ハンタウイルス肺症候群

March 18 [Thu], 2010, 0:30

ハンタウイルス肺症候群 (Hantavirus Pulmonary Syndrome;HPS)、ハンタウイルス心肺症候群(Hantavirus Cardiopulmonary Syndrome;HCPS) は、南北アメリカ大陸に生息するげっ歯類(Sigmodontinae,Neotominae)を自然宿主とするハンタウイルス(新世界ハンタウイルス)によって引き起こされる疾患である。 1993年にアメリカで初めてHPSの原因ウイルスであるSin Nombre virus(名無しウイルスと言う意味)が同定されて以来、多くのHPS関連ハンタウイルスが見つかっている。 北アメリカ大陸では主にSin Nombre virusがHPSの原因ウイルスであり、南アメリカ大陸では主にAndes virusのグループがHPSの原因ウイルスである。 新世界ハンタウイルスの種によって病原性が異なり、基本的にはヒトからヒトへの感染は無く、ウイルスを保有したげっ歯類からの感染であるが、南米のAndes virusの一種はヒト-ヒト感染を起こし問題となった。





原因ウイルス


ブニヤウイルス科ハンタウイルス属に属するハンタウイルスのうち南北アメリカ大陸に存在する新世界ハンタウイルスの一部がHPSを引き起こす。 代表的な新世界ハンタウイルス



  • Sin Nombre virus

  • Andes virus(ヒト-ヒト感染の報告がある)

  • Laguna Negra virus

  • Black Creek Canal virus

  • Bayou virus



  • Rio Segundo virus(病原性不明)

  • Cano Delgadito virus(病原性不明)


他にも多くの新世界ハンタウイルスが種としてICTV(国際ウイルス分類委員会)に登録されている


症状


初期症状は風邪の症状に似ており、発熱、筋痛、悪寒、嘔気、嘔吐、下痢、倦怠感がみられ、関節痛、背痛、胸痛、腹痛、咳、咽喉痛、頭痛などが見られることもある。


臨床的には以下の5つのフェーズに分けられている。


潜伏期、前駆症状期、心肺症状期(多くの患者がこの時期に死亡する)、利尿期、回復期


HPSは急激に症状が悪化することが知られており、肺水腫を伴う呼吸困難を引き起こす。最終的な死因は肺水腫ではなく、心原性ショックとされている。現在、ワクチンや有効な治療法は確立されておらず、対症療法にとどまる。


HPSの致死率は高く、40%?50%である。


検査所見


検査所見としては血小板減少、白血球増加、血液濃縮が特徴的である。 Sin Nombre virus感染患者の病理学的検査により、肺、腎臓、心臓、脾臓、膵臓、リンパ節、骨格筋、腸、副腎、脂肪組織、膀胱、脳を含む様々な臓器にハンタウイルス抗原が分布していることが確認されている。


関連項目



  • 腎症候性出血熱

  • 流行性腎症

  • ハンタウイルス

  • 粟粒熱(過去、イギリスで流行した謎の感染症で、ハンタウイルスが原因ではないかと疑われている)


参考資料



  • 杉山和良「ハンタウイルス肺症候群」『感染症の話』2000年第25週、第26週掲載、国立感染症研究所公式サイト(2009年6月13日閲覧)。

  • All About Hantaviruses(英語) CDC.USA(2009年9月28日閲覧)

  • 有川二郎「ハンタウイルス感染症」 獣医学会 動物の病気(2009年10月31日閲覧)


ハンタウイルス肺症候群
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