喜劇を学べ。

August 16 [Tue], 2011, 5:32
先日から久し振りに男はらいよを順に観て行っている。丁寧なフリに、美しい落とし方。喜劇の基本が全て詰まっている。さらに渥美さんの演技には寅さんというキャラクターに対する愛情は勿論、それまで培ってきた全ての技術が垣間見える。話の筋は10本も観ればパターンや外し方等全て分かる。が、全48本気付いたら観ているのは、寅さんというキャラに無意識的に感情移入し、振られてとらやを後にする時には誰もが涙ぐみ日本って美しいと呟いてしまうところにあると思う。個人的に寅さんという生き方が持切なさが堪らなく好きなのだ。人情や義理といった一見金に変換不可能なものを何よりも大切にしながらも、時にそれが原因で現実の金の必要性に迫られるあたりや、恋や愛情問題を人一倍抱えてはいるが、見た目とは裏腹に悲し過ぎるほどに傷付きやすく、また相手の些細な心の振動も感じ取ってしまう。結果自分の気持ちよりも相手の気持ちを大切にし過ぎてしまい好きだよの一言も云えず仕舞いで、旅に出るのである。人生は旅であるという。寅さんから多くの人もその事は感じ取っている事だろう。しかし僕が恋や旅よりも、寅さんから感じ取ってしまうのは時代なのである。昭和の経済成長期の作品は寅さんのようなフーテンにも何処かンフィクションな匂いがする。社会の歯車になれなかった人が、それなりの自力のみで生きるという事にがむしゃらに向き合い、その疲れを忘れるように酒や女や夜の街に住みいたような印象があるが、甥の満男も大学へ行く頃のバブル期になるといよいよその存在が仙人のようなフィクションの一言では済まされないような絶望感と切さが寅さんというキャラクターが動く度に見受けられる。特に最終作では阪神大震災のボランティアに寅さんが云々のシーンがあり、僕は今年の東日本大震災から数ヶ月した今、今、寅さんなら日本の何処で何を思っているのだろうと考えずにはいられないのである。ある意味、日本人の象徴。それが寅さんかと思う。寅さんの持愛嬌や、切なさや様々な感情や表情が僕は大好きなのだ。今の邦画でここまで朗らかで切実な物語は描かれまい。生々しい描写か、とも呼べないような空想上の話しか描かれない事は容易に思いく。昔の日本映画は観客の生活との正しい距離感があったように思う。特に小津作品はそこに美学すら感じられる。嗚呼、寅さんを肴に呑みたい。
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