【SANGA(神々の戦い)】 16

August 15 [Fri], 2014, 6:37
16、「ONE」

 フウキは広島市の本通商店街に座っていた。

「あのう、宜しいでしょうか?」

「はい、いらっしゃい!どうぞ」
20代前半の女の子の姿がそこにあった。 

「私は今、服飾系の仕事をしてるんですけど、

上司との人間関係や仕事上でも会社の方針と合わない部分があって
退職しようかどうか悩んでます。

仕事的には嫌いでないので、それも含めて相談したくてきました」

「はい、まずあなたは、どうなりたいですか?」

「どうと言うと?」

「具体的に例えば技術を身に付けたいとか、結婚までの腰掛けとか、

あなたと会社との繋がりのスタンスの事です」

「技術を身に付けたいです」

「では、今の職場はそういう意味ではどうですか?」

「はい、技術的には申し分ありません」

「じゃあその技術習得のひとつに
人間関係も含まれているとしたらどうしますか?」

「仕事と人間関係ですか?」

「はい」

「・・・・どうしてですか」

「あなたは生まれてから死ぬまで、ずっと人間と係わっていきます。

例外はなく永遠にです。解ります?」

「はい」

「そして、あなたに都合のいい人間というのは、

あなたがこの世を生きる為に障害になる事は教えてくれません」

「あ、はい」

「社会には色んな人間がいて皆それぞれ主張しあい、時には味方となり、
そして敵にもなります。その縮図が社会だと思いませんか?」

「はい」

「障害を避けて生きてきた人生と、障害は障害と認めそれと向き合う人生。

どちらを選びますか?

もしあなたに子供がいて同じ事で悩んでいたら、

何と声を掛けます?どちらを選ぶのも自由です。

その事をまず考えてみませんか。

もし本当に嫌なら退社を勧めます。

精神的にも良くないので・・」

「はい・・・何か解ったような気がしてきました。

ありがとうございました。

わたし、もう一度自分と向き合ってみます」

「良い朝を迎えますように」フウキは軽く手を振った。

仕事を終えたフウキはテーブルとイスをたたみ、

身支度をして帰り道の路地に差し掛かった。

次の瞬間、暗闇の中から2人の黒い影が現われた。

「宮園風輝さんだね」男に声を掛けられた。

それはトーンの低い厳つい声だった。

「ハイ、君は?」次の瞬間フウキの背中に激痛が走った。

「うっ・うっ・・・・つ・ついに・・きたか・・」後ろから、

そっと近寄ってきたもうひとりの男がフウキの背中に
サバイバルナイフを突き刺した。

そして2人組の男が暗闇に走り去っていった。

フウキは前屈みのまま倒れ込んでしまった。次の瞬間、

フウキは意識を肉体から切り離した。

痛みからは解放されたが肉体的なダメージはひどかった。

翌早朝、新聞配達員によって発見されたが、倒れてから既に5時間が経過していた。

警察と救急車が来た時にはフウキの身体は帰らぬ人となっていた。

警察の発表では解剖の結果、刃物のような者で背中をひと突き。

それが心臓に達し致命傷になったとの結論がなされた。

フウキの所持品が無いことから金品目的の通り魔的犯行と断定した。

公には発表されていないが、

フウキの遺体は死後硬直が認められず、

監察医は頭を傾げていた。

フウキは刺された直後に魂を肉体から意識的に離脱させたために
死後硬直が無かったからだった。

フウキが息を引き取ったと思われる同時刻に
SANNGA6人は同じ夢を視た。

笑みを浮かべたフウキが白い装いで目の前に立っていた。

「今日で僕はサンガに帰ります。

SANGAを一度解散してほしい。

そして個々の活動をしながら過ごして下さい。

再復活の為に今はエネルギーを蓄えてほしい。
 
僕はいつでも皆さんを応援してます。

今後はチャネリングでお話ししましょう。 

お世話になりました。

又、逢いましょう」

朝を待って6人はいっせいに連絡を取り合った。 

シバの指示で札幌在住のラトリが代表し、

余市町のフウキの実家に連絡を入れたが、

何の連絡も入っていないとの事だった。

次はインドラからの提案で正午になったらエネルギーをひとつにし、

同時にフウキへチャネリングを試みる事にした。

打合せ時刻になって直ぐに花梨がフウキと繋がった。

花梨の話では昨夜、エレボスに手配された2人組の男に後ろから

刺されフウキの肉体は死を迎えたというものだった。

程なくしてフウキの実家から札幌のラトリに電話が入った。

「広島の警察から連絡が入りフウキらしき男性が殺されたので
身元確認をしてほしい」という連絡があったらしい。

インドラ・花梨・シバ・摩耶の4人は新幹線で広島に向かった。

警察の霊安室では変わり果てたフウキの姿があった。

司法解剖の結果、後ろからサバイバルナイフで
心臓をひと突きされた事による即死というものだった。

インドラ・摩耶・花梨・シバはその場で天を仰いだ。

遺体はフウキの家族に引き取られ、

故郷での葬儀にはSANGA6人と由美子が列席した。

宮園風輝30歳の人生はここに終わった。

SANGAは表向きフウキの遺言通り解散された。


そしてフウキの死から3年が過ぎた。

世の中は管理・監視社会と変貌した。

何をするにも身分証明書の提示が義務付けされたり、

運転免許証にもマイクロチップが埋め込まれ、

街のあらゆる所に監視カメラの設置がされた。

犯罪登録された人間は6時間以内には、

国内であれば潜伏場所を90%解析出来る仕組みも開発された。

これらは表向き犯罪防止と称し、実は人間管理の為のシステムで、

何時何処で誰と誰が何を話したかまで監視する仕組みでだった。

さらに個人の行動も過去数時間前まで
時間を逆行する事が出来るシステムが構築された。

テロ対策室には今はもう解散したSANGAも
「テロ活動の疑いあり」として監視登録されていた。

世界はエレボスの思惑通りワンワールドに統一されようとしていたが、

それに立ち向かう反体派も水面下で組織が結成され、

ネットを通じて世界に配信されていた。

ネットの力は驚異的な早さで広がり、

そこには人種の壁・言葉や身分の違いはもちろん、

キリスト教・イスラム教・仏教・ヒンズー教と、

あらゆる宗教の壁も取り外された。

エレボスの意思とは全く別の意味で、

世界の意識は自然と統一されつつあった。

世界に発信される際の合い言葉は「ONE」発信源はイギリスだったが、

初めは水面下で燻っていたONEの活動も時と共に急激に広がった。

まるで圧縮されたゴム風船から解き放たれた空気のような勢いだった。 

魂の叫びは、ある時は歌や絵などに隠されていた。

そんな中で日本の歌手、花梨の書いた曲が世界に無料配信されていた。

その曲は「KIZUNA(絆)」という題名で、

フウキの事を思い描きながら作られたバラード。

歌詞の中にフウキとサンガの文字がアナグラムとして隠されていた。

KIZUNAは著作権フリーとしたこともあり、

ONEが中心となって8カ国語に翻訳され配信された。

そして世界中で愛される歌へと成長した。

配信されて2ヶ月で世界に広まる快挙だった。

このKIZUNAはただの歌ではなかった。

花梨が旧SANGAの仲間と音魂(おとだま)を利用した魂の癒しの歌であった。

フウキの死後徐々に、そして急激に世界は動き始めた。

エレボスの圧力規制の執行よりもONEの伝わる波は早かった。

エレボスが弾圧を掛けようとした時には、

すでに違う風が吹くという具合にONEの動きは目を見張るものがあった。

偏らない思想・音楽・文学等、ONEの影響は止まるところを知らず、
21世紀のルネッサンスとまで云われた。

またONEとは数字の始まり1であり、創造性、意志の強さ、
暗い夜が終わり夜明けの始まりという意味である。

着実に目に見えて世界は変わりつつあった。
  • URL:https://yaplog.jp/10382222/archive/17
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