IRIS[アイリス]ちあわにゃ

September 23 [Fri], 2011, 10:44
いや、でえじょうぶだよ。盗品《ぶつ》はホテルのおれのスーツケースの中に入ってるんだ。それでな、どうしておれがこんなことをべらべらしゃべるか、その理由をきかしてやらあ。それはだ、心配ねえからさ。おれはいま、自分がよく知っている男に話しているんだ。そのおめえはおれに千ドルの借金があるんだよな、バーニイ?ウッズ、だからいくらおれを捕まえたくたって、おめえのその手のほうが言うことをきいちゃくれねえってわけだ」
「忘れてはいないよ。君はひとことも言わずに、五十ドル札を二十枚、出してくれたものな。いつか返すつもりでいるんだ。あの千ドルのおかげで、わたしや家族の……そうだ、奴らがわたしの家財道具を歩道に積み出しているところへ、ちょうどその金をもってわたしが帰っていったのだからな」
「だからよ」とカーナンはつづけた。「おめえが本当にバーニイ?ウッズで、生まれたときから鋼のように誠実で、紳士らしく正々堂々とやってくれるはずの男だったら、こうした義理のあるお方さまをふんじばろうだなんて、指一本あげるこたあできねえはずだ。そりゃあ、おれだってこんな稼業をしているからにゃあ、イエール錠や窓の錠前と同じように、人間さまも研究しなくっちゃあいけねえんだ。さあ、いいか、いまベルを鳴らして給仕を呼ぶから、そのあいだ静かにIRIS[アイリス] BOX しているんだぞ。おれはここ一、二年やけに酒が飲みたくってな、それでちょいとばかりイライラしているんだ。こうしておれがとっ捕《つか》まえられちまったんなら、幸運な刑事さんもむかしなじみの飲み助と名誉をわかあなるめえ。だが、おれは取り引きの最中にゃあ酒は飲まねえぜ。話がつきゃあ、おれのほうも親友バーニイと澄みきった心で一杯のめるんだからな。おめえ、何にする?」
給仕は小さな酒びんとサイフォンとをもってくると、またすぐに立ち去っていった。
「君の予想どおりだ」とウッズは言いながら、その小さな金のエンピツを物思いにふける人指し指でころがしていた。「わたしは君を見逃さなければならない。わたしには君を捕まえることはできない。あの金さえ返しておいたら……だが、まだ返してはいない、だから目をつぶらなければならない。わたしも大変なへまをやったものだ、ジョニー、だがそれをごまかすわけにもいかない。なにしろ君は一度わたしを救ってくれた。そしていまその恩義が同じことを要求しているのだからな」
「そう言ってくれるだろうと思っていたよ」とカーナンは言って、グラスをもちあげ、自賛のほほえみに顔をほころばせた。
「おれには人間を見る目があるんだ。さあ、バーニイに乾杯だ、なぜって、……『奴はすてきにいい男』だもんな」
プロフィール
  • プロフィール画像
  • アイコン画像 ニックネーム:dvd
読者になる
2011年09月
« 前の月  |  次の月 »
1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30
最新コメント
Yapme!一覧
読者になる
P R
カテゴリアーカイブ
月別アーカイブ
http://yaplog.jp/ywenxin/index1_0.rdf