story 

March 27 [Thu], 2008, 12:02
僕は、海に打ち上げられたのか体は濡れていた。



手足は、傷だらけで暗い茶色の髪からはしょっぱい海水のしずくが

したたり落ちてきて、身に付けていた茶色いブーツやチュニックはボロボロで

蒼い海草が巻きついていた。


ここは、何処だろう・・・。


濃い緑色した二つの瞳を精一杯開けて周辺を見回す。

目の前に広がるのは、薄暗い雲行きの怪しい大空と

青黒く荒れ狂う波が連なっている海。

そして、足元には湿った砂が一面に広がる浜辺。


何がどうなってここへ辿りついたのか、記憶にない。

ただ、唯一覚えているのは、母さんと一緒に海に

飲み込まれたことだ。

名前すら忘れてしまった・・・。


しばらく経って、小雨が降りだした。

僕は雨宿りしようと思ったが、周りに人影も建物も何もない。


困ったな・・・。


すると、背後からカサカサという音が聞こえた。

振り返ってみると、そこには大きな森があった。



どうしてこんなところに・・・


不思議に思いながら僕は、しばらくその森を眺めていた。

どこか不思議なその翡翠色した森は、僕を惹きつけるように

見とれさせた。

ときどき、風になびかれてカサカサという音がするが、

その音さえも何故か、美しいメロディに聴こえるのだ。

すると、森の方から少女の歌声が聴こえてきた。


なんて美しいのだろう・・・。


僕は、傷口の痛みに必死に耐えながら足を引きずって

森の一歩手前まで来てみた。

優しい歌声に僕は耳を澄ませる。


しかし、突然歌声は消えて最後にほんのり甘い香りが

僕の鼻をくすぐった。



気付くと僕は、眠っていた。

ゆっくり起き上がって軽く伸びをした。

雨は、さっきよりも酷くなっていた。

すると、背後から少女の声が聞こえた。


「あなた、こんなところでなにしてるの?」

僕は、振り返った。

she 

March 28 [Fri], 2008, 8:56
そこには、凛とした少女が、何かを見透かすような目で僕を見ていた。

僕は、しばらく少女を見つめていた。

綺麗に手入れされたウェーブがかった茶色い波打つツヤツヤの髪は

少女の白い手首ほどあり、くりんとした大きな瞳は群青色している。

ほんのりピンク色の頬、蔓(つる)を巻きつけた鮮やかなグリーンのワンピース。

白い裸足は、折れてしまいそうなくらい細い。

「あなた、ここの島の者じゃないわね。」

少女の一言で僕は我に帰る。

僕は、美しいキラキラした少女の瞳に目をやった。

「ここは、一体どこなんですか?」

急ににらみつけるような目つきになった彼女は、

ゆっくり口を開ける。

「何も知らないでここへ来たの!?」

「違うよ!!気が付いたらここにいたんだ!!」

僕は必死に痛む手を左右に振った。

傷にふと目を向けた彼女は、目を大きく見開いた。

そして、駆け寄ってきて手足の傷、ボロボロのチュニック、

海草の巻きついたブーツ、最後に頭がくしゃくしゃの僕の顔を順番に見た。

「私の家に来なさい。」

それだけ言うとさっきの甘い香りだけを残して

消えてしまいそうな速さで森に向かって歩き始めた。

僕も急いで彼女についていく。

雨の降る森は、外から見ると暗くて不気味だった。

しかし、不思議なことに森の中に一歩足を踏み入れると

雨は、止んで空から光が差し込んだ。

僕は、驚きの連続で頭がついていけない。

それでも、少女を失ってはいけないと必死でついていく。

歩いていくほど、森はだんだん明るく、美しくなっていく。

しばらくして、リスや野ウサギ、蝶も見かけることがあった。

下を見ると小川が流れていて、透明な水が清らかに

流れている。

何処かで小鳥のさえずりも聞こえてきた。

僕は、とてもいい気分になった。

一体どれほど歩いただろうか。

彼女が、ある1本の木の下で立ち止まった。

「ここよ。」

無愛想にそう言うと、木の幹に僕を座らせた。

「ここに住んでるの?」

「ええ。」

「名前は?」

「ファーよ。仮の名前だけどね。」

「ファー? 仮の名前?」

「今から傷を癒してあげるから黙ってて。」

ぶっきら棒に言うと、少女は僕の手をとり

静かに息を吸って傷口に手を当てた。

すると、傷口がだんだん暖かくなって黄色い光がぱっと広がった。

少女は笑顔で手を離し、傷口が塞がっているのを見て満足したようだった。

「す、すごいね!」

僕は、目を見開いて言った。

彼女は照れたのか、僕の言葉を無視してさっさと足の傷も癒してくれた。

ボロボロになったチュニックも海草が絡まって濡れたブーツも

全て元通りにしてくれた。

「ありがとう。助かったよ。」

笑顔で僕は言った。

「お礼なんていらないわ。ところで、あなた名前は?」

「・・・あ。」

僕は、名前を忘れてしまっているのに気がついた。

「僕、名前忘れてしまったんだ。」

「え!?」

「本当に思い出そうとしても思い出せないんだよ。」

「・・・・・・・。」

少女は、じっと僕を見つめたまま何もしばらく何も言わなかった。

そして、そっと瞳を閉じてつぶやいた。

「・・・ローリン。」

「え?」

「あなたの名前よ。」

「ろーりん?」

「ええ。この島では、海っていう意味なの。」

「どうして僕が海なの?」

「だって、海からの贈り物みたいだったもの。」

「海からの?贈り物?」

僕は、そう言うとプッと笑った。

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