「たまちゃんハウス」逢坂みえこ 

July 03 [Tue], 2007, 10:45










「ベルエポック」で注目して、「火消し屋小町」でなんとなく疎遠になった逢坂みえこなのだが、「たまちゃんハウス」はいい味だしてます。
「フライ、ダディ、フライ」で岡田准一にヤラレてしまい、流れで「タイガーアンドドラゴン」を一気見して落語に開眼、そして「たまちゃんハウス」に行き着きました。

逢坂みえこは地味な漫画家だと思う。話が地味、キャラクターが地味。映画化された「ベルエポック」ですら芸能界とマスコミ界が舞台なのに地味な作品だった。

「たまちゃんハウス」も地味な作品といえるが、本作に登場する今イチぱっとしない落語家の春々をしっかり描ける力量とセンスは逢坂みえこだけが持つ魅力だ。春々が鏡に向かって幽霊の所作を延々と練習する場面は本当に美しく力強い。

彼女は人情話の漫画家なのだ。
なーんか最近元気ないんだよねえ、でもあんましテンションあげるような気分でもないのよねえ、という時、逢坂みえこを一人でゆっくり読んでほしい。きっと明日の朝にはほんわりと前向きになっているよ。

「Real Clothes」槙村さとる 

June 29 [Fri], 2007, 18:03






槙村さとるのお仕事モノシリーズ、最新作。早くも2巻の発売です。
槙村さとるはいい意味でワンパターンなのだけれど、「おいしい関係」以降、ちゃんと自分で生きてきた女性が登場するところが魅力的。
「おいしい関係」の千代ばぁの役割が、今回はスーパーコーディネーター&セールスウーマンの美姫サマとなっている。

「誰と出合うか。他人を利用しようとする者、他人に犠牲を強いる者は、やんわりとしっかり拒絶すること」
美姫サマがサラダを噛みちぎりながらつぶやく一言に、私はとても安堵しました。
こちらの負担が大きすぎなければ、拒絶も面倒だから適当にあわせていましたが、不快であることは間違いなし、やんわりとしっかりと拒絶することにします。

もとい。

最近の槙村さとるは、上手に年老いたけれど悩みもするし疲れもするリアルな女性を描くのが得意だ。
主人公の絹恵ちゃんには、なつかしさこそ感じすれ共感がもてないお年頃の管理人としては、こうした登場人物のおかげで楽しく読めるのだと思う。

世間一般の、ではなく、槙村ワールドの中での名作の予感。

「フライ、ダディ、フライ」成島出 

June 25 [Mon], 2007, 20:07
 









映画はあんまり好きじゃない。
だけど、時々こういう爽快なのにあたるんだな。映画は好きじゃないけど、この作品は好きだ。

金城一紀の大人気シリーズ・ゾンビーズが登場する「フライ、ダディ、フライ」の映像化作品。
スンシンを演じた岡田准一がいい。良すぎる。あやうく惚れそうになった。

ストーリーはとてもシンプルで、娘に大けがを負わせた卑怯な高校生に素手で挑むべく、基礎体力をつけ戦い方を学び、対決に臨むふつーのお父さんのお話。
金城一紀の原作であるゾンビーズシリーズは「レヴォリューションNo.3」が衝撃の一作目で、この「フライ・ダディ・フライ」が2作目、3作目に「SPEED」が続く。
岡田准一@スンシンがもっと観たくて、他の話も映像化すりゃいいのにと思ったりもするが、おそらく映像的に盛り上がるのは「フライ・ダディ・フライ」なんだろうな。

本作には登場しなかったアギー役を映像化するとしたら北村一輝しかいないと思っているのだが、いかんせんもう少し若けりゃね、というところか。
いやー、岡田准一、いいよ、よすぎるよ。

「裏ヴァージョン」松浦理英子 

June 13 [Wed], 2007, 12:35










松浦理英子は寡作な作家だ。有名どころでいえば「ナチュラルウーマン」「親指Pの修業時代」なのだろうが、私の一押しはコレ、「裏ヴァージョン」。

公務員の女性が、学生時代の友人である小説家になりそこねたプー女性と、月1本の短編小説を提供することを条件に同居を開始する。
毎月提供される短編小説は、我々読者としてはそれなりに面白いのだが、公務員の女性は大いに不満だ。が、彼女の不満は小説の出来ではなく、プー女性と自分の関係性に関することだと読者は気づかされる。

私にまっすぐ関わろうとしない「あなた」、
でも「あなた」は私がいないと住む場所さえないのだから、私の要求に応える義務がある。
この小説の登場人物は二人の女性で、どちらもレズビアンではないのだが、二人の関係には歪んだ恋愛の形が見えないだろうか。
辛くて苦しい、それこそが快楽である二人の関係を恋愛というならば、
互いに追い詰め合って毛を逆立てながら向き合う恋愛、実は恋愛の醍醐味は実はそこにある。

恋愛と結婚は別? なんて不毛な問いかけがあるけれども
少なくとも「恋愛の楽しみ方」と「結婚の楽しみ方」は違うのよね。

「刑務所の中」花輪和一 

June 13 [Wed], 2007, 10:48











ガンマニアの花輪さん、うっかり本物の銃を手に入れてしまい、
マニアなだけに捨てられずに大事にしてたら捕まっちゃいました。懲役3年。
懲役中の刑務所の生活を描いたものです。

悲惨さやドロドロは一切なし。
麦飯はウマそうだし、たまにあるパン食は妖精さんが飛んでてファンタスティック。
刑務官に可愛がられようと火花散らしている受刑者もいるけど、
花輪さんはそんなこと一切関係なし。お気楽に暮らしています。
一番楽しかったのは懲罰房での封筒作り。向いてるなあ、オレ、とじんわり幸せそう。

悪いことして捕まるつもりはないけど、こういう生活したいな、と思ったりします。
いやいや、「刑務所の中」なんだけどもね。

「春・飛行」庄司陽子 

June 12 [Tue], 2007, 17:49










「春・飛行」は日本有数の大金持ちである小笠原財閥の末っ子・春が、
普通に男に騙されたり、普通に恋したり、普通に仕事して、普通に結婚して、普通に子ども産んで、
だけど背景がたまたま大金持ちなんよね、ってテイストのお話。

庄司陽子の作品は「GID」や「I's」、「分水嶺」などのヒューマンドラマ群と
この「春・飛行」、「セイントアダムス」「Let's 豪徳寺」などの大金持ち話群が秀逸だと思う。
「春・飛行」はベテランの安定感がある、安心して読める娯楽作品ですよ。

だってさー、マンガって娯楽じゃーん? 
ありえねー!って話をくすくす笑いながら読みたいじゃん?

犬の舞妓が春に拾われ、出産するあたりがとても好きなエピソードです。

「LINE」西村しのぶ 

June 12 [Tue], 2007, 17:34










働く女と年下ダーリンのラブラブで甘甘な日常のお話。
その昔、チョコレートがあまり好きではないボーイフレンドに
「甘いものですから」とヴァレンタインにプレゼントしたことがあります。
「確かに、あめーーーー」とボーイフレンド談。

リツコの作る水餃子をたらふく食べてみたいものです。
西村しのぶの作品に出てくる食べ物ってどうして全部美味しそうなんだろう。

ただいま3巻まで発刊されています。
続きはいつ出るのか、しのっちゃ画伯のご機嫌しだいですわ。
私はいつまでも待ってるけどな!

「懐古的洋食事情」市川ジュン 

June 08 [Fri], 2007, 20:01










市川ジュン「陽の末裔」のスピンオフ短編集。
女性の自立をテーマにした「陽の末裔」が説教臭いな、と思う方でも、こちらの作品は好感を持っていただけるのではないでしょうか。

昭和初期、洋食が日本に入ってきた頃の、ライスカレー、オムライス、ロールキャベツ、様々な西洋野菜のお料理などにまつわるお話です。

わー、洋食食べたい!と思いますよ♪

「海街diary」吉田秋生 

June 08 [Fri], 2007, 19:51










吉田秋生といえば「カリフォルニア物語」、の、はずなのだが、
「BANANA FISH」「吉祥天女」あたりからなんだかSFチックの作家になってしまいましたね。

この「海街diary」、
なつかしいなあ、「カリフォルニア物語」。という方はぜひご一読を。

「ラヴァーズ・キス」から続く、鎌倉ストーリーです。朋章くんも登場。
複雑な家庭環境のはずなのに、それなりに幸せに平和に暮らしている三姉妹、
異母姉妹を引き取ることになりますが、それでも四姉妹でそれなりに幸せに暮らしていくみたい。

ほんわかした気持ちになりますよ。

「ブルーロージス」山岸凉子 

June 07 [Thu], 2007, 18:22










山岸涼子には珍しく、前向きで明るい未来を示すお話。

小さいときから「そんなじゃお嫁にいけないよ」「女の子としてはダメねえ」と言われ続け
自分でもそう信じ込んでしまい、イラストレーターとして仕事をするシングルの女性が主人公。

男性には縁がないと信じて暮らして来た彼女に、思いがけなく恋人ができた。
なんにもできないのに、どうしよう!とまごつく彼女だが、やってみたら案外料理が好きな自分を発見する。
「ダメな子」「男に愛されないよ」とさらりという親族たちにも
「そんな男、こっちから願い下げ!」とはっきり言えるようになったりする。

結果としてこの恋はだめになってしまうのだけど、
本当の自分と出逢えた彼女は、これからもっともっと前向きに生きていけそうな気がするのだ。

また一人に戻った。彼に出逢う前にはしようともしなかった料理を自分のために作る。
オムレツをフライパンでポン、とひっくり返し、
「まー、お上手♪」と自分で自分をほめられるようになる。

呪縛は解けるんだよ、だいじょうぶだよ、と思えるんだな、これを読むと。