創作童話 最終話 

October 08 [Mon], 2007, 0:15

居間に、みんなを集めた洋一は、

『みんな、朝早く起こして すまないね。』
『みんなに、ちょっと聞いてほしい事があるんだが、』

と言った。
弟子達は、不思議そうに、

『先生、どんな事でしょうか?』

と言って、姿勢を正して、
先生の話を聴こうとしていた。

『みんなに聞いてほしい事は、ほかでもない、
 実は、この診療所を、お前達に譲る事に決めた。』

この話を聴いた弟子達は、驚いて、

『先生!、いったいどうされんですか?』
『先生!、どう言う事ですか?』
『先生!、私たちには理解出来ません!』

と、みんなが一斉(いっせい)に叫んだ。

『みんなが驚くのも無理は無いが、もう決めた事なのだ。
 ここにある財産は、総て みんなで均等に分配する。』

『そして、治療長の柴田君を、ここの責任者にするので、
 他のみんなは、彼に協力してやってくれ。』

『柴田君、ここに薬草の種類や、どんな病気に効くかを
 書いた巻物がある。』

『これを君に授(さず)けるので、後の事は頼んだぞ!』

洋一は、そう言って、誰にも見せた事の無い、巻物を、
治療長に渡した。

それから洋一は、旅に出る支度をし始めた。

みんなは、口々に、

『先生!、行かないで下さい!』
『先生!』
『先生!』

と言って泣いていたが、

『今まで、みんなの事を見てきたが、凄く良くやってくれた。
 このまま、私が居なくなっても、きっと大丈夫だ。』

『みんななら、この診療所を任せても大丈夫と、
 思ったから、私は、出て行く決心が出来たのだ。』

『それじゃあ、みんな、元気で暮らせよ。』

と言って、住み慣れた家を出て行った。



それから 旅を続け、3日目に、ある村に着いた。


そこは、洋一が、城下町に出て行くまで
暮らしていた、懐かしい故郷で あった。

洋一は、そのまま、自分の家に立ち寄りもせず、
真っ直ぐ、ある山へ向かっていた。


その山に着いた洋一は、何かを探すようにしながら、
山の、奥へ奥へと入っていった。


そうして、1時間位して、
何か、小さな小屋の様な物を見つけた洋一は、

『おこん!!』
『おこん!!』

と、大きな声で叫んだ。

すると、小屋の中から、
おこんが 驚いた様な顔をして出てきた。

『おこん!、やっぱり、おこんだ!♪』


『洋一さん!、いったいどうしたんですか!?』
『どうしてここへ?』
『診療所は、いったいどうしたんですか!?』


おこんは、びっくりして、早口で次々と質問をした。


『おこんさん、そんなに慌(あわ)てなくても、
 ちゃんと話すから、落ち着いて、落ち着いて、』

洋一は、そう言って、弟子達に 総てを譲って来た事を、
話した。


『どうして、そんな事をしたんですか?
 あの贅沢な暮らしが、気に入らなかったのですか?』

『それなら、次は、もっと お金持ちにして差し上げますので、
 今から町に行きましょう。』


おこんは、そう言って、洋一の手を取って、
山を下りようとした。

洋一は、おこんの手を振りほどいて、

『おこんさん、おこんさん、そうじゃないよ。』

『私は、もっと お金が欲しくて、ここに来たんじゃないよ。』

『私は、お金よりも、もっと大切な物がある事に、
 やっと気付いたんだ。』

と言った。


『え!、どう言う事ですか?』

『私は、お金よりも、おこんさんと一緒に暮らす事の方が、
 楽しくて、幸せなんだ。と、やっと気が付いたんだよ。』

『さあ、私の家で、私と一緒に暮らしましょう。』

洋一が、そう言うと、
おこんは、最初はビックリしていたが、
やがて、瞳を潤(うる)ませながら、

『洋一さん、ありがとうございます。』

『実は、 私も、あれからずっと あの頃は楽しかったなあ、
 と、洋一さんの事ばかり考えていたんです。』


と言って、袖で 涙を拭(ぬぐ)っていた。
洋一も、眼に涙を浮かべて、嬉しそうに、

『これからずっと一緒だよ♪』

と言って、
おこんの手を取って、自分の家に連れて行った。


それから、洋一と おこんは、
末永く、楽しく 幸せに暮らしました。

                           おわり。

創作童話 第9話 

September 30 [Sun], 2007, 21:11

おこんと洋一が、治療を始めて、半年が経った頃、
町や村の人ばかりではなく、全国のお殿様や、
大金持ちの商人達も、病気を治してもらう為に、
やって来た。

その頃になると、弟子も3人入り、順調に、お金も
貯まりだした。

そして、1年が過ぎた頃には、その町一番の
大金持ちに、なっていた。


そんなある朝の事、目を覚ました洋一は、
何か いつもと違うのに、気が付いた。

いつもなら、おこんが、もう起きていて、朝ご飯の支度を
しているはずなのに、その日の朝は、なんの支度も
していなかった。

洋一は、なぜか胸騒ぎがして、急いでおこんの寝ている
部屋に行ってみると、そこは綺麗に片付いていて、
部屋の中央に、手紙だけが置いてあった。

その手紙を読んでみると、手紙には次の様に書いてあった。


『洋一様へ
 私の役目は、これでもう終りました。
 名残惜しいのですが、これにて、おいとま致します。
 これからは、末永く お幸せに暮らして下さい。

                        おこん 』


この手紙を読んで驚いた洋一は、

『お!、おこんが居なくなった!!』

『おこん!!おこん!!』

と、叫びながら、家中を探し始めた。

家に居ないと分かると、今度は外に出て、
町中を探し始めた。

しかし、おこんは、もう どこにも居なかった。

途方に暮れた洋一は、その日一日、何も
手が付かなかった。

その日から洋一は、気を紛(まぎ)らわすかのように、
毎晩 芸者を呼んで、明け方まで酒を飲み、騒いでいた。

病気の治療の方は、弟子達に任せていたので、
お金は、使っても使っても、減らなかった。

そうこうしている内に、2ヶ月が過ぎ、
最初の内は、毎晩騒いで 気を紛らわせていたが、
段々と、騒いでいても面白くない様に なっていた。


ある日の夜の事、風邪を引いたのか、
気分が優(すぐ)れないので、
芸者遊びをやめて、一人静かに眠っていた。


真夜中に、ふと目を覚ますと、なぜだか知らないが、
瞳には、涙が溢(あふ)れていた。

その夜は、そのまま一睡もせずに、何か考え込んでいた。


そして、朝日が昇る頃に、何か 決心をしたのか、
すくっと立って、弟子達を起こして、

『みんな、すぐに居間に集まるように』

と、言った。

創作童話 第8話 

September 29 [Sat], 2007, 4:25


1時間ほど経った頃、おこんは

『そろそろ目が覚める頃ですよ』

と言って、お姫様の側に行き、

『お姫様、お姫様、』

と、呼びかけた。
しかし、お姫様は目覚めなかった。


『どうした、目が覚めないではないか』

段々と、お殿様の顔色が変わってきた。


『お姫様、お姫様、目を覚まして下さい。』

おこんは、必死になって、お姫様に声をかけたが、
お姫様は、一向(いっこう)に、目を覚ます気配がなかった。

おこんが、いくら呼びかけても、目を覚まさないので、
お殿様の怒りが頂点に達し、


『おい!、お前達!、姫は 目を覚まさないではないか!』

『よくも嘘を付いて、余を謀(たばか)りおったな!
 えぇい、もう許さぬぞ!、余が成敗してくれる!』


そう言うが早いか、お殿様は、サッと 刀を抜いて、
おこん達に斬りかかろうとした。

おこんと洋一は、ビックリして、

『ま!、待って下さい!』
『お殿様!、もう少し、お待ち下さい!』

と、言おうとした、その時














『うぅーーん』

と、声がしたので、
お殿様は、思わず お姫様の方を振り向くと、
お姫様が、ゆっくりと目を開け、辺りを見回して、


『お父様、私は いったいどうしたのでしょう?』

『何故か 目眩(めまい)がして、
 倒れた所までは、覚えているのですが?』

『それに、その手に持っている刀は、どうされたのですか?』


と、言ったので、お殿様は、バツが悪そうに、


『い!、いや!、これは何でもない。』

と言って、持っている刀を後ろに隠した。

お殿様は、今まで、怒って おこん達を
斬ろうとしていた事など、すっかり忘れて、


『お前達、よくやった。』

『よく治してくれた。ありがとう。ありがとう。』


と言って、たいそう喜んでいた。
その後すぐに、お姫様は起き上がって、

『お腹が空いているので、何か食べ物を持って来ておくれ』

と、侍女に申し付けていた。
お殿様は二人の手を取って、


『今まで誰が治療しても、目が覚めなかった姫が、
 そなた達のお蔭で、こうして、もう、食事も出来るように、
 元気になってくれた。』

『ありがとう。ありがとう。』



と、何度も頭を下げていた。
そして、二人に、


『お礼に、どんな望みも叶えてやろう。』

『何が望みなんだ』


と言った。
おこんは、

『望みなんて、何もありませんよ。』

と言うと、お殿様は驚いて、


『本当に、何も いらないのか!?』

『お金でもなんでも、好きな物を持って行って良いんだぞ!』


と言ったが、おこんは、もう一度、

『はい、本当に何もいりません。
 お姫様が、良くなってくれればそれで良いのです』

『さあ、洋一さん、帰りましょう。』


と言って、立ち上がって、帰ろうとしていた。

洋一は、何がなんだか分からなかったので、
ただ おこんの言う事に、うなずくだけだった。

お殿様は、あわてて、

『ちょっと待ってくれ、姫の病気を治してくれた恩人に、
 何も、お礼をせずに帰したら、世間の物笑いになる。
 お礼だけでもさせてくれ。』


と言って、黄金百両を差し出し、

『せめて、このお金だけでも、持って行ってくれ、頼む。』

と言うので、


『洋一さん、お殿様は、この様に おっしゃっていますが、
 どう致しましょうか?』


と言って、洋一の方を振り向き、目で合図した。
洋一は、とっさに その合図を理解して、

『そうですね、それを頂かないと、お殿様の評判に
 傷が付くと言うのであれば、遠慮なく頂きましょう。』

と言って、黄金百両を受け取った。





お城から出て、宿屋へ帰って、
おこんは、洋一に、

『これから、この薬草の調合方法と、どれが どんな病気に
 効くか 教えますので、良く覚えて下さい』


と言って、調合方法や、どんな病気に効くのかを
教え始めた。

洋一は、元々 物覚えが良かったので、3日ほどで、
殆んどの薬草の調合方法や、どの薬草が
どの病気に効くのか等を、全部覚えてしまった。


そうこうしている内に、

「お姫様の病気を治したのは、
 今、宿屋に泊まっている二人だ。」

と、評判になり始めて、次々と、治療に押し寄せる様に、
なっていた。

そこで、おこんは、洋一に、

『お殿様から頂いたお金で、近くに家を買って、
 そこで病気の治療をしましょう』


と言って、近くに家を買って、病気の治療をし始めた。


一ヶ月位経った頃には、洋一は、どんな病気でも治す
お医者様と言われて、その町どころか、遠くの町や村からも
病人が訪れる様に、評判になっていた。

創作童話 第7話 

September 27 [Thu], 2007, 22:11


洋一は大きな袋を背負い、おこんは、キツネの姿だと、
人が不審に思うので、人間の姿のままで、
城下町を目指して出掛けて行った。

城下町には、どんなに急いでも3日かかるので、
途中、野宿で1泊と、もう1泊は、幸いな事に、村で
一夜の宿を借りることが出来た。

3日目の夕方に、ようやく城下町に着いて、
その日は、もう遅いので、宿屋を探して泊まる事にしました。



洋一は、宿屋で一晩ぐっすり眠ったので、
疲れはすっかり取れて、次の日は、朝早く目が覚めた。

すると、おこんは、もう起きていて、一緒に朝ご飯を
食べようと、お膳の前に座って待っていた。

『おこんさん、お早うございます。』

『洋一さん、おはようございます。 
 顔を洗って来てください、朝ご飯を食べましょう。』


と、言って、ご飯を、お椀に よそおった。



二人は、一緒に ご飯を食べた後、城下町の中心部に
向かって歩き出した。

その途中で、人だかりを見つけた二人は、
なんだろうと思って、近くに居る人に聞いてみた。

『あのう、ちょっと、お聞きしますが、
 この人だかりは なんでしょうか?』


『これは、お殿様の、たった一人のお姫様が、ご病気に
 掛かって、何人もの有名なお医者様に、
 見て貰いましたが、
 誰も治す事が出来なかったので、誰か お姫様のご病気を
 治す事が出来れば、なんでも望みの物をくれると言う、
 立て札が建っているのですよ。』


と、聞かれた人は 親切に教えてくれた。

洋一は

『可哀相ですね。どなたか治してくれる人が、
 見つかると良いですね。』

と言ったが、おこんは、

『さあ、行きましょう。』

と、だけ 言って、歩き出した。

洋一は、教えてくれた人に、お礼を言って、
おこんの後を追いかけた。



しばらく歩いていると、お城の天守閣が見えてきた。

『おこんさん、いったいどこへ行きたいの、
 このままだと、お城の方へ行っちゃうよ。』

『いいんですよ。お城のお殿様に、用事がありますから。』

と、歩きながら澄ました顔で言った。

洋一は驚いて、

『えー!、 お!、お殿様に用事って、、、どんな用事なの?』


『洋一さんは、私のする事を黙って見ていて、
 時々うなずくだけで良いのです。』

『私に任せて下さい、』


と言って、お城の前まで歩いて行き、

『お姫様のご病気を治しに来ました。』

と、門番に言って、お城の中まで入って行った。


洋一は、驚きながらも、

【 おこんさんは、何をするつもりなんだろう?】
【でも、このまま 付いて行くしかないなあ 】

と、半分あきらめた様になって、おこんの後を付いて行った。



お殿様の前に通された二人に、

『お前達は、姫の病気を治してくれるそうだが、
 どこの町の医者だ?』


と、お殿様は聞いてきた。


『私達は、医者ではありません。』

『私達は、普通の農民です。』



『有名な医者でも治せない病気が、
 普通の農民に、治せるのか?』



おこんは、洋一の方を見ながら、

『この方は、農民ですけど、あらゆる病気を治せるのです。』


『もし、それが本当の事なら、お前達の望む物を、
 なんでもやろう。』


『ただし、それが嘘で、姫の病気が治らなかったら、
 罰を与えるが、それでも良いか。』



『はい、よろしゅうございます。
 それでは、早速 お姫様の診察を致しましょう。』


このやり取りを 隣りで聞いていた洋一は、
心の中では、凄く驚いたが、顔には出さずに、
おこんに合わせて、時々うなずいていた。



二人は、お姫様のお部屋に通されたが、そこには、
お姫様に付き添っていた侍女(じじょ)も居たので、

『お殿様、診察や薬の調合は、秘密ですので、
 すみませんが、私達二人だけにして貰えませんか?』



『し、しかし、お前達だけにするのは・・・』


『そうして貰えないと、お姫様のご病気は治せませんが、
 それでもよろしいのですか?』



『それは、困るが・・・』


『それでは、お殿様も侍女の人も、外に出て下さい。』

と言って、無理やり お殿様と侍女を、外に追い出した。
おこんは、お姫様を診察して、

『これは簡単に治るよ。』

『洋一さんは、お湯を沸かして下さい』

と言って、持ってきた袋の中の、草や葉っぱの中から、
一つを取り出して、よく手で揉んで、沸いたお湯の中に
入れて、煮出しだした。


しばらくして、よく煮込んだ薬草を少し冷まして、
お姫様に飲ませると、お殿様を呼んで、

『もう、これで治療は終りました。
 後1時間位したら、目を覚まして、
 起き上がれる様になりますよ。』



と言ったが、
お殿様は、半信半疑で、

『もう終ったのか、これで本当に良くなるんだろうな。』
『もし良くならなかったら、どうなるか分かっているだろうな。』



と言った。
おこんは、すかさず、

『必ず良くなります。後1時間待って下さい。』

と言って、そこに座り、時間が経つのを待った。

創作童話 第6話 

September 23 [Sun], 2007, 15:01

洋一は、おこんが涙を流すのを見て、すっかり困り果てて、


『願い事と言われても、特に無いけど、、、
 しいて言えば、畑仕事が辛いから、お金があれば
 楽が出来るので、お金持ちになりたいって事位かな?』


洋一がそう言うと、
おこんは涙を浮かべたまま、にっこりして、

『分かりました。私に任せて下さい。』

『それでは、まず 大きな袋を用意して下さい。
 あ!、鎌(かま)も忘れずに。』



洋一は、何がなんだか分からなかったが、
取りあえず、大きな袋と 鎌を用意すると、


『それでは早速行きましょう。』

と言って、おこんは、嬉しそうに 表に飛び出して行った。

『おい、おい、まだ真夜中・・・!』

と、言いかけたが、
外は、もう 夜が明けようとしていた。


『早く、早く、』

と言いながら、おこんは手招きをして、
( いや、この場合は足招きか。笑)
山の方に走って行った。

洋一は、おこんの後を、追いかけて行ったが、
途中で見失って、

『おこんさん!!どこだあ!』

と大声で言うと、
おこんは 戻って来て、笑いながら、

『もう〜、遅いんだから。 もっと早く走ってよ。』


と言って、また、山の上の方に登って行った。

しかし今度は、洋一が見失いそうになると、
おこんは、立ち止まって 待っていてくれて、

『もう、遅いんだから。』
と、嬉しそうに言いながら、
追いつくと、また上の方に登って行った。









そうして、2時間位 登って行くと、おこんは、急に足を止め、
洋一に向かって、

『この葉っぱを取って、袋に入れて下さい。』

と言って、自分は 辺りを何か探し始めた。

洋一は、何がなんだか分からなかったが、
おこんの言う通り、葉っぱを集め始めた。


そうしていると、今度は、

『こっちの草も集めて下さい。』

と言うので、


【え〜、今度は草なのか?】
と思ったが、


【何か、訳があるんだろう。】
と思い直して、黙って鎌で草を集め始めた。

おこんは、

『今度は、こっちの葉っぱ。』

『次は、あっちの草。』


と言う様に、次から次に指図をして、
葉っぱや草を集めさせた。









2時間位たったでしょうか、
もうこれ以上 袋に入らなくなったので、

『もう、袋がいっぱいで、入らないよ。』

と言うと、

『それじゃあ、帰って 町へ出かける用意をしましょう。』

と言った。

洋一は、その言葉に驚いて、

『え!、これを持って町へ行くの?』

と言うと、おこんは、


『そうです。だから家へ帰って、町へ行く支度をしましょう。』

と言って、先に 山を下りて行った。

洋一は、登って来た時と同じ様に、
下る時も、おこんの後を追いかけて下って行った。







家に帰り着くと、おこんは、もう人間の姿になっていて、
朝ご飯の用意をしていた。


『お帰りなさい。 さあ、朝ご飯を食べましょう。』

と言って、洋一を居間に座らせ、
一緒に、ご飯を食べ始めた。

ご飯を食べてる途中で、何度も チラッ、チラッ、と
洋一が見るので、おこんは、

『どうしたんですか、私の顔に何か付いてますか?』

と、不思議そうに首を傾けて言うと、

『いや、顔に何か付いてるじゃなくて、こうして見ると、
 まさか おこんさんが キツネだとは、思われないので、
 さっきあった事が、本当の事だったのか、
 それとも夢だったのか、分からなくなっていたんだ。』

と、洋一が言ったので、
おこんは、笑いながら、


『本当の事ですよ。』

『さあ、早くご飯を食べて下さい。』
『今から、山を、3つも越えなくてはいけないので、
 早めに出発しますよ。』


と言って、ご飯を食べるのを急がせた。

創作童話 第5話 

September 17 [Mon], 2007, 22:38


おこんは、大きく深呼吸をして、話し始めた。



『実は、もう一つ大事な事を言ってませんでした。』

『わたしは・・・・・・わたしは・・・・・・』



『私は、実は、、、、、、隣りの山に住むキツネなのです。』




『え!、』

ビックリした洋一は、
驚きのあまり、目を開けてしまった。

すると、そこには おこんの代わりに、
キツネが、枕元に チョコンと座っていた。



『お!、おこんさん!??』


洋一は、きょろきょろと、周りを見渡したが、
キツネ以外は誰も居なかった。

『おっ、お前は、おこんさんなのか?』



『はい、そうです。』

キツネは、洋一が驚いているのにも かかわらずに、
話を続けました。


『私は、住んでいる山で、猟師に猟銃で撃たれて、
 やっとの思いで、あそこまで 逃げ延びて来たのです。』

『そこへ、あなたが通り掛かったので、
 手当てをして貰おうと思って、人間に化けました。』

『あなたを騙(だま)して、本当にごめんなさい。』

『私を助けて、手当てをして下さったご恩は、
 一生忘れません。』

『私に、何か お礼をさせて下さい。
 私の出来る限りの事を、して差し上げます。』




洋一は、やっと、事の成り行きが分かり、

『いやあ、お礼と言われても、
 傷ついた人を、、、いや、キツネか。。。
 傷ついたキツネを助けただけだから、
 そんなに大した事でもないし、お礼なんていらないよ。』


と言うと、キツネは、

『それでは私の気がすみません。  どうか、
 どんな事でも良いので、願い事をおっしゃって下さい』

『おっしゃって下さらないと、わたしは、わたしは、、、』



と、言いながら、涙をぽろぽろ流していた。

創作童話 第4話 

September 16 [Sun], 2007, 23:08
どの位、時が経ったのだろうか、



誰かに、体を揺すられているような気がして 目を覚まし、
真っ暗なので、手探りで ロウソクの所まで行き、
灯りを点けてみると、枕元に おこんが座っていた。


びっくりした洋一は、

『お!、おこんさん、
 こんな夜中に、いったい どうしたんだい!』

と言うと、おこんは、

『実は、私は両親共 つい最近亡くなりまして、家も、
 この前の大雨で、濁流に流されて、行く所が無いのです。』

『今まで黙っていて ごめんなさい。』


と言って両手をついて頭を下げた。


『そうだったんですか、行く所が無ければ お困りでしょう、
 どこかに住む家が見つかるまで、ここに居ても良いですよ』



『怪我の治療までして頂いて、その上、家に
 置いてくださるなんて、なんとお礼を言ったら良いか。』


『本当にありがとうございます』


と、おこんは涙を流しながら言ったが、
まだ何か言いたそうに、もじもじしていた。


洋一は、

『おこんさん、まだ何か言ってない事があるのかい?
 言ってない事があったら、言ってごらん。
 もう何を言っても驚かないから。』


と言うと、

おこんは、意を決したように 正座し直して、


『すみませんが、目を閉じていてくれませんか? 
 そうしないと 言いにくいので。』


と言ったので、洋一は、

『分かりました。』

と言って目を閉じた。

創作童話 第3話 

September 14 [Fri], 2007, 23:53

そして その日の夕方、やっと医者を連れて帰って来た。
医者は 早速 診察したが、足の傷を見て、


『これは鉄砲傷じゃな、
 おそらく猟師が間違えて、この娘さんを撃ったんだろう。』

『玉は抜けているが、破傷風になっている。
 手当てをしても、助かるかどうか分からんが、
 とりあえず出来るだけの事はしてみましょう。』


と言って手当てをし始めました。




1時間ほどして手当てが終ると、


『ここ2、3日が峠じゃ、それを越えれば助かると思うが、
 後は、2時間おきに包帯を替える事じゃ!』

『それから、熱が出るから、冷たいタオルで頭を冷やす事も、
 忘れずに頼むぞ。!』


と言って、医者は帰って行った。



それから若者は医者の言われた通り、
2時間おきに包帯を替え、

頭を冷やす為に川の上流の方まで行き、
冷たい水を汲んで来て、3日間 殆んど寝ずに、
一生懸命看病しました。


そして4日目の明け方に、やっと熱も下がり、
娘も気が付いて、辺りを見廻していた。



若者は、にっこり 微笑んで、


『おお、やっと気が付きましたか、あなたは3日間、
 生死の境をさまよっていたんですよ。
 気が付かれて、本当に良かった。』


と言うと、
娘は初めて声を出し、か細い声で 涙を流しながら、

『助けてくれて ありがとうございます。
 このご恩は 一生忘れません。』

『私の名前は、おこんと申します。
 あなた様の お名前は?』


と、言った。

若者は

『とんでもない、困っている時はお互い様ですよ。』
『私は、洋一(よういち)と言います。』

『さあさあ、今 お粥(かゆ)を持って来ますから、
 少しでも食べて、元気を取り戻して下さいね。』

と言って、お粥を持って来て食べさせてあげた。



おこんは、1日、1日、と徐々に回復していって、
2ヶ月後には足の傷も、すっかり良くなって、
立って歩けるようになっていた。



もう、普段通り歩けるようになった ある日、
夕御飯を食べた後に洋一が、

『もう、すっかり良くなりましたね。
 これで、おこんさんの家に帰れますね。
 明日にでも 連れて行って差し上げましょう。』


と言うと、おこんは何か言いたそうだったが、


『はい。お休みなさい。』

とだけ言って、隣りの部屋に下がっていった。



洋一も眠たくなったので、灯りを消して寝床に入った。
疲れていたのか、すぐに深い眠りに入っていった。

創作童話 第2話 

September 11 [Tue], 2007, 23:12

どの位 時が経ったのだろうか、
若者は、ふっと我に返って、もう一度


『どうされたんですか? 大丈夫ですか?』

と、聞いてみた。




しかし、ただ震えているだけで、その娘は、
何も答えなかった。






【困ったなあ】 と、思ったが、

今日は寒いので、このままだと
凍えて死んでしまうかもしれないので、
こんな所に 置いて行く訳にも行かず、


『良かったら、下の村まで連れて行ってあげましょうか?
このままだと、凍え死んでしまいますよ。』


と言うと、娘は コクッ と、うなずくだけで、声は出さなかった。


若者は【何かに怯えてて声が出ないのだろう】

と思って、



『それじゃあ、行きましょう。 立てますか?』

と、言うと、女性は首を横に振るだけだった。



最初は、赤い綺麗な着物のせいで 良く分からなかったが、
女性の足元を見ると、片方の足は血が流れていて、
もう片方の足首は、大きく腫(は)れ上がっていた。



そこで、血が流れている方を、
持っていたタオルで、止血をしてやり、



娘に 背を向けて座り、

『娘さん、私の背中に おぶさりなさい。
私が村まで連れてってあげますから。』


と言うと、娘は 恥かしそうに下を向いたままだった。


なかなか娘が背中に おぶさらないので、
若者はもう一度



『恥かしがらなくていいんですよ。早く村に行って
手当てしないと、大変な事になりますから、さあ、早く!』


と言って、催促すると 娘はやっと背中に乗ってくれた。





娘を背負って 急いで村に帰った若者は、
この村には医者が居ないので、
とりあえず自分の家に連れて行き、



『今から隣の村に行って、お医者さんを連れて来るから、
静かに寝てるんだよ』


と言って、急いで 隣村に 出掛けて行きました。

創作童話 第1話 

September 08 [Sat], 2007, 23:55
お久し振りです
忙しくて、なかなか更新出来ませんでした

今日から、自分で考えた童話を書きますので、
よろしかったら、皆さん 読んで下さい



☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*☆*:;;;:*☆*:;;;:*☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*☆




むか〜しむか〜しの事じゃった。



あるところに、
それはそれは美しい若者が住んでいました。



若者の両親は、5年前に父が、
3年前に母が、それぞれ病気で亡くなっていて、
今は1人で暮らしていました。


若者は、少しの畑を持っていたが、それだけでは
食べていけないので、山菜を採って それを売って、
暮らしていました。




ある日、いつもの様に 山菜を採りに
山へ行った時の事でした。




その日は、春と言うのに 冷たい風が吹いていました。


『お〜寒い寒い、4月だと言うのに
どうしてこんなに寒いんだ!』




若者は、体を震わせて、
ひとり言を言いながら 歩いていました。




と、その時 前方の林の中で、
カサカサと、草が揺れているのが見えた。


【この山には 熊は居ないから、うさぎか たぬきだろう】

と、気にも留めなかったが、段々近付くにつれ、
着物のような物が、草むらの間から 見えてきた。


【え!、こんな所に人がいるのか?】


若者は、そう思いながら、半信半疑で 近付いて行った。



それもそのはず、この道は 獣道で、
それも、自分しか知らないであろう獣道で、
今まで この道で、人に会った事が無かったからである。





そんな訳で、おそるおそる すぐそばまで行ってみると、
そこには、顔は伏せてて分からなかったが、

おそらく若い娘であろうと思われる人が、
うずくまって震えていた。




若者は思い切って、

『こんな所で、どうされたのですか?』



と、聞いてみると、その声にビックリしたのか、
娘は、体をビクッっとさせて こちらに振り向いた。




そこで初めて 娘の顔を見た若者は、


【なんて美しい娘さんなんだ!】

と思って、その場に立ち尽くしていた。



若者が立ち尽くすのも無理はない。


その娘の肌は、透き通るような肌色をしており、
顔は、天から舞い降りた天女のような
美しい顔をしていたからである。
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