風邪の話A 

January 29 [Sun], 2006, 23:48
らんにつれられ、私は信長の寝床とつながる渡り廊下をあるく。
「もうだいぶ寒くなりましたね」
しみじみと私が言ったその言葉は白いもやとなってあたりに広がった。
ここにきてどれくらいの時がたったことになっているのだろうか。
季節は秋から冬へと変わりかけているようだった。
この季候の変化に乗じて信長も体調を崩したにちがいない。
私は廊下を渡っている間、何故寒い日に息が白くなるのかというらんの疑問に
知っている限りの知識をはなした。
らんは興味深そうにその話を聞いていたが、
主君の病身を思ってかいつもに比べると瞳の輝きはくもりがちだった。

「上様、らんにございます。」
そういってらんはいそいそと部屋に入る
私も適当に挨拶しながら後につづいた。
とこについていた信長はすねたようにむこうをむき
掛け布団をふとくかぶった
「なんといわれてもにらはくわぬぞ」
駄々っ子だ。
布団から飛び出したまげが何ともなさけない。
「上様、ときわ殿がいらしてくださいましたよ」
そういわれると信長は布団からすこしだけ顔をだし、こちらを恨めしそうに見た
「ときわ、うぬまでニラをくわそうというのか?」
わざとなのかどうかは分からないが、普段からは想像もつかないか細いこえだ。
病魔とにらとの葛藤のせいか、ずいぶんとげんなりした面持ちだった。
「さすがは信長様。よくお分かりになりましたね。」
にっこりそう答えたが、一応病身である信長はその言葉に突っ込む気力もなさそうだった。
そばに控えていたりきに容態をきくと、まだ少し熱があるとこのとだ。
私は要約すると、熱がでるのは風邪が熱に弱いからであって
にらなどを食べるとからだが温まる。よって風邪が早く直ると
半ばこじつけの論理をいかにもそれらしく語って見せた。
それを聞くと信長は以外に素直に納得したが、
「明日になっても悪かったら食う」
と、尚もにらの存在を否定した。
「にらなど消えればよいのだ…」
部屋のふすまをしめると同時にそんな呟きが後ろから聞こえた。

風邪の話@ 

January 29 [Sun], 2006, 23:47
特にやることもなく自室で庭に咲いた椿をぼっさり眺めていた。
するととたとたと足音が聞こえてくる。
この軽い足取りはらんに違いなかったので
私はその音が近くなるのを楽しみにそれでも尚ぼっさりと椿を見つめていた。

部屋に訪れたらんにその理由をきくと
「それが…信長様の体調がよくなくて…」
と、らんはまるで自分のことのようにげんなりと話はじめた。
「それで、お体によいからとニラを勧めているのですが…口に合わないからと…」
なんとも餓鬼くさい主君である。どうやらあの強烈な辛さが苦手のようだ。
ここまでくるとほほえましい。
「そうですか…らん殿も大変ですね…」
「ええ…」
そういってため息をついたらんだったが、はっときがつくと
あわててその言葉を訂正した。
「いや、あの、大変といいますか…そのですね」
尚もなにか続けようとする言葉を私はさえぎった。
「分かりました。私がお話してみましょう。」
そこまでしてらんが信長ニラをくわせたいのも
彼の身を案じてのことなのだろうが、やはりどこか可笑しくてならなかった。
P R
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