last episode 夢の終わり 

December 24 [Sat], 2005, 23:07






 聖なるその日…



 島は夢の終焉を迎えた。










 ミールの誤認識で生まれた、

普通ではありえない、奇跡。




 けれど、それは、確かに"虚像"ではない…



優しい奇跡…。 ――"黄泉がえり"…。


















  『あなたが、そこにいた…。』




 そして、確実に『何か』を残した、人々の心に…。








 それは、単なる"夢"ではなかった…。









 生まれては別れに向かう私たちの為に








 齎された奇跡は、甘く、優しい、暖かな温もりだったから…。











  



  だから、生きていく、私たちは…この島で…。












  願わくば、暖かな祈りが、総ての人に、届きますように…








   Happy merry Christmas...!!


(by.登米 諦)

episode-33 約束の向こう側に… 

December 24 [Sat], 2005, 22:49



誰も居なくなったCDCで、モニターをじっと見つめる。


訂正されていくデータの数字を見つめて、もう直ぐ、消え逝く自分を感じていた。


この現象は、総て、ミールの誤認識の所為で起こった事象。

そうであると判った瞬間から、いつか、また、消え逝く事は、想像がついていた。

ミールは常に学習する存在であるのだから。

この生命の循環は、あってはならない循環なのだ、と。


アルヴィスの内部のコンピュータでなら、そのデータが修復されていく様を見ていることが出来る。

其れをぼんやりと眺めながら、もう直ぐ、自分もまた、消え逝くのだという事を実感し始めていた。



再び、この世界に戻ってきたことで、沢山の体験をした、ように思う。

日数にしてみれば、僅かだった。

けれど、確かに、その瞬間、自分は"生きて"いたのだ。

子どものように、雪合戦をしたり。

もう、逢えないと思う人と、出逢い、話をしたり

人と、触れ合ったり、夢を語り合ったり




目に入る総てが、輝きに満ちていた。

そう思うと、その僅かな日々が、とても、貴重なものに思えて、ならない。



それは、生きることに伴うどんな痛みよりも、はるかに暖かく、遥かに優しくて

眩い日々だった。

けれど、其れは所詮、 『夢』。

生きたいけれど、もう、夢は、『終焉』を迎える。総ての夢が目醒めを迎え、そして、夢として戻ってきた人々は消えていく…

自分もまた、同じように…。


『クラマエ カリン delete』

『ミナシロ ツバキ delete』

『コダテ マモル delete』

『ハザマショウコ delete』

『マカベ アカネ delete』

人々が、消えていく。天に再び舞い戻っていくのを、画面を通して、見つめていた。

自分も、同じ

消えるのは、もう、間近に迫っていた。

episode-32 愛しきこの場所に別れを告げて 

December 24 [Sat], 2005, 22:34

帰ってきた翔子の表情は、思っていたよりも、明るかった。

漸く、逢いたい人に、出会えたのだろう。ずっと、待ち焦がれていた、彼に、会う事ができた所為だろうか。
「ただいま」
すっきりとした面持ちで、翔子は、微笑んでみせた。


それは、最期を、総てを覚悟した、表情だったのかもしれない。





三人で囲んだ夕食の後、紅茶を入れようとして立った容子の腕を、翔子は手に取って引き止めた。

「お話があるの、お母さん…」
「翔子?」
その、真剣な表情に、それが、ただ事ではないことを知る。
其れを察し、カノンはすぐさま、席を立とうとした。
「じゃあ、私は」
「待って」
「カノン…ちゃん、も此処にいて、聞いてほしいの…」
駄目かな、とその美しい瞳が見上げてくる。
「いや、駄目じゃ、ない…」
そう答えると、翔子はほっとしたように溜息を吐いて、小さく笑った。


episode‐31 それでも、君は。 

December 24 [Sat], 2005, 18:09
「咲良だって、何処かでおかしいって感じてたんだろう」

こぼれ落ちてゆく雪の結晶の様な彼は、咲良にそっと微笑んだ。
本当は、手紙を残して、咲良達に会わないで消えようと思ってたんだと
随分と理不尽な事を告げる。
剣司は唇を震わせて、何も言えない様に彼から顔を背けた。
大切な人。
もう、逢えない人。
まるで、クリスマスの奇跡の様に、彼と過ごした日々は色鮮やかだ。

「・・・ゴウバインは正義の味方なんでしょう」

正義の味方が、どうして去って行かなければならないと
彼同様に咲良は顔を真っ赤にして、衛に怒鳴りつける。

「ヒーローは、その人にとって、ひとりだけなんだよ」

咲良にとってのヒーローは、僕じゃないからと衛は笑顔で告げた。
堪らなくなって咲良は、消えかけている衛の体に抱きつく。

「・・・それでも、あんたは私にとって大切な友達だから!」

咲良につられる様に、剣司も衛の体に抱きついた。
衛は苦笑をする、これではまるで、おしくらまんじゅうみたいだと。

「剣司がそんなんじゃ、僕、心配になっちゃうよ」

「・・・衛」

その言葉に剣司は涙を拭うと、衛から離れてピースサインを掲げる。

「衛。元気でやれよ?」

「剣司こそ。姐御をしっかりと支えてあげてね」

「寧ろ、私が支えなきゃ駄目でしょう?」

3人で一頻り笑って、衛に手を振る。
ー元気でねー
さよならなんて言いたくはない。
そんなふたりの心が分かったのか、衛も手を振り翳すと、
お決まりのポーズで彼等を和ませた。

「ふたりとも・・・元気で!」

衛が居なくなってから、我慢していた咲良は崩れる落ちる様に
床に腰をおろす。
そんな咲良に手を貸して、剣司は彼女の服に付いた塵を払った。

(by.柊清夏)

episode‐30 キャラメリゼ 

December 24 [Sat], 2005, 10:14
「か…春日井、君…?」
「…おはよう、翔子」

羽佐間家の門扉の前である。
玄関から出てきた翔子が見たものは、両手をポケットにつっこんで、
赤い鼻をしながら待ち構えていた甲洋だった。

「わ、わ、わ…―…なんでこんな朝早くに…??」
「へへ、早朝散歩―行くんだよな」
腕時計は―7:25になろうとしている。
―翔子が現れるのが、この時間であることは、既にカノンに聞いていた。

「今日はさ、俺も…一緒にいっていいかな」
翔子は呆気にとられていたが、やがて
「…うん!」
満面の笑みで答えた。

いつも、この先に踏み出すことが出来なった。
だがもう―踏みとどまっているわけにはいかない。

****

海に向かう道を二人して歩く。

今まで会いにこれなかった理由を一番に尋ねられたが、甲洋は『風邪引いて寝込んでたんだ』と嘯いた。当然、本当の理由など、言えるはずが、なかった。

「―手、どうしたの?」

並んで歩いていた翔子が、首をちょこんと傾げ「それ」、と甲洋の両手を見つめた。
「ああ、これ?」
両手ともに、白い包帯がグルグルに巻かれた手のひら。
甲洋は、両手を持ち上げてみせる。
「なんだか痛そう」微かに滲み出た血跡に気がついて、翔子は苦く眉を寄せた。
「俺どじでさ―昨日店の食器棚の掃除してたらさ、ガッシャーンって」
「わーやだぁ…痛かったでしょう」
「うん、ダイジョーブだよ」甲洋はにっこり笑って見せた。

「我慢だけが取り得なもんで」


****

冬の青空の下、夜が明けたばかりの海は静かだった。
寄せては返す波は小さく、それは単調なリズムを奏でている。
幾筋もの風の束が、翔子の長い髪をすり抜けていった。

「私が死んだとき―、みんな…悲しんでくれたのかな」

青い水平線を遥かに見やりながら、翔子がふと呟いた。
"死”
―翔子から紡がれたその言葉に、甲洋は驚嘆した。

「翔子…まさか、覚えてるのか―?"その時”のこと…」
「―うん…最初はもやっとしていたんだけど」
翔子は少しだけ、笑って見せた。「―今はちゃんと思い出せるよ」

episode‐29 天 

December 23 [Fri], 2005, 23:29
芹と手を繋いで歩む。
それは、笑いを伴っていたけれども、どこか哀しくて。虚しくて。
でも乙姫も芹も笑うことを止められなくて。
埋められる時間を全て埋めてしまおうかと言うように、間断なく笑いさざめく。
会話が途切れたら終わりだというように、次から次へと話に花を咲かせる。


だけど、そんな『時』はいつまでも続かない。
続けられるわけがない。

それは分かりきった事。
そう分かっているのに。
それでもやめられない。


やめなければ。
話さなければ。

この柔らかな手を----------離さなければ。




episode‐28 存在という在処。 

December 23 [Fri], 2005, 9:01
そう言えば、同じクラスに居たのに彼女とはあまり話した事がなかった。
偶然に帰り道に鉢合わせた果林と咲良は、
珍しい組み合わせで坂道を下ってゆく。
隣を歩いている果林が何も言わない事から、一緒に帰る事に
異議はないのだろう。
咲良は、つい、彼女の事が気になって、相手の事を
歩く度にチラチラと見てしまう。
考えてみれば、こうして、カノン以外に女の子と肩を並べて
帰るのも初めてに等しいかも知れない。
それだけ、彼等と一緒に時を歩んできたのだと思うと、
咲良の口から溜息にも似た息が出た。
後、どれくらい、一緒にいられる?
最近になって感じている違和感を、決して、彼には告げられない。
どうして、あんたは其処にいるの?
彼と会う度に嬉しさと同時に寂しさを抱いてしまう。
何事もなかった様に笑う衛は、本当は全てを見越しているのかもしれない。
彼とは同様に、果林の考えている事が咲良には分からない。
眼鏡を掛けた瞳の中に、感情を押し殺してきた様な
果林がクラスメイト達に苛立ちを感じている様に
咲良が感じていたのも、今から思えば当たり前の事かもしれない。
楽園だけで過ごしていた自分達に、あの時、彼女が感じていた思いを
考えようと思っても・・・彼女の想いは、彼女のものだけなのだから
理解をする事は出来たとしても、共存する事は出来ないだろう。

「貴方は、此処にいますか?」

果林のふとした言葉に、咲良は眉ねを寄せる。
その言葉に嫌悪感すら抱くのは、フェストゥムとの戦いのせいだ。
嫌になるほど聞かされた言葉に、彼女に対して何かを言おうとした
咲良に果林は微笑んだ。
笑うと可愛いじゃない。
反論を掻き消された気がして、咲良は恥ずかしさ紛れにそっぽを向く。

「不思議ね・・・あの頃は分からなかったのに。今は分かる気がするの」

「・・・・果林?」

「きっと、私は『此処』に居たかった。でも、今は『此処』には居られないの」

その意味、分かる?
果林の言葉に咲良は何も答える事が出来ない。

「でも、こうして、咲良と話せてよかった」

「あんたは此処に居るよ!果林!」

「そうね。私は此処にいるわ」

(by.柊清夏)

episode‐27 夢 

December 22 [Thu], 2005, 22:45
一面の銀世界に風が魔法を掛ける。
粉雪が舞い上がり、キラキラと光を乱反射させている。
それは、まるで光のシャワー。
小さな光の粒が視界に魔法を掛ける。




乙姫は瞳を閉じて、風に思いを馳せた。

白く雪化粧した山を走る風も、海を渡る風も、全て感じられる。
賑やかな街も。人も。
のどかな犬も。猫も。
竜宮島を形成する全てを、身のうちに感じることが出来る。

朧気だったものを、はっきりと認識した。

もう芹に身長が追いつく望みはない。
いや、それどころかこの爪も髪も伸びることなどありえない。
それは少しの淋しさと共に、しっかりと身のうちに納まる。

それはあってはならない事。
ありえる筈がなかった事。

元凶は自分であるのだろうか。
戻りたい、と。
そう願う心が見せた『夢』なのだろうか。

----------そうではない。
そうではないと思いたい。

自分は理解した筈だ。
納得した筈だ。
納得して、理解して、そうして心から願った筈だ。

この腕で。
この体で。
暖かな母のように----------竜宮島の全てを抱きしめると。


瞳を閉じて、思いを馳せれば。
全てを思い出せる。
腕を銀色に霞む空に伸ばし、今にも全てを抱きしめられる。
意識を研ぎ澄ませば、全てに同調出来る。

このまま、風になる事だって----------。






episode‐26 希う―こいねがう―(続き) 

December 22 [Thu], 2005, 22:38
胸に残る不快な何かを振り切るように乙姫をせかす。
「ほら、早く食べろ」
「こんな美味しいご飯、急いで食べたら勿体無いよ」
頬を膨らませたその表情にふと思いついて人差し指で軽くほっぺたをつついてやる。
すると愛らしい桜色したその唇から微かに「ぷすー」と空気が漏れて思わず笑みが零れる。

そのまま炬燵の上に展開された食事風景を見やると乙姫の食べかけの五目寿司が目に飛び込んできた。
思いついた言葉は自然と口に出ていた。

「一口貰っていいか?」
「え?」
「ずっと気になっていたんだ、評判のお前の料理の腕がいか程か」

それは全然構わないけど本当にそんな大層なものじゃないんだと謙遜する一騎に笑いかけ、乙姫が使っていた箸をそのまま使おうとするが反対にさっと取られて彼女が操る箸に掴まれる一口大の五目寿司。

「総士、口開けて」

思わぬ乙姫の突飛な行動に何を言ってるんだ、と驚いて箸を取ろうとするが無邪気な妹を見ているとそんなに目くじらを立てる程のものでもないかと観念して口を開ける。


初めて口にしたご飯は想像と違わず暖かい味がした。


「そう!このね椎茸と油揚げのお味噌汁もおいしいんだよ」

寿司に使われた余った食材で溶かれた味噌汁を差し出し乙姫は幸せそうに笑う。
今度は素直に受け取り軽く箸で混ぜ口につける。


「おいしいよね?総士おにいちゃん」

何を急に?

飲んでいた味噌汁を思い切り噴き出しそうになって堪える。
微かに幻聴かと思って取り繕うように憮然とした表情を作って顔を上げるとそこにはしてやったりというような顔を
した二人が楽しそうに朗らかに笑っていた。



幸せそうに。



―――――――いつまでもこんな時間が続けばいいのに――――――

(byナツリ)

episode‐26 希う―こいねがう― 

December 22 [Thu], 2005, 22:34

「雪が降ってきそうだったからな」
だから迎えに来たんだとコートを脱ぎながら言葉を続けた。


本当は玄関先に乙姫が出てきたらすぐに一騎の家を後にする予定だった。
しかしどうやらアーカイブの「家庭の料理」にあった五目寿司に興味を示した乙姫が一騎に作ってもらったみたいで。


何故僕に言わないんだ、僕にだって料理ぐらい出来ると強い口調で乙姫に問うと


―だって総士のご飯おいしくないんだもーん…出来ないというより向いてないんだよね総士は。
塩一つまみは何gなのか?とか弱火というのは火力としてどれぐらいなんだ?とか―


それはその「家庭の料理」が曖昧すぎるからいけないんだ、と反論しようとした矢先に


―いいだろ?俺も乙姫来てくれて嬉しかったしお前がこうして来てくれたのも嬉しいんだ―

と言われて有耶無耶のまま何故か炬燵に足を落ち着ける結果になってしまった。


「え?また降るのか雪」
洗濯物が乾かないんだよなぁと少年らしかぬ台詞が一騎の口から零れて溜息に変わった。
「…でもこの間の雪合戦は楽しかったな」
小さい頃に戻ったみたいだったとそう遠くない出来事を思い出して笑う。


靴や服の中、びしょ濡れにして寒さに震える手で作った雪玉を夢中で投げあった。
そのうち雪合戦に疲れた衛が一抜けたと言って小さい雪だるまを作り始めた。
それを見て皆、さっきまで全力で雪玉をぶつけあっていたのにお互いに協力しあってお世辞にも上手いとはいえない不恰好な雪だるまを作り上げた。



いつまでもこんな時間が続けばいいのに。



けれどもその一方で漠然とした錘のような不安
さらさらと掌から零れ落ちるような感覚


――大切な何かが――大切な何かを―――


……忘れている?