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【日本版コラム】誰が「太陽光発電バブル」を崩壊させたのか?―ドイツQセルズの苦悩とシャープの復権 / 2010年07月05日(月)
尾崎弘之・東京工科大学教授

 前回のコラムで、クリーンエネルギーの固定価格買い取り制度(フィード・イン・タリフ:FIT)が、太陽光発電バブルが作られた要因であることを述べた。

 初めて本格的にFITを導入したドイツにならって、スペインも1998年にFITを本格導入した。スペインでのFIT導入の結果は、風力発電の普及に偏り、太陽光発電はそれほど増えなかった。タービンなどの発電装置メーカーであるガメサ・エオリカ社、クリーンエネルギー事業者のアクシオア・エネルヒア社などの巨大「風力企業」がスペインから生まれた。

 ところが、風力発電は物理的な制約が大きい。100メートル以上もある巨大風車を建設することができる場所は、広大な欧州でも既に限界が見えているからである。その点、太陽光パネルは住宅や工場の屋上に設置できるし、未利用地に巨大パネルを並べることもでき、制約が少ない。風車のように騒音を発生させないし、景観にもそれ程影響しない。

 これからクリーンエネルギーを増やすには太陽光発電が不可欠という政策判断を、スペイン政府は行ったのである。2006年以降、太陽光発電への補助金が増やされ、一定規模以上の新築・改築建設物には太陽光パネルの設置が義務付けられた。

FIT見直しとリーマンショックで始まったバブルの崩壊

 この政策の結果、2008年のスペインの太陽光発電新規設置量は2.51ギガワット相当と、世界一になってしまった。(PHOTON資料による)2007年と比較すると5.2倍の急成長だが、2009年には、何とまた6分の1まで落ち込んでいる。短期間でのバブル発生と崩壊である。

 日本で昨年末に導入されたFITは、家庭で発電して使いきれない「余剰電力」を電力会社が買い取る仕組みだが、スペインでは「発電全量」を、年間買い取り量限度額の範囲内で買い取ってもらえる。

 日本方式はクリーンエネルギーの「実質的な利用」を推進できるが、短期間で普及を増やすことには向いていない。これに対し、スペインの「全量買い取り方式」は、短期間で目に見える結果を得ることができる。

 ところが、電力需要などない砂漠に大規模パネルを作って、補助金を貰うこと自体を目的とする業者を多数生み、これがバブルを助長してしまった。

 スペイン政府がこの状況に懸念を示して、FITの内容にブレーキをかけたことが、太陽光発電バブルが崩壊するキッカケとなった。同時に2008年末からのリーマンショックが重なり、大規模プロジェクトの資金調達が困難になったことも原因である。FITという「担保価値」も曖昧になり、バブル崩壊の影響は世界市場に及んだ。

バブル崩壊:もうひとつの重要な原因

 実は、スペインの政策変更とリーマンショック以外にも、バブル崩壊の有力な原因がある。それは太陽電池の原料であるシリコン価格の急落である。

 太陽電池の原料として現在使われている素材は、結晶型シリコンが圧倒的に多い。シリコンを含んだ土壌は幅広く存在するが、半導体や太陽電池用の極めて純度が高いシリコンは誰でも生産できるわけではない。そこに太陽光発電バブルが発生し、太陽電池メーカーの間でシリコン原料の調達競争が起きてしまった。

 長年、太陽電池生産世界一の座を維持してきたシャープが、ドイツのQセルズや中国のサンテックパワーなどに生産量で抜かれたのは、シリコン原料の獲得競争に敗れたためである。

 ところが、2009年からシリコンの値崩れが始まった。強気にシリコン調達して太陽電池を生産した企業は、賭けが裏目に出たのである。

 太陽電池の原料であるシリコン・ウエハーの世界市場での価格は、2008年には発電量1ワットあたり2.05ドルであったのが、2009年には1.27ドルまで急落した。今年はさらに下がると見込まれている。

 強気の企業が多かったため、在庫が急激に積み上がっている。2008年は2.2ギガワット相当だった太陽電池セルの在庫量が、今年は9.1ギガワット相当まで増加すると予想される。(いずれもPHOTON調査)

 この状況で原材料のシリコン価格が急落したのである。太陽電池の中間財や最終製品の価格も当然暴落し、それがシリコン価格をさらに下げた。

 純度が高いシリコン価格の下落は、その供給が増えたことも原因である。大手太陽電池メーカー開発者の話によると、シリコン調達競争が激しかった頃と違い、昨年末から中国のシリコンメーカーの技術力が急激に向上し、純度が高いシリコンの調達に困らなくなったそうだ。これには日本人技術者の中国企業への流出が関係しているとみられている。

Qセルズの苦悩とシャープの復権

 太陽光発電バブルの象徴だったQセルズは、昨年13億5620万ユーロの巨額赤字を計上し、売上高も前年比何とマイナス35.9%となった。バブルの破裂が必ず来るというガルブレイス教授の予言どおりになったのである。逆に、数年前は「ドイツや中国との競争に出遅れた」と言われたシャープは健全な状況を保っている。

 今後、この市場はどうなるのだろうか?スペインのケースを除けば、FITは政府による長期的なコミットメントなので、先行きの予想は立てやすい。これからは、カリフォルニア、ドイツ、日本、フランス、インド、イタリアなどが成長市場となるであろう。

 バブル崩壊によって、今までよりも安いコストで太陽電池を仕入れることができるので、パネルメーカーや設置業者にとっては新たなチャンス到来である。

 特に、FITが復活した日本市場には世界中の企業が熱い視線を送っている。また、日本でも「発電量全量買い取り」が検討されている。しかし、需要がないところに太陽光パネルが並び値段だけ吊り上がる、スペインの轍を踏まない仕組み作りが必要である。

【7月5日10時19分配信 ウォール・ストリート・ジャーナル
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100705-00000007-wsj-bus_all
 
   
Posted at 17:38/ この記事のURL
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