、日本の産業基盤の強化

February 06 [Fri], 2015, 1:37
高真空・超高真空にした真空容器内の圧力測定には電離真空計や分圧真空計が用いられるが、その測定の信頼性は現状では十分に高いとは言えない。これら真空計の感度が気体の種類によって数倍も異なるうえ、通常、窒素でしか校正されておらず、また使用環境や使用履歴によって感度そのものが変化してしまうといった問題があるからである。 こうした現状を打開するために私たちは、真空装置に取り付けられた真空計を取り外さなくても、測定したい気体を使った、簡便で信頼性の高い真空計の校正手法を開発することが必要であると考えた。 【粘性流から分子流】 これまで真空容器に気体を導入するには、バルブや細管が使われてきた。気体は大気圧下では「粘性流」と呼ばれる流体のような流れ方をするが、バルブや細管を通過するときは「中間流」という状態となり、真空容器の中では「分子流」という気体分子が一つひとつ独立して運動する状態へ移行する。このうちの中間流には複雑な非線形現象が含まれるため、その流れの特性を解明することがとても困難であった。 そこで、私たちは、超精密濾過ガスフィルターメーカーのピュアロンジャパンと共同で、「標準コンダクタンスエレメント(SCE)」というガス導入素子を開発した。SCEは、1マイクロメートル(マイクロは100万分の1)にも満たない微小な孔(あな)を持つステンレス製多孔質焼結体であり、これを通過させると気体の流れを粘性流から分子流へと直接移行させることができる。これにより気体の種類や温度が変わっても、その流量を精度よく見積もることが可能になった。 【水素漏れ検査にも】 SCEのコンダクタンス(気体の流れやすさ)は、産総研が保有する国家標準にトレーサブルな値として校正され、ユーザーに供給される。SCEを用いると気体流量を再現性良く定量でき、これが真空計を校正するための信頼性の高い基準となる。この技術は、平成23年度戦略的基盤技術高度化支援事業(サポイン)に採択され、流量範囲の拡張や歩留まりの向上、SCEを組み込んだガス導入器「分子フローコントローラー」の開発・製品化につながった。 SCEは、真空計の校正のみならず、真空ポンプの性能試験、材料からのガス放出の測定、漏れ検査、ガスバリアー膜の性能評価といった幅広い用途に利用され始めている。最近、私たちは、水素や新冷媒のガスバリアー性評価に着目して、産総研コンパクト化学システム研究センターとなた豆歯磨き粉の共同研究「粘土膜クレーストの高度化とガス透過度測定法の国際標準化推進」を開始した。私たちは、水素や微燃性新冷媒の安全性確保に貢献するため、この共同研究を加速させている。(木曜日に掲載) ◇産総研計測標準研究部門力学計測科圧力真空標準研究室主任研究員 吉田肇 学生時代より真空を用いたなた豆茶の研究をしてきた。「真空を測る」ということは、究極的には、気体分子1個1個の挙動を理解することにほかならず、絶対測定の難しさに悩むとともに、興味を持って取り組んでいる。今日、真空技術は非常に幅広い産業分野で利用されており、真空計測の標準化や信頼性の向上を通して、日本の産業基盤の強化に貢献していきたい。
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