はじめに 

January 01 [Tue], 2013, 17:42
ご無沙汰いたしております。
昨年8月にHDDがふっとび、7割書いたリアが微塵もなくなった顛末、なんとか復旧しようと思ったのですが、その半年後に使っていたメールサーバーがサービス終了となってしまい、頂いたアクションを再DLすることはおろかメールアドレスもすべて失ってしまい、続けることが困難となってしまいました。
結末を想像で書くことは皆様のキャラクターの意志を損ねることとなってしまうので避けました。
尻切れで本当に申し訳ありません。

「勇者代行しちゃいます!?」は望みどおりの小説が描かれるものではなく、マスターとプレイヤー各自間での駆け引きのある「ゲーム」です。なお、すべての設定・アクションが採用されるわけではありません。

諦めざるを得ないので試合終了です。
第5回のノベル暫定5話通常(表ノベル)分公開中

アクションについてはこちらから

更新履歴(最新5件):
7/22:ブログに近況報告
6/8:今後の予定につきまして
6/2:5-4
6/1:5-3
5/30:5-2暫定公開


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登録キャラクター一覧 

October 01 [Mon], 2012, 2:55
キャラクター名               種族・年齢・職業            プレイヤー
■クッカ=マーリア・ユリリエスト      魔族・外見20歳・使用人         風見鶏
■エレナ・リタ                 人間?・自称13歳・自称魔法使い      鏡月雪紗
■ネス                     魔族・23歳・傭兵            879
■トパーズ・ベリウッド           人間・19歳・武芸家           わろん
■ヴェント                   エルフ・外見24歳・王宮付学士      風波
■ユシュアル・ラウレンティス        人間・16歳・剣士/傭兵          神代 遊
■"消炭海賊"キャプテン・チャコール     人間・21歳・錬金術師/海賊        sn
■エルム・ランドレイク・ホーン       人間・16歳・竜騎士/貴族         みゅー
■コンラート・フォン・モルトケ       人間・36歳・冒険者/便利屋        イザ
■ピリカ・グリム・ピルグリム        ハーフエルフ・14歳・踊り子/看板娘    まさみ
■ヤツカ                  獣人・外見24歳・芸人/魔術師       うすしお
■ヘイゼル・エストレラ           猫獣人・15歳・竜騎士          冷菓
■カティー・ヨーナック           猫獣人・17歳・魔法使いの卵       ひにゃ
■ユーコミス・バーデルハーツ        魔族・51歳・診療所医師         葉月美雨
■イヴリーン・アウル            人間・64歳・医者            スズ
■バルタザール・ボー            エルフ・230歳・生物学者         紅桃
■ジョエル・デュ・アンペール        人間・24歳・騎士/貴族          北条
■ジェレミー・ルフェーブル         人間・19歳・鍛冶師/戦士         miu     
■フィテウマ・コモーサ           魔族・外見30歳・傭兵           4十
■リン・グレイル              人間・28歳・旅人             秋月
■チルハ・キサラギ             人間・外見12歳・フリーター       いつきち
■キーネ・エイネリエ            魔族・15歳・細工師            スミナリ
■エセキエル・コールドウェル        人間・42歳・聖職者/魔術師        白都
■ディル・ハデス              魔族・外見20後半・魔導師         ででこ
■サナ・スタードロップス          魔族・外見28歳・給仕/用心棒       せーじ
■ロウ・リーヴ・ブライティスロード     魔族・外見20歳・旅の学者         せーは
■アルビレオス               魔族・138歳・旅人/傭兵          歌古
■ブラインドマン              人間・47歳・神官             烏羽
■オットー・イガミ             犬獣人・13歳・武芸者           KY
■リュナン・カーリュオン          獣人・14歳・魔剣士/木彫職人       シオン
■セレーノ・ルー              人間・16歳・聖職者見習          リョウ
■ブラウアー・フォーゲル          人間・28歳・学者             lindy
■ユイト・エクリプス            人間・24歳・何でも屋           紫月
■レイ                   人間?・外見16歳・不定          ビビビ
■アザーティア               創造物・外見8歳・救世主         Kota
■ティフィノッテ              妖精・外見13歳・何でも屋         PF
■ブリード                 ハーフエルフ・外見9歳・魔導師          渉
■ユリアス・ハイマート           魔族・外見13歳・下僕           平伊
■ミア・フレイア              人間・12歳・竜騎士見習い      myun    

【5-4:蛮勇を描く】 

June 02 [Sat], 2012, 14:24
【5-4:蛮勇を描く】

 少女は思い悩む。
 自分はどうして生まれてきたのだろう。あの男に無理やり手篭めにされた母。あちきは汚らわしい子なんじゃないだろうか。
「おい、大丈夫か?」
 覗きこんでくる顔はヤツカのもの…。いや、コレはヤツカの姿をしたイツカだ。
 どうやら疲れて眠りこけてしまったらしい。そして悪夢にうなされていたようだ、気がつけば酷く冷や汗をかいていた。
「うん…ねえ、イツカ。あちきなんでココに居るのかな」
 ピリカは、背の高い白髪の男…ダークサイドからあの話を聞いて以来、自分の価値観がわからなくなった。
「お前の生き方はお前にしか決められない。ただ私が言えるのは君の母親は、父親がどんな人であれピリカが生まれることを望んだということだ。それはお前に幸せになって欲しいからだったんじゃないか」
「あちきの…幸せ…」
「なあ、ピリカ。お前がアイツに復讐したいって気持ちはわかる。だが、残されたやつの気持ちも考えろ。お前は人と関わっている。ヤツカも、私もそうだ。だからもし、アイツを倒そうとしているのなら無茶してお前一人で行くような真似はするな」
「……」
 ここ数日思い悩んでいたことはバレバレだったらしい。ピリカはばつが悪そうに視線をそらした。
「そりゃお前、ヤツカに取られた腕輪を私が受け取れとか、そんな遺言まがいな事されたら誰だって気がつくだろう普通。それにな、お前達二人は似すぎている。だからちゃんと和解するべきだ。互いが意地をはっても仕方ないことだろう」
「でも…」
 ヤツカに腕輪を盗まれたショックは大きい。それが例え自分のためだったとしても。
「自分で取り返すことだ。ちゃんと話し合え。現実から目をそらすな。言わなかった責はヤツカにあるが、聞かなかった責はピリカにある。だから、お前達はどっちが悪いわけじゃない、まだ関係は修復できる」
「…ヤツカの事は考えとくよ。…でもね、イツカ。あちきはイツカの事が好きだし、母ちゃんのことも大好きなの。だから、母ちゃんに無理やりその…アイツが暴力を振るったことが許せないんだ。だから…」
 ピリカは自分がミーティアの研究のために生まれたのではないかと思っている。だからそれを材料にダークサイドを油断させてその隙に倒すつもりだった。
 あまりに少女の思いが強く、必死の説得も受け入れられなかった為、イツカもとうとう観念して彼女に同行した。
 そうして、再び巨漢と対峙した。
 けれどピリカの必死の訴えは彼から冷たくあしらわれたのである。
「研究?そんなものに俺は興味はない。ただ都合が良いからココに居るだけだ。俺は俺の因子を外にばら撒くことでそいつらが俺への生態エネルギーを集める。そうやって生きている生物だ。だから必要に応じて女も抱く」
 どうも研究はヴァザーリの管轄らしく、ダークサイドにはミーティアの事情に深く関わる気は一切ないようだ。仮に関わっているとしても、その内情までは興味がないといった風だった。
「ならば、問答無用で戦うだけだよ…!!!」
「よせ、ピリカ!!!」
―――ドーピングタトゥーを発動させる。全身に力がみなぎってくる!!!
「コイツを生かしておいたら、たくさんの人が不幸になる!そんなこと、させない!!!!」
「馬鹿な娘だ。私は生きるためだけにした事を、咎めると言うのか?お前達に息をするなというのと同等だぞ?」
「うるさいっ!だからって、人を道具のように…母ちゃんを強姦したお前を許さないっ!」
 特殊細工した戦闘用の腕輪から鋼糸が飛び出し、ダークサイドに襲い掛かる。だが、相手が悪かった。ダークサイド…ダーク・スターの本分はその無数の触手にある。
 鋼糸は数本の触手に捕われ、残りの触手がピリカめがけて襲ってくる…。
”やられる!!!!”
 そう思った刹那、ぐしゃっという鈍重な音がした。
「……イ…ツ……カ?」
 イツカの脇腹と肩は先の鋭く尖った触手に貫かれていた。
「逃げ…ろ…ピリカ。復讐をとげたいのなら…生きろ」
 串刺しのまま、ダークサイドの元へと引きずられていくイツカ。
「嫌……嫌だよイツカああああ!!!」
 涙で前がかすむ。それでも。臨戦態勢は解かない。イツカまで…絶対に許さない!!!
 ピリカは熱さのあまりに自我を忘れていた。
「…折角この男が生かしてくれるというのに、それを無駄にするのか、小娘」
 まるで汚いものを見るかのよな蔑みの視線を冷ややかに浮かべ、再度宙を舞って触手が襲い掛かってきた。三本、四本まではタトゥーの力でなんとかかわせた。しかし、5本目が眼前に迫る!!
 しかしその触手が、部屋に響く声によって留まった。
「ちょーっと待って下さいよ、ご主人様。そんなつまらない娘より、僕と遊びませんか?」
 吹き抜けになった部屋の三階あたりの窓に、ツインテールのシルエットが逆光で浮かび上がっていた。



 黒の短髪をオールバックにまとめた男は憂鬱だった。
「ったく…レイもティフィノッテもマイペースすぎんだろ……」
 気ままな妖精はローゼンガルドに一度戻ったらしい。だから今はレイと二人だった。
 お嬢様なのか、天然なのかは知らないがこのレイという少女は世間知らずにもほどがあって困る。
 だからミーティアという無法地帯で人探しをするという少女を一人にするわけにはいかなかった。
「ユイトさん…怒ってます?」
 眉をしかめて心配の素振りはみせているが、さっき買ってやったサンドイッチをもふもふと頬ばって居るあたりは危機感はないのだろう。
「レイ、あのな。これからいくところは生きるか死ぬかくらいの危険なところなんだよ。だからちょっとでも危ないと思ったら、すぐに逃げるんだぞ?」
「なんでですか?『あの方』に会いにいくだけなのに。『あの方』は悪い人なのですか?」
「まだわかんねーけど…でもユラたちにはヴァザーリに直接聞けって言われたしよ。あ、くれぐれも、彼女達に会った事は誰にも言うなよ?」
「はあ…」
 やはり危機感を持つことなく、黒髪の少女はクリームのたくさん入ったイチゴのサンドイッチを幸せそうに口に含んでいた。
 レイは自身の立場も把握しかねている。『あの方』が悪い人ならもしかしたら自分も悪い人なのかもしれない。それでも、自分が生きて良いと言ってくれた彼を悪人だと思えなかった。
 彼女は何も考えていないわけではない。『不自然』な娘達を見てしまった。自分がそのままであっていいというのに、彼女達は不自然を強いられている。それに心を痛めた。
「ユイトさん」
「ん?」
「ユイトさんは『普通』ですか?」
「はあ?」
 またおかしなことを聞く、とも思ったが、レイの表情は至って真面目だった。だからこう答えた。
「俺は俺だ。誰かの尺度じゃなく、誰にも縛られず、自由に生きてられるって意味じゃ『普通』なんじゃないか?」
「…うん、やっぱりそうですよね。普通に生きないと駄目なんです」
 そこまで聞いて、この少女がユラ達のことを言っていることに気がついた。なんだ。レイはレイなりに人の事考えてるんじゃないか、と安心する。
「ああ。普通を取り戻してやろうぜ。俺たちで」

 双子に教えられた研究所と思わしき建物へたどり着くと入り口を丁度通りかかった研究員の男が血相を変えた。
「あ、あなたは……」
「…?どこかでお会いしましたか?あの…人を探しているのです。ヴァザーリさんに会えますか?」
「は、はい、ご案内致します」
 レイは首をかしげていたが、ユイトはレイがこの研究所の関係者であると確信した。男の対応を見ればレイがそれなりの身分だったことも。
 やがて、再奥の部屋へと案内される。部屋の中から話し声がするがここで引き下がれまいとドアをノックする。
「誰です?」
「あの…レイ…といいます。貴方は…ヴァザーリさん…ですか?」
 その名と声に聞き覚えがあったのか、部屋の主はドアの元まですっ飛んできた。
「レイ!!!」
「貴方様!!!」
 レイは毎日記憶に鮮明に浮かんでいたその顔に、ようやく会えた嬉しさで抱きついた。
「…どうしてここに戻ってきた…。いや、今は中に。早く」
 急かされるままに部屋へと入った。先客が二人ほどいた。
「申し訳ありません、イヴリーン先生、フィテウマさん。ちょっとした知り合いなのです。お邪魔はしませんので向こうで待たせても宜しいでしょうか」
「ええ、構いませんよ」
「私は話よりも早く研究がしたいのですが。ああ、見知らぬ生命体の研究など、心が疼きます」
 高名な女医イヴリーンはヴァザーリに談判に来ていた。それはこの研究所の権限を自分によこせという無謀なものだった。
 本来ならばミーティアの総帥であるファーネル・カストラートに押し迫るつもりだったのだが、あの男、珍しく留守にしているらしい。
 さらにはまさかのフィテウマに見透かされて、止められたのである。

「貴女は私まで殺すつもりですか、イヴリーン・アウル。別にあの総帥や、ミーティアの住人がどうなろうと私の知ったことではありませんが、あなたの勝手で私まで殺されるのは忍びませんねえ」
 自分の中の魔力の昂りを感知されたらしい。つくづく面倒くさい男だと思った。自分の思惑を外されてしまったが、本来人を助けるはずの自分が国を壊滅させるのは冷静になれば確かに滑稽なことではあるのだが。
「だいたい、殺してしまったら研究が出来ないではありませんか」
「やるといったからにはまるで役に立たない研究では困ります。せいぜい役に立つよう研究してください、フィテウマ・コモーサ」
 フィテウマは子供のように拗ねていた。
 それは度を越して酔った日の事。自分は全く身に覚えがないのだが、どうもこの老女医を自分の部屋に連れ込んだというのだ。連れ込んだところでベッドに突っ伏してしまい、何事もなかったのではあるが、女医は無理やり連れ込まれたことが不快であったらしい。
 身に覚えのないことでさんざん説教をくらい、ココへ渡ってくる船の中でも何度か小言を言われ今に至っている。
 だから、研究所のこともはじめは断るつもりだった。けれど、「貴方は役立たずで終わるつもりですか?」とたきつけられた挙句に「相手はフィテウマのことを恐れて、近づかぬように言っているのです」などと言われては、何よりも嫌がらせが好きな自分が来ないわけにはいかない。
「別に貴女のためにやるんじゃないです。好奇心ですよ好奇心」
 自分に言い聞かせるようにそう呟いたのはつい昨日のこと。

 実際、イヴリーンもフィテウマを連れて来たのは正解であった。彼のおかげでどうにか冷静を取り戻すことが出来た。
 世界を乗っ取ろうとしているものを倒すのに国を滅ぼすのではミイラ取りがミイラだ。
「先生がおっしゃっていた研究所の権限のことですが―――」
 少女達の乱入で一度途切れた交渉に再び入る。
「はっきり申し上げましょう。無理です」
「私が、ここを破壊すると申しあげてもですか?」
 イヴリーンはアスターヘイズの…魔導師の家系に育った。そして、これまで魔力を使うことなくずっと体内に蓄積させてきた。ただそれを解放すれば、この町は愚かミーティア全土が沈むだろう。
「恐喝をなさるつもりですか。力で奪っても研究員は貴女の方針に従わないと思いますよ」
 研究所の詳しい事情は当然知るよしもない。ただ、総帥にいいように使われるのだけは嫌だった。
「ローゼンガルドの現国王などは他国民であるにも関わらず姫君を盾に王家を奪ったではありませんか」
「それは違うでしょう。ヴェント王はそれまで三代に渡って王家に仕え、国王達を見てきている。つまりローゼンの政治に対するノウハウがあるのです。貴女の現状とは違う」
 加えてヴァザーリはイヴリーンには生態や医療の知識はあれども天文・社会・歴史・理数などあらゆる分野に精通していなければこの研究所をまとめることは出来ないと告げた。
「大体、権限を得るにも先生はこの研究所が何をしているかすら知らないでしょうに」
「死人を操ったり、中身のない生物を作り上げているのではないのですか」
「確かにクローンを作っては居ます。ですが、それはこの世の『柱』の代用を作り上げる為の研究です。死人を操る…?ああ、もしかしたら…」
 メガネの研究者は顎に手をあてている、なにやら思い当たる節があったらしい。
「我々の研究資料が盗まれたことがあったのです。恐らくはそれを利用しているものが居るのでしょう」
「では、ローゼンガルド北部の町での一件はあなた方には関係がないと?」
「私は世界を救いたいと思っていればこそ、非人道的と罵られても研究をしているのです。誰がなんと言おうと」
 では、総帥は何のために自分をヴァザーリの研究所へ置こうとしたのだろうか。単純に危険分子として監視下に置きたかっただけなのだろうか。
「ああ、それだったら、私がお願いしたのです」
 この研究所は広く、そして一部をアスターヘイズから逃れてきた難民の人々が使っている。そして彼らの中には怪我を負ったものも大勢いるとか。その面倒を見て欲しいという事のようだ。
 総帥は…ミーティアの民が彼に対して何も言わないのは、国民に対して「は」情け深い、というところにあるのかも知れない、とフィテウマは考える。
 それはフィテウマが気に入ったものにだけちょっかいをかけるようなものなのだが、他人に関してはどうでもいい事だ。
「それでは研究のほうには手は出せないのですか?私は」
 ただイヴリーンの発言に興味なさそうに傍観していたフィテウマは、せめてもの興味の対象を取り上げられた子供のように口を尖らせてぼやいた。
「いえ、ただし技術を悪用しないことだけは条件とさせてください。この研究が禁忌とされるのは、容易く人員を得られるという事にあります。言わば、軍事において兵士を無尽蔵に作り上げることすら出来てしまうのです」
「成程。一人軍隊も夢ではないという事ですか」
 …誰ともつるむつもりもないフィテウマには全く興味も魅力もないメリットだったのであるが。

 考えさせて下さい、といって淑女は部屋を後にした。フィテウマはそのまま研究施設に残り、早速といわんばかりに目を輝かせていた。
 部屋に残されたのはレイとユイトだ。
「すまないね。待たせてしまった」
「俺ははずしたほうが良いよな?折角の対面なんだろう?」
 レイの耳にはもはやユイトの言葉は届いていない。
「君がレイを連れてきてくれたのかい?」
「え、ま、まあ…」
「ふむ…まあ少し話を聞いていってくれないか」
 ヴァザーリのほうから申し出があっては断るわけにもいかない。嬉しそうに微笑んでいるレイをみて、ユラ達にもこうやって笑って欲しいと思うユイトなのであった。



 金髪は風になびいていた。
 ローゼンガルド中を走って、走って、やっと見つけたのは盲いた神官。…とピンク髪の狼獣人だった。
「あれ?珍しい取り合わせだね」
「まあ、ちょっとした成り行きですわ。嬢ちゃんこそそんなに慌ててどうしたんですかい」
 乱れた髪が爆走した事を物語っていた。ちょっと恥ずかしい。けれど、勇者様のためならそんなことは形振り構っていられない。
「ああ、みなまで言うな、わかってる。クリスから聞いてるよ、トパーズ。お前も連れてけってさ」
「クリスさんが?」
 確かに彼女には質問をした。勇者の護衛仲間だから、カノンがそれを頼まれたという事だろうか。
 そうして、今船で彼らと目的地へ向かっている。
「待っていてください、勇者様…絶対にあなたの苦しみを…私が軽減してみせる!」
 大きな決意を秘めるトパーズの胸で、黒き小さな竜が一つあくびをした。



 勇者を志す少年リュナンは、ミーティアを目指す予定だった。
 しかし、船着場で大変な情報を耳にしてしまったのである。
「…本日……決行……は……で頼む」
 何かあくどい商売の取引でも行われているのかと思ったが違うようだ。男達は町人とあの黒マントを羽織っている者の二組に別れている。
 リュナンは気づかれぬよう、会話の聞こえる岩陰にそっと潜んだ。
「では、総帥が到着なさる前に騒ぎを起こす算段なのだな」
「はい、すでに街には間者を仕込んであります」
(総帥だって!?まさか、ミーティアの総帥…か?どうしよう…捕まえるには人数が多いし、斬ってしまったら情報がつかめない…)
 結局会話が終わるまで、その場を動くことは出来なかった。リュナンは人影が去ったのを確認すると、疾風のごとく城へと足を運ぶ。
「すみません!!急ぎの用事なんです!!ヴェント王に会わせてください!!お願いします!!」
 あまりの喧騒に、兵士が付き添ってヴェントの元に通される。
「リュナン…?一体どうした」
「大変なんです!もしかしたらミーティアは…」
 リュナンは港での経緯をヴェントに詳しく話した。国王の顔の色は当然、悪い。
「…思ったよりも早かったか。よく知らせてくれた。聞け、兵よ!すぐさま町に小隊の配置を!そして港は怪しい船の警戒を!船のつけそうなありとあらゆる海岸に見張りを置け!」
 すでにティフィノッテからその兆候は聞いていた。だが相手のほうが迅速であった。
「ヴェント様!町に火の手が上がりました!」
 やっと復興し始めたというのに!チッという舌打ちがヴェントから漏れる。さすがに上陸までには間に合わないか…。
「やむを得ない。応戦だ!」
 これを好機と見るべきか。すでにミーティアへの布石は打ってあるし、総帥がこちらへ来ているのならこの隙にミーティアを抑えることが出来るかも知れない。
「……ヴェント……行けば?」
 強いまなざしでそう告げたのはシャルだった。ローゼンガルドの防衛だけなら、持たせることは出来ると。
「しかし……シャル…」
 確かに時期国王になっても良いように、シャルには軍略や帝王学は学ばせてある。策を授ければ防衛戦の指揮を取ることくらいは彼女でも出来るだろう。だが自分は国家の長。国をあけて良いものだろうか。
「リュナンも残って手伝ってくれるわよね?」
「は……はいっ!!」
 シャルに微笑まれて顔が火照る。王家の姫君に、当てにされていることがリュナンには嬉しかった。
(カーリュオン……みててくれ……僕はやってみせる!!)
「ヴェント様、大変です!」
「何事だッ!」
 まったく次から次へと、この忙しいときに伝令が届く。
「アズールホーン、シルバーレインにもミーティアが侵攻した模様!」
 戦力を分散しているのだろうか?…いや、ヤツラは傀儡を操る。その戦力は計り知れない。
「王!」
「今度はなんだ!!」
 投げ出したくなるほどに悪い事態が重なっていく。いらつくヴェントの耳に入ったのは、思いがけない光明だった。
「民衆が……王と共に戦うと、城の前に集まっております!」
「……リュナンか?」
 彼はコクリと頷いた。ここへ来る前に、アルニカ・ロゼットにも情報を流してきたという。メルやサナ、残っていたヘイゼルやロウ、ユミたちが中心となって、城下の民の避難をうながしたようだ。国家の一大事を聞いて自分たちの国は自分たちで守ると言う意思を持った者達が城へ集まったのだ。

 総力戦として、決着をつけるか。
 あるいはミーティアへ奇襲をかけて全ての情報を牛耳り、総帥を追い詰めるか。
 ローゼンガルド国王、ヴェントに決断は迫られていた。

ミア・フレイア 

June 01 [Fri], 2012, 0:39
キャラクター名:ミア・フレイア 
年齢:12
(外見年齢)10
(実年齢)12
性別:女

【容姿】
肌:(色)白
髪:(色・髪型)赤毛、整ってないショートヘア
目:(色・形状)碧眼、丸っこい目
顔の特徴:幼い感じの顔立ち
体型:(身長・体重)132cm、26kg
体型の特徴:小柄で華奢な感じ
服装:動きやすそうな軽装で、よくいる街の子みたいな服

【性格】
一人称:ミア
二人称:〜様 
三人称:〜様
口調:子供っぽい感じの、〜です。

好きなもの:竜
嫌いなもの:勉強
特技:運動全般
苦手な事:じっとしてること

【社会的地位】
種族:人間
職業:竜騎士見習い
出身地:アズールホーン
生い立ち(設定):
竜騎士の家の子。末っ子で、竜が大好きで、
いつも竜と一緒にいられる竜騎士を目指してます。


【戦闘能力】
メインウェポン(主武器.):軽量槍 (軽くて扱いやすいけど攻撃力低くて折れやすいです)
サブウェポン(副武器):護身用の短剣 (リンゴの皮むきとかいろんなことに使ってます)
必殺技・魔法:
まだ無し(槍術の特訓中)

【5-3:嵐の前のなんとやら】 

June 01 [Fri], 2012, 0:18
【5-3:嵐の前のなんとやら】

 王は告げる。
「今一度、お前と契約をしよう。ティフィノッテ。ミーティアに捕らえられているアスターヘイズの者達や獣人達をお前が誘導するんだ」
「あいあいさー!このハッピー・ブリンガー様におーまかせっ♪」
 相手が一国の主であろうとこの小さな妖精にとっては『客』の一人でしかない。
「そのかわり、報酬はずんでよねー。なんたって『お・う・さ・ま』なんだから」
「馬鹿な。国の財政は僕…いや、私の金ではない。私の一存では決められぬ」
「えー!じゃあどうしよっかなー…今回だって宝石でお金かかってんでしょー?払えるの?」
 ティフィノッテがしぶっている理由、それはこれまでヴェントが自らの財布を犠牲にする大技を二度も使っていることにある。さらに今回は要所で必要となる魔法石とそれを忍ばせる為の宝石を大量に用意しているのだ。
 つまり、国王様自身の財布にはまず金がないと思っていい。むしろあの宿の女将に借金すらしているかもしれないのだから。
「まあ、今回は成功すれば報酬は国から出す。それほどまでの大事な仕事だ。やりがいもあるだろう?それに宝石のほうも問題ない。」

 さすがにヴェント王の最初の仕事が『宝石をたんまりと買え』ではあまりに聞こえが悪いと懸念したのはシャル王妃であった。
「これ、使えば?」
 彼女が示したのは彼女の母…すなわち前第一王妃の貯めこんだ宝石や貴金属であった。
 魔物に毒されてからというもの、元第一王妃には身分を約束する為の賄賂などとして特に多くの宝石類が送られていたらしい。
「いいのか?」
「ここに残しておくほうが気分も悪いし。国の為になるならそのほうがいいんじゃないかしら」
 そういいながら、その中に彼女自身の私物が混じっていることをヴェントは知っている。我が妻はそういうできた娘だ。自分が面倒を見たとはいえ、こういう心を持っていてくれることは嬉しく思う。

 ヴェントの話を聞いて、妖精もどうやら納得したらしい。えへんと胸を張っている。
「しょーがないなぁ。このティフィノッテ様にしか出来ないっていうなら、やるしかないじゃんね!」 
 そうしてここに宝石商の工作員の一員としてティフィノッテが加わったのであった。



 つい先日、各々の道に別れるまでアズールホーン城内のある地下室に彼らは集っていた。

「俺は…『天』に関わろうと思います。根本を変えなければ…この世界は変わらないと思うのです。そのために、魔導具を集めたいと思うのです」
 黒い猫耳は白く染まってしまった少年騎士が思うところを告げた。ここ最近の経験から意思を強くもったせいか心なしか大人びて見える。
 ロウは目を細めて、相棒ともいえる少年を眺めている。
「そうか。それもまたよかろう。お前達の生い立ちにかかわるというのなら尚更だろう」
 アズールの国王はそんな少年の頭をなでてやると一振りの豪華な装飾のついた剣を手渡した。
「…これは…?」
「私の剣だ。この世界の敵となるかもしれないものと当たるのであれば、兵が必要となるときもあるかも知れぬ。シルバーレインにはまだアズールの兵士や見習いたちが数百は残っている。お前を百人将としよう」
「俺が……一隊長に?」
 騎士として名誉なことではあるが、素直に喜べないのは兵役を辞退しようと思っていたからである。
「わかっている。この戦いが終わって、お前がその後もその任を辞したいと思うのであればいつでも返しに来ればいい」
「ヘイゼル、隊長?」
 ロウも単純にヘイゼルの出世に喜んでくれているようだ。それを見て、観念することにした。
「……わかりました。では、お借りしておきます」
「ロウ、ヘイゼルを頼むぞ」
「わかった。イグニス!」
 優しく微笑むイグニスを軽くハグして、無邪気に白き青年は言った。
「……して、お前達はどうする?」
 少年少女を振り返り、国王は尋ねた。彼らはアズールの士ではないが、ここで行動を共にした仲間だ。
「んー。オットーの言ってたイロクって人の事がちょっと気になってね。それにオットーすぐどっかいっちゃうから、あたしがエルムお姉ちゃんの面倒見てあげないと!」
「はわ?エルムの…ですか?」
 当人の知らぬところで話が進んでいたらしい。どうも、子供剣客オットーはエルムと主従とはいえ、自分の責務を果たすことが重要だと思っている節がある。ブリードにはそれが気がかりなのである。
 ついでに言えば、エルムは突っ走りやすく、オットーも単独行動しがちなのが放って置けなかったのである。
 その様子を伺って、イグニスは優しいまなざしを少女に向けている。
「そうか。私も公務でなかなかエルムの相手をしてやれないから、ブリードがそうしてくれるのなら助かる。任せるぞ」
「拙者はブリードの言うように、イロク殿の妹を助けようと思ってござる。それがミーティアとアズールのつながりになるやも知れぬので…」
「うむ。お前ならやってのけるだろう。武運を祈る」
 表情こそ崩さなかったが、イグニスと握手を交わすその時、オットーの犬の尻尾がパタパタと動いていたことに気がついていたのはブリードとクッカだけであった。
「エルム」
「は、はいっ」
 優しいその顔に、ついつい見とれてしまっていた少女は自分の名前を呼ばれて心臓が飛び出そうになっていた。
 お慕いしているイグニス様が、自分を見つめている…。そう意識するだけで顔が火照ってくるのがわかる。
 その動悸を感じているのか、エルムの胸で愛竜リヒターがくあーと不思議そうに声をあげている。
「お前の進言に従い、ミーティアの総帥と会談を成す事となった」
「はいっ!エルムはイグニス様のお傍に!」
「我が君。その作戦は逆でござる。あくまでエルム殿を主人とし、イグニス殿に傍にいてもらう算段ではござらぬか」
「えへへ、そうでした…」
 嬉しそうなエルムの顔を見て、ブリードの顔も自然とはにかむ。
「エルムお姉ちゃんは本当にイグニート様が好きなんだねえ。応援しちゃうな」
「いぐ…にーと????」
「イグニス様のあだ名だよ。ミーティアでイグニス様なんて呼んだら、いつ刺客に狙われるかわからないから、ね?」
 けれど、それはエルムには通用しない手段である事に彼女は気づいていない。なぜならエルムは4文字以上の名前を覚えられないのだ。 
「えっと、イグニス様って呼んじゃいけないんですか?」
「外では、ね」
 結局エンゼンデドールの頭、エンを取って呼ぶこととなったのであった。

 そんな地下での賑やかな談笑もつかの間の話。
 皆が旅路に着き、寂しく玉座の間に残っているのはユシュアルとハーツェルのドラゴネッティ兄妹二人のみであった。
「クッカの姿が見えないようだが…」
「はい、お兄様。彼女はこの城に残る不貞分子を取り除くそうです」
「成程…」
 昔から相変わらず淡々としたやり取りではあるが、二人でいられることがユシュアルにはたまらなく嬉しかった。
 この場に美丈夫、ユシュアルが残ったのは、皆が帰る場所を守りたかったからというのが大きい。
 そして兄が…ハーツェルが自分のことをどう思っているかはわからないが、せっかく会うことが出来たのだ。離れるのは嫌だった。それが一番の理由だった。
「にいさ……」
 離れていた三年分、話したいことが山とある。そしてまさに声をかけようとした瞬間だった。
 物陰から、何者かが飛び掛ってきたのである。  
「……!!」
―――ザシュッ!!!!
 一刀のものに賊は切り捨てられた。
「気を抜くな、ユシュアル。クッカが見回ってくれているとはいえ、まだ潜んでいるかも知れん」
 ハーツェルに会えたことで嬉しさから気が緩んでいた。彼はこんな自分を足手まといと思っただろう…。胸が痛い。
 しかし、次にかけられた言葉でユシュアルの心は温かくなるのである。
「現役を退いたとはいえ、剣の腕が鈍ったつもりはない。女を守るのは男の使命。お前は剣士ではあるが、一人の女性だ。守られても構わぬだろう?」
 


 イロクという男の話はオットーの報告で聞いていた。
 彼は…反ミーティアであると信じようと思っている。けれどそんな内通者の彼もまた、ミーティアへ報告に戻らねばならぬ日が来るはずだ。
 恐らく、このアズールへ攻め入る前段階には、必ず。
 それが元暗黒竜ことメイドクッカの『読み』であった。そうして彼女は内通者イロクの監視を始めた。
 ここ数日でわかったのは、彼は仲間内で一目置かれており、手練であるという事。恐らくは自分のこの監視も気づかれているだろう。
 元暗黒竜は、少しでもこのアズールに敵意を持つものは容赦なく殺害した。一人、二人ではなかった。もう両の指を曲げても足りぬ数を裂いた。
 そんなある日、『彼』のほうから接触をしてきたのである。
「女。あんまり数を減らさないでくれるか。確かに、あいつらはこの国を落とそうとしている。だが、こちらもミーティアに怪しまれては適わん」
「それはやりようではないのですか。伝令役など信用の置けるもの、あるいはあなた自身が一人ないし二人で行けば良いだけのこと」
 まいった、とお手上げのポーズをすると、イロクはメモをクッカに手渡してきた。
「それは俺と同じようなヤツ…少なくとも弱みをどうこうされない限りはアズールに手出しはしないだろう連中を書き出してある。お前たちがミーティアを迎え撃つことはわかった。俺はオットーたちを信じようと思う」
 妹が解放されればアズール側につくというのだ。それでもクッカは釘を刺しておくことにする。
「万が一、それでもあなた方が抵抗なさるようでしたら、私が容赦なく殺します」
「ああ、それで構わない」
 彼の目は嘘を言っているようには見えなかった。しかし、大事なものがあれば心が揺らぐこともまた、クッカは知っている。例えそれが暗黒竜であったとしても。
 リゼルヴァは……あのお人よしのお嬢様はセトにまんまと騙された。自分で選んだとはいっても選択肢はどちらもYESの二択のようなものだ。
 クッカは知っているのだ。自分が、あの少女によって揺らいでいることを。
「……セトに会う事があれば私が直々に殺してやるものを…」
「なんか言ったか?」
「いいえ。独り言です。せいぜい上手くやってください。この国の命運が、あるいは世界の命運すらもかかっているかも知れないのです」
 窓から遥か南の空を睨みつけて、魔族のメイドは男に助言したのだった。



 「なあ、戻って誰か居たらどうする?」
「居たとしてもイグニスかその従者かどちらかだろう。問題あるまい」
 青年はいかつい男と共に蒼の地へ戻ってきた。ここはオレの故郷でもある。むざむざ他国のヤツに渡すわけにはいかない。
「猛っているな」
「お前だってそうだろ?竜達を殺されて、オレは腹が立ってるんだ」
 中身のない竜……例え彼らがクローンであったとしても、竜の姿をしてる以上は同胞だ。
 青年…ジョエルが恐れているのは、イグニスが許してくれるか否かにある。いや、許してくれなかったとしても。自分は故郷のために戦うだけだ。
「……騎士団にいれなくなる事が怖いか?」
 そんなジョエルを察して、いかつい男…黒竜王ラーガが声をかけた。
「いや、例えそうなってもお前が傍にいてくれるんだろ?だったらそれでいいさ」
「ジョエル…」
 大きなガタイの厚い胸に飛び込むジョエル。それを両腕で支えるとラーガは静かに言った。
「我が咎めを受けてお前が許されるのならそれでも構わぬ。お前は元の生活に…」
「馬鹿いうなよ。お前が罰を受けるって言うなら、お前を庇ったオレだって同罪だ。ま、イグニス様は寛大なお方だから、多分大丈夫だとは思うんだけど」
 その考え自体が甘えだろう、とラーガは笑う。ジョエルはいつでも調子が良かった。それが彼の取り柄でもあった。
「良くも悪くも楽観的なところは相変わらずで安心したぞ、ジョエル」
「なんだよ。オレだって何も考えてないわけじゃねーよ!」
 そうしている間に城の入り口についてしまった。門番の隙を見計らってこっそりと侵入する。ここまであの黒竜たちに会うことは一切なかった。あのブリードとか言う子供が根こそぎ倒してしまったのだろうか。
 回廊を抜け、王の間にたどり着くとそこに居たのはユシュアルとハーツェルの兄妹だった。
「よう。ユシュアルが残ったのか」
「ジョエル…戻ってきたのか…後ろに居る男はもしや…」
 プロメテオの姿は仮初めと本人から聞いていた。ならばそのガッシリとした男がラーガその人なのだろう。
「ユシュアル。すまぬが我とジョエルにも協力させて欲しい。…水神の…久しいな」
「ラーガか。その様子では憑き物は払えたようだな」
 ユシュアルは旧友のように話す二人を不思議に思う。それもそうか。二人は『神』と呼ばれる存在だったのだ。
「全指揮権は私がもらう。それでよければ参戦は構わぬ」
 ハーツェルの言葉に頷く二人。そしてジョエルが尋ねる。
「黒竜たちの姿が見えないみたいなんだが……」
「三分の二はあのブリードが倒してしまった。残りは私が従えた」
 その力の使い方をハーツェルに伝授されたのだろう。普段あまりこういった顔をしないユシュアルが不敵に微笑んでいる。
「なんかお前…ちょっとたくましくなったんじゃねーか?こう、戦乙女っつーか…」
「国一つ預かる身だぞ。しっかりしなくてどうする」
 今まで散々めんどくせ、といってきた自分を若干責めたくなった。これでもオレも騎士だ。女のユシュアルがこれほどに頑張ろうとしているのに、負けていられない。
「おう、勇ましいのは良いけどよ、そんなんだとお前、嫁の貰い手が…ぐふっ」
 ユシュアルの肘がみぞおちに炸裂していた。
「男好きにいわれる筋合いはない」
「なんだと!?」
「二人とも、敵と戦う前から仲間割れはやめぬか」
 ラーガが間に入り、二人を止める。そして空気の読めない男がしれっととんでもない言葉を口にした。
「貰い手が居なければ、私が引き取ればよかろう」
「ハーツ…兄様…?」
「なんだ、ユシュアル。お前が生まれたときから私はお前のことを知っているのだ。何を今さら」
「そそそそそそ、そういうことではなくてですね、その…あの…」
 しどろもどろになるユシュアルに、先ほどの勇ましさはすっかりなくなっている。
「お前のような真面目な娘であれば私の子を産み、その子らにこの国の守護者として後継させてもよいかと思ったのだが…」
 やはり神だからだろうか、好きとか嫌いとか、そういうものさしではないようだが…それでも自分を選んでくれるというのならこんな幸せな事はない。
 もっとも、クリスと違い子供に後継させ自分は隠居することを前提に話しているあたりがハーツェルらしいといえばらしいのだが。
「んだよ。お前この間ラーガに…」
「わーっ!わーっ!!!!」
 慌ててジョエルの口を塞ぐ恋する娘を、ラーガはふ…と微笑んで見守っていた。

 この後に来る、嵐の前のほんのひと時の出来事である。
 
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