米インディアナ州コナーズビルでインテグリティ・メタル社を営むプライス・グレイザー氏は、顧客の需要を満たせるだけの鉄鋼クズを見つけようと必死だ。
鉄鋼不足が続き、そのせいで価格は1年で70%も上昇した。景気低迷によって消費者は家電製品の買い替えを控え、メーカーも生産を抑えている。それは生産過程で排出されるスクラップの減少を意味する。さらに中国や他の新興市場からの需要も増えている。
2年前、インテグリティ・メタル社には、1日に300人もがスクラップを持ち込みに訪れた。だが現在は100人を割り込むほどに減った。同社は潰れた車体1トン当たりに260ドル支払っている。昨年8月には175ドルだった。
「以前スクラップはどこにでも転がっていた。今は供給が減ったせいで、価格がつり上がってしまった」とグレイザー氏は言う。
17日、米国政府は鉄鋼スクラップ価格指数が、2月に3.4%上昇したことを発表した。1月には17.3%も上がっている。
「スクラップの供給が尽きてしまった。景気の後退で供給不足が鮮明になった」とBMOフィナンシャル(カナダ)の金属市場アナリストであり、ストラテジーアドザイザーのドナルド・コックス氏は述べる。
同氏の結論は「中国の需要は一般に考えられているより強い」というものだ。さらに米国の需要も一般認識より底堅いと同氏は付け加えた。
米国際貿易委員会(ITC)によると、昨年、金融危機にあったにもかかわらず、米国企業の鉄鋼スクラップ輸出は08年より3.3%増えている。03年比では倍以上の拡大だ。
米国経済が回復を続ければ、国内企業からのスクラップ需要も増加し、価格もいっそう押し上げられるだろう。だが最終的に企業活動が盛んになれば、生み出されるスクラップも増え、需要を満たす方向に向かうはずだ。
スクラップ金属の大手消費企業であると同時にスクラップ事業も展開する米鉄鋼大手ニューコア・コーポレーション(ノースカロライナ州シャーロット)のダン・ディミッコ最高経営責任者(CEO)によると、中国以外では、トルコや台湾もスクラップの購入を増やしているという。
スクラップ価格が、元の金属の値段を上回ることすらある。
再生銅の抽出源となる自動車のラジエーターや配管系統設備に使われる真ちゅうの価格は、1月初旬から6%以上上昇している。ニューヨーク・マーカンタイル取引所(NYMEX)COMEX部門の銅先物5月限は1月初め以降ほぼ安定して推移していたとフェデラル・メタル社(オハイオ州ベッドフォード)のピーター・ナゴスキ−社長は言う。同社はスクラップを溶解し、真ちゅうと青銅を製造している。
それでもスクラップの価格は、取引所の金属価格と同じように、08年の水準には戻っていない。
同年の夏、金融危機の前、アジアのバイヤーは鉄鋼スクラップに1トンあたり700ドル支払っていたとSAリサイクリング社(カリフォルニア州アナハイム)のCEOであり、ワシントンに拠点を置く業界団体、スクラップリサイクリング工業協会の会長であるジョージ・アダムス氏は言う。
だが08年末までに価格は250ドルにまで下落した。同氏によると、現在は400ドルあたりにまで回復している。
今のところ供給がすぐに増える気配はない。
「住宅、商業施設ともに建築は低迷している」とパシフィック・スティール・アンド・リサイクリング社(モンタナ州グレート・フォール)のスクラップ業務部門を統括するジェフ・ミルホリン氏は言う。同社は、サウスダコタ州ラピッドシティからワシントン州ヤキマまで7州に拠点を持つ。
多くの消費者は、金属価格が現在よりもはるかに高く、プレミアムをつけていた2008年に、車庫、裏庭、農場、牧場などにあったスクラップを使い果たしてしまった。
失業率が高い水準にある現在、消費者は高額な製品を買い替えず、長く使う傾向にある。
「消費者は古い製品でも捨てようとしない。新しく買う代わりに、修理して使い続ける」とアダムス氏は言う。
スクラップ業者も苦境にあるようだ。スクラップを保管するコンテナの多くは金属製で、価格は4000〜5000ドル程度。コンテナに穴があいたら業者はそれをふさいで使い続けると、ダイヤモンド・ステート・リサイクリング社(デラウェア州ウィルミントン)のスコット・シェア社長は言う。
「今どき、コンテナを買い替えるような業者はいない」
【3月19日7時13分配信
ウォール・ストリート・ジャーナルhttp://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100319-00000301-wsj-bus_all