アナザー

May 21 [Mon], 2012, 16:36
「嘘をつくのも嫌だけど、本当のことも言いたくない・・・」

「元気になったら追いかけるから、先にいって」

暗い、暗くねじれた、絵空事の世界で。

クレヨンの匂いが充満してる、そんな横断歩道みたいな道。

その途中で膝を折って苦しそうに、そのひとは言った。

それでも少し笑って、その顔の裏に隠した・・・

じわりじわりと寂しさと悲しさが心を侵食して、それでもそのひとがそう言ったから。



私はこの世界から飛び出したんだ・・・

その3

February 26 [Sun], 2012, 20:15
だって私は、なにも覚えてないんだもの。

名前は覚えてる。
ミル=イーヴル、それが私の名前。

なんとなくこの地域に懐かしさを感じて、記憶を失ったままフラフラと入ったこの店が
たまたま記憶のあったであろう自分の行きつけの店だったというだけだ。
記憶喪失です、っていうのもなぜかはばかられ、
なんとなくお店の人たちと話をあわせているけど・・・

最近ようやくわかってきたのは、
私は昔この近くに2人の兄と暮らしていて、
13歳のある日に魔術の勉強をするためにこの地区にある魔術協会の魔法学校に入学したこと。
そしてその才能を買われ、王都にある大きな魔法学校に遊学し、
そこを卒業2年で卒業して魔術師では上位にあたるアリスという称号をもらっているということ。

魔法の使い方は体が覚えているみたいで、呪文とかすらすら出てくるんだけど・・・
それ以外がなぁ。

なんだかんだで日常の生活は無難に送れる程度の記憶はあるし、
全然問題はないんだけど・・・

2ヶ月前より以前の記憶がぽーんと抜けてるのは、如何せん不安で落ち着かないものである。

冷めて湯気の立たなくなった目玉焼きの黄身に、
ぷ、とフォークをつきたてた。


ズキンッ

「ーーーーーーーーっ」

         ゃないの

  みがない・・・!
                         ・・・のために、私は

                  すけて!!
                                        なにも・・・
          そのためにこんなにもの 



こんなの私が望んだわけではないのに!!!!!!!!!!!!!

その2

February 26 [Sun], 2012, 19:55
ワンコインランチメニューなんて思いっきり無視をして、
いつもの定番メニュー、『うまソース焼きそば クルルの目玉焼きのせ』に
ミニサラダとソフトドリンクのセットを頼み、
野太い声が8割方を占める食堂の片隅でもぐもぐと無言で食べていた。

この目玉焼きのぷっくりツヤツヤ感がたまらん・・・!
冒険して違うメニュー頼もう!と意気込んでいつもココにくるんだけど、
どうしてもメニュー表見ちゃうとこれを頼んでしまう。

最近では看板娘のココがメニュー取りに来ても、「うまソー
まで言ったらすぐ厨房にいっちゃうもんね・・・

フォークで目玉焼きの下からソースの絡まったいい香りの麺を引きずりだし、
くるくると巻いて口に放り込む。

あぁ・・・し・あ・わ・せ☆



ぺんっ

「あたっ」

「もう、いったいいつまで食べてんのよ。店内込んできてるんだから、もうちょっと早く食べてよ」

頭のてっぺんに軽い衝撃をかんじて振り向きざま見上げると、
そこにはメニュー表をかざしたココが少しいたずらっぽく笑ってた。

むぅっとわざとらしくほっぺたを膨らませて大げさに、

「だって私食べるの遅いもん! 知ってるじゃないのぉ! 大事なお客様がバカになったらどーすんのっ」

「大丈夫よ、それ以上バカにはならないから」

軽くウインクしてみせるのが、さらに憎たらしい。

「ちょっ」

「まぁ冗談よ、冗談。 まさか国立魔術研究院付属魔術師高等学校卒業で、アリスの称号をいただいてる大魔術師さまがバカなはずないものね。 ゆっくり食べていいわよ、常連さん」

仰々しくいって恭しく一礼をすると、くるっと踵を返して厨房に戻っていってしまった。

もう、とため息をつき、
焦燥感とうれしさを含んだ複雑な気持ちで焼きそばに向き直った。

その1

February 26 [Sun], 2012, 19:36
ごぼ・・・ごぼごぼ・・・・・・

水音がいやにうるさかった。
いや、うるさくないのか・・・
一枚の膜の外、少し離れた世界からそこにいるような。

私は。

私は、どうして。

どうして生まれてきたの。



   ***



街道沿いにある、大きくも小さくもないほどの宿場町。
このあたりはさほど町や村は多くないのと、王都に行くためには必ず通らないといけない街道沿いにあるため、
そこそこの賑わいを見せる穏やかな雰囲気の町だ。

宿場町だけあって、いくつもの宿屋やホテルが軒を連ねているのだが、
その中でも庶民に人気の食堂兼宿屋がある。

木造の骨組みに、白く塗り固めた壁、モスグリーンの屋根。
入り口の立て看板には
『本日のワンコインランチメニュー 白身魚のフライ定食
                     春野菜パスタセット
                     (ソフトドリンクつき)』
と色とりどりのチョークでポップな雰囲気で書かれ、ついふらふらと入りたくなってしまう。

実際安い割にはうまいし盛りがいい、しかも看板娘はかわいい、とかいう
3拍子そろったどこぞのRPGにありそうな設定の店だったから、
こうして昼飯どきの今頃は宿泊客だけじゃなく、町民や旅人のリピーターも多い。

少し早めに店に入った私はあの30分は待つであろう行列に並ばずにすんだけど・・・

サファイア/プロローグ@

July 13 [Sun], 2008, 18:47
そう、あの日は良く晴れた日だった。

開けっ放しのドアの向こうに、こじんまりとした部屋。

そのさらに奥に母の寝室のドアが見える。

窓から差し込む午後の日差しが、部屋の中の陰影を際立たせていて、なんとも物憂げな光景だ。

世界がセピア色に感じる。

その部屋の中におかれたイス。

うつむいて座っているのは…誰?

目元が陰って見えない…

家に入ると、古ぼけた木目の床が、ぎ、ときしんだ。

その音にはっとして顔を上げた人物――――この村唯一の医者だった。

先ほどまでがっくりと力なくうなだれていた肩が、ひどくこわばっている。

伏せられていた目も、大きく見開かれていた。

きつく握られたこぶしが、膝の上で小刻みに震えている。


『どうしたの、おじさん?』


自分の声がオブラートに包まれているかのように、現実感を失って聞こえてる。

……これは、夢、か?

その質問に、目を合わせることもはばかられるといった様子で、頭をふって再びうつむいてしまった。


――――知ってる。


その様子が、何があったのかと不安を心に植えつけた。


――――何があったか、知ってる。


胸にわき上がった不安。

はじかれたように駆け出した。

ドアを乱暴に開け放つと、母の部屋に飛び込んだ。
P R
プロフィール
  • プロフィール画像
  • アイコン画像 ニックネーム:まお
  • アイコン画像 誕生日:12月25日
  • アイコン画像 血液型:AB型
  • アイコン画像 趣味:
    ・ゲーム-乙女ゲームとRPG大好きv
読者になる
2012年05月
« 前の月  |  次の月 »
1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31