繋いだ手(恋愛系御題8題その1) 

2007年06月14日(木) 19時44分
ゆるく
やさしく
つないだ



 帰り道。
 ゆっくりとした歩調で歩く二人の影を、街灯が照らし出す。
 ゆるく繋いだその手を見て、ちさは小さく笑った。
「何?」
 それに気付いて拓が問いかけると、ちさは彼を見上げて軽く横に首を振る。
「なんもないよ」
「笑っただろ」
「笑ったけど」
 くすくすとまた小さく笑って、繋いでいた手をちょこんとちさが突付いた。
「拓みたいだなーって思ったの」
 楽しそうに笑ってちさが続けると、拓は「ん?」と眉間にしわを寄せる。
「何が」
「なんとなーくだよ」
 特に意味はないよ、とちさはまた楽しげに笑う。
「なんとなく?」
「拓みたい。やさしくてゆるいのに、絶対離してくんないの」
 拓が普段はおとなしいくせに、実は強い独占欲を持っていることをちさは知っている。
 拓曰く、言うのは格好悪いから、言わないという独自の理論でヤキモチを口に出すことはない。
「……嫌?」
「さて?」
 意地悪くちさは笑って、拓を見上げる。
 不安そうなその顔に、おっきな犬みたい、とちさはまた笑う。
 悪さをしてないのに怒られて、しょげかえっている犬のようだ。
「嫌じゃないよ」
 だからすぐにちさは訂正する。
 機嫌を損ねたくはないし、思っていることはまた違うし。
「嫌じゃないから困るの」
 本当はもっと表立って独占してほしい。
 自由にして欲しい気持ちと、独占して欲しい気持ち。
 いつだって心は両極端だ。
 きっとがんじがらめにされたら、逃げ出したいって思うに違いないけど。
「拓と手を繋ぐの好きよ」
 繋いでる手は確かに繋ぎとめられている気がするから。
 気持ちがふわふわとどこかにいかないように。
 ずいぶん前なんて、外で手を繋ぐことすら恥ずかしがってしてくれなかったから、これは大進歩だ。
「ほんと?」
 心配そうに問いかけてくるから、ちさは笑ってうなずいた。
「ほんと」
 だからこれはとっても意味のあること。
 繋いだ手が離れないように。
 小さく祈ってることを知らないで欲しいと願う。
 ちさがゆるく繋いだ手にほんの少し力を込めると、拓も同じだけ力を込めてくれる。
 しっかりと繋いだその手は離れない。



おしまい。


◆お題商店街◆
(C)陽月汐夜
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