老兵士の過去・・・A

July 18 [Sun], 2010, 14:07
聖奈の運転するカマロは
新宿区へと玲人の案内で向かった。

そのエージェントの事務所は
都内の新宿近くのマンションの一室だった。

駐車場に愛車を乗りいれた聖奈の胸中は
期待で一杯だった。
好奇心旺盛な聖奈はエージェントでトレイサーだと言う
その相手に想像を張り巡らした。

その少しだけ古いマンションのエレベーターのボタンを押す
玲人の背中越しに
聖奈は期待を込めて聞いた。

「ねぇ、、そのエージェントって、、、好人物なの?」

エレベーターに乗り込んだ玲人は少し不機嫌だった。

「だから、、、嫌味な奴だって、、言っただろ?」

聖奈はその玲人の言葉に少し驚いたが
その理由を聞く前に、エレベーターが事務所の階についた。

「ここだよ。。」

その階の一番奥の部屋に表札が掛かっている。

” Tokuda co.ltd”

「徳田さんって言うの?」

聖奈の問いに玲人は諦めたのか玲人は頷いた。

「ここで貿易商を一人でこなしている幼馴染だが、、変人だ。」

玲人がノックをすると奥から男の声が聞こえた。

「入って来いよ。。。」

ドアを開けると
電話の子機を持って部屋の中をウロウロする徳田の姿が目に入った。
タバコを手にしながら、英語で電話の相手と交渉している。

玲人を手招きしながら、その後ろにいる聖奈の姿に少し驚いた様子だった。
徳田はソファに座る様に勧めて、電話を片手に隣の部屋へと向かった。

玲人が聖奈に座る様に促した。
玲人は机横の玲倉庫からアイスコーヒーの缶を取り出して
その一本を聖奈に手渡した。

その冷たさを感じていると、奥の部屋から「OK」を連呼する徳田の声が聞こえた。
どうやら交渉がまとまったらしい。その部屋から徳田が出てきた。

「いやぁ、、、S国の貿易商は、、がめつくて嫌だね。。
あんな破格のオファーにも値上げ交渉してくるなんて、、尋常じゃないね。」

徳田は冷蔵庫からコーヒーを取り出し缶を開けた。
そして聖奈に目を向けた。

「そちらの綺麗な御令嬢は?」

聖奈が笑顔で立ち上がった。聖奈は社交的な笑顔で敢えて挨拶した。

「皆川聖奈です。。カウンセラーの勉強の一環として、玲人さんのアシスタントをさせて頂いています。」

深々とお辞儀をする聖奈に徳田は口笛を吹いた。

「おぉ、、こんな綺麗なアシスタントは玲人には勿体無い、、

僕の秘書に転職してみてはどうですか?」

徳田にコーヒーを飲み終えた玲人が云った。

「そんな山師のような仕事は彼女には出来ないよ。。」

タバコに火をつける徳田も負けていなかった。

「おいおい」、、玲人、、山師は酷いなぁ、、、これでも、、ちゃんとした法人の貿易商だぜ?」

「どうせ、、S国の政治情勢が悪化するから、、今の内に、、安く売るべきだとか、、そそのかしたんだろ?」

「そそのかす?、、とんでもない、、警告してやったんだぜ。。俺ほど誠実な貿易商はそうそういないぜ。」

「で、、今度はその商売相手に、、、S国の現体制は安定しているから、、今が買いだと言うんだろ?」

徳田はそれを悪びれる様子も無かった。

「あぁ、、それが、、ビジネスって、ものじゃないか?」

玲人が首を振った。これ以上は論議をしても無駄だと思ったらしい。

「で、、依頼の話は?」

徳田も直ぐに話題を切り替えた。

「そうなんだ、、取引先の相手の社長が引退したが、、その会社が中々商売上、、良い相手でね。。」

「欲の話ならごめんだけど?」

徳田は手を横に振った。

「俺はお前に、、ビジネスの話で依頼した覚えは無いぜ?、、それは見くびらないで欲しいね。。」

徳田は視線を聖奈に向けた。

「彼女なら問題ない、身元は保証するし、秘密厳守も理解している。」

徳田は安心した顔を見せながら、話し始めた。

「実はその二代目の社長からの依頼だ。

先代の社長、、つまり親父が、、末期癌で余命三ヶ月だという。。。

家族らは既に覚悟はしているらしいが、、

その親父の最後の願いを叶えて欲しいというのだ。。」

聖奈は喉の渇きを覚えた。

エージェントとしての徳田の依頼は
驚きに値するものだった。






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