緋色の欠片 

January 20 [Fri], 2012, 22:11


愛の季節

珠紀はスーツケースを引きながら到着ロビーで必死に周りを見渡す。どうやら目当ての人物は未だ現れなかったようだ。彼女は近くのベンチに腰を掛け、溜息をついた。ロンドンへ留学すると決めた日から半年が経過した。2年生になった珠紀は大学が計画したワーキングホリデーに参加し、単身で見知らぬ国で語学の勉強がてら茶道を教えているアルバイトをしている。一週間の休暇が取れたので、貯金したお金で一時帰国をした。到着した日は丁度バレンタインの日である。

「珠紀!」
深みのあるバリトンの声が彼女の名前が呼ばれた。現れたのは銀色の髪にこの世の者とは思えない端正な顔を持つリクルートスーツ姿の青年だった。

「祐一先輩」
彼女は愛しい恋人に向かって微笑んだ。13時間の飛行時間で溜まった疲れがどこかにふっ飛んでしまった。

「遅れて悪かった。応募した会社から突然連絡が来たから」
祐一は珠紀の重いスーツケースを手に取り、彼女と手を繋いだ。相変わらずの優しさに彼女の頬は赤色に染まった。

「内定を貰ったのですか?」
「あぁ、そうだ」
「おめでとうございます!」

珠紀は嬉しそうな表情で言った。不況で就職氷河期と言われている今の世の中、就職が無事に決まった事は何よりも嬉しい事。50社に履歴書を送ったにも関わらず、面接に呼ばれたのはたったの10社であった。祐一はきっと大変な思いをしたに違いないと珠紀は思った。彼が辛い時に留学で傍に居て上げられなかった事がとても悔しい。

「ありがとう」
祐一は彼女の頭を愛しそうに撫でた。

「んじゃ、とりあえずは家に荷物を置いてからご飯を食べに行きましょう」
「了解した」

彼らは出口に向かい、バス乗り場から都内行きのバスに乗った。

「ハッピーバレンタイン、祐一先輩」
珠紀はずっと持っていた紙袋から手作りチョコ味のスポンジケーキが入った透明な箱を祐一に渡した。
「手作りか?。凄いな〜」
祐一は嬉しそうに箱の中身を見つめた。

「甘い物が苦手な先輩の為にビターチョコを使用しました」
「それは嬉しいな。感謝する」
「喜んで頂き何よりです」
しばらくの間、沈黙が続いた。何とかその沈黙を破ろうとして、珠紀は先に口を開いた。

「就活は大変でしたか」
自分でも愚問だと思ったが、他に気の利く質問が思いつかなかった。
「ああ、浴室に携帯を持ち込むぐらいだったな」
「え?!、それって危なくないですか?。湯船に入ったらどうするのですか?」
「携帯は防水だから平気だ」
「防水携帯を発明した人に感謝ですね〜」
「そうだな〜」

彼は微笑んだ。久しぶりに見た彼氏の笑顔に珠紀はまたまた赤面してしまった。祐一にバレないようにそっと視線を窓の外の景色に反らした。

☆☆

「ただいま!」と珠紀は大きな声で言った。
「おかえり」と祐一が答えた。

珠紀は半年ぶりに入ったマンションの空気を深く吸ってから吐いた。高校卒業に祐一と同じ大学に受かった彼女は彼と同棲生活を始めた。離れ離れになるのが辛いからと互いは思っていたから。

「着替えるからリングで待っていろ」
「了解で〜す」

珠紀はふかふかなソファに座り、祐一を待つとする。突然に彼女の頭部に激痛がはしった。珠紀は顔をしかめた。きっと長旅の疲れだろう。少し休めば治ると彼女が思い、ゆっくりとソファで横になった。
その時に長袖のTシャツに着替えた祐一は引き出しを開け、小さなハート型の箱を手に取った。

「少し早いかもしれないが、真弘が言ったように当たって砕けるしかないな」と彼は呟いた。
どうも狐邑祐一が発するセリフとは思えないほど積極的だった。彼はドアノブを回し、部屋から出た。
「珠紀、準備は良いか?。出かけるぞ」

しかし、返答は何も無かった。様子が可笑しいと思った祐一は急ぎ足でソファへ向かった。そこに苦しそうな顔で寝ていた珠紀は居た。

☆☆

珠紀は思い瞼をゆっくりと開け、何度か瞬きをした。
「気がついたか、珠紀」
その視線の先に祐一の姿があった。
「先輩、私・・・」
「高熱の原因は過剰なストレスだと医者は言っていたぞ」
珠紀は下唇を噛み締めた。
「向こうで何かあったのか?」

彼の問いかけに正直に答えるしかないと悟った彼女は全てを打ち明けた。人種差別に合った事と語学がなかなか上達しない事。辛いのになるべく祐一に心配させたくないから、ずっと黙っていた。何があっても自分で解決しようと決心したのに弱虫の自分にとって少しハードルが高かった。悔しくて涙が勝手に溢れ出してきた。

「辛かっただろうな。でも、よく頑張った」
彼は優しく彼女の涙を綺麗な指で拭った。
「結局、先輩に迷惑をかけましたね。ごめんなさい」
彼女は悲しそうな声で言った。
「お前の所為じゃないから、謝る必要は無い」
「先輩・・・」
祐一は深く息を吸って吐いた。
「珠紀、こんな時だが大事な話があるから聞いて欲しい」
「はい」
「俺はお前を愛している。だから、何があってもこれからお前を守りたい」
突然の熱い告白に珠紀は硬直した。頭が真っ白になって、何も言えなかった。

「早すぎるかもしれないが、俺の我儘に付き合って欲しい」

彼はズボンのポケットから小さな箱を取り出し、彼女に渡した。彼女は恐る恐るその箱を開け、中を覗いた。ハート型の宝石が付いたホワイトゴールドの指輪だった。

「祐一先輩、これは・・・」
「今はそれで精一杯だが、社会人になったら初めての給料でもっと良い物を買ってやる」
未だ状況を把握できていない珠紀は不思議そうに祐一を見つめた。
祐一は咳払いをしてから、もう一度口を開いた。
「俺が卒業してから結婚しよう」
思いもよらない出来事で珠紀は言葉を失った。しかし、彼女の体は正直だった。嬉しい涙が彼女の頬を濡らした。
「はい、宜しくお願いします」
珠紀は深く頭を下げた。緊張が解けた祐一は微笑みながら彼女の左手を取り、薬指に指輪をはめた。

「ここで寝ると風邪をひくから寝室に行こう」
彼は軽々しく彼女の体を持ち上げた。彼女は彼の逞しい肩に手を回し、笑顔を見せた。
「祐一先輩」
「なんだ?」
「大好きです。ずっと、ずっと大好きです」と耳まで紅色に染まった彼女が言った。
「ああ、俺もだ」と彼が答えた。

寝室へ向かったそのカップルの姿は幸せなオーラに包まれていた。


〜おわり〜

作者コメント:初めて日本語で小説を書きました(^^;;;)。修業中の身なので、誤字があればお許し下さい〜m(___)m。祐一先輩が大好きなので、これからも祐一x珠紀を中心に書きたいと思います♪。イラストも頑張ります!(^_−)v。
プロフィール
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  • アイコン画像 ニックネーム:雷桜ぴょん
  • アイコン画像 性別:女性
  • アイコン画像 誕生日:8月12日
  • アイコン画像 血液型:O型
  • アイコン画像 職業:会社員
  • アイコン画像 趣味:
    ・絵描き-修業中の身。おまけに絵心が無いので、ご容赦下さい
    ・乙女ゲーム-緋色の欠片と薄桜鬼が大好きです♪
    ・漫画-少女漫画が好き(風光る、メイちゃんの執事、オトメン)
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