12 

2007年07月01日(日) 17時06分
そして、何が起こったのか理解できないまま
悟の葬式が行われた

私達は病院で泣き明かして以来
悟の話をしていない・・・
本当に何が起きたのか分からないし、
話してしまうと実感してしまうようで恐かったからだ
それは、上山君も同じだった・・・

まるで映画の1シーンのように、あの日の光景が
脳裏に蘇っては無理矢理打ち消した

「すいません、ちょっといいですか?」

うつむいた私達に声をかけたのは
よれよれのスーツに、ボサボサ髪の幼い顔をした男性だった

「・・・・はい。」
喉の奥から必死に声を出して返事したのは沙結だった

「えー・・と、えーとですね・・・」
ぼやーと明後日の方向を見つめながら男性は
ポンを手を叩いた
「そうそう、警察です!お話を伺いたいのですが
事件当日に、現場に君達三人がいたという事だが
その時の様子を詳しく話して欲しい!」

自分が警察であるということを思い出したかのように、
ハキハキとしゃべりだした
そんな男性に私達は顔を見合わせ
怪訝そうな顔をした

11 

2007年06月12日(火) 0時16分
それから後の事はよく覚えていない
自分のものか、美奈子のものかも分からない悲鳴が響き
気を失う寸前で振り返った上山の手が自分に触れた気がした
次に目を覚ましたのは病院だった
もう夜になっているのか真っ暗だった
最初、その暗闇で自分の目が空いているのかも分からなかったが
ぼんやりと周りの景色がみえてくる
そばに母親が椅子に座り、ベッドに手を置いたまま寝ているのが分かった
突然フラッシュのように朝の光景が頭に浮かぶ
あれは…夢…なんかじゃない…
夢だと思いたいのに、あの時の恐怖が恐ろしいほどはっきりと蘇る
それが証明していた
恐怖に飲み込まれ叫び出しそうになった瞬間に
仕切られたカーテンから思わぬ人が現れた
「上…山…くん?」
かすれるような声でやっとそう尋ねると
上山はしーとひとさし指をたてて自分の口許にあてると沙結を手招きした
沙結は母親を起こさぬようにベッドを抜け出すと静かに前を歩く上山についていった
上山は全く音をたてずに静かに歩いていく
後ろ姿を見つめていた沙結は違和感を感じた
あれ、上山くんってこんなに背が高かったっけ?
やがて真っ暗で静かになったロビーにつくと
そこには先に美奈子が座って待っていた
美奈子は沙結の姿をみとめると泣きそうな顔をして立上がり、沙結を抱き締めた
その腕には痛い程の力がこめられていた

10 

2007年06月10日(日) 23時07分
美奈子と沙結はそれっきり会話せず
黙って夜を迎えた
窓の外の桜は雨が降ると、あっという間に散ってしまった・・・

雨が過ぎ去った後の朝は快晴だが
美奈子と沙結の気持ちは曇ったままだった
(やっぱり、この気まずさも上山のせいだ・・・)
今日は日直なので朝早く家を出たが・・
朝の6時に学校はキツイ・・・
教室の前につくと
上山がドアの前で立ちすくんでいた
「おはよう、上山君」
沙結は思いっきり勇気を出して
声をかけたのであろう
声がうわずっていた

「・・・・・」
上山は返事を返さず
何か一点を凝視していた
「ちょっと!挨拶もできないの!?」
「・・・・」
美奈子が言葉をかけても
上山は視線を変えなかった
「なにを・・・見てるんですか?」
沙結と美奈子が
教室の中に視線を向けると

―そこには、切り刻んだ教室のカーテンで首を吊って変わり果てた悟の姿だった





9 

2007年05月31日(木) 0時53分
「まず、沙結の気持ちを聞かなきゃいけなかったね。」

上山に痛いところをつかれ
美奈子が沙結に言った事はその一言だった。
どれだけ美奈子が怒るだろうと恐れていた沙結は驚いた。

正直なところ沙結は自分の気持ちが分からなくなっていた。
そもそも
告白の返事を自分できちんと考えていなかったのが
今回の事を招いた気がしているのだ。
沙結は悟や美奈子が抱いている疑問に頭を悩ませるよりも
そちらで頭がいっぱいだった。
OKの返事をするつもりだった。
それは、
悟くんでもそうだったのかな。

「上山くんが言ってることが変なのは、そんなに気になってないの。
それよりも、私がちゃんと考えたのかなって
大体悟くんがいくらフォローしてくれてたって、ちゃんと聞いてたら普通間違えないと思うの。
私は、ちゃんと相手の気持ちを受け取ってなかったんだよ。」

意志の強い上山の瞳にみつめられると
自分の優柔不断さが責められてるような気分がした。

どっちにしても今は悟くんの告白に自分で答えることが沙結のするべきことのような気がしていた。

「だから、今は何が私の答えなのか考えるよ。
上山くんを責められないよ、私は。」

美奈子は上山の矛盾した言葉に、悟とともに追求すると言ったが
沙結の気持ちは分かったし
そういう意味で上山を責めるのはやめると言ってくれた。

美奈子には言えなかったが
振り返ってみた上山の傷ついたような表情が
頭から離れなかった。

8 

2007年05月28日(月) 21時46分
一夜が明けると、ふぅ〜と息を深く吐くと
昨日起こった出来事に対して
冷静なれた・・・
もう少し、冷静に話せば良かった

「美奈ちゃん、また下唇噛んでる」
横で沙結がやんわりと言った

昨日、あのあと
沙結の自宅に泊まったのだ

「しょうがないじゃん、クセなんだもん」
ぶすっとした顔で答えた

「分かりやすいから良いけどね、
怒ってる時は下唇を噛んで
嬉しくてしょうがない時は上唇を噛む・・・」
フフッと軽く笑いながら沙結は言った

このクセは沙結にはずっと指摘されたが
直せずにいる・・・しょうがない

昨日、遅くまで沙結と話したのだが
まず、沙結の気持ち

 

2007年05月28日(月) 0時09分
「あんたのやってる事は、悟と沙結をバカにしてるとかしか思えない。」

負けじと美奈子もにらみ返す。
その美奈子の腕にからみつく沙結は目に涙をためて
必死に小さくやめてやめて、とつぶやいてる。
美奈子の肩越しには、悟が自分の席から、困惑した表情でこちらを見ているのが分かった。
そんな三人の様子を変わるがわる眺めた後
上山はやはり落ち着いたペースで返事をした。

「こんな皆のいる前で、当事者の気持ちも考えないで、怒鳴り込んでくる方が
どうかしてるだろ。君こそ、二人の気持ち考えてるの?」

美奈子は、やっと腕にしがみついてる沙結に目をやった。
目に涙を一杯ためた沙結が、上山のセリフに今度は恐れおののいていた。
美奈子はやっと自分のしてることに気づいたのか
下唇をぐっと噛んで、黙ってしまった。
突然怒鳴り込んでくるからどんなものかと思ったが
案外素直な性格らしい。
と、いうよりも単純で直情型、悟と同じだ、と上山は思った。

「話があるなら、俺だって聞くよ。放課後、こんな大勢の前じゃなければね。」

美奈子は、勢いづいた手前、急にしおらしくもできなくて
来た時のように、机にバンと手をつくと
「分かった。逃げるなよ。」
と、ぎこちなくすごんでみせた。
「文句でも、聞くよ。」
上山は敢えて不敵に微笑んでみせると、美奈子はそれに顔を真っ赤にして怒りにふるえていた。
それでも、今は言うべき時ではないとくるりときびすを返して自分のクラスに戻っていった。
慌てて追いかける沙結が、教室を出るときだけ上山の方をむくと
すまなそうにぺこりと頭を下げていった。


俺だって、訳が分からないんだよ。
沙結の泣きそうな顔と、悟の傷ついた表情に
上山もどうしていいのか分からなかった。

 

2007年05月28日(月) 0時08分
美奈子は話が理解できなかった

「そうだよな〜・・俺も何がなんだが・・・。」
悟は深いため息をついた

無理もない
沙結に逃げられるわ
上山の意味不明な言動があるわ

「とりあえず明日、私から上山と話してみるわ!」
「え?」
強気な美奈子に不安を抱いた悟だったが
もはや、とめる気力も無かった

日が暮れだしたので
美奈子はとりあえず帰る事にした・・・
悟の部屋の窓から見える桜が
今は自分の頭の上にある

見上げるのと見下ろすのとは
同じ桜でも色も形も
なんだか違うように見える

次の日、沙結の静止を聞かずに
美奈子は上山の机の上に
手のひらを大きく開いて
勢い良く振り下ろした

「どういう事だ!?」

美奈子は強く
上山の目を睨みつけた

「は?」

上山はポカンと口を開いて言葉を発せなかった

「もういいよ、やめてよ〜!」

沙結は美奈子の左腕をつかんで
必死に止めている

その二人の様子を見て
上山は落ち着きながら言った

「何がどういう事なのか、分からないね」

今度は上山が美奈子を睨みつけた

 

2007年05月28日(月) 0時07分
「・・・あの、私、ごめんなさい!!」
沙結はそれだけいうと、逃げ出してしまった。
美奈子は反射的に追いかけようとして、その手を悟に掴まれた。
「悪い、ちょっと・・・。」
振り返ると悟は傷ついた表情の中に困惑を紛れ込ませたような表情で美奈子をみていた。
今は、こっちのフォローも必要かな。
沙結の事も気になるが、ひとまず悟の話しを聴こう。
逃げ出した沙結には呆れつつも
いたたまれない気持ちになった、沙結の気持ちも
今は一人になりたいであろう彼女の気持ちも充分すぎるほど理解できたから。

家にあげられた美奈子は居心地の悪さを感じていた。
確かに仲はいいが・・・二人きり、しかもこんなシチュエーションだなんて、気まずいことこの上ない。
恋愛のレの字も二人で話した事もないのに
目の前にいる悟が実は自分の友達に恋していたなんて
なんとなく複雑な気持ちでなんとなくショックだ。
悟は、席をすすめると飲み物を持ってきた。
「なんで、牛乳なの?」
それが沈黙を破った。
「なんとなく、お前、よく牛乳飲んでない?」
「そういえば、そうかも。」
そこで再びきまずい沈黙がはしる。
気まずさを誤魔化すために、悟が牛乳を飲む、ゴクッという音が妙に部屋に響き渡った。
「沙結のこと、好き・・・だったんだ?」
こんな話し、したこともないから、恥ずかしくて目をあわせられない。
しかも、目の前でふられてたし・・・。
「あ、あぁ。如月さん、いつもお前といるし。」
「話した事、あるっけ?」
「あんま、ないけど。なんつーか、その・・・。」
こんなもじもじした悟、見たことない・・・!!!
なんで?!なんでこっちが恥ずかしくなるんだぁ!!
「だーーーっ!!何、もう、はっきりしてよ。」
その気恥ずかしさを苛立ちで誤魔化すしかなかった。
「だからっ、なんかちっちゃくてふわふわしてるっていうか。」
「可愛いのね?」
悟は耳まで真っ赤にして下をうつむいたまま、こくんとうなずいた。
見れたもんじゃない悟の様子に、美奈子は何もいえなくなってしまった。
沈黙が続くかと思われたが、意外にも悟は気を取り直した様子で顔をあげると、美奈子の方を向き直った。
まだ、少し顔は赤いままだった。
「如月さんがさ、俺と上山間違えたの、無理ないんだ。」
その言葉に、美奈子は驚いた。
どこから突っ込んでいいのか分からず、悟の言葉を待つ。
「さっき、上山から連絡あって、大体の事は聞いてさ。」
美奈子は黙ってうなずく。
「如月さんに告白したとき、上山も一緒にいたんだ。」
美奈子は今度はうなずかなかった。
大きな疑問符が頭に浮かぶ。しかし、美奈子の反応はお構いなしで悟は続ける。
また、悟の表情に困惑の色が浮かんだ。
「告白した日さ、呼び出したはいいけど、俺、いつまでたっても言えなくてさ。如月さんは、空気察したのかずっと下向いてるし。そしたら、見かねて上山がさ、言ったんだ。」
「何を?」
悟はこの先を言うのを、ためらっていたが、覚悟を決めたように息を吸い込むと、美奈子から視線をはずして続けた。
「こいつ、如月さんの事好きなんだよ、って。」
思わず口を半開きにしたままの美奈子を、チラッと横目で確認すると
「分かってるよ、すっげぇえ情けないけどさ。」と、悟は吐き捨てるように言った。
「あれ、でもさ・・・。じゃあ。」
「そうなんだよ、上山、俺ゲーセンにいたって言うんだよ。」
「え?」

「如月さんの事好きなのは、俺じゃなくてお前だろ、って。しかもオレが告白したことも覚えてないみたいで、そもそもその日はゲーセンにいたって・・・言い張るんだよ。」

 

2007年05月28日(月) 0時06分
「ええっ!?」
美奈子は思わず叫ぶように声を出した

あきれた・・・・
いや、沙結ならありえる

沙結は人の顔を見ながら話せない子だ
だからといっては・・・

気まずい空気をやぶったのは
サトルくんだった

「や・・やあ」

精一杯勇気をだしたのであろう
声がかなり裏返っていた

「う、うん・・・」

それに答える沙結

美奈子は傍観者に徹する事にした
さあ、言え!
沙結!!
変わるチャンスだ!!

桃色の淡い口元が動いた
「あのね・・・」

 

2007年05月28日(月) 0時05分
そのまま沙結は何も言い返す事ができず、今にも泣きそうな顔で美奈子の家にやってきたのだ。
いつもよりもおしゃれをしたその格好に、泣き出しそうな表情が一層切なく際立っていた。
それに腹を立てた美奈子は真相を確かめるべく、沙結の手を引いて家を飛び出したのだ。

「…だって…。」
そう言ったきり下を向いてしまった沙結をみて、美奈子はとりあえず怒りをおさめる事にした。「大丈夫だよ、私もいきなり食ってかかったりしないから。とりあえずどういう事なのか確かめるためにも悟んとこ行くって決めたんでしょ?」
悟は美奈子と委員会が一緒で上山と同じクラスだ。
男勝りの美奈子とは悪友と言ったところ。
きっと上山の事も知っているだろうと踏んだのだ。
「…うん。」
しおらしく着いてくる沙結を守らなければ、という気持ちになっていた。
ようやく悟の家に着くと美奈子は意志を固めるようにチャイムを押した。
扉が開き、悟が顔を出した。
その瞬間、沙結の体がこわばったのを美奈子は感じた。
悟と美奈子が挨拶をかわす前に、沙結が服の裾を強く引っ張って、震える声で小さく言った。

「違う…違うの…。私…上山くんとサトルくん間違ってた…。」
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