この病気が発症した牛は、当初は痙攣を起こしたりする程度で目立った症状は現れないが、やがて音や接触に対して過敏な反応をするようになり、病状がさらに進むと運動機能に関連する部位も冒されて立てなくなるなどの症状を示す。イギリスで発生したのは、飼料として与えた汚染肉骨粉が感染源と考えられている。なお、日本での発生原因は完全には解明されていないが、肉骨粉と同時に牛用代用乳がその原因として疑われている。
なお、
原因
ウイルスなど核酸を有した病原体による病気ではなく、プリオンと呼ばれる蛋白質のみで構成された物質が原因だとする見解が主流であるが、有力な異論・異説も少数ながらあり、プリオン原因説は完全な定説とはなっていない。健康体の牛などの体内には正常プリオン蛋白が発現しているが、BSEの原因となるプリオンは、正常プリオン蛋白とは立体構造が異なる異常プリオン蛋白から構成されている。
異常プリオン蛋白は、二次構造や細胞内局在において、正常プリオン蛋白とはかなり違った性質を示す。たとえば、正常なプリオンにはαヘリックス構造が多く含まれるのに対して、異常プリオンではβシート構造が多くなっている。この異常プリオン蛋白により構成されたプリオンが人工飼料などを介して牛などの体内に入ると、徐々に正常プリオン蛋白が異常プリオン蛋白に変えられていってしまう。この仕組みについては未解明な部分も多い。
2008年9月11日、米国農務省(英語略:USDA)動物病センター(英語:National Animal Disease Center/UADC)で研究を行ったカンザス州立大学のユルゲン・リヒト(Jurgen Richt)教授はBSEの病原体である異常プリオンは外部から感染しなくとも牛の体内での遺伝子の異変によって作られ、BSEを発症する例につながると発表した。この発表は2006年アラバマ州でBSEを発症した約10歳の雌牛の遺伝子の解析から異常プリオンを作る異変が初めて見つかったことによる。人間でも同様の異変が知られ、
対処
本疾病に感染した牛については回復させる治療法は存在しない。日本国内で本疾病について検査により陽性が確認された場合、
また、飼料を介した感染が疑われる疾病であるため、当該患畜と同一の飼料にて育成された可能性があるものについては、本疾病について陽性である可能性が考えられるため、本疾病についての調査が実施される。
人への伝達
狂牛病と変異型
当初人間には、経口感染しないとされた。しかし、狂牛病に感染した獣肉で作られたキャットフードを食べた猫が死に、解剖したところ海綿状脳症であったことから、食物から感染した疑いが非常に高くなり、牛同士以外でも牛肉を通じての感染が疑われた。その後、イギリスを中心に発生している変異型
ただ、どの様な経緯で感染し発病するのかは、現在でも病理学的には諸説あり、各国で研究が進められている。原因が明らかでなく、プリオンは熱に極めて強いため、広く規制する措置がとられている。牛の検査や特定の国からの輸入停止、飼料や加工過程についての規制など、感染した牛からの肉や牛乳など直接(肉など)、間接(原料として生産された加工品)に人間にわたらないように、世界各国で配慮がなされているが、畜産業界などの政治的圧力の高い国では、政治的な問題となり、必ずしも解明に積極的ではない。また、当事国内では解決されたとみなされても、国際的には汚染地域として輸出の制限を続けられる場合もある。
特定危険部位
特定危険部位は国によって違いがある。日本においては脊髄、背根神経節を含む脊柱、舌と頬肉を除く頭部(具体的には眼、脳、扁桃など)、回腸遠位部(小腸のうち盲腸との接続部から2メートルの所まで)が特定危険部位に指定されている。これらの部位を摂取するとvCJDを発症するリスクが高くなると考えられている。
各方面への影響
化粧品
化粧品については日本ではメーカーによる自主規制と回収が促されている。
牛を原料としたゼラチン
牛を原料としたゼラチンについては、WHOの専門委員会では安全であると認定されている。
外食産業
牛の脳を限定メニューで食べたことがあるという人も一部に存在する。日本国内で本疾病が初めて確認された当時、首都圏などでは「牛骨スープ」のラーメンがちょっとしたブームになっていたが、本疾病の発生はこのブームをわずか数日間で壊滅に追い込んだ。焼肉業界も大きなダメージを受けたが、電通による初動の早いキャンペーンで消費を回復した。
関連項目
- カナダのマニトバ州で、BSE感染牛を確認
- BSE問題
クロイツフェルト・ ヤコブ病 - プリオン
- 肉骨粉
- 神経学
- 獣医学
- 国際獣疫事務局(OIE)
慢性消耗病 (倒牛病)
参考文献
- 天笠啓祐著『「狂牛病」何が問題か! 恐るべき食肉汚染の実態』(かもがわブックレット)、かもがわ出版、2002年2月
- 天笠啓祐、安田節子著『肉はこう食べよう、畜産はこう変えよう BSEを乗り越える道』コモンズ、2002年3月
- 池田正行著『牛肉を安心して食べるための狂牛病Q&A』主婦の友社、2001年12月
- 池田正行著『食のリスクを問いなおす BSEパニックの真実』(ちくま新書)、筑摩書房、2002年8月
- マンフレート・ヴァイセンバッハー(Manfred Weissenbacher)著、横瀬涼訳『狂牛病は警告する ヨーロッパの体験が教えるもの』筑摩書房、2002年2月
- 金子清俊著『
プリオン病 の謎に挑む』(岩波科学ライブラリー93)、岩波書店、2003年5月 - サイバーX編集部編『狂牛病
プリオン病 因説は間違っている!』(CyberX bio)、工学社、2001年12月 - エリック・シュローサー(Eric Schlosser)著、楡井浩一訳『ファストフードと狂牛病』草思社、2002年10月
- 滝川康治著『狂牛病を追う 「酪農王国」北海道から』七つ森書館、2002年7月
- 中村靖彦著『狂牛病 人類への警鐘』(岩波新書)、岩波書店、2001年11月
- 日経レストラン編集部編『狂牛病〈BSE〉対策マニュアル』日経BP社、2002年1月
- 平沢正夫著『牛乳・狂牛病問題と「雪印事件」 安心して飲める牛乳とは』(講談社プラスアルファ新書)、講談社、2002年5月
- 福岡伸一著『もう牛を食べても安心か』(文春新書)、文芸春秋、2004年12月
- 船瀬俊介著『早く肉をやめないか? 狂牛病と台所革命』三五館、2001年9月
- 船瀬俊介著『この食品だったらお金を出したい! 狂牛病と台所革命〈2〉』2001年12月
- 矢吹寿秀、NHK「狂牛病」取材班著、『「狂牛病」どう立ち向かうか』(NHKスペシャルセレクション)、日本放送出版協会、2001年12月
- 山内一也著『狂牛病と人間』(岩波ブックレット)、岩波書店、2002年1月
- 山内一也著『
プリオン病 の謎に迫る』(NHKブックス)、日本放送出版協会、2002年4月 - 山内一也、小野寺節著『
プリオン病 BSE(牛海綿状脳症 )のなぞ』(第2版)、近代出版(東京)、2002年8月 - フイリップ・ヤム(Philip Yam)著、長野敬、後藤貞夫訳『狂牛病とプリオン―BSE感染の恐怖』青土社、2006年3月
- リチャード・W・レーシー(Richard W. Lacey)著、渕脇耕一訳『狂牛病 イギリスにおける歴史』
- リチャード・ローズ(Richard Rhodes)著、桃井健司、網屋慎哉訳『死の病原体プリオン』草思社、1998年7月
脚注
外部リンク
- 小澤義博
牛海綿状脳症 (BSE)の現状と問題点(1-4) J. Vet. Med. Sci. 63(4), 63(10), 64(2), 65(1)(日本獣医学会内)
- wwwsoc.nii.ac.jp
- 国立精神・神経センター神経研究所疾病研究第七部(
高次脳機能障害 を呈する疾患としての「プリオン病 」に関する基礎研究・治療法開発を目的とした研究、及び機能性疾患に関する研究)のページ
- www.ncnp.go.jp
- 農水省の独立行政法人 農業・食品産業技術総合研究機構 動物衛生研究所
牛海綿状脳症 (BSE)のページ
- niah.naro.affrc.go.jp
- 「牛の個体識別情報検索サービス」 農水省の独立行政法人 家畜改良センター
- [3]
- 厚生労働省「
牛海綿状脳症 (BSE)関係」ホームページ
- www.mhlw.go.jp
- 英国の食品安全管理局 Food Standards Agency(FSA)の
牛海綿状脳症 対策関連の情報と最新ニュース(英語)
- www.food.gov.uk
- OIEとBSE関連の国際基準について(PDFファイル)
- http://www.fsc.go.jp
- EFSAによるGBR評価
- http://www.efsa.europa.eu/en/science/tse_assessments/gbr_assessments.html
牛海綿状脳症 について
- http://www.zennoh.or.jp/bse/index.htm
牛海綿状脳症
- URL:http://yaplog.jp/yapmed/archive/16727



