宇治金時はあまり好きじゃない、嫌いでもないけど

July 08 [Fri], 2011, 23:12



本日は晴天なり

白いスケッチブックのページに、太陽の光が反射して眩しい。
先ほどから何度も鉛筆で叩いているせいで、白いスケッチブックのページには黒い点がまばらに散らばっていた。
それも仕方がない、何を描こうか迷っているのだから。

眩しさに目を細めながら目の前のグラウンドを見つめてみる。
グラウンドに散らばっている野球部員の誰かが気が付いたら、きっと睨まれていると錯覚することだろう。
しかし幸いにも遠くにぽつんと佇むわたしの姿など誰も気が付く様子が無い。
それでいい、このまま彼にも気が付かれずにわたしはひっそりとここで絵を描くのだ。

それにしてもグラウンドに彼の姿がない。
彼はいつもあずき色のジャージを着ているのだが、グラウンドにあずき色は見当たらない。
どうしたことだろう。


「ねえ」


グラウンドを見つめていると、ふいに声がかけられた。
視線を声のした方へ向けてみれば、居た。


彼だ。



彼はあずき色のジャージの袖をまくり、ズボンの裾もたくしあげている。
脇には彼がいつも引っ張って走っているタイヤを抱え、魅力的に笑っている。
彼はおもむろに空を指差した。



「空、描いてるんじゃなかったっけ、キレイだよ」


そうして魅力的に笑って、そう言うのだ。

なんということだろう、彼は知っていたのだ。
わたしのスケッチブックの中身を。
空と、木と、電信柱と、グラウンドと。
それから、タイヤを引っ張る彼の姿と。(もっとも彼の足りない視力と頭では空しか認識できなかったらしいが)


彼は言いたいことだけを言うと去っていった。
わたしの目にはいつまでもあずき色が残っている。

そうだ、宇治金時を描こう。




彼は宇治金時が好物だろうか



「・・・・で、どうしてスケッチに出かけて宇治金時を描いて帰ってくるんですか?」
「それはあれです、恋してたからです」
「恋は盲目と言いますが、あなた本当に視力を無くしたんですか」
「嫌だな、今わたしにははっきりと静かに怒っている先生が見えます」
「怒っているとわかっておいてその態度ですかいい度胸だコラ」




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