慰謝料は無実の証

February 20 [Wed], 2013, 14:50
10年近く前の話だ。
当時の僕は30才になったばかりだった。
僕が3歳年下の元妻と離婚したのは、結婚して4年目のことだ。
わずか4年の結婚生活。
しかも、最後の1年間は元妻が実家に帰っていたから、実質一緒に生活した期間は4年にも満たない。
離婚の原因は、今から思えば何だったのだろう。
離婚につながった事柄なら、容易にあげることができる。
そう、僕の父の介護に他ならない。
僕の母は、僕が幼いころに病死した。
僕には母の記憶はない。
僕には兄弟がいなかったから、僕らは父ひとり子ひとりでずっと生きてきたのだ。
その父が、結婚して2年を過ぎたとき、職場で倒れ救急搬送された。
原因は脳梗塞。
なんとか一命はとりとめたものの、身体には麻痺が残り、結局父は仕事を退職して自宅で療養することになった。
元妻は、父の入院中、ほとんどお見舞いにくることはなかった。
専業主婦だったけれど、父の洗濯物を洗ったり、病室に顔を出すことも拒んだ。
曰く「何で今、この歳で介護なのよ!私の人生どうしてくれるの!!」と。
僕の伯母には、彼女の気持ちにも寄り添ってやれ、と諭された。
彼女が若かったこともあって、子どもはこれからだと思っていたし、2人なら僕の収入でやっていけるとけど、父の介護を抱えてだと幾分心もとない。
元妻にしてみれば、妊娠出産・育児と、パートと、介護と、家事と、それらが一気にのしかかってきたのだからと。
しかも、介護はこの先20年続くかもしれない、と。
今から思えば、僕は元妻に求め過ぎたのかもしれない。
結婚して3年足らずの義父なんて、他人に毛の生えたようなものだ。
元妻に、父の世話を頼むのではなく、公的サービスを利用するとか、もっと柔軟に考えればよかった。
けれど、当時の僕には、大事な父を人生のお荷物扱いする彼女と相容れず、結婚したのに父の世話を拒む彼女を幼く冷たい女だと思った。
介護をしてほしい僕と、絶対にしたくない彼女、結局僕らは離婚することになったのだ。
別居の1年間は、慰謝料についての話し合いが膠着したから発生した期間だ。
元妻は「自分が有責ではない証に、慰謝料が欲しい」と決して譲らなかった。
縁があって再婚するときに、彼女自身が有責ではないかと疑われないためにも「有責配偶者からのお詫び」が欲しいというのだ。
結婚後に、僕の貯金から買った家電でもいい、少額の現金でもいい、なんでもいいから無実の証に慰謝料が欲しいと、彼女は1年間僕に訴え続けた。
じゃあ僕は有責なのか?僕の何が有責なのだ?どうしても、どうしても、僕にもそれが納得できず、結局僕らは慰謝料なしで離婚することになった。
離婚を決めた夫婦が過ごす、本当に不毛な1年間だった。
元妻は、それから2年後に再婚したらしい。
子どもも生まれたと聞いた。
無実の証だとかいう慰謝料がなくても、なんだ再婚できたんだとあの1年を思ってちょっと虚しい。
僕の今の生活は、仕事は最低限に、あとは父と過ごす毎日だ。
麻痺は残るものの、自分のことはある程度できるまで父は回復した。
そんな父と穏やかな毎日を過ごしながら、離婚の原因はなんだったんだろうと今でも考える。
父ひとり子ひとりに嫁ぐ覚悟が元妻になかったことか。
僕が他人の世話を元妻に押し付けたからか。
あのとき、どうすれば離婚をせずに済んだのか、はやり今でも僕にはわからない。
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