は全国の自転車店を対象として講習を行い、モーターバイクの修理技術を習得させ、モーターバイクの修理が手近な自転車店で容易にかつ安全に行える体制を整えると同時に自転車店の事業拡張にも資することを目的とするものであった。昭和29年11月4日から15日まで東京において、また11月22日から12月6日まで名古屋において、昭和30年2月5日から16日まで大津市において、さらに2月25日から3月9日まで広島市において、各々百数十名の講習生(自転車店)を集め午前は陸内協の中谷顧問を始めメーカーから派遣された技師によって学科を、午後はメーカー提供のモーターバイクについて分解組み立てなどの実習を行い、非常に効果を上げることができた。

 ただしこの業界は通産省における所管の変更に伴って発展的発散をするに至った。次にこの期間における需要の状況を見ると、需要者の大部分は中小商工業者であって、使用目的は町のトラックとして荷物運送が主体である。したがってモーターバイクの許容し得る最大のものが要求され、より強力なものへの傾向を顕著に表してきた。60cc までがモーターバイクであると定められた事情は前に述べた通りであるが、60ccエンジンはその出力において決して外国のものに劣ることなく強力であった。

 普通自転車にそのまま取り付けることは勿論多少自転車に補助強工作を施してもなお車体が弱く、特殊車体のものが発生し、より強力なものへの推進を助成した。特に4サイクル90cc は制定当時考えられたことと異なり、2サイクル60cc よりはるかに強力であって90cc 用車体はこの時すでにオートバイ形式のものとなっており、自転車の補助機関としてのモーターバイクの概念を混乱させる一因となっている。

 大形時代への下準備前日―前述のように強力なものへの要望はモーターバイクの範囲拡大を要望する声となってきた。一方4サイクルエンジンはオーバーヘッドバルブエンジンの出現によってその性能は著しく改善され、2サイクルとほとんど変わらないものとなってきた。従ってサイクル別に60cc 及び90cc と区分する複雑さけて1つにするべきであるとの声も高くなってきた。

 所管官庁においてもモーターバイクの非常な普及発展を認め、モーターバイクの範囲拡張を諒解し、サイクル別撤廃の声に応えて2サイクル、4サイクルの別なく、90cc まで拡張しようとする様子がうかがわれるに至った。然し一方ではより以上に拡張したいと希望する向きもあり、外国の例にならって125cc と50ccとに段階を設けることが合理的であるとし、また一旦90ccとして更に125cc に拡張することは改正の手続きも煩雑であり、生産者においてもその都度モデルチェンジをすることを余儀なくされて出費の負担に堪えないなどの理由を掲げてモーターバイクの範囲を125cc まで一いきに拡張し、50cc 以下を第1種、それ以上を第2種にすることについて関係方面に陳情したが、これがそのまま認められるところとなって昭和29年9月に関係法規が改正され、昭和30年4月1日から実施されることとなった。これが現在実施されているものである



 第三期(大形時代)
 前述の通り125cc までのモーターバイク、すなわちの無試験許可制とする改正法が29年9月に制定されたので、生産者はこの時すでに実施期日である30年4月1日には市販出来るように、大形への切り替えの準備に着手し、60cc、 90cc のものの生産は目立って減少してきた。この間に状況が第1図に明らかに示されている。






 改正法の制定を見た29年期は大形への切り替えの為の遂月減算し、改正法の実施期日である30年4月から順次増産されている。このあおり喰った第1種の減産は当然のことと思われる。125cc モーターバイクは実用性からみて従来のオートバイに何ら遜色なく、オートバイの領域に喰い込む結果となり、需要、生産ともに125cc に集中した。従ってモーターバイクの生産者が125 cc に大形化していくだけでなくオートバイ生産者も125cc のモーターバイクを生産せざるを得ない情勢となってきた。第2種モーターバイクは完全にオートバイ形式となり自転車の補助機関としてのモーターバイクの概念からかけ離れたものとなってきた。

 通産省においても第2種モーターバイクを自動車課の所管に移した。このことによって、前述のモーターバイクサービス協会としてはその所管上第1種のみを対象として事業を行うには、第1種モーターバイクの生産の少量となったことから、その存続の意味が揺らぎ解散した。物品税についても、125cc まで免税されているように関係方面に運動したが結果的にサイクルの区別無く90cc まで免税となった。第2種モーターバイクが全部が125cc になるかに見えたが、日時の経過に伴って、値段の関係から90cc のものも相当数生産されている。




 第1種モーターバイクは昭和31年頃からやや増産される気運を見せている。欧州諸国においても一時大形へ移ったが再び 50cc 以下のものに戻っている事実から我が国においても再び50cc に帰ると見る向きもあるが、我が国の経済情勢と、第1種モーターバイクの価値の点から、まだ十分に第一種モーターバイクの需要を喚起するに至っていないようである。




 昭和30年末、通産省の補助金を得て欧州諸国のモーターバイク事情調査に派遣された調査団の視察の結果によると、欧州においてはモペットタイプのもの、すなわちペダル機構を内部に組み込んだ50cc 以下のエンジンそれぞれにデザインされた車体に容易に取り付けられるようにしたものが非常な勢いで多数普及しており、我が国においてもこの種のバイクが普及するものと期待している。既にタスモペッド、スズモペットの発売を見ており、他社においても着々と試作を進めている模様である。さらに第1種モーターバイクの需要を喚起するためには、第1種モーターバイクを自転車並みにフリーにすることについて関係方面に運動を続けている。


 むすび
 以上モーターバイクの10年の歩みをかえり見て特に感じられることは交通関係法規の改正がモーターバイクの産業に及ぼす影響がいかに大きいかということであろう。今第1種モーターバイクの生産は需要喚起の新手としてモペッドタイプのものに多大の期待をかけておりまた第1種モーターバイクの運転許可制撤廃すなわち、自転車並みにフリーにすることについて関係方面の諒解を得ることに最大の努力を払っている。幸いにしてこの希望が達せられるならば、ここに再び第1種モーターバイクの黄金時代を出現し第4期を制し得るものと期待して筆を置く。



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