「新宿狂言2016 〜Starting Over in 申〜」を観る

March 06 [Sun], 2016, 0:10
3月5日、全労済ホール/スペース・ゼロへ。
鏡板には、モノクロの超デフォルメ老松。
本舞台から短めの橋掛りが左右に延びていて、左側の橋掛り前には脇正面席がちゃんとある、というホールにては珍しいレイアウトです。
 
最初に萬斎さんの解説。
1つめの演目の「附子」の解説では、「ここに毒があるから気をつけてね」っていうのは、「ここにプルトニウムがあるから気をつけてね」、といった感じでしょうか・・・と、ドキッとすることを仰る。
あまりにサラサラとした仰りようで、お口から発せられた瞬間から昇華してってしまって、ドギツさが不思議とないんですねー
 
毒だと言い聞かされていた物体が実は砂糖だった、と判ったとき、1人の人間の心の中の葛藤を、欲望担当の太郎冠者と、理性担当の次郎冠者として二人に演じさせたかのようなつくりになっている、というお話が印象的でした。

今まで何度も観てたのに、そんなふうに考えたことありませんでしたが、深く納得です。
「To eat or not to eat」なーんて言い出されたりして、ううむ、ほんとーにシェイクスピアちっくな演目に思えてきました。
 
あと、最後のミュージカル(コレ萬斎さんがお使いになった言葉です)で、「カシラカタイ」って出てくるのは、「頭が固い」、つまり、元気がいい、という意味なのですって。石アタマじゃーないのね。
メンタル分野ではマイナスのイメージの言葉が、フィジカル分野ではプラスのイメージの言葉となってるって、面白いです。
 
次いで、2つ目の「猿聟」の解説に。
お能の「嵐山」は、吉野の桜を嵐山に移植する話で、その替間として上演される狂言が「猿聟」であり、これは吉野の聟猿が嵐山の妻の家に聟入りする話デアル、と。

このことを、神様のような大きい目線で見ると、種の交配デアル、つまり吉野と嵐山の猿の結婚は、桜の交配を象徴している、とのことでした。
 
これ、目からウロコ!
650年前の私たちの祖先は、なんと壮大な世界感をもっていたのでしょうか。
それとも、これは萬斎さんオリジナルの解釈なのかしら?
 
今回の「猿聟」では、15年前に札幌のスピカホールができた記念に上演した際に、スピカホールにお願いして作成して貰ったCG映像がでてきます、とのお話に、ワクワクは募るばかり。
惑星から別の惑星へ、宇宙を旅して聟入りする、というコンセプトなのですって。
老舗の料亭の味をネオジャパニーズ・キュイジーヌに仕立てた、なーんて仰ってました。
 
そして、今回の聟猿の面は、「解りやすいキャラが立ったお面」だそうです。
一方、翌日、能楽堂で「嵐山」の替間としてやる「猿聟」でつける面は、パッと見るとよく解らないんだけど、ずーっと、その面ばかり見てると良さがわかってくる、のだそうです。

ハイ! ご本人サマ自ら促進くださったことですし、得心できる境地に至れるようシッカリ見たいと思いますーー
 
解説を終えられて萬斎さんが退出されると間髪いれずに「附子」スタート。

太郎冠者が高野さん、次郎冠者は破石晋照さん、主は岡さん、後見は飯田くん。
高野さんの太郎冠者は、いかにも何かしでかしそうな愛嬌に満ちてました。
萬斎さんが解説で教えてくださった「カシラカタイ」もヒアリングでき、嬉しかったです。
 
休憩を挟んで、素囃子「神楽」。囃子方お1人お1人に大き目のスポットライトがあたり、スモークなんぞもでてきました。

スタイリッシュな演出が、びっくりするくらい素囃子の音楽にあうのですねー。黒紋付にもぴったり。
 
最後に、ついに「猿聟」〜
 
聟猿は萬斎さん、舅猿は石田さん、太郎冠者猿は月崎さん、姫猿(聟猿の結婚相手)はヤッパリこの方、高野さん!
供猿は、中村くん・内藤くん・岡さん・飯田くん。地謡は竹山さん・破石晋照さん・加藤聡さん。囃子方は能楽堂でいうところの地謡座に座られてました。
 
聟猿サマは、明るい紺地に枝垂桜がびっしりと染め抜かれた素襖裃。あ、でも長袴ではなく、足首までの長さで、袴の裾からは、グレーの木綿ぽいステテコ?と同色の足袋が見えます。手にはモッサリしたグレーの手袋をし、頭部も完全にグレーの布で覆われていて、猿の面を掛けています。

つまり、素肌はチラとも見せない徹底カバーぶり。
この全身着グルミ状は、いずれのお猿さんたちも一律です。
石田さんだけは着グルミの色が茶色で、これは年老いてることを示してるよーですね。
 
しかし完全にプロテクトされていようとも、それぞれのお猿さんたちの個性がキッチリ際だってるのです。

聟猿サマは、色白で優しげな草食男子。立ち居振る舞いに若々しさが匂いたつような華があり、何故か視線が絡めとられてしまいます。
 
でも私は、中村くんのビジュアルがトータルでいちばん好みだった。軽過ぎない程度にナチュラルに日焼けした精悍そうな風貌で、服装は肩衣・縞熨斗目・狂言袴、という定番の太郎冠者ルックながら、人となりは明らかに太郎冠者キャラとは一線を画してるの。
つまり、軽率なうっかりキャラではなく、キビキビと段取りよく任務をこなすキレ者って風なんです。
 
姫猿は、着グルミに覆われた頭部にちゃんと美男鬘をつけて、淡いピンクの縫箔をまとってます。初々しく頼りなげに見え、聟猿サマより更に年若い様子。
 
聟猿サマの謡が、とーっても素敵でした。音が変則的にうねるようなユリに翻弄される、この幸福感。面をつけておられるのに、息が苦しくないのかしら?

それと、オープニングとエンディングに出てきた手作り感あふれるCGも大変に好もしかったです。
 
たいへんにブッ飛んだ面白い会でした。
15年も前、若かりし頃の萬斎さんが、こーんな大胆なことをよくぞなさったものですねー。
このノリの狂言、ほかの演目でも拝見してみたくなりました!

  • URL:https://yaplog.jp/2109447/archive/720
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プロフィール
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    ・萬斎さんご出演舞台の鑑賞
    ・日本画のオケイコ-まだ習いはじめて2年半で、週1のペースなので中々上手くならないけど楽しくてしかたないです。
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昨年までの10年間は、平日も深夜まで仕事、休日も仕事、とバカみたいに仕事ざんまいしてました。決して仕事が好きだったわけではなく、なかなか進まないので早くやらなきゃという圧迫感に迫られて、仕事漬けになってました。しかし昨年、萬斎さんにハマってからというもの、180度生活が変わりました。今は、隙さえあればフレックスで帰って能楽堂に萬斎さんを見に駆けつけるという生活に。昨年までの10年間はお金を使う時間もなかったのに、この1年で飛ぶようにお金が萬斎さんに吸込まれていきます。でも、萬斎さんを観るために働いてるんだという今のモチベーションが気に入ってます。
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