ハリイチゴ

December 27 [Sat], 2008, 16:40

どういう経緯でそうなったのかは知らない。僕は何年か前の世界にタイムスリップしていた。



僕は大好きなバンドを見るために近くの市民ホールに来ていた。そんなとこで彼らがライブをやるってのがまず驚きだ。今でこそ有名になってしまったが、この頃はまだそんなでもないらしく空席が目立った。


彼らなぜか2曲しかやらなかったが(しかも1曲は吉幾三の『俺ら東京さ行ぐだ』のカバー。※彼らはそんなカバーはしていない)、やはりギラギラとした危うさに満ちていて、ボーカルは客にうんと近づいて『思ってたよりも不細工でびっくりしたか?』などとドスのきいた声で挑発的な言葉を放っていた。



彼らの演奏が終わると謎の黒タイツ集団が出てきたが興味がなかったので帰ろうとすると、偶然にも『現在の世界』での僕の後輩、その彼女と後輩の友人の3人に出くわした。



この世界では当然まだ知り合いではないが、なぜか彼らは僕に話しかけてきた。僕からしてみれば知り合いなので驚くこともなく、そのまま意気投合。



彼らと一緒に外に出て、近くにある広い公園でしゃべっていた。
何年か前の世界といっても僕の知らない宗教じみた怪しい建物があったり、そもそも白いもやというか、霧のようなものが全体に立ち込めていておとぎ話のような世界だった(パラレルワールドのような世界かもしれない)。


しばらくすると後輩が、その怪しい建物に入りたいと言い出した。
別に構わなかったがその返事をするよりも先に、その隣にたくさん生えているヘビイチゴが食べたいと言って飛び出していった。
彼らは、彼女と僕の分のヘビイチゴをとってくるとまたはしゃぎながら遠くへ走っていった。



彼らが遊びにいっている間、僕は後輩の彼女と二人きりになった。
美人とはいえないが、自分よりも3つか4つほど年が下なのに、妙に大人びた不思議な魅力を持つ女だった。


彼女は、まだ青くて酸っぱそうなヘビイチゴを見ながら、これは茎のところのトゲトゲの部分にちなんで、自分の地元ではハリイチゴと呼ぶんだと教えてくれた。

彼女のハリイチゴは見るからに美味しくなさそうなので自分のものと交換しようかと僕が言うと、彼女は首をふってイチゴを口の中にいれ、キャンディーのように舌でなめまわし始めた。
するとさっきまで青々としていたイチゴがみるみるうちに赤くて甘そうなイチゴに変わっていった。


僕が驚いていると、一瞬だけ視線を僕のヘソの下あたりに向け、『アレと同じよね』と言った。


僕は食べ終わったハリイチゴの茎を草むらに投げながら『うまいこというね』とだけ返した。
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